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お中元、お歳暮、年賀状もやめたいと思っていますが、それで冷遇されたりバチが当たったりする?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室124】


✳️今週のお悩み✳️
偉い人たちは本当に付け届けやお歳暮が欲しいのか? 宇多丸さんはヒップホップ界で成功なさっていて上にいる立場なので、ぜひお聞きしたいです。彼らのほうが収入、生活ともに上なのに、なけなしの金でやりくりして贈りつけるギフトを「今年も贈ってきたな、かわいい奴だ」と思うのでしょうか。結婚生活12年。姑と同居しています。この姑が配りたがりで、ずっと従ってきました。夫は48歳、公務員。子無しです。贈りつけてる人たちは教育関係の偉い元校長などです。夫には誰からも来ませんし、何人かは「もう贈ってこないでいい」と書面で送られてきました。姑と夫はそれでもいいからケチらずに贈れと言います。この二人はほかはとてもケチです。私はもうお中元、お歳暮、年賀状もやめたいと思っています。社会人としてどうかと言われればマズイ気もしますが、そんなことぐらいで冷遇されたりバチが当たったりするのでしょうか。

(ほのか・46歳・東京都)


宇多丸:
僕の場合だと、お中元とお歳暮を欠かさず贈ってくるなんてのは、唯一、ずーっと連載を続けてる『BUBKA(ブブカ)』の白夜書房だけですよ。
編集者の心得として、直接の打ち合わせを怠らないっていう教えがあそこはしっかり受け継がれてるって話を前にしたけど、そういうとこやっぱり、イメージと反して、古風なくらいちゃんとしてるんだよなぁ。
律儀にシャンプーとか石鹸のセットを届けてくれて……、意外と助かるもんだし、もちろん嬉しいは嬉しいですよ。『BUBKA』への恩義を改めて思い起こしたりする機会にも、間違いなくなってるし。当然のごとく、なんらかのプラス効果をもたらしているのはたしかですよね。

でも、逆に言えば、ほかはそこまでしてるとこなんてないんだから、なんも贈ってこないからって、どうこう思うことも別にないってことだよね。

あと、じゃあ仮に、あるときから『BUBKA』からの贈り物がばったり途絶えたとしても、やっぱり別に、気分を害したりはしないと思うなぁ。
「出版不況で、いよいよ白夜もキツくなってきたのかな……」とか、まず向こうの事情を察するだろうし、むしろ、「そんななか、おそらくは無理しながらも、 今までなんとか贈り続けてくれてたってことだよな……、本当に、ありがとう!」と、感謝の気持ちが湧いてくると思いますよ。

まぁ、僕は普通に会社勤めとかしたことないから、案配がわかってないとこも多いと思うけど……、「何人かはもう贈ってこなくていいと書面できました」って、こんなことあるんだ?

こばなみ:
会社だとそういうところもありますよね。
もらっちゃいけない、みたいな。接待もダメ、飲み会は割り勘、みたいな。

でもほのかさんの旦那さんって公務員ですよね? 個人で元校長とかに贈るんですかね? 私も知らない世界ですが……。

宇多丸:
どうせやるならさぁ、ほら、でっかいハム抱えてスタローンがやってくる的なさ……。

こばなみ:
古いっ! 
ハムの人といえば、今は別所哲也じゃない?

宇多丸:
まぁ、別所哲也でもスタローンでもいいんだけど、とにかく、お土産を手に持って、直接お宅にお邪魔してご挨拶するっていう、クラシカルなスタイルね。そのくらい、はっきりリスペクトと親密さがある関係なら、お中元お歳暮って習慣もけっこう素敵だな、と思いますけど。
そうなると迎える側も、それなりにもてなしたりふるまったりしなきゃならないわけで、ほのかさんが感じてるような経済的な不公平感も、だいぶ解消されるでしょ。
ただ、実際にそこまでやってる人たちっていうのも、今はもう、まずいなさそうだよね。

なんか、そういうものをいっぱいもらう立場の人ほど、あくまで慣習としてドサッと届くような、言ってみれば「贈ってきた人の顔が見えない」モノたちには、そんなにありがたみを感じなくなってるんじゃないかって気がするんですよね。

こばなみ:
贈られるほうは、そんなに気にしてないってことですよね。

宇多丸:
それどころか、実は迷惑になってる場合だってあるっぽいよ。

かなり前の芸能ニュースになっちゃうけど、マチャアキ(堺正章)が二人目の奥さんの岡田美里と離婚したとき、岡田さんの言い分のひとつに、年がら年じゅう山ほど送りつけられてくる高級な特産物とかの処理に疲れきった、みたいなのがあってさ。
庶民的な感覚からすれば単に贅沢な悩みってだけにも思えちゃうけど、当人にしてみりゃ大変でしょ、それはやっぱり。
アワビばっかりこんなにもらってどうしろって言うの?みたいなさ。高価な食材に限って日持ちもしなかったりして。

そんな風に、ほのかさん家がなけなしの家計を削って贈り続けてる貢ぎ物も、肝心の「先生」のお宅では、同時期にまとまってドサドサ届く名産品の山に、埋れちゃってる可能性もある。
下手すりゃ、もっと高級な品々と並ぶせいで、見劣りしちゃって逆効果!になってる恐れだってあるよ。

それもこれも要はやっぱり、「贈ってきた人の顔が見えない」贈り物は効果薄、ってことだよね。

じゃあ、どうすれば「顔が見える」のかっていうと……、さっき言ったように直接お宅にうかがうっていうのがそりゃ一番だろうけど、いまどきは図々しいとも取られかねないからね。

ここはやっぱ、正攻法中の正攻法ですけど、「一筆添える」ってことじゃない?
 てか、なんならブツは抜きでも、「手紙」そのものが一番喜ばれるんじゃないのかなぁ。

僕も、ファンレター含め、自筆でいただいたお手紙はやっぱり、なかなかおろそかにはできないですよね、やっぱり。

こばなみ:
ちなみに、宇多丸さんから贈り物をしたり、お手紙を書いたりはしない?

