男性が多い職場のため、ちやほやされることは多いけれど、個人的に親しい関係にならないのがさびしい……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室336】
✳️今週のお悩み✳️
宇多丸さんこばなみさん、初めまして。相談したいことがあります。30~50代の男性(主に3人)の同僚についてです。
今の職場は3カ月くらい前から働きはじめました。50代のAと帰路で雑談をし、そこからたまに何人かで勤務終わりにお茶したり飲んだりしています。私はその中の40代のBと話すのが好きなんですが、 食事やお茶に行くとなると必ず他の同僚達が一緒に来ます。約束をして、その人達の名前がそのときに出なくても当日になると必ず来ます。Bとはほかの2人が休みの日にふたりでお茶したことがあり、映画の話とか個人的な話ができたのが楽しかったのですが、他の同僚達がいる場では映画とか興味なかったり、あまり知らない人もいて結局、職場の誰がどうしたなどあまり興味のわかない、したくもない会話に少し参加するだけになります。Bは私へのLINEの中身も他の同僚に話してるらしく、30代の同僚Cに言わせると 「男子高校生のノリ」だそうです。Bと付き合ってるわけじゃないし私が神経質なのかもですが、 良い気はしないです。もし私がBとふたりで話したいと言ってみても、それもきっとほかの同僚達へ報告されるよな……と思ってると、最近はBも含めその同僚達との付き合いが億劫になっています。
男性が多い職場のため、 ちやほやされることは多いのですが、個人的に親しくはしてもらえない、 興味は持ってもらえない感じです。 なにかさびしいというか……、職場の人達とはあくまで集団、 かたまりとして付き合うしかないんでしょうか。
(たかなえ・46才・大阪・配送業)
こばなみ:
知り合いの女性が好意を持っている男性に送っているメッセージを、そいつが誰かに話して、それがめぐりめぐって私のところにまわってきたことがあって。
学生のときってけっこうそういうのってあったけど、大人になってもあるんだってびっくりしました。
宇多丸:
そんな風に、基本的にはもちろん、あくまで一対一のプライベートなやりとりのなかで送ったメッセージの内容を、第三者に無断で明かすのはマナー違反だろうし、ましてそれがバカにする目的なんだったとしたら人としても明らかに問題あり、というのは言うまでもないとして……。
たださ、たとえば桃山商事さん命名のいわゆる「クソLINE」みたいに、一方的に恋愛もしくは性的ニュアンス濃厚なメッセージが送られてきて迷惑している、というような場合、当然相談の意味も込みで、「こいつヤバくない?」的に人に見せる、というようなことも考えられるわけじゃん?
だからまぁ、一般論的に言えば、そこまで信頼関係が構築されきってない間柄、それこそ単なる職場の同僚とかには、人に見られて困るような何かはどんなつもりであろうと送っちゃダメ!ということはとりあえず言えると思いますけど。
相談文の書き方によれば、Bは、「私へのLINE」について明かしているとのことだから、少なくとも、「たかなえさんがこんなこと言っててさー」みたいな、暴露的なノリで言いふらしている、というわけではない……んだよね?
おそらくだけどBは、たかなえさんとのやりとりを、それこそ「人に見られて困る」ようなものじゃない、オープンに共有してまったく問題ないものだ、と認識している感じですよね。
いっぽうたかなえさんは、「個人的に親しくはしてもらえない、 興味は持ってもらえない」ことがさびしい、とおっしゃっている。
つまり、たかなえさんはBとだけ近しくなりたいしそのつもりでいたのに、Bはどうやらそのテンションではなく、あくまでその他の同僚込みのフラットな関係でいようとしていて、たかなえさんと一対一になることに積極的ではない。
そこがたかなえさんは不満、ということですよね? ひとまず問題を整理するならば。
これはでも、うーん……、職場の人と「個人的に親しく」するというのは、社会常識的にあんまりそれを目的化しないほうがいいというか、特に昨今は、そこにはむしろ慎重になるべき、と考える人が多いんじゃないですかねぇ。僕もそうだけど。
こばなみ:
根本的なことをいえば、職場って人間関係を構築する場所じゃなくて、あくまでその前に仕事をする場所ですからねぇ。
宇多丸:
ひょっとしたらBは、たかなえさんと2人きりの構図になることを、意識的に避けようとしていたのかもしれないですよね。
たかなえさんとの一対一の関係性が濃くなりすぎないよう、もしくはそのように外から見えてしまわないように、たとえば「必ず他の同僚達が一緒に」なるようにすることでそれを中和しようとしていた、というような可能性もじゅうぶん考えられますよ。
これは、Bがたかなえさんのことを「個人的に」どう思っているか、というのとはまた別の話ですから。
