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彼氏のことが大好きなのに、他の男性と体だけの関係を求めてしまいます……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室122】


✳️今週のお悩み✳️
彼氏以外の男性にときめきを求めてしまう自分の矛盾した欲求に悩んでいます。誰にも相談できずネットでしか打ち明けられない悩みなので、どうしても投稿させていただくことをお許しください。
私は24才です。5年付き合っていて結婚を考えている彼氏がいます。彼氏のことは大好きです。が、付き合って3年が過ぎたあたりからは家族愛のような関係になりました。この辺りの頃から、他の男性と接することで得られるときめきやドキドキ感(付き合った当初のような)を味わいたい、他の男性とセックスをしてみたい、という好奇心のような欲求が出てくるようになりました。そして最近私に好意を持ってくれている男性とキスまでしてしまいました。私はその男性のことを本気で好きなわけではありません。ただ単に、彼氏以外の男性から得られるときめきを感じたいだけなので、正直相手にこだわりはありません(本当に自分は最低だと思います)。他にも手をつないだりした男性がいたこともあり、そのとき感じたドキドキ感がどうしても忘れられないのです。この麻薬のような恋愛初期のようなときめきを感じたいという欲求を、どうしても持ってしまいます。この5年間彼氏と別れたいと思ったことは一度もありません。彼氏のことは本気で好きです。私がこんな欲求を抱く原因の一つには、もちろん私が自分勝手すぎることが1番大きいのですが、彼氏のセックスがあまり上手くないこと(このことについては何度も話し合い一緒に試行錯誤しましたがあまりうまくいきません)が一因にあるかもしれないし、そうではないかもしれません。相手が誰であれ、何年も一緒にいたらドキドキがなくなるのは自然なことです。アイドルや乙女ゲーム、少女マンガなどでこの欲求を解消しようとしたこともありましたが、だめでした。彼氏がいるのにとんでもない悩みだ、と思われると思います。とんでもないアバズレで、あまりにもわがまますぎる考えだと自分でも本当に思います。彼氏と付き合ってしばらくは、自分がこんな考えになるとは思ってもいませんでした。彼氏は私がこんなことを考えていることは思ってもいないと思います。私がこんな自分勝手なことを考えていると知ったら、1番傷つくのは彼だし、彼を失うこ とになるだろうことはわかっています。彼に同じことをされたらどう思う? 最悪の裏切り行為、我慢のできない猿、一度痛い目みないとわからないんじゃない? 今ある幸せに目を向けて、もっと自分を大事にしたほうがいい、他の男性と関係を持ったとして、その先に何があるの? 虚しいだけ、というお叱りを受けると思います。それなのに、彼氏のことが大好きなのに、心は彼氏にあるのに、他の男性と体だけの関係を求めてしまう。このような風俗を利用する男性と同じような、自分の中の矛盾した感情に、本気で悩んでいます。
(るい・24歳・東京都)


宇多丸:
るいさんは、まずちょっと、ご自分を厳しく責めすぎじゃないですかね。

もちろん、性的な倫理観がまるっきり欠けてる人ってのも困ったもんだろうけどさ。
逆に、「正しさ」だけで生きてける人ってのもそうそういないと思うんですよね。
『ペインキラー』って曲で僕が歌ってるのがまさにそういうことなんだけど……。

ご自分でもおっしゃってる通り、どんなカップルだって、付き合いが長くなれば、多かれ少なかれ「家族化」してって、恋愛初期段階を牽引していたときめき的な感情は薄れていくものだよね、普通。

ちなみに「ときめき」って、僕が『ブラスト公論』その他で定義したところによると、相互理解の入り口に立ったとき、要は「この人となら通じ合えるかも、わかってもらえるかも」と思えたときのワクワク感、なんじゃないかと思うんですよね。
ものすごーく理解が深まった、お互いを知り尽くした状態のことを、ときめきとは呼ばないでしょ。