宇多丸:
してない、っていうか、できてないですねぇ。
ホントはこういうの、ちゃんとしといたほうが絶対いいんだよなとは常に思いつつも、最低限の返事すら書いてない。
それこそ、おっきな組織に属してるわけでもなく、基本あちこちから仕事をもらって食ってる僕みたいな人間は、時節のお便りとか御礼状とか、しっかりしとい たほうがいいんだろうけどねぇ。まぁ、さすがに事務所は、お付き合いがあるようなとこには一応年賀状くらい出してるんだろうけど……。

でも、それで実際、声がかかる機会が減ったり増えたりするもんかっていうと、ぶっちゃけそんなに関係ないんじゃないかって気もするんだよね。

ましてほのかさんの旦那は、公務員でしょ。
どんだけ偉い元校長さんたちか知らないけど、いい意味でも悪い意味でも、今さら彼らが影響を及ぼすことなんて、何かあり得るのかね? 
貢ぎ物が少ない!って怒って冷遇するとか、吉良上野介じゃないんだから(笑)。

……でもたぶん、そういう問題でもないんだろうな、って気もします。

実効性がどの程度あるかとかは、旦那さんも姑さんも、実はあんまり考えてなさそうじゃない?
 身もフタもない結論だけど、「私たちは、そういうことをしっかりやる家なのだ」っていうのを自分たちで確認するための、要は自己満足以上でも以下でもないっていうか。

何かっていうと友達とかにプレゼントするのが好きな人っているじゃん? 旦那も姑も、どっちかって言うとその類でさ。
他はケチだっていうんだから、事実上、盆暮れの贈り物をどうするか考えたりするのが、きっとほとんど唯一の「趣味」なんですよ。

だから、無駄だからっていくら説得しても当然聞き入れてはくれないだろうし、そもそも彼らの数少ない楽しみのひとつなんだって考えたら、合理主義を根拠に一概に否定しちゃっていいのか、っていうのはちょっとあるかもしれないよね。
もし、家計がそこまで逼迫してるとかっていうんじゃなければ、少なくとも他人のために良かれと思ってやってるという意味では「良い趣味」の部類なんじゃないかとでも考えて、生暖かく見守ってやる……っていうのは難しいですかね?

あえて言えば、お中元お歳暮っていう慣習的な時期は、さっき言ったように競合相手が多いと思われるのであえて避けて、出張先で名物を手に入れましたとか、実家で美味しい新米がいっぱいとれましたとか、とにかく一見なにげない独自のタイミングで、必ず一筆添えて旬のものを送りつけたりするほうが、先方の印象は間違いなく強くなるし、こっちももっと楽しくならない?とは思いますけど。
「ああ、ホントに自分のことをいつも気にかけてくれてるんだな」って思えるでしょ。
その方向でやってみるよう、提案してみるとか……ってでも、聞く耳持ってなさそうだな~!

あとまぁ、見方を変えれば、てめぇらの自己満足に他人を付き合わせてるわけだからね。
少なくとも、もう贈ってこないでくれって言ってきてるところは、さっきの岡田美里さん的な思わぬマイナスが生じてる可能性だってあるんだから、やっぱストップしたほうがいいかもね。
「逆に先方のご迷惑になってもあれなんで、これからはハガキで年賀状と暑中お見舞い、くらいにしておきませんか?」と諭してみる……、聞いてくれればだけど(笑)。

こばなみ:
そういや、年賀状作成の季節ですが、最近けっこうメールになってますよね。

宇多丸:
あれは僕、諸刃の刃だと思いますけどね。

たとえば、ここ何年もまったくコンタクトを取り合ってないような人から、どう見てもオールコピペ&一斉送信の新年メールだけが、毎年毎年機械的に届くのって、どう? 
はっきり怒るような「失礼」ではないんだけど、なんだかちょっと……、メールのリストに入ってるから、なのはわかるけど、その「単にリストに入れたままなだけ」っていうのがさ。
それってもう、ほとんど忘れられてるも同然っていうか、何も送ってこないよりもっと、「わりとどうでもいいと思われてる」感じがしちゃうのは、僕だけかなぁ。
明らかにめんどくさがってるくせに不義理だとも思われたくない、みたいな精神のありようが透けて見えるようで、僕は正直好きじゃないです。

メールでもSNSでもいいけど、手紙書いて出すのとは比べものにならないほど手間が省けてるはずなんだからさぁ。
やっぱり、仮にもお便りを送るなら、その人に宛てて「一筆添える」くらいしようよってことだよ。印刷の年賀状でも、最低一言は自筆で書き足すのと同じことで。
コミュニケーションの場がネット中心になろうと、そういう礼儀っていうか、相手に対するせめてもの気遣いみたいなものは、変わらず大事なはずだと僕は思うけどなぁ。

露骨に儀礼的、機械的な挨拶されるくらいなら、単なる筆不精のがよっぽどいい意味で「その人の顔が見える」よ!


【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2015年12月12日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
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※シングル「世界、西原商会の世界! Part 2 逆featuring CRAZY KEN BAND」が配信中! Victorサイト限定CD盤もリリース!
詳しくは
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。




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