好きな人に異性として見てもらえる方法は?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室232】
✳️今週のお悩み✳️
好きな人に異性として見られるにはどうしたらいいのか悩んでいます。先日、バレンタインをきっかけに知り合って半年ぐらいになる相手に告白をしたところ、「気のおけない関係だとは思っていたけど、いままで異性として見たことがなかったから困惑している」とまず最初に言われました。そして、経営している会社が転換期にあること、加えて基本が遠距離になることを理由に付き合えないと言われました。付き合えないことも確かにショックなのですが、異性として見られていなかったことに「またか……!」という気持ちでした。というのも、約一年前に少しお付き合いした相手にも「付き合ってみれば変わると思ったが、やっぱり異性としてみることができなかった」と言われ、友達に戻ったことがあったからです。その一方で同性の友人からは「ここもは私達の中でも思考が女子だよね、乙女だと思う」と言われています。外見もボーイッシュな感じではありません。なのになぜか、好きな人に異性として見られないのです。小学校から12年間女子校育ちのひとりっこで、異性に対しては潜在的に身構えているところがあるので、女子っぽい部分がなかなか出てこないのかもしれません。また、異性は基本的に怖いと思っているので、恋愛については、「信頼できてなんでも話し合える親友の延長のような関係」が理想だと思っています。でもそうすると相手には異性に見てもらえないジレンマ。まだ彼を諦めきれない気持ちも強いのですが(ちなみに電話で断られたのですが、そのあともたわいもない話で朝になるまで話し続けました)、もしこれがダメになったとしても、この問題が解決しない限り次のお相手にも同じことを言われると思います。好きな人に異性として見てもらえる方法、ご意見いただけましたらとても嬉しいです。よろしくお願いします。
(ここも・25歳・東京都)
宇多丸:
こばなみはこんな風に、要は「恋愛対象として見ることができない」的なこと言われたことある?
こばなみ:
ありますよ。私はあひゃひゃ系ではあるので、ふだんからけっこう言われますね。お前とは風呂入れるな~とか(笑)。あ、でも好きな人からも1回ありましたわ。で、友達のままでいいじゃん!とかね。
宇多丸:
まぁホントに友人同士なら、そういうぶしつけな物言いもむしろ親愛の情の表れだったりするだろうから、別にいいかもだけど。
当然ながら、曲がりなりにもこっちが恋情を抱いてる相手に言われたら、そりゃかなり傷つくよね。
もちろん僕だって、どちらかと言えば「恋愛対象には見られない」ことが多い側の人間ですから、気持ちはわかりますよ。 特にやっぱり、飲み屋やクラブで、露骨にモテるタイプの人がそばにいたりすると、これは男女問わず感じたことある人多いと思うけど、「カウントに入ってない」ような扱いを受けて密かに傷つくとか、普通に今でもあったりするよ。
こばなみ:
あるある。合コン行ったときとか、透明人間とかギャグ要員とか!
宇多丸:
ただ、だからって……、ここが重要なんだけど、「すべての人から恋愛対象に見られない」わけじゃないっていうのも、また確かなことなんですよ。
つまり、なかには物好きにも(笑)僕らみたいなのこそ好みだって言ってくれる人もたまにはいたりするってことを、経験則上わかってもいるから、別にそこまで絶望することもないっていう。
ここもさんも、さすがに二人連続で同じこと言われたら凹むのもやむなしではあるけど、あまり彼らの意見がすべてだとは思い込まないほうがいいんじゃないかな。 それこそどんな美人だって、こっちはタイプじゃないからしょうがない、みたいなことは全然あり得るわけだから。
こばなみ:
かっこいいけど全然タイプじゃないってこともありますしね。
宇多丸:
逆に言えば、あなたはタイプじゃないですって人のところにいくらグイグイ行っても、徒労に終わる可能性が高い。
そう考えると、自分のことを好きになってくれる人がいそうなあたり、言わば「魚群」を探知するセンサー(笑)を磨き上げていくってことなんじゃないかな、大事なのは。 その意味では、ここもさんはこれまでのところ、持ってる道具やエサとマッチしない釣り場にばかり糸をたらしてるから、当然お魚も食いついてこない、みたいな感じなのかもしれないですよね。
要は、「好きな人に異性として見てもらえる方法」なんてことを考えるより、最初から「異性として見てもらえる人を好きになる」よう心がけたほうが、少なくとも効率がいいのは間違いないはずだよね。
