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「セカンドレイプ」と聞くと思い出す、かつての父の発言。楽になる考え方があれば教えてください。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室426】


✳️今週のお悩み✳️
こんな内容を送っていいのかと迷ったのですが、ほかに話せそうな相手が思いつかず、かつ長年ひとりで抱えているのもいい加減嫌になってきたので投稿させてください。
ご相談したいのは、小学生時代の思い出にどう落とし所をつけたらいいのか、ということです。たぶん私が小学校5年生くらいだったと思うのですが、家族でテレビを見ていたら、ニュースの中で電車の中の痴漢について取り上げられているコーナーがあり、それを見たときに母が「私も痴漢にあったことがある」と話してくれたことがありました。母が痴漢にあった年頃というのが、ちょうど話を聞いていた自分と同じくらいの年齢だったこともあり、怖かったのと母がかわいそうで大変なショックを受けました。そんな私を横目に、父は「へ~、そのときどうしたの? 『きゃー、いや~ん』とか言ったわけ? イシシ(笑)」みたいな反応で、完全に茶化すような態度でした。
父は根っからの悪人というわけではないのですが、デリカシーとか共感力とかに欠けている人で、私たち家族はそのことでたびたび傷ついたり、怒りを覚えてきたのですが、この時の反応もずっと忘れることができないことのひとつです。(もっと辛い体験をされた方がいらっしゃることは承知した上で言わせていただくと、)「セカンドレイプ」という言葉を聞くとまっさきに思い出すのがこのときの父のことです。
過去は変えられないので、私自身がこの思い出をどう昇華していくかの問題なんだ、と思いつつ40代も半ばになってしまいました。父との思い出は、こういったやりきれないことが本当にたくさんあり、大人になってからはつかず離れずの距離感をとって自分を守るようになりました。ただ子どものときに感じたこのショックがまだ癒えません。
内容が内容だけに母にも友人にも話せず、こうして投稿させていただきました。こんな風に考えたら楽になるかも、というアドバイスがあればぜひいただきたいです。
(かぼちゃ大臣・40代・会社員・東京都)


親の考え方や物言い、わけてもお父さんのそれに決定的な違和や嫌悪を感じてしまい……的なケース、この連載でも過去にいくつかあった気がしますが。
かぼちゃ大臣さんの場合、その思いを家族の間で暮らしながらずっと一人で抱えこんできたわけで、そこは余計にきつかったことでしょう、きっと。

無論、言うまでもないことですが、お父さんのその発言は、性暴力や性差別に対する根本的な無理解や無知から出たのであろう大変に無神経なもので、かぼちゃ大臣さんが深いショックを受けたのも、当然です。

で、ですが……、これはまずやっぱり、お母さんと一度そのことについてしっかり話す、というのではダメなのかな?

性被害に遭った当事者として彼女がそういうお父さんのことをこれまで本当にはどう思ってきたのか、そもそもお父さんってどういう人なのか、お母さんとの間で改めて再定義してみる、というか。

結局、お父さんだってその時代に生きるひとりのおじさんでしかないわけだから、そうした問題ある言動も、彼が特に悪い人間というよりは、当時の中年男性としては、大変残念ながらですがそこまで少数派というわけでもなかった、みたいな現実もあるでしょうし……、たとえばそういう俯瞰的な視点で、いったん事態を完全に相対化してしまう、とか?


自分の親を相対化することって、なかなか難しいし、発言は許し難いことではあるけど、でも少しは楽になれるかもしれませんね。


一方で、友だちに相談するというのは、被害当事者としてのお母さんのプライバシーという問題もあるから、順番としてはちょっと慎重になるべきなのかな、って気がしますけど。

ちなみに、お父さん自身は実際のところ、現在はどんな考え方をしてる人なんでしょうね……。

たとえば、これは僕らだってぜんぜんある話だと思うけど、本人的にはその発言をしたこともすっかり忘れていて、「えっ、そんなひどいこと言ったっけ……、だとしたらごめん!」的に、自分でも過去の言動を恥ずかしく思う程度には変化、成長を一応しているという可能性も、まぁゼロではないわけだけど。

でも、それ以降もお父さんには、いろいろ嫌な思いをさせられてきたっぽいもんね。やっぱそっちは望み薄か……。

その点、肝心のお母さんは、こういうセンシティブな話題でも、かぼちゃ大臣さんとしっかり通じ合えるような間柄なのかな。


「私たち家族はその事でたびたび傷ついたり、怒りを覚えてきたのですが」とあるので、お父さん以外の家族で団結していて、お母さんとは話せそうな雰囲気なのかなって感じもしましたけれどもね。あくまで推測ですが。


とはいえそのお母さんも、かぼちゃ大臣さんが小学生の頃のその出来事にそこまで深く傷つき続けてきた、ということは、この間にその件について特に触れたことがないのであれば当然、そんなによくわかってはいないかもしれないので。

なのでやはり、まずその苦悩をお母さんに知ってもらう、というのは、かぼちゃ大臣さんの気を少しでも楽にしてゆくための、少なくとも第一歩にはなるのではないのかな、という気がしますが。

まぁ、そのうえでお母さんがどういうリアクションをしてくるか、どういう考えでいるのか、というのはこの段階ではまだよくわからないことなので、そこに不安が残ると言えば残るわけだけども……。


ライムスター事務所社長・岸:

あとはこの方、相談文を書くことで、少し昇華されているところもあるんじゃないですか? 書くとか喋るってそういう効果もありますよね。

だから、カウンセリングとかを受けたら、ひょっとしたら違う自分の根幹が何か見つかるかもしれないですよね。


なるほど、たしかにそうかもしれないね。

昨年の星野概念さんとの対談のときにも話題になりましたけどカウンセリングとかプロの手を借りる利点として、直接的な人間関係はない相手だからこそ、言葉は悪いけど後腐れなくなんでも話しやすい、みたいな側面がありますよね。

かぼちゃ大臣さんも、お母さんっていうある意味で本丸、そのぶんリスクもなくはないところにいきなり行く前に、まずはそういうライトなかたちで、自分なりの落としどころみたいなものを確保しておく、というほうがより正攻法で、おすすめかもしれないですね。
岸くんナイス提案!

なんにせよ、親とて本質的に「他者」であることに変わりはないのですから、最終的にはそこに頼らずともなんとかやっていける領域に、自分を持ってゆけるといいですよね、我々みんな……。


私の悩みはもっとライトなので申し訳ないのですが、誰かに話すことや書き出すことで楽になっているかも、と改めて思いました。かぼちゃ大臣さんが、ここで話してくれたことも、少しは楽になっているといいですが……。またどうにもならなくなったら、ご連絡くださいませ!



【今週のお絵描き】

画・宇多丸



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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

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女子部JAPAN こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。



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