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人と会った後、その日の会話を振り返ると不安に……。楽しかった時間も打ち消され、後悔ばかりしています。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室392】


✳️今週のお悩み✳️
人と会うことは好きなのですが、話をした後、一人になってから「あの言い方は相手を傷つけたのではないか?」「面白おかしくしようと大袈裟な話し方をして、誤解を生んだのではないか?」「私の切り返し方で相手の表情が曇った気がする」などと不安になって、楽しかった時間も打ち消されて後悔の波にのまれてしまうのが悩みです。
過ぎた時間のことを悩んでも仕方がないことはわかっているのですが、どうしてもその日の会話を振り返るクセがやめられません。
時には思い出し笑いをしたりすることもあるので、振り返ること自体は悪いことではないのかなとも思うのですが、大抵は後悔の嵐です。
どうしても気になってしまって翌日になってから相手に「あの言い方は悪かったごめんね」などと長文メールを送って逆に気を遣わせたりしたこともありました。
なので、友人と会う約束などをした際は「余計なことは言わないぞ! ムダに面白おかしくしようとしたりしないぞ!」と挑むのですが、毎回変な勢いがついて自分を止めることができず、後悔してばかりです。
サラリと会話を楽しんで「今日は楽しかった!」で気持ちよく一日を終えられるようになりたいです。どうしたらいいでしょうか。
(ミンミンゼミナール・40歳・東京都)


宇多丸:
僕はこの気持ち、とてもよくわかりますよ。

友達と会って飲んで、その場ではもちろん素直にひたすら楽しいだけなんだけど、あとから振り返ると途端に、やれ調子に乗りすぎたかもだの、言わんでもいいこと言っちゃったかもだの、それこそ本来なら気にしないでもいいようなことまでウジウジ気にしだすようなモードに陥りがち……って、完全にこれ、僕も同じだもん。

要するに、お酒を飲んだりなんだりして、いつもよりリラックスしてるからこそ、心を許してるからこそ、普段はできないような話までできる、という、それ自体は友人と会食したりすることの意義そのものみたいな効果が、冷静になってみると逆に、「普段なら言わないようなことまで言ってしまった」という不安や反省を誘う、というようなことですかね。

つまるところ、他人に自己開示することにどこか引け目や恐怖をやっぱり感じている、ということなんだろうけど。

そんな人間が、毎日けっこうな時間、生の公共放送上でフリートークしてるんだから、おそろしい話ですよ(笑)。

こばなみ:
それが結構、後を引く感じなのですか?

宇多丸:
ミンミンゼミナールさんと僕の違いはそこですね。

僕は、なにごとに対してもウジウジはしがちだけど、それをあまり引っ張りもしない。

なんでもすぐ忘れちゃうんです(笑)。それは半ば意識的に。

ミンミンゼミナールさんも自覚しているように、その勝手なウジウジを他人に伝播させだしたりしたら、それはもうはっきり、甘えの部類だからさ。

結局、ごめんねごめんねって過剰に言っちゃうときって、相手に「そんなことないよ」って言ってほしいだけなわけじゃん?

こばなみ:
要は、安心したいんですよね。

宇多丸:
たいていの場合はみなさんやさしいから、そんなこちらの心理も重々わかったうえで、さらっと否定してくれたりするわけですけど。

そういうご厚意にやたらと甘えてると、気づけばすっかり疎まれてた、ということになりかねない。

なので、本当に真剣に謝らなければならないようなときでない限り、謝罪の安売り&押しつけはやはり、マジでやめたほうがいいと思いますよ。これは思いっきり自戒も込めてなんだけど。

だってさ、僕らが人並み以上に気にしぃなのは間違いないけど、同時に自分自身、それが本当にそこまで深刻なミスだとも、実は思ってなかったりするわけじゃん。

きっとまた普通にお呼びはかかるだろうこともわかってるし、そしたらそしたでほいほい出かけてって、同じようにはしゃいで後から反省、というサイクルを繰り返したりするわけだから。

つまり、ウジウジはしても本気で後悔してるわけでもない、という。

こばなみ:
なんか結局、自分のことを気にしてるってことですよね?

相手を傷つけたかもって心配している面もあるけども、それよりも自分の見られ方を気にしてるんじゃないかなと思っちゃいました。

宇多丸:
そうかもね。

実はあくまで「自分がどう見られてるかに対する気にしぃ」が主だというのは、逆に向こうに余計な気を遣わせてしまっていたり、楽しかったはずの時間をなにか気まずいもののように一方的に上書きしちゃってる時点で、明らかかもしれない。

……ってなんか、ものすごく我々に厳しい話になってきてるなー!(笑)

でもとにかく、肝心なのは、さっきも言っなようにホントにきちんと謝罪しなきゃいけないような件でもないのは自分でも実はわかってるわけだから、それはしょせん、せいぜいてめぇの中で「今度からは気をつけよっと」とか思っとけばいいだけの話なんだというのを、我々気にしぃ自身が自覚しておく、ということなんだろうと思いますよ。

