疲れているときに友達から飲みの誘いがあったら、なんと言って断りますか?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室179】
✳️今週のお悩み✳️
私は嘘をつくのが下手です。たとえば土曜日に友達から飲みの誘いがあったとして、疲れてるので家で休みたい場合は、宇多丸さんやこばなみさんは、なんと言って断りますか? もちろん関係性にもよると思うのですが、疲れてるからごめんとも言えず、嘘をつくとバレたらやだなとも思い、結局ちょっと無理して行ってしまいます。行ったら行ったで楽しいのですが、疲れはとれず、次の日だいたい寝てしまい、やりたかったことができない……というループに。正直に言ったほうがいいのか、それともなにかいい言い方はありますでしょうか?
(もっちり・32歳・東京都)
宇多丸:
もっちりさんは、言い方を変えれば、付き合いがいいってことですよね。
誘われれば行くし、行ったら行ったでちゃんと楽しんでるわけだから、そういう人はやっぱり好かれるし、さらに呼ばれるようになるよね。
こばなみは付き合いがいいほう、悪いほう?
こばなみ:
私はいいほうだと思います。誘われたら基本的には断らない、ってことにはしています。
仕事を始めてちょっとした頃にものすごく忙しくて、でも仕事関係の飲み会の誘いもあって、うわ~どうしよう~って思ってたら先輩に「全部やれ、全部行け」って言われて。そんなの無理~!と思いながらも実践してみたところ、行ったら行ったでいろんな人に出会えたし、すごく面白かったし、あぁよかったなーって。
だから今もそれは根底になんとなくあって、だいたいは行きます。せっかく誘ってもらったんだし!というのもありますね。
もちろん疲れてる・面倒くさいってもありますが、トータルでは行かないより行ったほうが面白い!というのが勝ちます。
宇多丸:
へぇ~。立派な心がけだなぁ……。
それでもさ、本気で疲れきってたり、体調が優れなかったりして、どうしても出かけたくない!ってときだってあるでしょ?
そういうとき、どう断るか。
こばなみ:
親しい人だったら普通に言いますよね。ちょっと今日はゆっくり過ごすわ~、とか。
だって、嘘を考えるのは面倒くさくないですか?
宇多丸:
嘘っていうか……、普通に「用事があって」じゃダメなの?
別に、ちゃんとした仕事とか先約である必要はないんですよ。
それこそ、以前「電話に出る/出ない」の話題になったとき言ったけど、「誰にも邪魔されず落ち着いてゆっくり鼻くそをほじりたい」だって、立派な権利であり「用事」なんだからさ!
それをわざわざそのまんま伝えなくてもいい、というかその義務もないってだけで……、とにかく、こっちの都合は全部「用事がある」っていう便利な表現でひとくくりにして優先させる、ってことで、本来なんの問題もないはずだと思うんですけどねぇ。
そこでさらに、「どんな用事?」とか食い下がってきたりするほうが、どう考えても礼儀知らずでしょ。
ちなみに、こういう発言からもわかるとおり、ぶっちゃけ僕自身は、付き合い、ムチャクチャ悪いほうです!(笑)
わかりますよ、こばなみが言ってるようなことも。たしかに、最初はちょっとめんどくさいなぁとか思ってても、行ったら行ったですごく楽しかったり、身になることがあったりで、やっぱり来て正解!ってなることのほうが多いとは思うんだけどさ。
でもやっぱ、その手前の段階で、ほかにやりたいことややるべきことがすでに山積みなんですよ僕の場合~!(笑)
良くも悪くもひとり遊び慣れしすぎちゃってるというのもあるかもね。
ただ、なんにしても、誘いを断るということ自体に、もっちりさんのようには罪悪感を感じていないというのが大きいかもしれないですね。
こっちにはこっちの、あっちにはあっちの都合があって、それが運よく一致しなかったからと言って、責めたり責められたりする筋合いは、基本的にはないでしょ。
ま、よっぽど親しい間柄の冠婚葬祭とか、「いくらなんでも、そこは多少無理してでも顔出すだろ!」みたいな特別な機会だったら別だけど……。
だから、「嘘」ってカテゴライズの仕方が、まずよくないんじゃないかと思うんですけどね。
「疲れてるので家で休みたい」なんて、無理を押したために心身を壊してしまったりして、後の生活や労働に支障をきたさないためと考えれば、責任ある大人としてむしろ絶対に確保すべき、自己管理の範疇じゃないですか、完全に。
それを「用事」と称するのは、「方便」であって、「嘘」ではない!
