女性活躍とはいうけれど……、昇格したいがチャンスが回ってこない。こんなとき、どうする? 《キャリア形成編-1》
リーダーとして仕事をしていれば、必ずぶつかる
コミュニケーションや人間関係の問題。
相対する人も違えば、状況もさまざまで、
「こうすれば正解」がないのが
難しいところです。
そこで、
女性リーダーたちが実際に体験した
コミュニケーションの課題と
それに対するアクションを
ケーススタディとして紹介。
同じような課題を抱える人のヒントになれば、
という思いで届けていきます。
今回は、通信会社で課長職を担うヨッシーさんのケース。女性活躍推進が進む大手企業のなかで、ジェンダーギャップを感じながら、自分なりの「折り合い」をつけた結果、たどりついた女性リーダーとしての生き方。自分がいますべきことについて語ってもらいました。
管理職の選定基準に違和感、新しい選定方法が必要!?
10年ちょっと前、初めて組織を任されたときは、それまで一人で担当する仕事が多かったので、私は管理職に向いてないと思っていました。協調性もないし、マネジメントも得意ではないしって、今でも思っています。さらに当時は相談できる人や参考にしたいロールモデルもいませんでした。
今、女性活躍推進っていって政府や大企業が積極的に取り組んでいますが、選定する人たちや選定方法を見直すべきだと考えてしまいますね。今のやり方だと今までのフィルターで選定されているので、変わらないんじゃないかと。今も組織には男性の管理職が多くて、女性の管理職は少ないですね。
選定はAIに任せたほうがいいかもしれません(笑)。同時に、女性の管理職や管理職候補を育成したり、新任管理職をフォローしたり、悩んだ時に相談できる体制も必要だなと思っています。
ONとOFF、ストレスと仕事、私はこれ以上の昇格よりも……
今年になって、社内の女性6人ぐらいから相談を受けたんですね。たとえば、子育てをしながら管理職を目指している女性、30歳になりキャリアをどう考えたらいいか悩んでいる女性、今年管理職になった女性……etc.
自分の心構えが整ってから昇格のチャンスが来るわけではないので、基本的には昇格の話が来たらYESでいいと思います。管理職になってから、部下とどういう組織だと働きやすいのか、どういうワークスタイルにしたいのかを相談していけばいいと思うので。人間関係(マネジメント)には正解がないので、部下にとことん相談するのがおすすめです。
また、子育てをしながら管理職を目指したいという方も増えていると思いますが、ご自身がどういうワークスタイルをしたいのか、そのために部下とどんな仕事のルールを設定するのか、まずは状況を見ながら自分自身で優先順位を決めることだと思います。時にはご家族の協力も重要だと思いますしね。
私、部下全員に年に一度、今年の働き方をヒアリングしているんです。
効率よく仕事をするために、ルールを決めたりもしていますよ。資料のフォーマットを決めて組織内で共有したり、資料は提出の前日までに絶対確認させてもらうとか。お昼と18時以降のミーティングは緊急以外基本なし!とか。
それと、働く環境において「過度なストレス」を感じたくないんです。
そのために自分の考えを伝えることを重視してきたし、自分がストレスと感じるようなことはなるべく避けてきました。例えば職場の飲み会への参加とか(笑)。
ワークスタイルも、私はもともと残業をなるべくしないで、年に4~5回のペースで1~2週間有休をとって長期で旅行をしたりする、ONとOFFがはっきりしているんですね。
そのために体調管理にはすごくうるさい(笑)し、残業するよりジムに行って頭の中を整理したり、資料の構成を考えたりしたほうがいいなって。
大切なのは、自分の選択が正しいと、自分自身を信じること
大きな組織になると登場人物が多くなりますよね。いくつもの意見が飛び交い、役職のある人の意見が重要となり「やること」だけが先行し「本質」を見失うことがある。そんな時は、必ずスタート地点に立ち返り、「本質」をセットしなおします。いろんな人の意見をもらいながらも、自分の考えの軸をブラさないことが重要だと考えています。
以前は私みたいに飲み会に参加しなかったり、残業しないなど、ON/OFFをはっきりとわけた働き方に対して良く思わない人も多かったけど、最近ではそのワークスタイルに「いいね」と言ってくれる人が増えたんですよ。
とくに、お子さんを育てながら時短で働いている女性。私は残業をしないから、時短で働いている彼女たちと労働時間が1~2時間くらいしか違わないんです。「ヨッシーさんみたいな働き方ができるなら、管理職になるのを諦めなくていいと思った」と言われることも。
私みたいなワークスタイルは少数派だと思っていたので、びっくりしたし、嬉しかったですね。
自分が管理職になったときにはいなかった相談相手やロールモデルとして「女性活躍推進」に役立てるんじゃないかと思い、昇格よりもその役割を担っていきたいと思いました。
大切なのは、自分の選択が正しいと、自分自身を信じること。女性管理職のひとつのモデルになっているのなら本望ですね。
そして今、私にできることは、これからリーダー職や管理職になりたいという人の相談に乗って、考えを一緒に整理して、後押しすることだなと思っています。小さな積み重ねで、組織の女性活躍推進に対する考え方が変わっていけばいい。そう思って取り組んでいます。
イラストレーション:高橋由季