好きな人に彼女ができたと知りました。それは……、私の親友でした。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室349】
✳️今週のお悩み✳️
夏頃、好きな人ができたのですが、最近、その人に彼女ができたと知りました。それは、私の親友でした。もともとその親友と私は大学の同級生で性格はあまり合わなかったのですが、お互いお酒と美味しいものが好きで、よく遊びに出かけ、気づけばもう7年、お互い(おそらく)一番距離の近い親友になっていました。好きな男性(Mさん)は、2年ほど前に知り合ったのですが、親友と職場(飲食業)が同じで、親友とMと3人で飲みに行ったり遊ぶ機会が多く、この半年ほどでかなり仲良くなりました。多いときは週2~3日は会っていました。Mのことが好きだなと思うようになったものの、友人関係のバランスを崩すのも怖くなかなか積極的な行動ができなかったのですが、秋頃からは2人だけで飲みに行ったり、私なりに頑張ってみていたつもりでした。相談こそしていませんでしたが、親友は私のMへの気持ちに気づいていたと思います。しかし、つい先日、その親友を含めた数人の友人たちと飲みに行った際、私が先に帰るときに親友に呼び止められ、そこで初めてMと付き合っているということを打ち明けられました。聞けば一カ月以上前から付き合っていたそうです。それ以来2人とは会っていません。Mへの気持ちは、まだなくなったわけではありませんが、私の行動力不足をただただ後悔するばかりです。むしろそれより、親友に対するわだかまりが大きいです。嫉妬もあると思いますが、もう少し早く言ってほしかった、私の気持ちを知っていたなら相談してほしかったという気持ちです。また、私にとって、一番いろいろなことを話せる親友だったこともあり、そういった人がいなくなってしまったことが正直つらいです。親友とは交友関係もかなり近かったので、誰かに相談するにもしづらいです。今後、2人と関係を修復することはできるでしょうか。それか、もっと早い段階で打つ手があったのでしょうか。
(たんば・りん・25歳・専門職・沖縄県)
宇多丸:
これはなかなかつらかったね……、お気持ちお察しいたします。
あまりにキツいし気まずいしで、親友に「出し抜かれた」ように思えてしまうというのも、痛いほどわかる。わかるけれども……。
わかるけれどもやっぱり、僕ら部外者がことのあらましを聞く限り、親友やMさんが悪いわけじゃないし、だからと言ってたんば・りんさんがなにか間違っていたわけでももちろんなくて、要は誰のせいでもなく「なるようになった」だけ、恋愛ってそういうもんでしょう?という感じはするんです、どうしても。
親友側からしてみれば、仮にたんば・りんさんもMさんに好意を抱いていることをうっすら察していたとしても、やはりはっきり言葉で伝えられたわけではないから、改めて相談しあうタイミングなど作りようもなかったのかもしれないし、むしろ、そこをうすうす感じていたからこそ切りだしづらかった、みたいなのも、人情として大変理解できるあたりだと思うんですよね。
もちろん、最初からまったく何も気づいていなかった、という可能性もあるし……、事実たんば・りんさんも、親友さんのほうの思いは、まったく察知できてなかったくらいなわけだから。
とにかく、悪意があった的に決めつけていい材料は、別にないと思うんです。
こばなみ:
たしかに、誰も何も口に出してないんですもんね。
宇多丸:
あえて言えば、2人で飲みに行ったりしてたMさんが、どの程度気のある態度をとっていたのか、というのは問題にしうるところではあるのかもしれないけど。
ただそれだってさ、たとえば一番悪めの想定で、Mさんが両方にいい顔してた、言っちゃえば天秤にかけてた時期が仮にホントにあったのだとしても……、それでさえも、あくまでMさんの、勝手の範囲ではあるわけじゃん? お相手を吟味する権利は誰にでもあるわけだから。
ま、好きだよとか付き合おうとか実際に口に出してたり、具体的な色恋行動に出てたならそりゃ悪質だけど、この場合そうではないんだもんね、たぶん。
そもそも、好きになっちゃうとかくっついちゃうとかって、当人たちにコントロールしきれるものでもないわけだしさ。
まぁ、20代後半から30代前半ぐらいで独身同士って、お金もそこそこ持ってるうえで自由もあるっいう時期だからこそ、僕がよく言う「第二思春期」的なことになりやすくって。
色恋のすったもんだも、そりゃありますよ。青春だよ、僕の歳から見ればさぁ!(笑)
とにかく僕は、誰かに落ち度を求めるような話には、どうしても思えないんですよね。
たしかに今は親友とMさんを同時に失ったような気分になってるだろうし、本当におつらかろうと思いますけど……、そこで生じた悲しみを2人への恨みに転嫁しても、誰も何もいいことにならないと思うんですよ。
それこそ、7年も楽しくやってきた親友と袂を分かってしまうほうが、いっときの失恋の痛みよりも、ずっと悲しいことじゃない?