そうやってこっちがせっかくやんわりとお断りしてるのに、さらにその「用事」の内訳を確認しようとしたり、断られたことそのものにプンスカしてくるようなヤツらこそが、さっきも言ったけど無礼千万なお子ちゃまどもなんで、こっちがそいつらにそれ以上気を遣うのは、まったく筋違いだと僕は言いたい!
ていうかそもそも、そこそこまともな相手だったら、「ちょっと最近忙しくて疲れ気味なんで、今日はうちで休みたいんです」とかストレートに言われても、心配こそすれ、逆ギレしたり無理強いしたりは、なかなかしないんじゃないかって気もするんですけど。
こばなみ:
友達同士だったら大丈夫そうだけど。
宇多丸:
いや、逆もあるんじゃない?
すごく親しい友人同士で、気の置けない関係だと確信しきってるからこそ、「疲れてるからごめん」にさえ、「え、なんでなんで? みんな疲れてるんだけど!」とか、普通はその手前で遠慮するような一線までズカズカ踏み越えてくる、むしろそれが友達でしょ?と思い込んでる、そんなケースってメチャクチャいっぱいありそうですけど。
たぶん、もっちりさんの交友関係も、そういう圧力が強いムードなんじゃないかな……。
百歩譲って、恋人同士とか夫婦とかなら、なんであれ「ほかの誰よりも、何よりも優先されている」という実感を欲しがられるのも、まぁ全然わかんない話ではないけども。
でもなかには、友人にもそういう、家族レベルの「忠誠」を求めてまわるタイプの人もけっこういて、そういうのがたぶん、厄介なんだよね。
こばなみは、友達に「用事」を理由に誘いを断られたとして、「なんの用事?」とか、さらに追求するほうですか?
こばなみ:
しないですね。よっぽど気になったら聞くかもしれないですけど。
あ、あといま思い出したんですけど、私の場合「仕事があってごめん!」ってのがありました。
どーうしても気乗りしない、そういうときは「仕事」で断ってることはありますね。
宇多丸:
たしかに僕も、「仕事があるから」と言えば、たいていの人は即座に納得してくれる。
ただそれ、職種にもよるんじゃない?
僕やこばなみは、仕事してる可能性がある曜日や時間帯が、外側からは特定できないけどさ。銀行や役所勤めの人だったら、「土曜に仕事なんておかしいじゃん!」って、余計に突っ込まれる種になってしまうかもしれない(笑)。
ま、仮にそうだとしても、そこはなにかを察して、それ以上食い下がってくんなよ大人として……って話なんだけどさ。
じゃあ、「用事」よりもうちょっとだけ具体的な言い訳として、「先約がある」っていうのはどうですかね。
そのうえまーだしつこく、「誰と?」とかウザ尋問が続くようなら(笑)、「親戚が上京する」とかなんとか……、まぁ、具体性が増したぶん、嘘ついてる度合いは高まっちゃうんだけどさ。
こばなみ:
ほかの友達と会うとかはダメですかね。
宇多丸:
いやいやいや、それはたぶんというか間違いなく、追求派が一番カチンとくる、絶対言っちゃダメなやつだと思うよ!
こばなみ:
同僚とかは?
宇多丸:
仕事ニュアンスが入ればまだいいですよ。
そうじゃなくて、友達っていう「自分と同じカテゴリー」のなかで他の人のほうを優先させますっていうのは、おそらくそういう人が一番聞きたくない理由だと思いますよ。絶対ダメでしょ。
どっちにしろ、そもそも嘘つくのが苦手だって訴えてるんだから、嘘要素がどうしても増えてきちゃう先約作戦は、やっぱあんまよくないのかもな。
やっぱりもっちりさんには、わりと正直にアプローチする方向が合ってるのかもね。
下手な小細工するより、普通に「疲れてるからごめん」のほうが、よっぽど摩擦少なめで済むんじゃないかって気がしますよ。
さっきから言ってるように、ある程度まともな人なら、心配したうえですぐ納得してくれるはずだし、一回その方向でうまく行けば、もっちりさんも、「なんだ、そんなに罪悪感を抱くこともなかったんだ」って思えるようになってくるんじゃないですか?
