結婚も出産もしたいけど、職探しは難航中で経済的に不安。彼には子どもが小さいうちは働かないでと言われ……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室292】
✳️今週のお悩み✳️
現在32歳、その名の通り無職!です。昨年、会社都合で退職し、その後半年程のーんびりし、今年の春頃ようやく就職! しかし、私が就職する際に1番大事にしていた条件が目ん玉が飛び出るくらいちがったうえに、職場が異様な空気感で、空気が停滞して淀んでいるのが初めて目視できた会社でした(笑)。社内で唯一話ができた子もいじめられて辞めていき、私も頑張っても先が見えず試用期間で辞めました。
ありがたいことに彼がいて、プロポーズを受けました。でも彼も転職したてで年収が低い現状で、私は無職です。なんと猫も一緒の生活になるので、お金がかかります。だからまず、私が正社員で就職してしっかり働いて育休・産休をとれる地盤を築くか、結婚してからパートができる範囲で働いていくか、どうするか悩み、さらに彼的には子どもができたら小さいうちは働かないでほしいという思いがあると告げられ、ますます悩んでいます。年齢的にもあまり時間がなくて、焦る焦る!
今までやってきた事務職は本当に合わなくて、ライター講座を受けたり、インスタでデビューできないか、ブログが本にならないかなんて非現実的な道を模索してもがきまくったのですが(笑)、とにかく仕事探しも1からで、なにができるのか探して考えても、やりたい仕事もなく難航の極み。結婚、子ども、それを優先させてもお金に苦労していく。産休手当がもらえるのがわかっていて、みすみす逃したくない!
とにかくなぜか私はお金のことと子どものことで頭がいっぱいです。どう順序だてていけばスマートにいくのだろうか。産休・育休も一年単位で必要だし、結婚も職探しも時間がかかる。あっっっという間に35歳になってそう。こじらせを超えて、もうわずらっているような感覚。悩みすぎ病。打開の術は!? 私は結婚したい、子どももほしい! 仕事もしたい!……ほどほどに(笑)。
まとまりのない文ですが、お読みいただいて、なにか喝を入れてくださーい。目が覚めるような喝を。よろしくお願いいたします。
(むーしょく・32歳・東京都)
宇多丸:
なんつーか、いろいろと考えが混乱されているようで……、全方位的に思考が先走りすぎて、自分が本当には何をしたいのか、人生において何を優先させたいのかという、もろもろのプライオリティが逆によくわかんなくなっちゃってる感じですよね。
すべてがうすぼんやりした現状のなかで、唯一というか比較的、まだはっきりしているように見えるのが結婚~出産への意志だから、だったらとりあえず今はそっちに突き進んでみれば?とも思うけど。
こばなみ:
職に関することは、ちょっとぐるぐるしてますもんね。
ライター講座を受けたり、インスタでデビューできないか模索したって……。
最近ライターになりたいって人が多い気がするんですけど、そんな甘いもんじゃないのでは?とは思いますが……。
宇多丸:
たしかにネット上には文章が溢れているから、物を書く仕事が花形っぽく見えたりもするんじゃないですか?
こばなみ:
でも、講座に行ったからってライターになれるわけじゃないですよね。
宇多丸:
むーしょくさんに限らずだけど、こういう話って、なんだか順番がおかしくない?と感じる部分も多々あって。
書きたいこと、言いたいことがあってしょうがないとか、文章を書くのが三度の飯より好きだとか、なんであれ止むに止まれぬモチベーションというのが最初にあって、それを当然のごとく実行に移すうちに、自分ではどうしても越えられない壁にぶち当たったとか、もうひと声レベルアップしたいとか、そういう一段上の欲求や必要性が出てきた人が行ってナンボ、じゃないのかなぁ、講座とかスクールって……。
こばなみ:
現状は言いたいことがあるとかじゃなくて、ひとつの職業訓練みたいな感覚なんですかね。
宇多丸:
まぁ初心者向けのとこもあるんだろうけど……、ただなんにせよ、ただ漠然と「ライターになりたい」ってどゆこと?って感じはやっぱしちゃうんだよな。
だいたいライターってさ、たいていは、なんかしらの専門があったりするもんじゃないの?