むしろ、深く知り合っていけばいくほど、当然相手の好ましからざる側面も見えてきてしまったりもするわけで。
そうなると、自分に都合のいい面ばっかり見て、自分もいいところだけ見せて、フワフワ「ときめいて」れば良かった時期が恋しく感じられたりもするかもしれないけど……。
その代わり、相手のダメなところイヤなところ込みで受け入れて、むしろそこをこそ愛しく感じるっていうような、言わば「替えの効かない」思いが積み重なっていけば、そのカップルはひとまず、より持続的な、安定した関係性を築いていくことができるかもしれない。
るいさんのところは、まさにイマココ、って感じでしょ。

で、それ自体は、とっても喜ばしいことのはずだよね。
そのレベルまで行く相手になかなか出会えなくて悩んでる、って人のほうが断然多いんだろうからさ。

ただ、思うに、ときめきとか性的な高揚感とかは、相手の「他者性」が高い状態で生じるもの、つまり、「この人とも、この人とも、そういう関係になり得るんだ!」っていう、「開かれた可能性」に対して湧いてくる感情なわけですよ。
それって、さっき言ったような、相手への理解がどんどん深まって、替えの効かない「家族」になっていくっていう、永続的なパートナーシップが育まれていくプロセスとは、そもそもベクトルが逆なんじゃないかと思うんですよ。

ゆ えに、もしそれでも、どうしてもフレッシュなときめき成分も両立したいのならば、互いの他者性がある程度守られるよう、意識して距離感を保つ--たとえば 別居婚とか週末婚とか、同居するにしても最低限それぞれ自室を持ってプライバシーを徹底して尊重するとか--しかないんじゃないか、というのが僕の前から の持論なんですが。

まぁ、そんなの関係なく、マジでお互いどストライク! だから何年経ってもラブラブなまんま、みたいな幸福なカップルだっているんだろうしねぇ。
どうやってパートナーとの関係を良好に保ってるかなんてのは、ホントそれぞれだろうから、他人がとやかく言うようなことじゃないんですけど。

な んにせよ、るいさんにとって今の彼が、唯一無二の大切な存在になってゆくばゆくほど、前述の通り「開かれた可能性」からは遠ざかるわけだから、その段階で しか得られないワクワクドキドキに対しては欠落感が強まっていく、なんてのは、至極当たり前の、ほとんど必然的と言っていい心の動きなんだと思いますよ。
だから、少なくともその内心の欲求に関して、あまり自分を責めたり、卑下したりしすぎないほうがいいんじゃないかなぁ。

こばなみ:
自分のなかの矛盾した感情に悩んでるけどってありますが、別に矛盾でもないですよね。

宇多丸:
矛盾があるとすれば、いま言ったみたく、本来異なるベクトルを持っているはずの性と愛ってものを、一致してるのが望ましいしそれこそが「自然」だってことにしてる、我々の恋愛イデオロギーのほうでしょう。ザ・ギマン! 
ましてときめきなんて、愛情とはなんの関係もないものですよ。最悪、単なる勘違いでも「ときめく」ことはできちゃうんだから。

しかもるいさんの場合、こと性生活面に限っては、もともと彼に不満を感じてたわけでしょ? 
そこんとこを単刀直入に話し合ったりできるほど信頼しあってるっていうのも、やっぱり凄いことだと思うけど……。
とにかく、だったら余計、彼では満たせそうもない「可能性」に対する渇望が高まっちゃって……っていうのも、全然無理からぬ話だと思いますけどねぇ。
まだ24歳、それほど多くのお付き合いを経て彼にたどり着いた、ってわけでもないんでしょうし。

今回、女子部員の皆さんはどう言ってるの?

こばなみ:
ご意見をいくつか紹介します!