こばなみ:
で、行きたいときは行くという関係をつくっていけたら素敵ですよね。
宇多丸:
あと、これはマナーの範囲だと思うけど、断るときは、「今回は行けないけど、これに懲りずまた誘ってね、絶対だよ!?」とか、フォローを念入りに付け加えるのを忘れずに。
「ホントに絶対だからね!? 誘わなかったら怒るよ!?」とか、逆ギレ風に盛ったっていいくらい(笑)。
こばなみ:
それは大事ですね。
宇多丸:
僕でさえ、一応言ってますからね。
「今後も誘い続けてね! まず行かないけど!」とか……って、それはダメか(笑)。
そういうこと言ってると順当にお声もかかんなくなるんで、ま、ちょうどいいやっていう……。
もちろん、僕がそこまで強気に出れるのは、RHYMESTERの『サイレント・ナイト』っていう超イイ曲(笑)で僕が歌っているとおり、「ひとりがさびしくないのはひとりじゃないからさ/いつだってまた会えると疑っちゃいないからさ」ってことに尽きるんですけどね。
こばなみ:
でも宇多丸さん、そもそもどうしてそんなに付き合い悪いんですか?
宇多丸:
たぶん、事前に先の予定を固めるのが苦手なんですよね。
「そんな先のことなんて、その頃どのくらいやらなきゃならないことが溜まってるかもわからないんだから、決めらんないし決めたくないよ」とかって考えだすと、その時点でもう、なんだかすべてがめんどくさくなってきちゃう。
でも、実際その日その時間になってみると、たとえ忙しいは忙しくても、アドレナリンが出てる状態ってことなのか、ひととおり仕事が終わった後とか、翌日もそこそこ早いのにそのまんまノリノリで遊びに出かけちゃったり、全然したい気分だったりするわけですよ。
そのタイミングでズバッと誘われればもう、即答で「行く行く~!」だよ!
で、結局誰よりも遅くまで飲み続けてたりする(笑)。
つまり、ふだんは超出不精なんだけど、いったん出かけると、今度は「なかなか帰りたがらない派」になっちゃうっていう……、我ながらつくづく、めんどくせーなー!(笑)
これってちょっと、「睡眠状態と覚醒状態」の関係に近いんじゃないかと思うんですよね。
みなさんもわかると思うけど、寝てるときって、なかなか起きたくないもんじゃん。できるだけそのまま眠ってたいし、布団から出たくないし……。
でも逆に、起きてるときって、たとえば、ホントはさっさと布団に入って睡眠時間をしっかり確保したほうがいいことはわかりきってるようなときでさえ、すぐ寝ちゃうのはなんだかもったいないような気がして、ついついテレビ観たりゲームやったり、なんやかんやどうでもいいことを始めては、眠るまでの時間をズルズル引き延ばそうとしちゃったりすることって、ちょいちょいないですか?
眠りの世界にいるときは、起きてる世界になかなか行きたくないし、逆もまた真なりっていう。
それと同じで、同じお出かけのお誘いでも、自宅で寝起きのままパジャマでダラダラしてるときと、それなりに気に入った服着たりして、もろもろ準備万端ですでに外出してるようなときとでは、受け取り方がある意味180度変わってくるんですよ。
実際、外に出てバリバリ仕事中だとか、気分が完全に活動的になってるときのほうが、仕事の依頼もプライベートの誘いも、受ける率が断然高い気がするなぁ、僕(笑)。
こばなみ:
そういう人って少数派じゃないですか?
宇多丸:
そんなことないよ!
実際にどっちが多いとか少ないとかはちゃんと調べたわけじゃないんでわからないけど、一定量は確実にいるよ。仮に少数派だったとしても、だからっていないことにされていいわけじゃないし。
こばなみ:
行きたいか行きたくないか、その約束が今でも先でも、そのときの気持ちのオンオフのタイミングによる、みたいなことですかね。わからなくないけど、私はもうちょっとそこが鈍感でアバウトなのかもしれません。
ちなみに10日前に言われても気持ちが乗ってるときもあるんですか?
