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3人の子どもを育てながら介護職のパートをしている私に、低賃金でこき使われて、別の仕事をしないのか、と言う夫。ムカついたけど、特にやりたいことや特技もなく、負のループに……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室377】


✳️今週のお悩み✳️
私は妊娠と結婚を機に新卒で入った職場(事務職)を辞め、実家から遠く離れた地に来ました。数年後、まったく未経験の介護の仕事を始め、その事業所で3年弱ほど働いていたのですが、今年そこが閉業となったため、今は規模の大きい別の職場に転職しています(同じ介護職です)。
未就学2人、小学生1人の子どもがいて、フルタイムでは時間的にも体力的にキツイと思い、今はパートです。先日夫に、いつまでこの仕事を続けるつもりだ、低賃金でこき使われて、別の仕事をしないのか、というようなことを言われました。激しくムカついたと同時に自分を否定された気がして言い返そうと思ったのに、言葉が出てきませんでした。でも一方で、いつまでこの職場にいるのだろう、と考えている自分もいます。パートなので時間的には楽なのですが、賃金もたいして上がらず、それをあと何年も続けるのか。フルタイムに切替できるのですが、フルの人に話を聞くと、残業代は出ない、朝の出勤は早く退勤も遅くなるしで、パートに比べればお給料は上がりますが、割に合わないと考えてしまいます。下の子が小学生になったら、フルでもいいかなとぼんやり考えてますが、ここでフルになるかと言われると迷います。前の職場もパートでしたが、時給も、人間関係も良かったので、余計にここでフルはなぁと思っています。でも決して今の職場の人間関係は悪いわけではないです。ただ、勝手知ったる前の職場の方が職員間の距離も近く、のびのびできて良かったなぁと、ふとしたときに思ってしまうのです。夫の介護職を下に見る発言にムカついたし、こんな人だったんだって見損なった気持ちもあります。でも、じゃあ別の仕事と言われると、特にやりたいことがあるわけでもなく、人に自慢できる特技があるわけでもなく。確かに介護は低賃金ですが、嫌いではないです。同様に夫も、ムカつく面もありますが、良い面もあって嫌いになりきれないのです。でも、自分で納得して、新卒で入った会社も辞め、親元から遠く離れて好きだから結婚したはずなのに、こう言われるとやっぱり辞めなければ良かった……と負のループに入ることもあり、いまさらどうしようもないことで悩む自分にもうんざりします。加えて、コロナで生活リズムが変わり子どもと一緒にいる時間も増えたことで子どもにもイライラすることが増えています。とりとめなく書いてしまいすみません。 思考のクセ(?)を変える方法を教えてほしいです。あと、これ!といった特技も人に自慢できることもなく、むしろ多方面で不器用(音痴、方向音痴、運動音痴、理系に弱い……)なので、自己肯定感を上げる方法があればご教授ください。
(介護かぁさん・32歳・沖縄県)


宇多丸:
これはまずもう、ダンナの無理解、もろもろの非協力的姿勢という、完全にそっちの問題ですよね。

介護かぁさんがもともとの仕事を辞めたのも、要はダンナ側の都合に完全に合わせたってことでしょう。
話の雰囲気的に育児はもっぱら介護かぁさんの役目ということになってしまっているようだし、仕事だって選択肢が豊かにあるとは残念ながらまったく言い難いなかで、なんとかできることをやっている状態なのに、なんですかそのダンナの、他人事みたいな上から目線の物言いは?
 そんなこと言うならテメェがもっと稼げよ!って話じゃん。じゃあまずお前が仕事変えてみろっての。

とりあえず、8割型の相談はさしあたりこういう答えになっちゃうんだけど、一度夫婦でもっとしっかり話し合ってみたほうがいいのは間違いないですよね。
あなたの発言で私は大変傷ついたしムカついた、なぜなら、私が結婚生活のために一方的に払ってきた犠牲について、あなたがまったく無頓着だからだ……というようなことを、黙って溜めこんだりせず、ダンナにきっちりわからせることからしか、介護かぁさんの気持ちは前に進まないと思いますよ。

そしたらダンナも、あのときは自分も疲れていてつい無神経なことを言ってしまい申し訳なかったとかなんとか、もうちょっと人間らしいリアクションを返してくれるかもしれないですし。

まぁもちろん、そういうあくまで家族側の問題と、もろもろの条件がよりフィットする職場が具体的に見つかるかどうかは、また別の話でもありますけど。
後者は、社会全体の構造に関わることでもあるからね。