「構わないと思う。たまに味わうドキドキがないとつまらないし、ドキドキのおかげでパートナーの良さに気づくこともあるから」(まさゆき)

「仕方がないと思うし、あなたは悪くない!と思います。恋の元のドーパミンは1年6ヶ月まで。ってこの間TVで言ってました」(coco)

「私はあまり長続きしないのでそういうことがないのですが、友達のなかには長年の彼氏(夫)がいつつも、別の人がいるってパターン、よくあります。珍しいこと じゃないし、そんなに自分をサイテーとか思わなくてもいいと思う。逆にそういうのサイテーとか簡単に言っちゃう人のほうが、いい年こいて現実見てないって言いますか、えーっ!?って思ったりします」(かりん父さん)

宇多丸:
ほらほら、みんな甘い甘い(笑)。
皆さん大人で、自分だって聖人君子じゃないことがよくわかってるからね。
よほど厳格な信仰上の理由があるとか、度を越した「良識」絶対主義者だとかいうんじゃない限り、この程度で「とんでもないアバズレ」とか思う人なんて、いまどきいませんよ!

こばなみ:
物事そんなにパキパキって決められない、決めたくないことなんてたくさんありますよね。

宇多丸:
かと言って、エバるようなことでもないとは思うけどね。

るいさんが書いてる「(パートナーがいながら)風俗を利用する男性」の例えで言えば、そういう割り切った欲求の処理の仕方自体を頭ごなしに糾弾する気はさらさらないけど、それを周囲に自慢げに吹聴したり、パートナーにもダダ漏れさせてたりするのは、やっぱダメでしょう。
完全に建前通りに生きるのも無理だけど、だからって常に本音丸出しでいいやってのは、ただの無神経ですよ。

るいさんの場合、ひとつだけ揺るがない部分として、今後も彼との関係を大事にしたい、って気持ちは間違いなくあるわけでしょう?
 だとしたら、たとえば、罪悪感に苛まれるあまり、露骨に態度に出ちゃったりして、彼にもるいさんの異変が伝わってしまう……みたいな事態だけは、なんとしても避けるようにしないと。
じゃないと、その罪悪感って誰のため?ってことになっちゃうよ。

この件に限んない話だけど、内心ホントはどう思ってるか含め、あらゆる意味で、大切な相手を傷つけかねないようなことは、いっさいバレないよう細心の注意を払う……って、人が己の「正しくなさ」とともに生きていく上で、最低限のマナーだと思うんですよね。

幸いにも、今のところ「彼氏は私がこんなことを考えていることは思ってもいないと思います」ってことだからさ。
「私がこんな自分勝手なことを考えていると知ったら、1番傷つくのは彼だし、彼を失うこ とになるだろうことはわかっています」って言うんなら、まずは「絶対に知られないようにする」って一線を、文字通り死守することを考えようよ! 
そこで、さっき言ったみたくウジウジしすぎてバレるなんて本末転倒もいいとこだし、まして、「大好きな彼にウソをつき続けるのが辛くて」とかなんとか手前勝手な理屈こいて自分からほいほいゲロしちゃうとか、ありがちな話だけど、それこそ人として最低だと僕は思いますね。
そんなのに比べれば、浮気心がつい湧いてしまうってこと自体は、罪のうちにも入らないよ!

とにかく、そういう自分のなかの「正しくなさ」と適度に折り合いをつけること、「ま、人間そんなもんだ」っていう、いい意味でのアバウトさを身につけることが、今のるいさんには必要なんじゃないですかね。
これ、他者に対する寛容さにも関係してくるから、結構重要なことかもしれない。

でさ。
すでにコントロール不能なところまで悶々が高まっちゃってるんだから、しつこいようだけど彼には絶対バレないようにするっていう前提で、一度、手つなぎやキス止まりじゃなくって、思いっきりアバンチュールしてみちゃえばいいんじゃないの? 
それで気持ちが一応でもスッキリするなら、彼との関係にもプラスになるだろうしさ。
万が一ちょっと後悔するような体験になっちゃったとしても、さっきの女子部員の意見にもあったように、逆に彼の良さを再確認する、絶好の機会になるかもしれないじゃん。

少なくとも、密かに不満や我慢を抱えながらながら付き合い続けるより、お互い適当に息抜きすることを知ってるカップルのほうが、ずっと健全に長続きするんじゃないかと思いますよ。



【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2015年11月28日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。



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