宇多丸:
10日先のことは……、ホントのこと言えば、読めないよね。
僕の場合、その週のラジオで扱う映画がどれになるかによって、そこからの時間の使い方が全然変わってくるし、それが決まるのは前の週の土曜深夜、放送中だからさ。基本、一週間のスパン内でしか、厳密にはスケジュールが確定できないんですよ。
そういう独自の事情もあって、ついつい先の予定を決めるのが億劫になっちゃう。
ただまぁもちろん、誘われた要件にもよりますけど、そりゃ。
二つ返事で「行く行く行く~!」な場合だってありますよ、それは僕にだって(笑)。
まぁ今回は、どっちかと言えば人をよく誘う側だっていう読者の方々もたくさんいらっしゃるでしょうから、そういうみなさんにも、僕みたいに付き合い悪く見える人種の心情や言い分もちょっとは知っておいてほしく思い、あえて極端な言い方をしてるところもありますから。
こばなみ:
宇多丸さんは自分で誘うことはないんですか?
宇多丸:
そりゃ普通にあるよ。人をなんだと思ってるんだよ!(笑)
たとえば毎週土曜のラジオ生放送終わりとか、気分も高揚してるし、ゲストやスタッフを飲みに誘ったり、翌日早い仕事がない限りは年中やってますよ。最近だと、スタジオでそのまま宴会するのが定番化してたりするし。
で、当然のことながら、みんな都合が悪くて、今日はじゃあおとなしく帰るしかないか、ってときもあるわけだけど、そしたらそしたで、だったらこれからがっつりゲームできるじゃん!とか、あの映画観られるじゃん!とか、サクッとモードを切り替えるだけなんで。
要は、みんなと遊んでも楽しい、ひとりで遊んでも楽しい、どっちにしても楽しい。
だから、誘い方がしつこいというか、断られると機嫌が悪くなるような人って、ひとりでいる時間ならではの楽しい過ごし方を、あんまり知らないのかな、と。
つまりこれ、誘う側の問題でもあるんだよね、きっと。
もっちりさんだって、「断ったらダメなんだ」と思い込んでしまうような痛い目に遭ってるからこそ、こういう悩みを抱くに至ってるわけでしょ。
それってホントは、もっちりさんが悪いんじゃなくて、そういうプレッシャーを露骨に感じさせるような逆ギレ的な、「断られ方」をしたほうこそ、アンタ大人げないよって話なわけじゃん。
なので、もっちりさんも、受けるも断るも基本こちらの自由なんだ、という大前提は見失わないようにしましょうよ。
こばなみ:
誘う方もホント、気をつけたほうがいいですね。
宇多丸:
あとさ~、思いついたんだけど、土曜夜飲んじゃうと日曜は1日ダウンで週末おしまい、というサイクルに虚しさを感じるなら、「当初、翌日にやりたいと思っていたこと」のほうに友達を引き込んでいく、っていうのはどう? もっちりさんのほうからお誘いをかけてさ。
要は、友達との集まりを「日曜を有意義に使おう会」に移行してくっていう。
こばなみ:
日曜を有意義にする会はとてもいいと思う! 私もやりたいくらいです。
宇多丸:
あと、翌日を無駄にしてしまう事態が避けられればひとまずオッケー、なのであれば、土曜飲みのダメージをできるだけ減らすことを考えてみてもいいかもしれない。
たとえば、飲み会に合流するのを遅らせて、飲んでいる実質時間を短くすることで、絶対酒量も減らすっていう作戦とか、どう? 「土曜はその前にちょっと用事があるから、遅れていくわ」って感じなら、そこまで詮索もされなそうじゃない? 甘いか?(笑)
なんにせよ、もっちりさんみたいなことで悩んでる人って、けっこう多いと思います。
「いい人」だからこそ、余計に疲れちゃったり、傷ついたりしてる。
でも、適度に自分を甘やかしてあげることも、特にそういう繊細な人には、必要なことだと思いますよ。 どうか、ご自愛くださいませ。
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2017年2月11日に公開したものを再編集し、掲載しています。