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固定的性別役割分担意識が根付いているから? 力仕事ができないだけで、女の子は座っていればいいと言われているようで悲しいです……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室365】


✳️今週のお悩み✳️
今年、製造業の会社に就職しました。男性が9割を占める職場で、女子校で育った私にとって、大きく環境が変わりました。製造現場での作業は、いわゆる“力仕事“と言われるもので、重く大きいものを扱うため、どうしても私はできないことばかりです。職場の方々は「女の子は無理しなくていいよ」と言ってくださるのですが、重いものを運べないだけで「何にもできないすべて任せる人」になっている気がします。また女の子は座っていればいい、と言われているようで悲しいです。女性の私だけにできる仕事、得意な仕事とはいったい何があるのでしょうか。固定的性別役割分担意識が根付いてる土地だから仕方ない、と諦めたくないです。
(アリー ・23歳・会社員・ 石川県)


宇多丸:
ちなみに僕も、力仕事はマジでまったくできないから、もしこの現場に配属されたら超使えないヤツ扱いされるはずだし、向いてない場にいても誰も得しないんだからってことで、何がなんでも転属希望を通そうとすると思います。それもダメなら転職を考える。

ちなみにここでの力仕事っていうのは、重たい在庫を運搬したり、みたいなことかな。

それがメインの職場なの?

こばなみ:
でも採用されているわけですから、運搬がメインってことじゃないですよね、きっと。

宇多丸:
だからたぶんだけど、この会社自体が、アリーさんも言っている固定的性別役割分担意識に基づいて、「女の子はそんなに気張って仕事しなくていいから」くらいのムードで、女性を各所に「置いている」感じだったりするんじゃないですか?

おそらくそこにこそ、アリーさんは居心地の悪さを感じている。

こばなみ:
1割は女性もいるということですが、そういう話をしたりしないんですかね……?

宇多丸:
その1割っていう比率がもう、実質的には社内で力を持たされてない立場だというのを、露骨に表してもいるわけじゃないですか。

今のところそういう体制に順応している人のほうが多い状態だったりするとなかなか、そこで連帯して戦う、みたいな雰囲気にはなってゆきづらかったりするのかも。

こばなみ:
まだまだ地方とかはとくにそういう発想は悲しいかな、ありますかね……。中部地方の知人も、職場の入口が違うとか、やっぱお茶くみとか全然普通にあるとかって言ってました。

宇多丸:
入口が違う?……アパルトヘイトかよ!

2021年にもなってまだそんな酷いことが平然とまかり通っているレベル、ということなんですね、やはりこの国は。

とりあえずアリーさんの件に関しては、常識的に考えたらまずはやっぱり、「上司に相談する」ってことに尽きるわけだけど。この文だけだと、会社に他にはどんな部署や仕事があるのかとかも僕らにはわからないから、提案などもしようがないし。

さっき懸念したように、会社自体が性差別的な体質だったりして、上に訴えたところでそう簡単には埒があかないような空気もあるのかもしれないけど……、誰かはいませんかね? 信頼できる人。

そんな人は社長含めひとりもいない、というような会社なのだとしたら、そもそもそんなところにいていいのか、というところから改めて考え直してみるしかないのかもしれないし。

あえてひとつだけアリーさんにアドバイス的なことを申し上げるとしたら、「女性の私だけにできる仕事」という言い方は、それこそ固定的性別役割分担そのものな、「女はこれでもやってろ」的なお仕事割り振りを正当化するものとも取られかねないから、できればあんまりしないほうがいいんじゃないかという気はします。

普通に「自分の能力を活かせるセクションに就かせろ」ということでいいと思います。

ただしこれ、23歳で入社したばっかりということだから、「一応現場も知っとけ」的な意図で、あくまで一時的にそこに行かされてる、みたいなことである可能性もないですかね?

ある程度以上の規模の会社だと、よくあるイズムだったりすると思いますけど。

しかしまぁ、仮にもしホントにそうだったとしても、アリーさんは現にまったく納得してないままそこにいるわけで、なぜこんなに肩身の狭い思いをしなきゃならない部署に配属されたのか、ちゃんとした説明がなかったのはたしかでしょうからね。

だからやっぱりいずれにしても、なるべく早く、上司と一度きっちり話す以外にないんじゃないかなぁ。

この相談文にあるような不満などを、ホントにそのまんま伝えるのでいいと思いますが。

管理職って、そういうのを聞くのが仕事でもあるんだからさ。そのぶん給料もらってるはずなんだから、遠慮することないよ!