それともあれかな、僕が学生時代に雑誌『Fine』の編集部でバイトしてたときみたいな、「どこそこに海の家がオープンするよ!」くらいの、匿名的な記事を書く仕事ってことかな?
こばなみ:
そんなことやってたんですか!?
宇多丸:
新譜紹介のコーナーがメインだったけど、普通にそういう埋め草記事も書いたりしてましたよ。
あとさ、この彼の言い草も、引っかからない? 「子どもができたら小さいうちは働かないでほしいという思いがあると告げられ」って……、だったらお前がもっと稼げよ!って話でしょ。 むーしょくさんも、普通にそうやって言い返せばいいのに。
こばなみ:
いまどき働かないでほしいって、そんなの金持ちの言うことですよ!
宇多丸:
ただまぁ、対するむーしょくさんも、こと仕事の話に関しては、負けず劣らず何言ってんだ感あるからなぁ……(笑)。
インスタでデビューとか、ブログで本にならないかとか、ここまで甘い考え、久々に聞いたよ!
そもそも、のちに本になるようなブログを書いてるような人は、他人から評価されようがされまいが、ほっといても何かを掘り下げて、すでになんかしらのかたちにしてたりするはずですよ。特にこの時代は。
こばなみ:
とにかく、まだなんもしてないんですよね。
いま、プロポーズを受けたってところですから。
宇多丸:
喝を入れてくれということなんで、あえてちょっとキツめの言い方をしてますけども。
編集のベテランであるこばなみ的に、「とりあえずライターになる」ためには、どうしたらいいと思う?
こばなみ:
編プロとか制作会社に入って、現場で鍛えていく!
どこも人が足りてないですから、入りやすいんじゃないですか?
あとは副業ライターとかもいるので、まずはそっちでやってみて実績をためるのはどうです?
宇多丸:
そうだよね。昼間の仕事もやりつつ、というのは全然ある話だよね。それこそ本を出しているような人でも。
ちなみに、念のため言っとくけどライターは、儲からない職種の代表格ですから!
だから、子どもを産むなら手堅い収入が欲しい、という件とは、ちょっと矛盾しちゃってるんですよね、今からライターになって自己実現!的な夢の話は。
ただ、相談文を読んでると、むーしょくさんにとっては、結婚~出産というのもはっきり自己実現のひとつ、っぽいじゃない? だとしたらやっぱり、現状あまりにも曖昧模糊としてて何がしたいんだかもよくわからないと言わざるを得ないライター願望とかよりも、少なくとも目標としては明瞭なそっちを、とりあえずは実現させる方向に進んでみる、というほうが、まだいいんじゃないかなぁ、と。 ただまぁその、頼りないわりになんだか偉そうでもある今の彼が相手で、ホントにいいのか?という懸念もあるけど……。
とにかく、なんにせよね、むーしょくさんにいま一番必要なのは、自分の人生にとって何が真に大切なことなのか、自分が本当にはどうしたいのか、ということをとことん考え抜いて、プライオリティを明確にすることだと思いますよ。
一番やばいのは、このままうじうじ、すべてにおいてどっちつかずのまま、歳だけとっていく、ってことじゃない?
