20歳年下の彼氏ができました。初めての彼氏なので不安いっぱいで……。彼を信じて耐えるしかない?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室49】
✳️今週のお悩み✳️
40代を目前にして、初めて彼ができました。それも、20歳の。新しく移った職場で知り合い、出会ってわずか2ヶ月で関係を持ちました。もちろん、職場には内密です。職場ではお互い、なにもなかったかのように振る舞う約束をしました。しかし、職場内で、彼が他の女性と話しているのを見ると辛くてたまりません。上司や他の人にはなんとかごまかせていますが、こんな今のわたしを、彼がどう思っているか怖くて、聞けません。シフトがあまりあわず、仕事外で会うこともままなりません。わたしはどうしたらいいのでしょうか? 彼を信じて、耐えるしかないのでしょうか?
(なないろかのん・39歳・××県)
こばなみ:
なななんと! うらやましい! マジか!? 同世代としてはこれ、奇跡のような状況ですよ。
宇多丸:
ドラマや映画でもありそうな話だよね。年下ってことで言えば、『セカンドバージン』とか?
こばなみ:
松嶋菜々子とタッキーのドラマもありましたよね? それと漫画ですが『きょうは会社を休みます』も彼氏いない歴33年のOLが20歳そこそこの職場のバイトの大学生と付き合う話ですよ。iPhone女子部編集部では、新刊が出るたびに萌えてますよ(笑)。
宇多丸:
しかも、なないろかのんさんの場合、それが初めてできた彼なんだもんね。いろいろ急に盛り上がりすぎ!
こばなみ:
遊ばれてはないですよね……?
宇多丸:
そりゃ、どんな相手だってそういう可能性がゼロとは言えないだろうけど……、そんなこと言いだしたらキリがないからさ。今はその想定は置いておこうよ。
だって、ふつうに考えて「遊ぶ」相手としてはちょっと重いんじゃないのかね、20歳年上の女は。男、ハタチだよ? もろもろのハードルは覚悟のうえで付き合ってるわけだからさ、むしろ相当本気度は高い可能性が高いんじゃないの?
こばなみ:
まさか、お金目当て……!?
宇多丸:
なんでそんな意地悪な想像ばっかりするの!
この相談文だけじゃわからないけど、なないろかのんさん、職場でも別にそんな権力振るえるような立場じゃなさそうだし、そこ目当てにされるほどわかりやすく金持ちってことはないんじゃないの、やっぱり。
こばなみ:
で、お悩みは嫉妬……?
宇多丸:
要は、なないろかのんさんが彼に「引け目」を感じてるってことだよね。
こんなおばさんなのに、なんで私と?っていう不安がずっと付きまとってるわけですよね、おそらく。
でも、さっきも言ったように、20歳差っていうハードルは百も承知でこっちに来てるぶん、彼の気持ちも強いってことなんじゃないかと、僕は思いますけどね。
こばなみ:
ただ目的が好きだからなのか、金なのか、それともカラダ……!?
宇多丸:
だからなんでそんなに意地悪なんだよ! 20歳年上のカラダが好みだって言うなら、それはそれで全然いいことじゃん!
例えば「周りの人間に見せびらかす用のパートナー選び」みたいのってあるじゃん。「トロフィーワイフ」なんて言葉があるくらいでさ。 で、そういうのとは正反対ってことだからさ、これは。 『ふぞろいの林檎たち』の最終回で小林薫が言うセリフみたいなもんですよ。「世間がどうだか知らねぇが、俺は、幸子じゃなきゃ嫌なんだ!」って。
だから、なないろかのんさんの不安を本当の意味で救えるのは、前にあったアイドルに嫉妬してしまうという相談のときもそうだったけど、彼の口から直接、そういう小林薫的なセリフを言ってもらうっていうこと以外、やっぱりないんだろうね。
さらにいいのはもちろん、周囲にもちゃんとカミングアウトするってことなんだろうけどさ。それはまた、もうちょっと先のステップっぽいよな……。 あとはなに、なかなか会えないんならLINEとかでできるだけ頻繁に連絡取るとか? それで解決できる話?
こばなみ:
どうなんでしょう……。私、ここのところ現場から遠ざかっているもんで(苦笑)。
宇多丸:
ただ、前も言ったかもしれないけど、愛って「信頼すること」だからな~。
いったんそこに「疑い」って要素が入っちゃうと、もともと実態のないものだから、どんどん勝手に揺らぎが大きくなっていっちゃいがちではある。
例えば、パートナーの携帯をこっそり盗み見る人って、結構いるらしいじゃない? 僕はホントそれ、愚の骨頂だと思うんですけど……。 仮にそこで浮気の証拠とかが別に見つからなかったとしても、「上手に隠されてるだけかもしれない」とか、いくらでも、際限なく疑い続けることはできちゃうわけですよ。 そんなの、上手く行ったところで相手に対する「支配」でしかないんだからさ。お互い楽しくねぇよ、絶対!
一方、なないろかのんさんは、そうやってエゴを相手に押しつけるタイプでは明らかにないぶん、葛藤を自分だけで抱え込んで、ひとり相撲をしてる状態なわけだよね。
じゃ、どうするか。相談文の最後に「彼を信じて、耐えることしかないのでしょうか」ってあるけど、映画『セブン』ラストのモーガン・フリーマンばりに回答するなら、「前半には同意だ」。とりあえず「彼を信じる」しかないというのは確か。 逆に言えば、相手を信じきれないようなら、どんな関係も長続きするわきゃないんだからさ。
でも、「耐える」のはよくない。片方が我慢し続けて成り立つような関係もまた、長続きするはずがないわけで。 だから、彼から改めて「信じられる」ような言葉やアクションをきちんともらうしかないし、もちろん彼側にもその責任があると思うんだけど、そのためにはまず、なないろかのんさん側が、「どうしても不安になってしまう、嫉妬を感じてしまう」という人間的な弱さを、それこそ「彼を信じて」、できるだけ誠実に伝えないといけないんじゃないかと。
そのうえで、周囲へのカミングアウトとか、次の段階に進めるかどうかは、あくまで彼との信頼関係を深めてゆくなかで探ってくしかないことですよね。 ま、ものすごーく当たり前の話をしていますけども……。
こばなみ:
ああ、でも改めて思いましたが「初めて」なのですよね。そりゃ、右も左もわからずに、いろいろと不安になってしまいますよね……。
宇多丸:
初めての嫉妬、初めての悩み……、もし仮に、それでなないろかのんさんが傷ついて終わったとしても、僕はやっぱり、何も起こらなかった人生より、こういうことが色々あったほうが良かったでしょ?と言いたい。
39歳って、例えば結婚して子どももいて、恋なんてすっかり遠い日の花火になっちゃってる人も、いっぱいいるわけでしょ。その人たちから見れば、「なんて素敵な悩みなの!」って話かもしれないじゃん。
それに、万が一傷ついたり、騙されたりしたとしても、そんなもんは「授業料」だから! みんなさんざん払ってきてるんだよ! 年齢柄いろんなことに神経質になってしまいがちだとは思いますが、年食ってから運転免許取ろうとすると若いときよりはちょっぴり割高になる、程度のことだと考えればいいんじゃないかと思いますよ。
【今週のお絵描き】
こんなセリフ、言われてみたい!
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2014年6月21日に公開したものを再編集し、掲載しています。