さっき言った僕の「あまり引っ張らないようにする」もまさにそういうことだし、なんとか毎日生放送ができているのも、そうしたマインドセットを、一種の職業的責任として心がけているからでもある。

現時点でそれ以上考え続けてもなにもプラスにならないことが明白と思われるような件に関しては、いったん思考をストップするクセをつける、みたいな感じですかね。

こばなみ:
すごく納得です! 考えても事態が良くならないことは、いったん意識の外に飛ばしますもん。

宇多丸:
もちろん、だからってなんでもかんでも安易に思考停止してくと、それはそれで間違いなく悪影響が出てくると思いますが(笑)。

さっきから言ってるように、僕らみたいなタイプのウジウジは、ウジウジしてる原因よりも、そのバッドバイブス自体のマイナスのほうがはるかに大きいのは明らかなので、オトナであればやっばり、ある程度意志的に抑制すべきものなのはたしかかな、と思います。

あとは、当然ながらそもそも、振り返って後悔するほど調子に乗らないよう気をつける、というのが先なんだろうけども……、それだって、良し悪しではあるでしょうからね。

要はそれって、うかつに心を開放したり自己開示しないようにする、ずっとガード高めにしとく、ってことでもあるわけじゃないですか。

そんなの、果たしてまわりは求めてることなのかな、という問題もある……、ひょっとしたら、人から見た自分のいいところ、たとえば素直だとか楽しいだとかを、逆に殺してしまうのかもしれないわけだから。

「なんか最近、他人行儀になったよね」みたいな。

こばなみ:
私、結構ミンミンゼミナールさんや宇多丸さんと逆なタイプかも。自分ではそこまでガサツと思ってないけれど、でも気にしぃタイプに比べれば無神経なほうなので、気にしなすぎると言われたり、気づかないことについて何か言われることも多いですよ。

宇多丸:
まぁ、よく言えば繊細、という見方もできるんでしょうけどね、気にしぃ派は。

たださ、それが自分に向いてるうちはまだいいけど、他人に対して発揮されだすと、いよいよ厄介じゃない?

「そう言えばあの発言って……」とかいちいちやりだすと、過剰に攻撃的になったり懐疑的になったりもしやすいでしょう、きっと。

よくわかんない詫びメールも困るけど、たとえば解散数時間後の夜中になって、いきなりけっこうな剣幕の長文メールが届く、みたいなゾッとするような事態だって、世の中にはむしろもっと、ザラにあるわけじゃん?

こばなみ:
私はあんまり来ないけど、その手の話はよく聞きます! レシートみたいに長いからレシートメールって呼んでる!!

宇多丸:
そして間違いなく一番疎まれるのはそういうタイプの人だから、それよりはマシ、とは言えるのかもしれない。

結局、しょせんは他人同士、しかも素人同士のフリートーク(笑)なわけだからさ、大なり小なりこちらの意にそぐわないことを言われたり、必ずしも気分がいい瞬間ばかりとは限らないのって、ある意味当たり前のことなんですよね。

そこで敏感に違和感を察知できちゃう、というのは間違いなくひとつの能力ではあって、それを適切に活かせさえするならば、いちがいに忌避すべきことでもないはずなんですけどね……。

ま、無神経よりはいいっていう考え方もありますけど。

こばなみ:
無神経派のが絶対悪く言われますよ、基本(苦笑)。

宇多丸:
たださ、敏感だろうと鈍感だろうと、どっちにしろ会話上の不確定要素というのは、さっきも言ったように「他人同士、素人同士のフリートーク」である以上は、どうしたって完全には排除しえないものなわけじゃないですか。

いくらこっちが気をつけてたって、そこは当然会話だから相手は相手で勝手にいろんなことを言ってくるしで、さらにそれに対してどう返すかなんて、いよいよ予測不能なものでしかないわけでしょう。

つまり、結局のところ気にしようか気にしまいが、話がキャッチボールのなかでコントロールを超えてしまう余地というのは、絶対に出てきてしまう。

たとえば、こちらは普通に家族の話を面白おかしくしているだけのつもりだったのに、実は相手にとってはそここそが密かな地雷だった!みたいなことって、普段の会話のなかでもぜんぜんありうるし、とはいえ相手のすべては知りようがない以上、事前に防ぐことも完全にはできないわけで。

こばなみ:
難しいなぁ。

宇多丸:
難しいし、難しくない。

要は、他者同士が接するからには、どうしても不測の事態は起こる、というかそっちのがデフォなので、ということですよね。

そしてそれはどう考えても、お互い様、に決まっているし。

さらに言えば、ここが実は一番肝心なところだと思うけど、そうした「不確定性」こそがまさに、「誰かと会って話すということ」の醍醐味そのもの、キモ中のキモ、なわけですよ!

