ランチメニューってなぜ高カロリー? 入社13年で体重が1.5倍に……!?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室73】
✳️今週のお悩み✳️
社会人になってから、オフィスワークがほとんどで、お昼はほぼ外食です。そこで、いまさら気づいたことなのですが、そもそも、ランチメニューって全般的になぜ高カロリーなのでしょうか。そばとカツ丼、ご飯おかわり自由など。(デスクワークがメインの私は入社13年で、体重は当時の1.5倍……。)
(みっきー・35歳・愛知県)
こばなみ:
今回は一風変わった相談といいますか、なんといいますか。
宇多丸:
カロリーと言えば、神保町に『キッチンカロリー』という老舗店がありまして。
僕の両親もデートに使ったりしてたっていうから、どんくらい昔からあるんだよ?と思ってたんだけど、さっきホームページ見たら昭和25年創業だって!
スパゲッティの上に牛肉の細切りとオニオンの和風味が乗ってる、ズバリ「カロリー焼」っていうメニューが有名なんだけど。
ともあれこのネーミングからわかるのはさ、「カロリー」って言葉が、プラス要素以外の何物でもない時代があった、ってことだよね。 なんせ昭和25年っつったら、戦争が終わってまだ5年ですから! カロリー摂取、生きるために必要! 取れるときにどんどん取っておこう!っていう切実さが感じられるよね。
それが今やすっかり、カロリーって言ったらまずは「取り過ぎに注意するべきもの」って位置づけになっちゃってるわけでしょ。なんなら悪玉寄りな扱いですよ。 飽食の時代!
そんななかでもなお、みっきーさんのお勤め先近くのランチメニューがおしなべて高カロリーなのだとしたら、それはとりもなおさず、それだけそのへんに激務な職場が多い、ってことじゃないですか。 限られた食費のなかできっちりエネルギー補給をしなきゃなんないような、モリモリの働き盛りがわんさかいるっていうさ。 あとは学生街とかね。いずれにしても、食にそれほどお金をかけられない層ならではの、切実な事情があるわけですよ。
こばなみ:
200円代の格安お弁当とかもありますしね。ちなみに牛丼だと、吉野家の牛丼(並)300円で669kcal、松屋牛めし(並)290円で743kcalです。松屋のプレミアム牛めし(並)は380円で727kcalですって!(2014年12月現在)
宇多丸:
でもまぁ、ここでみっきーさんがホントに伝えたいのは、ランチメニューが高カロリーなものばっかりなせいで太っちゃったという、要は文句というか愚痴、なんでしょうね。
とは言えなぁ……、「そばとカツ丼」セットがあるような店なら、当然そばだけ頼むこともできるはずじゃん?
でも、わざわざそのセットメニューを例に挙げてるくらいだから、みっきーさんはたぶん、どうしてもそっちの、炭水化物+炭水化物×揚げ物、みたいな、ドッペリした組み合わせのほうをいつも選んじゃってたりするわけでしょ?
しかも、まさかとは思うけどみっきーさん、「ご飯おかわり自由」だからって、律儀に毎度、本当におかわりしちゃってるんじゃないでしょうね? ……そりゃ太るわ!
こばなみ:
わたし若い頃は、それこそみっきーさんみたいに、そばとカツ丼とか、かならずセット的なものを食べていたんですね。でも年をとってそんなにガッツリ食べられなくなりました。もう胃とかもそこまで機能してないんでしょう……、だからモリモリ食べられるのはある意味スゴい!
宇多丸:
僕も若い頃は普通に大盛りとか頼んでたし、それでもずーっとガリッガリだったからさ、自分はきっとそういう体質なんだな、とか勝手に思い込んでたのね。
ところが、三十路越してもその調子で食い続けてたら、急にドスンと太りだしちゃってさ。
で、冷静に考えてみたら、別にいつもそこまでお腹空いてるってわけでもないのに、なんとなく習慣で大盛りとかにしちゃってるだけだよなぁって。 それどころか、食い終わる頃にはすっかり苦しくなっちゃってたりさ。そんなの、バカみたいな話じゃん?
