【東京】祭りで日本を盛り上げるためにサポートする「オマツリジャパン」
日本全国でがんばっている女性を紹介する「のぼり坂47」プロジェクト。今回は、「祭りで日本を盛り上げる」をミッションに、お祭りに関わるプラットフォームを提供する「オマツリジャパン」の代表・加藤優子さんに聞きました。
人手や資金、アイデアなどに困っているお祭りをサポート!
みなさん、日本にはお祭りが年何回あると思いますか? きっとみなさんが想像するよりすごくたくさん開催されていて、年間30万件ほどあると言われています。
そんな日本の文化に根付いているお祭りですが、少子高齢化に伴って窮地に立たされている場合が多いんです。たとえば、人手不足、アイデアがない、お金がなくて宣伝できないなど。オマツリジャパンの仕事は、そういったお祭りを開催する側が困っていることをサポートしていくことです。
私たちは、2020年現在、メディア事業部、公共事業部、法人事業部の3部署に分かれて活動しています。
メディア事業部では、お祭りに参加したい人向けに、さまざまな情報を発信するお祭り総合メディア「オマツリジャパン」の運営やSNSでの情報発信。さらに、お祭り主催者向けの総合サービスサイト「オマツリジャパンリーダーズ」も運営しています。
公共事業部は、自治体や国がお客さん。お祭りを活用して、地域の人を呼び込みたい、外国人を地域に呼び込みたいといったニーズから、私たちに声をかけていただくケースが多いですね。
具体的には、お祭りを活用した観光プロモーションだったり、コンテストやお祭りのツアーなどをプランニングしています。
法人事業部では、民間企業とお付き合いしています。
お祭りって、資金集めやイベント内容に困っていることが結構、多いんです。一方で企業は、人が多く集まるリアルな場所で宣伝活動を行いたい。そこで、私たちが橋渡し役となり、お祭りの資金調達として企業から協賛金の獲得し、お祭りでの企業PRをお手伝い。さらに、各種イベントへなまはげ、獅子舞、阿波踊りなど全国各地のお祭り団体の派遣などを行うなど、ニーズに合わせてサポートしています。
震災直後に訪れた、ねぶた祭りがきっかけ
母の実家が青森県青森市にあり、小さいときから毎年ねぶた祭りを見に行っていたんですよね。だからといって、そのころからお祭りが好きだったわけでもなく、正直、見飽きていたというか……。
でも、2011年。その年もいつも通り、母方の祖母の家に行ってねぶた祭りを見に行ったんです。正直、青森に着いたときは、盛り上がっていない印象を受けました。
震災直後でしたし、青森は被災地でもあったので、“自粛モード”という空気があって。わざわざ青森県外から見に行こうと考えている人も少なかったようです。
ところが、お祭りの時間になったら、街に人々がたくさん出てきた! しかも、みんながお祭りを心の底から楽しんでいるんです。
その光景を見て、「お祭りって、なんかすごい!」と感動したと同時に、お祭りの持つ力に気づいて一気にお祭りが好きになったんです。
それが「オマツリジャパン」をつくるきっかけとなったできごとですね。だからといって、当時はお祭りをビジネスにしようとは思っていませんでした。
でも、ねぶた祭りでの体験をきっかけに、友だちと一緒にお祭りのお手伝いをするようになったんです。そのなかで、多くのお祭りが課題を抱えていることに気づきました。
「若者の力で、お祭りをサポートできたらな」という思いで結成したチームが「オマツリジャパン」です。
最初はFacebookでコミュニティを立ち上げて、一緒にお祭りに行ったり、お手伝いをするチーム=サポーターを作りました。徐々にサポーターが増えていき、とある商店街から「補助金を取ったから、1年間お祭りのサポートをしてくれないか」というお声がけが。それで、一念発起して勤めていた会社を辞め、2015年に株式会社化しました。
ただ当初は全然うまくいかなくて……。
子どもや若い人をたくさん呼び込みたいけどアイデアがない、当日のスタッフが全然たりない、そもそも事前の準備もできない状態だし、お金もないし、このままじゃお祭りがなくなっちゃう…。
困っている主催者の話を聞いて、なんとか解決したいと思い、気合を入れて半年くらいかけてお手伝いするんですけど、いただけるのはわずかな金額で(笑)。
会社の収入としてはとてもシビアな金額ですし、そもそも資金がないなかで捻出してくれたのがわかるからもらいにくい! 週に1回の頻度で半年間通うことになるので、サポートできる地域も限られますし、たくさんの依頼を受けられません。
「お祭り自体をお客さんにする」というビジネスモデルがダメだと気づきました。
そこで、「祭りをサポートしたい人をサポートする」というビジネスモデルに転換。たとえば、人が集まる場所で効率的にPRしたい企業からお金をもらってお祭りに還元するというようなモデルです。
そして、多くのお祭りやビジネスパートナーと出会えるよう、品川や中野、三鷹といった地域のビジネスプランコンテストに出て、自分たちの活動をアピールするという作戦を取りました。
2016年には、起業家を応援する「KIRINアクセラレーター2016」に受賞し、資金を援助してもらえることに!