それが嫌なら、他人と会う意味なんかそもそもない、ということかもしれないくらい。

つまり、いくら神経質にかまえていても結果はたいして変わらないうえに、防衛的になるあまり本来の目的さえぼやけてしまうような本末転倒なことにもなりかねないんだから、繰り返しになるけどやっぱり、少なくとも外から見えるほどウジウジしたりするのは、意味ないし有害だしでホントにやめたほうがいい、ってことに尽きるんじゃないですかね。

お互い素人なのに、フリートークのクオリティコントロールなんかそもそもできるわけないだろ!ってことですよ。

その必要もないし。

こばなみ:
ですよね~。

宇多丸:
芸人さんとかメディアのなかのプロ同士だって、そんなのうまく行ったり行かなかったりっぽいのに……。

もちろん彼らは仕事でやってるから、そこをなんとか努力で改善しようとしてたりもするんでしょうけど、そういうわけでもない我々のプライベートな会話が、そこまできちんとし続けなきゃいけない理由なんて、まったくないですから。

たとえばひとつの考え方として、お互いに気の置けない、カジュアルなモードで交わした会話は、よほどの問題が実は含まれてた、とかいうのでない限り、いったん終えたら「流す」のがマナー、みたいなことも言えるんじゃないかと思うんですよね。

さっきから言っているように、会話の過程で多少の意に沿わなさというのは常に一定量生じうるし、そこはお互い様、というのが前提なんだから、明らかに良識の一線を越えた差別・侮蔑発言とかでもない限り、後から細部を蒸し返したりするのは、ちょっとフェアじゃないし不健康な態度なんじゃないか、という。

汚いたとえになって申し訳ないけど、うんちみたいなもんですよ。

他者との対話という滋養を、おいしくいただいて消化して気持ちよく出して……、で別に問題ないのに、わざわざその排泄物にもう一度顔を近づけて、臭い!とか騒ぎたててるような感じ、というか(笑)。

こばなみ:
出したんだから、早く流して~!

宇多丸:
そうそう。

まぁ、見るからに血便だ!とか、なんなら便自体がまだうまく出ていないとか、そういう目に見える問題が含まれているなら、それはたしかに、なんらかの対処をしたほうがいいんでしょうけども。

逆に言えば、どれだけ楽しい会話であっても、振り返ってあらためて匂いを嗅いだりしたら、そりゃ必ず臭みはあるよ!ってことですよね。

でも、大事なのはまず、「楽しい会話をした」という事実のほうなのだから……、その消化物をわざわざ点検して臭みにショックを受けたりしても、実はやっぱあんま意味ないよね、ってことなんですよ。

こばなみ:
これ、わりと多くの人にある悩みでしょうね。鈍感派だって、たまには思いますから。

宇多丸:
そうだね。

そして、実際のところ相手からすれば、別に何かをやらかされたともなんとも思ってない、というようなケースが、ほとんどじゃないですかね。

その証拠に、ミンミンゼミナールさんとみんなまた会いたがって、その後も声をかけてきてるわけでしょう?

ホントに嫌な思いさせてたとしたら、そんなことするわけないじゃん。

むしろ、ミンミンゼミナールさんのそういう「つい面白おかしく語ってしまう」ようなサービス精神を、みなさんはっきり好ましく思っているからこそ、繰り返しお呼びがかかるんじゃないの?

と同時に、気にしぃすなわち、細やかな神経を持っている人でもあって……、つまり、「面白くて繊細な人」!

みんな、そんなミンミンゼミナールさんにこそ、会いたいと思ってくれてるんじゃないかなぁ。

あとさ、だいたい友達って、「正しい」から好きになるとかって順番でなるもんじゃまったくなくて、逆にちょっとダメだったり、いびつだったり、何なら思いっきり性格悪いとか、そういう「個性」にこそ愛着なりなんなりを感じる対象、だったりしない?

だからミンミンゼミナールさんも、本当はきっと、「いまのミンミンゼミナールさんのまま」で、じゅうぶん愛されてるんだと思いますよ。

なんだかんだで繰り返し御座敷かかるというのは、そういうことよ。

こばなみ:
ということで、そろそろまとめますと……、うんち流してね!

宇多丸:
「人と会った後に感じる澱のようなものは、単なるうんち」
なので、血便などが出てないかのみ確認して、すぐ流す!

出しちゃったモノを後からグジグジといじり続けたりするのは、相手に対して失礼にもなりかねないので、要注意。

まして長文メールなどといった、さながらいったん出したうんちを「嗅いでみて」とばかりに送りつけるような行為は、当然ながら厳に慎むべき!でありましょう……、汚いねどうも(笑)。

しかしホント、いろいろ言ってきたけど、実際には僕自身、必ずしもすっきり克服しきれてるわけではない話でもありますからね。

気持ちはわかるし、だからこそお互いできる限りがんばってゆきましょう、という感じですね……。

こばなみ:
にしても、うんちのたとえはハマりましたね!

ミンミンゼミナールさん、もしまたそういう思いになったら、このイラストをお守りにぜひ!!


【今週のお絵描き】

画・宇多丸





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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

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女子部JAPAN こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。


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