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男尊女卑がひどく、私の娘に「女の子は勉強しなくていい」と言う母。自分の親がそんな考えで嫌です……【ライムスター宇多丸のお悩み相談室432】


✳️今週のお悩み✳️
母の男尊女卑がひどいです。考えが古いからか、あまり外で働いたことがないからか、女の子は勉強しなくていいと私の娘に言ったりします。私はその考えに賛同できません。私自身はふつうに大学にも行きました。なのになぜ娘(孫)にそういうことを言うのかわかりません。「いまはそんな時代じゃないよ」などと言っていますが、もう歳なので変わらないのか、私の言うことを聞き入れてはくれません。家族ならまだしも、ほかの人と話しているときにそういうことを言っているかと思うと心配ですし、その前に自分の親がそんな考えで嫌だなとも思ってしまいます。諦めるしかないのでしょうか。
(ゆるぞう・42歳・会社員・千葉県)


前に、お父さんの考え方に賛同できないって相談がありましたよね。


こちらですね。「歴史において『日本が1番』という考えの父。賛同できない場合、どのように関わっていけばいいでしょうか」


ぶっちゃけ、ある程度以上の年齢の人の考え方を根本から変えるって、現実問題として難しいところはやはりあるでしょうからねぇ……、自分自身もそうなんだろうと思うと、なかなか悲しくなるものがありますが。

だからまぁ、前のその回答でも言っている通り、話してもラチがあかなそうなんだったら、精神的にも適切な距離をおいて付き合ってゆくしかないですよね、ほかの多くの他人と同じく。

とはいえ、どこか外でもそういうこと言い散らかしてたらどうしよう?的な懸念は残るわけですが……、こばなみだったら、お母さんを説得したりする?


お母さんの考え方は仕方ないとしても、押し付けないで!とかは言うと思いますね。


ちょっと思うのは……、これは解決法でも何でもないけど、あくまでひとつの考え方として。

お母さんが生きてきた時代は、間違いなく、今以上に世の中全体が、当たり前のように性差別的だったわけでしょ?

そんななか、お母さんをはじめとする少なからぬ女性にとっては、その構造をある程度内面化して、言わばそこに適応するのが、現実的にいちばん有利な生き方だった、事実上そうするしかなかった、みたいな側面も、絶対にあると思うんですよね。

つまり、真の敵はお母さんじゃなくて、彼女たちをそういう思考に追い込んできた、この社会のほうなわけですよ、実際の話。

一方、お母さん側からしてみれば、そのなかでは精一杯がんばってきた自分の生き方を、後からできた基準で頭ごなしに否定されたくもないじゃないですか、やっぱり。

もちろん今の良識から言えばゆるぞうさんのおっしゃることが100%正しいわけだけど、「お母さんのときはそうだったんだよね」とか、「お母さんの頃はそういうふうに考えるのが最善だったのかもね」とか、言ってみれば「当然のごとくより進んだ考えを持つ未来人」としての余裕をもって、お母さんの言動をとらえ直してあげることはできるんじゃないかな、と。

今だってそういうことってあると思うんですよ。

たとえば、自分自身のキャリアアップなんかより金持ちの男を見つけて養ってもらうほうがいい、的な考え方をしてる女性がいたとしても、現実問題として日本社会の構造的なジェンダー格差がまだまだ改善されていないんだから、個人的な生存戦略として、そっちのがいいやと考えるのには一定の理がやっぱりあるわけだし。

ただし、それが唯一の正解みたいに思い込んで、まわりにも同調を求めだしたりしたら、そこであらためて「それは違う」となってしかるべきだろうけど……、お母さんはイマココ、って感じかもね。

だから、同じ「保守的」な考えと言っても……、あ、ちなみに僕、この「保守的」って言い方もどうかなと最近ちょっと思ってて。

なにか普遍的な価値観を「守る」立場、みたいに自動的に聞こえちゃってるけど、べつにその主張が、コミュニティやモラルを破壊したり変えちゃったりもぜんぜんしうるんだから……、あえて言えば「しきたり重視」「しきたり死守」って程度でしょ、実際のとこ。

「保守派」とかじゃなくて、「しきたり死守派」とこれからは読み替えて、みなさんニュースとかに触れてみてください!(笑)

まぁとにかく、同じような守旧的な考え方をしているにしても、こと差別構造に関するものについて言えば、既得権益を得ている側とそうではない側では、意味がまるで変わってくると思うんですよね。

「女の子は勉強しなくていい」も、いまどきそんなこと言うなんてホント信じらんないレベルだとは僕も思うけど、たとえばお父さんが言ってしまうのとお母さんが言うのでは、やっぱりダメさの度合いというか重さがまったく違うと思うんです。

そんな感じで、「とはいえお母さん個人が悪い人というわけではなく」というのを頭の隅に置く、というので、ちょっと気が楽になったりしませんかね。

悪いのは時代であり社会なんだ、と。


なるほど。

ちなみに自分は、女子部JAPANとして女子限定のコミュニティ活動を盛んにしていた2018年頃に、「なぜ女性だけで集まるのか?それは古い!」と若い世代の方から言われたことがあって。
自分ではそれがいい!と思って運営していたのですが、また別の見方をする人もいるのだなと、勉強になりました。


そんなこともあったんだね。

そういう意味では我々みんな、自分たちが生きてる時代の考え方の限界みたいなものからは、勉強の度合いにもよるけど、やはりどうしたって逃れられないところはあるわけだし。

で、いずれはやっぱり、後の世代から見ればいかにも古いなぁとされてしまう人々に、僕ら全員が、ほぼ確実になってゆくはずですからね。

つまり、常に学習を怠らない心がけと同時に、そんな自分の限界も俯瞰から認識する謙虚さを、僕らみんな常に持つようにしたいものですね……ってことじゃないですかね、優等生的に聞こえるかもしれないけど、しかしホントに。


そうですね。

ゆるぞうさん、「自分の親がそんな考えで嫌だな」というところだけでも、ラクになるといいですね。

私はつっかえていた小骨のひとつは取れました!






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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

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女子部JAPAN こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。



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