冗談っぽい顔だからか、真剣に注意しているのに部下からはナメた返事が……。どうすればシャキッとしてくれる?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室251】
✳️今週のお悩み✳️
自分で言うのもナンですが、私は冗談っぽい顔なんだと思うんです。表情がギャグっぽいのかもしれません。たとえば夫にお互い働いているのだから洗い物はやってほしいなど、真面目にお願いしているのに「またまた~」とはぐらかされたりします。会社でも後輩が提出物などが荒かったり、怠けているときに、真剣に注意しているのですが、はーい!のようなナメた返事が。シャキッとはしてくれません。同じことを別の人が注意するとシャキッとなるのに……。そのたびにわたしは寂しいやら情けないやらで、悲しくなります。たしかに、普段から冗談をよく言っているからかもしれません。でも「本気で言ってるんだけど」など、説明もしているんですよ……。どうすれば、私の言ってることをきちんと受け取って&受け入れてもらえるでしょうか。
(もみあげ太・38歳・千葉県)
宇多丸:
こばなみとか、ぶっちゃけこの傾向、あるタイプじゃない?(笑)
こばなみ:
ありますねぇ。ナメられたりは、ないと信じたいですけど、真剣にとらえられない傾向はあるのかも。怒ってるのに怒ってるように受けとられない。
宇多丸:
そういうときはどうしてるの?
こばなみ:
なんでわかってくれないんだろう?という悶々は当然ありますよね。
で、言い方をいろいろ試したりはしてます。顔の件でいうと、まず歯を見せないようにするとか。私の場合、歯が出てることがちょっとひょうきんな感じなのかなと自己分析しているのですね。なので、斜め下を見ながらなるべく歯を隠して小さい声で言うとか。
宇多丸:
それは部下にも、パートナーにも?
こばなみ:
さすがにパートナーにはちょっと恥ずかしくなって、ギャグっぽくしちゃうときもありますけど(照)。
宇多丸:
で、その歯を見せない作戦は、効果あったの?
こばなみ:
あったと信じたい!
小さい声で目を見ないで歯を隠して話しているとき、あの人は本当に怒っているのだ、みたいな。
宇多丸:
そんな感じでもみあげ太さんも、自分なりの強面シフトを模索してみる、ってことなんですかね。
こばなみ:
宇多丸さんの強面シフトは?
宇多丸:
僕の場合はそもそも、どっちかと言うとキツめな印象を与えがちなのを気をつけなきゃならないほうなんで……(笑)。
あえて言えば、本当に怒ってるときほど声を抑えて、敬語になったり、とかかな。
こばなみ:
こえ~!
まぁだから、「同じことを別の人が注意するとシャキッとなるのに……」ってのは、気持ちわかりますよ。 ただ、大きな声とかで叱ったりしてるのは、シャキッとさせられていいなと思う半面、自分が叱られる側だと考えると、「はい、また出た~!」とも思っちゃうこともあるから、効果としてはどうなんでしょうか。
宇多丸:
たしかにね。
大声で怒鳴られたりしたら、一瞬シャキッとはするかもしれないけど、それは単に「怖いから」反射的に従順になってみせただけで、別に言ってることに心底納得したからではないかもしれないよね。
日頃からおこりんぼの人なんか、周りからしたら「あ~また怒ってる」って感じになるだけで、言ってる内容自体は大して耳に入ってきてないとか、わりとよくあることだと思いますよ。 みんな一見神妙に話を聞いてる風だけど、頭の中は全員「早く終わんねーかなー」って思ってるだけ、みたいなね。
逆に、ふだん滅多に怒らないような人が、改まって言うからより効果的、みたいなパターンもいっぱいあるはずでしょ。
それにさ……、もちろんもみあげ太さんにとっては深刻な悩みなんだろうからのんきなこと言うなって感じかもだけど、周囲の人間からすれば、場をどうしても和ませてしまうっていう人のほうが、いっつもピリついてて一緒にいると気が休まらない、みたいな人よりは、ずーっと好ましいのは間違いないですよね。
改めて考えてみれば、そもそも、そんなに思い通りに人に話を聞いてもらえて、ちゃんと理解もしてもらえてる人なんて、そうそういるもんですかねぇ? たいていは、ナメられてるか、怖がられてるか、どっちかでしょ。
もっと言えば、僕含めてたいていの人は、無意識的にせよ意識的にせよ、そのどっちかに他人をカテゴライズして安心しようとしてしまうものだろう、とも僕は考えてますけど。
とにかくね、人になにかをちゃんと伝えるって、やっぱりものすごく難しいことで。 普通は大半伝わってない、と思っといてちょうどいいくらいのもんなんですよ、たぶん。 相手の人数が増えればなおさらで。
僕も、こうやって放送上でいろんなこと言うような仕事してると、やっぱりどうしても、「どれだけ言葉を尽くして自分の考えを伝えようとしても、結局は少なくない割合の人が、基本的には自分の聞きたいことや、あらかじめ思ってたことと合致することしか、聞き入れようとしないもんだよなぁ……」的なことを、思い知らされる局面も多々あって。 それこそ「寂しいやら情けないやらで、悲しく」なったりしてますよ、年がら年中。 まぁ、それはお前の伝える力量が不足してるせいだろ、って言われたらそれまでなんだけどさ。
ひとつ言えるのは、少なくとも毎日ラジオやってるような人はやっぱ、ちょっとだけナメられてるくらいがちょうどいいんじゃないか、とは思ってますけど。
こばなみ:
あと、受け取ってもらうというところで言えば、何度も何度も同じことを言うというのは、やっているかも。
宇多丸:
ま、基本ですよね。
何度も言ったよね、という攻撃ポイントも増えるし。
こばなみ:
あと、何度も同じことを言ってるのに、伝わってなくて悲しい、とかも言うかな。
宇多丸:
「悲しい」はいいんじゃない? 本気で怒ってるように見てもらえない派にとっては特に。
こばなみ、悲しい表情、うまいじゃん!
こばなみ:
あと「残念です」というキラーフレーズもあるかも。
自分も、ふだん気のいい人にそう言われたら、やばいって心底思うし。
宇多丸:
こんなにいい人を悲しませてしまった……っていうのは効くかもね。
そう言えば前の相談でも、「実年齢より若く見られるので仕事ではナメられる」っていうのがあったよね。 そのときも、無駄に偉そうなバイブス発散しまくってるようなタイプより、ナメられがちなくらいのほうが人として好感が持てるし、実際それで仕事はちゃんとできるんだったら、ギャップ込みで一番オイシイ評価が得られたりもするんじゃないか、みたいな話をしましたけど。
ということで、それこそ人を不用意に傷つけてしまうこともありかねない舌鋒の鋭さなんかより、「パンチ力、もうちょい上がらないかなぁ~」くらいの愛嬌があるほうが、人としては絶対いいですって、やっぱり! まぁ、本当に叱責が必要と思われるような場面では、こばなみの例を参考にしていただきつつ……。
こばなみ:
自分なりの強面シフト、私ももう少し探ってみます。お互い、がんばりましょう!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2018年9月15日に公開したものを再編集し、掲載しています。