あっちはあっちで、「たかなえさんとは話も合うし、なんかいい感じだな……って、いかんいかんオレ!」とか、ちょっとでも好意を抱いてしまったからこそ理性でブレーキをかけた、みたいなことだってもちろん考えられないわけじゃないし……、いまどきは、真面目な人ほどそこはものすごーく、気をつけすぎるほど気をつけてるもんだろうと思うから。
もちろん当然、ただ単に逃げられた、というセンだって濃厚にあるわけだけど(笑)。ま、人間関係全般、そういう不一致があるのは仕方のないことなんでね。
前に、取引先の男性がぐいぐい飲みに誘ってきて困る、という相談があったよね。
そのとき僕はまさに、その会食に弊社◯◯も呼んでいいですかとか、その件は重要なので弊社でも共有させていただきますとか、要は「これはあくまで仕事上の話ですよね?」というのが常に前面に出るような、意識せざるを得ないようなコミュニケーションを取ってゆく、で、それを嫌がって露骨に2人きりになりたがったり強引に親密になろうとしてくるようなら、本気でヤバいやつなので速攻上司などに直訴!みたいな話をしたと思うんですけど。
それはかなり悪いケースだけど、そうやって逆の立場で想像してみると、ちょっとわかりやすくもなるんじゃないかな。
ちなみにCの、「男子高校生のノリ」っていう雑な片付け方も、なんだかなぁ……。
男はみんなガキなんで!みたいな理屈で全部許されると思ってるような物言い、僕は男ですけどホントすっごい嫌いだし、男同士はなんでも共有するんス!みたいなことが言いたいのかもしれないけど、筋金入りの男子校上がりである僕に言わせりゃ、お前らだけだバカ!って感じですよ。
こいつのこの表現が、事態をより感じ悪く見せてしまっている、という側面もある気がします。
こばなみ:
結局、たかなえさんってBが好きなんですよね?
宇多丸:
まぁ、恋愛感情というところまでは行ってなくとも、Bと2人なら楽しい、いい感じ、なのに……というレベルでの特別な好意は間違いなくあるだろうし、それは全然理解できる気がしますよ。
「バイブス合う~!」って感じる相手、たしかにいるよね。性別関係なく。
そして、第三者が絡んでくると途端にバランスが崩れてその蜜月な空気が薄れてしまう、その人の雰囲気自体もどこかよそよそしく変わってしまう、みたいな感じも、なんかわかります。
こばなみ:
相談文を読むと、Bとは、ほかの2人がお休みの日に、2人だけになったんですよね。いつものおじゃま虫が今日はいない、ラッキー!みたいな。だから、約束して会ったとかじゃないんですよね。
宇多丸:
だから、もしたかなえさんが本気でBとの個人的な距離を縮めたいのなら、一度ストレートに、「今度◯◯に2人で行きませんか?」とか、誘ってみるしかないんじゃないかなぁ。
さっき想像したみたく、あっちはあっちで本当はそうしたかったけどこれはいかんと理性でブレーキかけてただけ、みたいなパターンだったとしたら、それで一気にドドドーッと、関係が深まるようなこともあり得ますよね。それはそれでまた別の問題は招くかもしれませんが……。
逆にもちろん、B側にまったくその気がなかった場合は、はっきり拒絶されて、その後は職場で顔を合わせるたびに若干気まずくなってしまったりするリスクも、当然それなりにあるわけです。
こばなみ:
Bの気持ちが本当にわからない~。
宇多丸:
それはまぁ、他者との距離を詰めようという際には必ず出てくる話ではあるので。
個人的には、Bとウマが合ったというのは間違いないんだろうし、さしあたっては今のまま仕事仲間としてのフラットな関係性を保ちつつ、たまに2人で話す機会があるときにはここぞとばかりに映画の話でもする、くらいのテンションでいるんじゃダメなのかなぁ?とは思いますけどね。
そうこうするうちに、ふとした拍子にさらに仲良くなることもあるかもしれないし、そうはならないかもしれないし。そこはいつも言うけど、ご縁の話なので。
そんな悠長に構えてられないよ!というなら、それはもうはっきり、恋ですよね(笑)。
そこを自覚したらしたで、いろいろやりようも見えてくるでしょうし。
いや、そこまでがっついてるわけじゃないんですけど……という感じなんだったら、現状はちょっと、Bにも職場にも、いろいろ余計に期待しすぎなんじゃないの?という気はいたします。
こばなみ:
やっぱり、職場恋愛はちょっとな……とは思いますけどね。何かあったら一緒に働き続けるのが気まずいですし、まわりも気を遣いますし。
職場くらいしか出会いがない!というのもあるかもですが、まだ3カ月ということですし、まずは仕事に打ち込むのはどうですか?
そこからまた他にも意気投合する人も出てくるかもしれませんし!
宇多丸:
それにしても、「50代のA」の存在感の軽さよ……、この人、最初に出す必要あった?(笑)
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2020年9月12日に公開したものを再編集し、掲載しています。