こばなみ:
そうしたら普通は、まずは配属の理由を話してくれると思いますけどね。

宇多丸:
そもそも事前に納得いく説明がない時点で問題だと思うけど、とにかく、言いたいことはすぐに言っていいんだよ、権利として。

最悪ひょっとしたら、その会社が本気で腐りきってて、主張したことによって居づらくなっちゃう、とかもあるかもしれないけど……。

このまま黙ってたって辛いのには変わりないんだから、やっぱり言うことは言ってみたほうがいいんじゃないかなぁ。

どうにも聞く耳持たないようなら、そんときはいよいよ、こっちがさっさと見切りをつけるべき、ってことなんじゃないかと思うし。

こばなみ:
そういう声から会社が変わるきっかけにはなるかもしれないし……。

宇多丸:
いまどきは不当な労働条件に対する世間の風当たりも強くなってますし、だいぶ声の上げ甲斐がある状況になってはきてるんじゃないですかね。

前にも「スイミー」の話があったけど、後の女性たちにとっても、絶対にプラスな前例になるでしょうしね。

アリーさんの職場は、まだまだかなり旧態依然とした意識が支配的なようだから、そう簡単には行かないのかもしれないですが……。

こばなみ:
「女の子は~」とかの言い方も、まだまだあるんですね。

宇多丸:
それって逆にですよ、仮にそういう職場に僕みたいな非力な男性がいたら、「男のくせに」とも間違いなく言われるんだろうから。

男性にとってもすごく抑圧的に働く考え方だと思いますよ。

こばなみ:
そもそも力があるかどうかを性別のせいにすることないのに。

宇多丸:
前から僕は言ってるけど、トップアスリートレベルの、つまり人間という生物が発揮できる運動能力のギリギリ上限、みたいな話をしてるんじゃない限りは、普通に非力な男性もいれば腕力が強い女性もいるわけで、あえて性差を前提にする意味あんのかな、日常生活ではほとんどそこって問題にならないはずじゃないのかな、と思うんですよね。

常に力比べしてるわけじゃないんだから。

これだけあらゆる局面での機械化が進んだ社会であればなおさら、そこを性別で区切る意味はさらに薄まってゆくだろうし……。

こばなみ:
時代や社会は明らかに、そっちに向かってると思いますしね。

宇多丸:
もっともアリーさんの職場はそれこそ「常に力比べ」が要求される環境のようだから、本来は当人の適性を厳密に精査して配置されてしかるべきですよね、やはり。

とにかく基本は、どんな小さな不満でも、言っていいんです!

給料安いんですけど、とかも含め。

もちろんたとえば、男子社員の差別的な言い草が非常に不快なんですが、とかもそうだし。

全部それは、労働者としての権利だから。

で、その権利を無視したり抑圧しようとする者に対しては、公的/法的な対抗手段も必ずあるはずなんですよ。

こばなみ:
普通の会社なら、会社側もちゃんと説明すると思いますよ。

自分も聞かれたら答えるようにしているし、配属なんかはその理由や過程を話すようにしていますよ。だし、いまどきは労働者の主張のが強かったりしますしね、ホントに。

とはいえ、さっき宇多丸さんが言ったみたいに会社や上司に言っていいんだけど、言えないっていう人も、まだまだ多いのかもしれません。

まずは上司に言ってからですが、それでなんともならなかったら窓口に相談という手段もあると思うので、紹介しておきますね。

厚生労働省の「総合労働相談コーナー」の石川県の案内はこちら

電話して聞いてみたところ、もちろんトラブルの相談もできますし、「配置換えをしてほしい」「納得のいく説明がほしい」「労働条件を改善してほしい」などの要求事項がはっきりしていると、解決に向けて相談に乗りやすいとのことでした。

ちなみに今回のお悩みは、男女雇用機会均等法のQ&Aのところの、権限の付与が均等ではないというものに類似するのかなと思いました。それ以外にもたくさん問題はあるけれども、声をあげることで少しずつでも前進してほしいし、上司側の自分にもできることがまだまだあるなと身に染みました。

読者のなかにも上司側の方もいると思うので、歩み寄って一緒に解決していけるといいですね。



【今週のお絵描き】

画・宇多丸



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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

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女子部JAPAN こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。



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