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男性中心の営業職で、明らかなジェンダーバイアス。こんなとき、どうする?

リーダーとして仕事をしていれば、必ずぶつかる
コミュニケーションや人間関係の問題。
相対する人も違えば、状況もさまざまで、
「こうすれば正解」がないのが
難しいところです。

そこで、
女性リーダーたちが実際に体験した
コミュニケーションの課題と
それに対するアクションを
ケーススタディとして紹介。
同じような課題を抱える人のヒントになれば、
という思いで届けていきます。

今回は、印刷会社の営業部のマネージャーであるイチコさんのケース。男性中心の印刷業界で目の当たりにしたジェンダーバイアスを取り払って、いかに信頼と仕事を獲得していくか。イチコさんの体験を振り返ってもらいながら、功を奏した工夫や考え方を聞きました。

ニックネーム:イチコさん(40代)
◆職種:通信印刷会社の企画営業
◆部下の数:0人(かつては5人)
就職情報を取り扱う広告代理店に新卒入社した後、知り合いからの誘いを受けて印刷会社に勢いで転職。持ち前の楽観主義と鈍感力を武器に、前のめりでキャリアを築いてマネージャーに。5年前に出産し、現在はマネージャーの肩書きのままプレイヤーとして時短勤務中。


「お嬢ちゃん、分かっている?」 明らかにジェンダーバイアスを感じる取引先の対応……


今は、育児と両立して時短勤務中です。小さな会社なので出産後4ヵ月程度で職場復帰をし、保育園が見つかるまでは在宅勤務や子連れ出社をしながら、なんとかこなしていました。今はチームに同僚が2人いますが、1プレイヤーとして仕事をしています。

出産前は、部下が数名いるチームのマネージャーとして、マネジメントをしていました。印刷業界は男性社会で、年配の得意先の担当者やベテランの職人さんが多い世界。女性の営業は珍しく、客先に行くと、「機械や設計に関する知識を持ってなさそう」と思われることが多かったように感じます。

マネージャー=責任者として打ち合わせに参加しているのに、取引先から「お嬢ちゃん、ちゃんと分かっているの?」と言われたことも。今でこそ、こんなことを言う人は少ないと思いますが、10年前の当時は今よりジェンダーバイアスに関して無自覚な人が多かったんですよね。

年上の後輩(男性)と客先を訪問したときには、後輩が上司として見られることが多くて。明らかに私は「上司の営業についてきた部下」的な立ち位置で見られ、相手が話しかけるのは後輩ばかり。マネージャーの私が説明をし始めると、「あれ?」という感じで名刺の肩書きを見直す人もいましたね。

男性のお客さんが多いなか、男性の営業はお客さんと夜の飲み会や食事に行って仲良くなる人もいます。でも、女性の私はなかなかそうもいきませんよね……。

人として信頼してもらう努力と、「ま、いっか」の鈍感力で、気づけば結果が出せるマネージャーに


こうしたジェンダーバイアスについて、当時は「そんなもんだろうな」と諦める気持ちと、やはり「悔しいな」と思う気持ちの両方がありました。私がとった策は、クライアントから聞かれたことに回答するだけでなく、先回りをして情報提供をすること。例えば、別のお客さんの同じような案件で課題になったことや、注意事項などを事前に伝えて、かゆいところに手が届く営業を意識したんです。日々の営業のなかで積み上げてきた気づきを、次の営業先で応用していくといったイメージです。直接的な仕事につながらない相談にも、できる限り丁寧に回答しました。

提案するときに気をつけているのは、メリット・デメリットをしっかりと伝えること。基本は“誠実に”です。自分の会社が得意ではないこともきちんと伝え、「ここの部分は、弊社は弱いので注意してくださいね」などと先にバリアを張っておく。感覚的になりすぎないように、製造の流れや機械の仕組みなど、根拠をもとに話をするように心がけて。

そうするうちに、お客さんの対応が変わってきて、個人として信用してもらえるようになりました。仕事をもらえる機会が増えたり、別の営業担当の方を紹介してもらったり、自然と仕事が広がって結果がついてきたんですよね。

こうやって振り返ると、論理的に仕事を進めているように見えるかもしれませんが、もともと私は感覚的で楽観的なタイプ。だから、あまり深く考えず、めげずに淡々と自分のやるべきことをやってこられたんだと思います。女性軽視を目の当たりにしても、「ああ、こういう人はいるよね」と、一喜一憂しません。いうなれば“鈍感力”でしょうか(笑)。この性格のおかげで、ジェンダーバイアスを感じても気にしすぎず、自分なりに仕事の工夫をして結果を出すことにつながったんだと思います。

こういう性格になったのも、「人は人」という家庭に育ったからかもしれません。親から人と比べられることもあまりなく、自分の基準でやるべきことをやる。ダメなら、またやり直せばいい。そういう考えがベースにあるから、周りに左右されず、自分の仕事を淡々とできる。

私は嫌みを言われても、気づかないことも多いようで(笑)。大学のサークルで副部長をやっていたときに、同級生から「イチコは、要領いいからさ」と言われ、褒められたと喜んでいたんですが、ずいぶん後になって「いいとこ取りして、ズルいよね」というニュアンスだったと気づきました。捉え方まで“いいとこ取り”をしていたんですね(笑)。今となっては、それも「ま、いっか」と思います



イラストレーション:高橋由季




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