デートを重ねても毎回付き合うに至らない! 私には何が足りないの……?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室147】
✳️今週のお悩み✳️
私は独身実家暮らしのアラサー女子です。そろそろ家族から会社からの風当たりが強めになってきて結婚しようかな……と思い始めたところです。私はまったくモテない訳ではないですが、モテる訳でもありません。男性から食事も誘ってもらえるのですがデートを重ねても付き合うに至りません。理由がまったく心当たりがなく謎のままです。デートを重ねるだけで付き合わなかった人は何人いたことか……(向こうから誘ってきてくれて体の関係もありません)。私には何が足りないのでしょうか?
(チャーシュー先輩・31歳・群馬県)
宇多丸:
僕はまずやっぱり、大前提として、「家族から会社からの風当たり」なんてもんに屈して、人生最大級の重大な決断を慌ててしようとするってこと自体、ちょっとどうなのって気がどうしてもしちゃいますけどね。
百歩譲って家族はまぁ、この人の場合自立もしてないわけだし、あいつらの望みも一応考慮に入れといてやるか、っていうのもわからないじゃないけども……、なんだって人の人生のことをさ、会社の連中なんかに口出しされなきゃなんないの? 関係ねぇだろ!
こばなみ:
まぁでもありますよね……、直接言われるとかだけじゃなく、そういう雰囲気っていうか。
宇多丸:
いまどき、特に職場で女の人に「適齢期」プレッシャーかけたり、そういうことでからかったりするのって、普通にセクハラの範疇だと思ってたんですけど、違うの?
みなさんもっと本気で怒ったほうがいいんじゃないの?
ともかくさ、男女関係なく、てめぇの狭い了見を振りかざして人の生き方をとやかく言うようなバカどもに、わざわざ従ってやることないだろって思うんだけどなぁ……、少なくとも、そんなんで焦って相手探ししたって、まずロクなことにならない気がしますけどねぇ。
こばなみ:
とは言え今回のチャーシュー先輩、まったくモテないわけじゃないってことですが。
ニックネームが秀逸ですよね!
宇多丸:
なんでこの名前にしたのか知りたい(笑)。
ともあれチャーシュー先輩、もうちょっと詳しく状況がわからないとなんとも言えない部分もあるけど、可能性としてひとつ考えられるのは、お互い「隙」ができる余地が、あまりにもなさすぎるようなデートの仕方をしてるんじゃないか、ということですね。
もともとはまるっきりの他人同士だった二人が、どんなレベルであれ性的な関係へと「一線を越える」ためには、どこかのポイントでやっぱり、通常の礼儀で言ったらどっちかって言うと無礼の領域に入るような、思いきった「踏み込み」が必要じゃないですか。 だからこそ、そこんとこの読みを間違っちゃって「やっちまう」危険性もあるわけだけど……、いずれにしても、二人のうちどちらかが、どこかのタイミングで勇気を出して、普通の間柄だったら猛烈な拒絶反応が返ってきかねない非日常的なアクションに出るリスクを取らなければ、性的な距離感なんてもんは、永久に縮まってくはずもないわけですよ。
そして、「隙」があると、そういう決断をしやすい/させやすい。
たとえば、デートにおけるアルコールというのは、まさしくその「隙」を意図的に生じさせるためのツールであると言っても過言じゃない。 チャーシュー先輩、ひょっとしたらお酒飲めなかったりするんですかね。
とにかく、恋愛関係だろうとなんだろうと基本は「他者」同士なんだから、常に適切な距離感を保つよう心がけ最低限の礼儀を忘れちゃダメ、というのはいつもこの連載で僕が口を酸っぱくして言ってきた大正論だけどさ、今回の相談から改めてわかるのは、少なくとも性的な関係というのは、そういう「正しさ」だけでもなかなか進展してゆかないんだなということですね。
かっちりした外ヅラを、どこかで崩さないといけない、「乱れ」ないといけない。
こばなみ:
部員さんからもこんな意見が!
友達としては楽しいけど彼女としては……って可能性もたしかにありますよね。
私もチャーシュー先輩と同じようなことがあったので、気持ちがけっこうわかります。
今日5回目のデートで相変わらず楽しかったんですけど、おつかれさまでした!! みたいなサッパリ感で発展しないとか、ありますよ。
一人でしゃべりすぎ、なのかな?
宇多丸:
要は、どうも色っぽい空気になっていかないってことだよね。
酒飲んでもダメなの?
こばなみ:
がんがん飲んでますよ~。あひゃひゃひゃ~、うっけるー!って。
宇多丸:
あひゃひゃひゃ~!?
まぁ、一般論的に言えば、コミカルなムードが支配的ななかでは、そりゃラブラブモードに持ってゆきづらいのは間違いないよね。 なにをしても笑っちゃう/笑われちゃう気がするもの。
それに、あまりにも一貫して面白モードを取られると、ってことはつまり、自分は恋愛対象として見られてないのかな、と向こうも判断するというのはあると思うよ。
こばなみ:
でもですよ、そんな相手と何回も二人でごはん食べに行きます?