ようやくこのころから、それまでの社会人サークルのようなノリから、ビジネスとしての団体へ変わっていきました。
レジャーやランチにいく感覚で、お祭りに行くようになってほしい!
今後の目標は、もう少しみなさんがお祭りに行ってくれるように、お祭りのハードルを下げていきたいですね。
みなさん、小学生くらいまではお祭りに行っていたと思うんです。でもだんだん行かなくなって、「最近、お祭り行ったよ!」って人はなかなか少ないのではないでしょうか?
特に小さな子どものいる人にとっては、お祭りってハードルが高いですよね。授乳スペースはないし、トイレがきれいなわけでもないし、ましてや夜に開催されることが多い。ファミリーで行くイベントだと思っていない人もいるかもしれません。
でも、お祭りはタダで遊べますし、食べ物もある。だから、動物園などのレジャーやランチに行くような感覚でお祭りに行けるようになってほしいんですよね。
どうやったら子どもにもっと来てもらえるお祭りになるのか私たちも考えてますし、子連れでお祭りにいく方法についての記事もたくさん発信しています。
そういった活動がつながって、私たちの世代から、どんどん「お祭りに行く」ムーブメントを作りたいですね。
ちなみに今、新型コロナウイルスの影響で各地のお祭り開催が中止になっていて、お祭りを楽しみにしていた担い手さんたちは意気消沈しています。お祭りのときの収入を見込んでいたお店の人も売上が下がってしまうし、すごく不安だと。
そこで、私たちがなんとかしたいと思って考えたのが、オンライン上で開催する「オンライン夏祭り2020」。2020年8月15日(土)に実施する予定です。中止になってしまった全国の有名な踊りのお祭りをオンライン上に集めて、家で一緒に踊ることができたり、踊り教室や、ワークショップ、お祭り専門家による対談、お祭り開催地のおいしい食が楽しめるようなショップを集めるなど、さまざまな楽しいコンテンツを考えています。
今年の4、5月には試験的に、川崎市の奇祭「かなまら祭」や大阪新世界の己を祭る「セルフ祭」、高円寺の「阿波踊り」を「エア祭り」としてオンライン配信をしたんです。そうしたら、結構反響があって!
オンライン祭りだと現地に行かなくてもいいので、おじいちゃんやおばあちゃんから、小さい子どもがいる方まで、そのお祭りを体験できるのがメリットですね。遠方でなかなか行けなかった人にも、楽しんでもらえたら嬉しいです。
コロナのおかげではじめた事業だったんですけど、オマツリジャパンの今後の目標でもある「お祭りのハードルを下げる」に近づく取り組みですし、今後もスタンダードにやっていこうかなと考えています。
自分が感じていることを、言葉にしてまわりに伝えることも大事
今、私には1歳の子どもがいて、現在、第2子妊娠中です。
会社のみんなは、やさしくて助けてくれるんですけど、男性も多い職場。だから、どれだけ子育てと仕事を両立させるのが大変なのか、第1子が産まれたあと、社員のみんなにプレゼンしたことがあるんです。
私も実際、ひとり目の子を産むまで、その大変さが全然わからなかったんです。社内ですでに子育て中の人もいましたが、体験しないとわからないことだと思うので、それを共有しようと思いました。
具体的には、自分が妊娠前後の体力をグラフにしたり、24時間スケジュールをつくってみたり(笑)。
もともと気を遣ってくれるメンバーでしたけど、何が大変かを深く理解してもらえるように。今後も、子育てする社員は増えていくと思うので、こうやって言葉にして伝えることって大事なことなのかもと思った体験です。
★好きな言葉★
これは、オマツリジャパンのミッションです。これまで、基本方針は何度か変わってきたんですけど、このミッションだけはブレることなく、オマツリジャパンを思いついたときからずっと変わっていないものなんです。
私が震災後にねぶた祭りを体験したときのように、お祭りが人々を、そして日本を盛り上げると信じていますし、お祭りをもっと盛り上げることで、日本が盛り上がると思っています。
祭りの火を絶やさないためのお祭り専門のサポート会社
「オマツリジャパン」
「祭りで日本を盛り上げる」をミッションに、祭りに関わるヒト・モノ・カネ・情報をつなげるプラットフォームとして、各地の社会課題の解決を目指します。
また、常に祭り目線で考え、祭りが後世まで続いていくようなサービスを提供し、祭りだけではなく、各分野の知識と経験を備えた専門家として、祭りを楽しみ心から敬意を表します。