こばなみ:
いまそうなりそうで、怖いって言ってるんですよね。
宇多丸:
他の誰のものでもない、むーしょくさんの人生なんだから、そこだけは自分でしっかり選択しないと。
むーしょくさんに限らず、自分はこれが好きなんだなとか、こうしてると心地いいんだなとか、そういう、大げさに言えば自分にとっての生きる価値、その優先順位みたいなことを、あんまりちゃんと考えないまま来ちゃってる人って、意外と多い気がします。 そこを自分自身でクリアにしておかないと、日々の生活の中でも不本意な場面がズルズル増えそうだし、それが長年積み重なれば当然、不本意な人生を歩むことにもそりゃなりかねないだろ、と思うんですけどね、個人的には。
こばなみ:
もちろん、仕事と家庭を両立するうえで、女性ゆえに強いられる大変なことも多々あるとは思うんですね。
そんななかで、私のまわりにも働くママはたくさんいますけど、でもみんなやっぱり仕事が好き! これで生きてく!みたいな意思や気合いがあって、子育ても両立してる。
私はこの世界しか知らないので、偏ってる見方なところもあるかもしれないけれど、ライター、編集、メディア運営、広告制作業とか、まぁいわゆるクリエイティブ業って、男女関係なく、けっこうマッチョに働いています。
で、働くママになると、まためちゃ強くなるっていうか。もちろんご本人たちはめちゃくちゃ大変だと思うんですけど、そばでみてると、以前より効率がよくなってたり、これまで以上にサバサバ動いたりしていて。きっとそういう環境になったらなったで順応するんだと思う。せざるを得ない、のかもしれないけど。 家事だって、たとえば日用品の買い物はアマゾン定期便にしたり、食材も宅配サービスを上手く使ったりして、時短したりとか。
子どもが熱を出して来れないとかもあったりするけど、そういう仕事に対しての気合いとかわかってるから、まわりも応援するし、やっぱり実力のある人だったらなおさら、その力を活かしてほしいから、会社も絶対バックアップすると思うんです。
だからやっぱり、両立の大変さを心配して子育てしながら働ける環境を探すっていうよりは、仕事は仕事でどうしたいかを考えたほうが、いまのぐるぐる&ぼんやりからは抜け出せるかもですね。 クリエイティブ業でもそうじゃなくても、くっつけて考えちゃうと、両立できるものもごっちゃになって、うまくいかなくなっちゃうかもしれないから。
それで、考えた結果、やっぱり心配が大きいのであれば、たしかにクリエイティブ業よりも、別のジャンルで、比較的時間内に終わるような環境で、さらには子育て支援をうたっているような会社を探すほうが、気持ちが落ち着くかもしれませんね。
宇多丸:
もちろん、それでもどうしてもライターがやりたいんだ!とかいう明確なモチベーションがあるなら、堂々とそっちに突き進めばいいし。
逆に言えば、そうじゃないならその手の仕事はやはり、やめておいたほうがいいかもね。
どっちにしろね、そのプロポーズしてきた彼の手前勝手な「思い」とやらのために、むーしょくさん側が一方的に人生の何かをあきらめなきゃならない、なんて法はないんだから。 もし仮にホントにその人と結婚する気なら、こっちは出産~子育てにそういう経済的な不安がある、ということをちゃんと伝えたうえで、そこであなたは何をしてくれるつもりなのか、というのを、きっちり詰めておいたほうがいいと思いますよ。 万が一、そこであんまり誠意ある対応を返してこないような人だったとしたら、そもそもそんな人と結婚なんかしていいのか?ってとこから、考え直してみたほうがいいんじゃないですかね。
ま、いろいろ言ってきましたけど、とはいえ、あまり先の心配ばかりしすぎても、何もできなくなっちゃうだけですからね。 ときには「何も考えずただ一歩を踏み出す」というのも、人生を劇的に好転させる、ひとつのきっかけになったりしますから。 たとえば子どもも猫も、なんとかなるっちゃなんとかなる!ものでもありますからね。
つーことで。あとは自分の責任で決めて!(笑) 当たり前だけど。 そしてどうか、悔いのない人生を歩まれることをお祈りいたします。
こばなみ:
以上、目が覚めるような喝でした!!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2019年8月31日に公開したものを再編集し、掲載しています。