よく言われることですけど、「満足」と「満腹」は違うってことですよ。 食べるってことは本来生き物にとって最高に「気持ちいい」行為のはずなのに、苦しくなるまで食うなんてのは、ホントに本末転倒もいいところでさ。 30代も半ばくらいになってようやく、自分が今、実際にはどのくらい腹を空かせているのか?ということを、まずはちゃんと考えてみるようにしてみたんですよ。
そうすると今度は、朝昼晩「メシどきになったから」自動的に食う、という習慣もどうかな?と思えてきて。 だって、一日じゅう大して動いてなかったり頭も使ってなかったり、要はエネルギーをそんなに使わなかった日、というのも結構あるわけじゃん? で、そういうときってやっぱり、よく考えてみるとそんなに腹も減ってなかったりするんですよ。 だったらそこは、無理して食う必要ないじゃん、という考え方になってきた。
逆に、今日はムッチャクチャ働いたな~!って実感があるような日は、やっぱちゃんと腹も減ってるもんだからさ。そういうときは、肉でもなんでも、思う存分食えばいいし。 あとさ、出てくるものの分量ってお店によって結構違うもんだけど、行き慣れた店なら、ちゃんとそこを自分に合わせて調整したオーダーの仕方をするようにする。
たとえば僕の場合、カレーの『エチオピア』に行くと、前からいつも、ご飯に対してカレーの量がちょっと少ない気がしてたのね、好みからすると。 なので、ずっとカレー大盛りのオプションをつけてたんだけど、あるときふと、「これ、ひょっとして俺にとっては、カレーが少ないんじゃなくて、ご飯が多いってことなのでは?」と思い立って、オーダーのときに店員さんに「ご飯少なめで」って頼んでみたんですよ。 そしたらなんと、それが一番『ちょうどいい』! お金もかかんないわけだから一石二鳥ですよ。
逆に慣れないお店だとさ、分量がわからないから、いざ料理を出されると「あっ、思ったより多いな、食いきれるかしらん……」ってこともあるじゃない? そういう場合、もちろん食べ物を残すなんてのは極力避けたほうがいいことなのは間違いないんだけど、それでもやっぱり、無理してたいらげる必要はないと僕は思うんだよね。 苦行みたいに食べるほうがよっぽど失礼っていうかさ。 「本当に美味しかったんですけど、私にはちょっと量が多くて、すみません」って言って、次から頼み方を気をつければいいんだと思うんですよ。
……とまぁ、とにかく、「惰性で食う」のをやめるようにしたってことですね、僕の場合。 するとどうでしょう、見る見るやせていって、今はご覧の通り、という感じです。 さっきも言ったように元々はずーっとガリガリ体型だったんで、ようやく適正なところに落ち着いたってことだと思いますよ。 ちなみにみっきーさん、近所にちょうどいいメシ屋がないんなら、自分でお弁当を作ってくるっていう選択肢はないの?
こばなみ:
わたくし、ここ数年、ときたま自作弁当生活をしているですけど、けっこう楽しいですよ。料理が下手なのですが下手なりにiPhoneレシピアプリをみながらいろいろ試してみたり。それに、夜はどうしても飲み会があったり、飲みたくもなっちゃうから、健康面から考えても昼で調整するのはいいなって。
宇多丸:
ま、そういうマメさがないからこそ、そもそもこういう相談文を送ってきてるのかもしれないけど……。
でも、今どきはコンビニでも、ずいぶんヘルシーなチョイスができるようにはなってるはずだと思いますけどね。
こばなみ:
そこでカップ麺とかお菓子とか買っちゃったらね……。あと危ないのは菓子パン。裏面みると腰抜けますよ。カロリーめちゃくちゃ高い!
宇多丸:
僕も夜コンビ二寄って、昔ならインスタント焼きそばとかポテチとか買っちゃってたところ、納豆買ってキムチと混ぜて食べたりとか、もずく酢を一気飲みするとか、今やすっかり自制がきく大人になりましたよ……。あと、ゆで卵一個だけ食べたりね。
こばなみ:
ゆで卵!? 私も大好きなんですよ!! 板東英二よろしく1日1卵。
しかし、んなことはあまりないと思いますが、万が一、職場の近くにコンビニがない場合は?
宇多丸:
なんのために「ランチパック」ってもんがあると思ってる!?
出がけに家の近くとか駅の周りとかで買っておいて、ずっとカバンに入れといても、カタチが崩れない!
そんでもって、しょっぱいの甘いの、いろんな味があるから飽きない!
こばなみ:
なるほど。にしても、今回の相談は不思議……。
宇多丸:
まぁ、たまにはいいんじゃないの。
人生相談というより、外食よもやま話でした。
でも、もし本気で太ってるのをなんとかしたいなら、さっき言ったように「惰性で食う」のをやめるって考え方、本当におすすめですよ。
こばなみ:
忘年会シーズンですし、来年から!
宇多丸:
ダメダメ、そうやって自分を甘やかすクセがあるから太るんだよ!
明日から!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2014年12月6日に公開したものを再編集し、掲載しています。