まぁ言うまでもなく、そう合理的に考えて済む話でもないのが恋愛というものでもあるわけですけど……。
そこ行くと僕とかはもう、「オレの良さがわからないようなセンスの悪いヤツはそもそもイヤ!」っていうような、完璧に自分本位な思考法を長年かけて身に染み込ませてますから! ま、あんまり人には言わないほうがいい考え方なのは間違いないですけど……(笑)。
こばなみ:
あと、友達として仲良くなったのを「好き」に思っちゃうってことはあるのかも、ですね。
全然色恋沙汰がないと、いま現在仲がいい相手のことを好きって思っちゃうことってありますから。
私も仕事で仲良くなって気が合う人とかにそう思ったこと、ありましたよ。
宇多丸:
なるほどね。「マイメン!」な感じと「好き!」って、そこまで明確な線引きができるもんでもないもんね。
ここもさんの場合、「信頼できてなんでも話し合える親友の延長のような関係が理想」って考えが先に強くあるから、好意を抱いている相手に対しても、それこそアヒャヒャ系というか、ハナから色気要素を過剰に排除した振る舞いをしがちで、それゆえ早い段階で完全友人フォルダに入れられてしまいやすい、というような傾向はやっぱりあるのかもだけど。
ただ、仮にそうにしたって、僕はやっぱり、自分は「常に」そうなんだ、みたいな決めつけはする必要がないし、するべきじゃないとも思いますね。 男女を入れ替えてみればわかりやすいと思うけど、フェロモンダダ漏れ、色恋沙汰の匂いを常時プンプンさせてるようなタイプは逆に苦手!って人だって、普通にたくさんいるでしょ?
こばなみ:
いるいる! 色っぽいのが気持ち悪いとか思ってる男子っていますよね。
宇多丸:
女性だって、みんながみんな斎藤工に抱かれたいと思ってるわけじゃないでしょう(笑)。
むしろ一見そういう色っぽいこととは無縁そうな人にこそグッと来る!とか、そこまで少数派なスタンスってわけでもないんじゃないかって気もするくらいで。
だからとにかく、なんであれ事前の決めつけほど、人や物事との良き「ご縁」を遠ざけてしまうものはないので……、ここもさんも、もうちょっといろんなとこに行って、いろんな人に会って、自分に合った漁のやり方、みたいなものを探してみたほうがいいんじゃないかなぁ。経験が乏しいなら、本来なおさらそうなはずだよね。 たとえばその過程で、ご自分なりのセクシャルなムードの醸し出し方、みたいのが見つかってくるかもしれないし……、こばなみで言う「袖引っ張り作戦」的な(笑)。
こばなみ:
私も一般的モテ枠では間違いなくないので、大海へ!
宇多丸:
そう考えるとさ、努力しないでモテまくるなんて、逆につまんなくない?って気がしてくるくらいで。
糸さえ垂らせばちっこい魚がいくらでも食いついてきちゃう、釣り堀にいるようなもんなんだもん。
それに比べて僕らみたいな遠洋漁業派は、大海原のど真ん中で、全力尽くして魚影を追っかけて……、だからこそ、ごくごくたまーにだけど、大物一本釣りキターッ!みたいな、超弩級の感動があったりするわけでしょう。
もっと言えば、実際んところはぜーんぜん魚なんか獲れてなかったとしても……、それでもどこかにはまだ必ず、自分にうってつけの漁場があるはずなんだ、と思いながら海に出てるんなら、その旅自体が楽しいじゃん!
なんつーか、そんな感じで……、要は、もっと自分を肯定しながら生きませんか、っていう話ですよ。
そのためにはまず、他人からどう見られるかの前に、自分自身が、自分の魅力にしっかリ気づいてあげないと。 それができて初めて、努力のしようもあるし、「じゃあ、そういう私を好きになってくれそうな人って、どのあたりに生息してるんだろう?」的に、魚群探知センサーも働かせられるわけだから。
ちなみに、その彼には僕、実はかなり引っかかる部分があって……、告白を断るにしたってさ、「異性として見たことなかった」なんて、後に結構なダメージが残るのがわかりきってるようなこんなキツいこと、言う必要あるか? 「会社が大変な時期で遠恋してる余裕がない」でいいじゃん! てか、そういうときこそ例の、「ほかに好きな人がいる」っていう、フラれた側にも一応の退路を残す常套句でも使っとけばいいだろ! 事実ここもさんはそのせいで、恋愛に関して決定的に自信をなくしかけるところまで行っちゃったわけだからさ。
ということで、その彼こそ、100歩譲って気のおけない友人ってことならまだいいんだろうけど、パートナー候補としては、デリカシーがなさすぎ、失格だよ! ……と、とりあえずは考えとけばいいんじゃないですかね。
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2018年4月14日に公開したものを再編集し、掲載しています。