こばなみ:
条件がよくても、メンツや雰囲気もよくて、という職場もなかなかないですしね。ある程度、慣れてくるってのはあると思いますけども。

宇多丸:
しかしなんにせよ、子育ての負担がほぼ介護かぁさんにばかりいっちゃってる状況下で、なんとか就ける職がこれだった、というのはたしかなんだろうからさ。
要は、なぜ私だけが人生のいろいろを断念した状態になっているのか、ってことじゃん。
そこに関してはやっぱり、はっきり文句言っていいと思いますよ。 

そのうえで、これもパートナー同士として当然のことだと思うけど、仕事や子育て、家事などをどのくらいの割合で分担しあうのかということに関して、やはり改めてコンセンサスをしっかり取っておいたほうがいいんじゃないですかね。

たとえば、あなたがここをもうちょっと協力してくれれば、職を選ぶにしてもこんな選択肢が増えるんだけど、というような話はできるはずですよね。

こばなみ:
そういう話をしないで、ひとりで全部抱え込んでしまっているんでしょうね。

宇多丸:
またダンナも、「お母さん」に当然のように一方的な犠牲を強いるそういう古き悪しき構造に、なんの疑問も抱かずここまで来ちゃってる感じがする。

仕事の件だって、選びたい放題だとでも思ってるのかよ?って。

こばなみ:
あとは、自己肯定感を上げるにはってことですけども。

やっぱり、人に認められたりとかですかね?

宇多丸:
まぁだからそれも、本来はダンナの役目ですよ。
一緒にいると一番好きな自分でいられる相手こそが、パートナー……であってほしいものですよね、やはり。
なのに現状、ダンナの言動はその正反対に向かっちゃってるわけだから。

このダンナに限らず、あなたは頑張ってるし人として素晴らしい、大きく言えば存在していること自体に価値があるのだということを、日々の言葉やふるまいで実感させてあげてくださいね、みなさんの大切な人にも。
内心でいくら思っていても、態度で示さなきゃ意味ないですよ!

とにかくダンナこそ、そういう、すべき仕事をしてねぇぞ、と。
そこ込みで、訴えてみていいんじゃないですかね。

音痴、方向音痴、運動音痴という件に関しては……、正直、どうでもええわ!(笑) 
その程度の苦手科目は誰にだってあるし、もちろんそこに誇りを持ってる人はどんどん胸張りゃいいけど、ダメだからって卑下する必要もまったくない類の能力ですよ!
 歌手やアスリートを目指してるわけでもない、GPS機能つきの機械をなんかしら所有している、以上、問題なし!

しかし要はやっぱり、普段から自己肯定感を当たり前のように高めに持っていられれば、そんなことをコンプレックスに感じる余地もなかった、ってことでもあるでしょうからね。
そしてそれは、「思考のクセ」とか言って自分のなかでだけ処理しようとするのは、原理的にやっぱり限界がある話で。
基本どうしたって、近しい他者の協力が必要になる案件ですよ。

こばなみ:
まずは旦那さんと話していただいて!

宇多丸:
この結論も最近多くて申し訳ないけど、聞く耳持ってる人だといいね……。

しかし改めて考えてみりゃ、そりゃそうでしょ、って話でもあるんですよね。
一番近くにいる、一番大事な人がきちんと話を聞いて自分を全肯定してくれるなら、ほかのことはどうあれ、個人の人生としては幸せなほう、と言えるわけじゃない? 
逆に、すぐそばにいる人が話も聞いてくれない状態って、ほかの条件がどうだろうと、それ自体で地獄じゃん。

だからやっぱ、あんまり面白みがある答えじゃなくて悪いけど、「改めてちゃんと話し合えるかどうか」から手をつける以外、ないんだと思いますよ。

もちろんその根っこには、結婚や出産に際して、女性ばかりが人生のいろいろを諦めさせられるというのがいまだにまるで常識のごとくまかりとおってしまっている、この社会の不公正さというのが厳然としてあるわけで……。
ダンナに不満をきっちり伝えるというのは、そことの戦いの第一歩、でもあるのかもしれないですよね。

こばなみ:
このお悩み、けっこう多くの人が感じていることかもなと思いました。社会が変わるのは時間はかかるでしょうけど、まずは1つ1つ、家族やパートナーとの話し合いで自分の半径5メートルから変えていくこと、私もまわりで悩んでいる人がいたら伝えていこうと思いました。次の世代にもつながるように、希望を見出していきたいですね!



【今週のお絵描き】

画・宇多丸

<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

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女子部JAPAN こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。



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