こばなみ:
たしかに、せっかくできた親友ですもんね。
宇多丸:
ぶっちゃけ、Mさんと親友だって、いつまで続くかわかんないんだしさ……。
だから、たんば・りんさんがその親友さんのことをどの程度大切に思っているかにもよるけど、僕ならやはりこのまま黙って、2人との関係を維持するのを選ぶかな。
どうしてもモヤモヤが取れないんだったら、一度親友と2人で腹割って話すというのもありかもしれないけど、そしたら向こうは向こうで言い分もあるだろうし、それはひょっとしたら、たんば・りんさんが思っていたとのは違うもので、余計に傷つくことになる可能性もある。
そしてそこから先は、今度は向こう側に、それまではなかったわだかまりが生まれてしまうかもしれない。
こばなみ:
新たなものが勃発しそうですね。
宇多丸:
それでもいいと思えるほどなら、ってことだよね。
逆に、すごいキレイごとを言うならばさ、好きになったMさん、大好きな親友、好きな2人が一緒で幸せなら私も幸せ!くらいにいずれ考えられたならば……。
こばなみ:
それは、素敵な考え方!
ただ今は、「つらい」が先行しすぎちゃってるんでしょうね。
宇多丸:
もちろん、つらいはつらいよね……。
それでたんば・りんさんが影で涙を流していることも2人は知らずにいい気なもんだ、ではあるんだけど、その涙はきっと無駄にならないと思いますよ、ここから先の人生。
ある人と付き合う可能性がいっとき消えたということは、そのかん、他の人と付き合ったりする可能性が広がったとも言えるわけだから。
実際それで次の恋に落ちてみたら、あのときあっちと付き合いだしてなくてよかったー!とか、よくあることでもありますよ。
ちなみに、文の最後にある、「もっと早い段階で打つ手」があったかどうかだけど……、これに関してもう、無論たんば・りんさんも百も承知でしょうが、今から考えてどうなるもんでもないとは思うんだけど。
こばなみ:
実らなかったからこそ、そう考えてしまう気持ちはとてもよくわかりますけども。
宇多丸:
ただそういう、「あのときこうしてれば」的な悔恨って、『映画カウンセリング』って本の最後の章でも書きましたけど、言ってみれば「過去に向けて開かれてた希望」みたいなもので、決して実現しないかわりに決して壊れない、限定的極まりない我々の人生における、実はせめてもの救いでもあるんじゃないか、と僕は考えていて。
密かに、ときどき思いかえすぶんにはいいんじゃない? 一種のエンタメとして(笑)。
こばなみ:
だいぶ前に話していた、「思い出をねぶねぶする」の話と似てます?
宇多丸:
そうそう、まさにそれ。
僕はとにかく、そういうほうに気持ちを切り替えていったらどうかと思うけど、どう?
女性としては、友達にぶっちゃけて言っていくほうがいい?
こばなみ:
私は宇多丸さんと一緒ですね。
そう言っている自分に虚しさや悲しさが募ってきてしまいそうで、きっと耐えられない。
他のことだったら、直接言った方がいいじゃんと思う派ですけど、恋愛のことは説得してとか納得してとかでもないから。
経緯を明らかにしたからって、諦められるもんでもないと思うんですよね。
宇多丸:
だって私が先に好きだったじゃん!とか言っても、困っちゃうだけだもんね。
そんなのほじくり返しだしたら、「いや、私のことが最初から好きだったってMは言ってるよ!」とかなりかねない。
こばなみ:
そんなの自分がもっと悲しくなっちゃうじゃないですか……。
宇多丸:
せめて、たんば・りんさん側の気持ちの整理が完全についた段階じゃないとダメかもしれないね、直接そんな話題を持ちだすのは。
それはすぐかもしれないし、何年後かもしれないけど。
ま、もうちょっと気が楽になるまでは、今はあえて疎遠でいるとかでも、ぜんぜんいいんじゃない?
そのうちほとぼりが冷めたら、たんば・りんさん含めて、登場人物全員の気持ちやテンションも、またまったく違うものになってるはずだし。
そのときになって改めてご自分の思いと向き合って、考えてみればいいんじゃないですかね。
とにかく今回は、残念だったね……。
こばなみ:
誰かに話せないのもつらいですしね……。
でも、ちょっとお休みして、自分の気持ちが整った頃に、また別のいい人に出会う、なんてこともあるでしょうし。
時間が解決してくれると思います!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2021年1月30日に公開したものを再編集し、掲載しています。