宇多丸:
それこそ完全に「友達として」、安パイ認定されちゃった結果、とかも全然考えられるでしょ。なにしろあなた、「あひゃひゃひゃ~」ってノリなんだからさ(笑)。
なんにしてもね、これは本当に女性のみなさんに言っときたいことなんだけど、男の人ってね、あなたがたが思ってるほど、図々しくないんですよ。
むしろ、基本的にはすごくビクビクしながらデートとかしてるのよ。 「男はみんな狼!と考えたほうがいいのでしょうか」っていう相談のときにも言ったけど、男側だって、そういう風に見られがち、警戒されがちっていうのは重々わかってるからさ。まともな人なら、女性と接するときは、そこんとこものすごーく気をつけてるもんだと思いますよ。
だから、たとえばいくらデートを回数重ねても、よほどわかりやすく相手側にも脈アリ!と確信できない限り、とりあえず引いておこう、って考える男の人、多いと思うんですよね。 そこまで慎重に慎重を期してたつもりでも、人間だから間違っちゃうときは間違っちゃうし……で、実際そうなってしまったときのダメージはもう、ハンパじゃないからさ。ますます臆病になっていくという。
まして毎度「あひゃひゃひゃ~」とか言ってる人に、どのツラ下げて迫ればいいってのよ?(笑) 向こうだって、5回も会ってるのに相変わらずそのノリかよ!って思ってるんじゃないの?
こばなみ:
だからですよ! あひゃひゃひゃ~ってやってたんだけど、6回目くらいに隙を見せてみたのですよ。
酔っ払って店を出たところで、相手の袖を引っ張ってみたのです。酔っ払っちゃったなぁって。そうしたら手をつなぐことになり、エヘヘ。で、ちょいっとチューとかしてラッキー! だったのですが、後日、「きちんとお付き合いなどどうすか?」って聞いたら、「友達のままで」って言われた。ガックシ……。
宇多丸:
ちょっと待て! チューまでして、なぜそこで一気に行かない?
ひょっとしてそれ、またぞろ例のスタンプラリー・イズムなんじゃないの?
僕に言わせりゃ、恋愛「ゲーム」が得意じゃない人ほど、駒を進められそうなときは、逃がさず行けるとこまで進めておかないと! マジでその日のうちに勝負決めたって良かったくらいなのに。 そうしないと、次会うときまでに、相手のテンションだってもう一回リセットされちゃうんだからさ。せっかくできた「隙」が、理性でまた埋められちゃうんですよ。
こばなみ:
いや、前にそのまま行って失敗した恐怖から、ちょっと立ち止まってしまったんです。
宇多丸:
そりゃ、一気に行ってみたってダメなもんはダメってときはあるだろうし、過去にそれで痛い目見すぎてつい尻込みするクセがついちゃってるっていうのも、さっき言ったように男もそういうの全然あるから、わかるっちゃわかるんだけども。
でも、だからっていつまでも安全圏で足踏みしてても、大失敗はあんまりしなくなる代わり、なにかを得るチャンスも激減するってだけじゃないの?
特に、放っといても向こうからどんどん積極的なアプローチが来るようなモテモテ人間ってわけじゃない我々凡人どもほど、やっぱりどこかのタイミングで、言わば「身を捨てる」覚悟で「一線を越える」賭けに出るしかないんじゃないかと思うよ、こと恋愛に関しては。 で、それに対して相手がどう考えるかは、またそこから先の話じゃん。
だいたい、それでちゃんと付き合うことになるかどうかは別として、いったん深い仲になっちゃった相手を、そうそう冷たく突き放すようなこともしないんじゃないかと思いますけどね、普通の人は……。
こばなみ:
じゃ、私は普通じゃない人に出会ってきたってこと?
宇多丸:
そんなにわかりやすくヤリ逃げされてきたのか……(笑)。
ま、逆に言えば、そこまで明確にノーって言ってくれるのは、お義理で思わせぶりな態度を続けられるよりずっと親切でもある、って考え方もできるじゃん? 白黒はっきりしてくれたほうが気持ちも切り替えやすいでしょ。ヤってダメだったんだから、それはなにをどうしようとダメだったんだよ。ダメなもんはダメなの!(笑) 「ご縁がなかっただけ」って考えて、さっさと次行こうよ次。
第一、それってせいぜい、多くて2~3人の話でしょ? たぶん現実には、何十回とそういうトライをして、ようやくまぁまぁちょうどいい人が現れるか現れないか、って確率なんだと思いますよ。
スロットとかで、中途半端にお金突っ込んだところで「777出ないじゃん」つって止めちゃう、みたいな感じだよ。 そりゃそうだけど、そこで止めたらただスッただけだよ!っていう。
こばなみ:
でも女の子の友達に話すと、「なんでヤんのよ!」って言いますよね。
宇多丸:
え、だって、何度デートとかしてもうまく深い関係に進展していかない、って人の話をしてるんじゃないの?
こばなみだって、5回もデートしてるのになんにも発展性がないからさぁどうしましょ、ってことを話してるんであって、別に、会ってすぐのよく知らない人でもなんでもいいからとりあえずはヤッちまえとか、そういうこと言ってるんじゃないんだからさ。
そりゃ、最初から恋愛上手というか、色っぽい雰囲気に自然に持ってけたり、さっきも言ったけどほっといてもワラワラ好意丸出しの連中が寄ってくるような人は、そういう「おあずけ」テクも有効に使えるだろうけどね、って話ですよ。
そうじゃなくて、もっともっと恋愛偏差値が低い、不器用な人はどうしたらいいんでしょうって話をしてるんだからさ。 はっきり言っちゃえばそういう人は、ちょっとでも勝機が見えたら、どうせ逆効果になるだけの小細工なんかやめて、体ごと……ってこれ、精神的な意味含めた比喩ですからね念のため(笑)……、ぶつかってくしかねぇじゃん!ってことですよ。
こばなみの友達の言う通りスタンプラリー制死守っていうのも、安全性重視という点では一応意味がないわけではないだろうし、まぁそうしたいならすればいいけど、でも、それでうまく行くなら最初から苦労してないんじゃないの?という感じが僕はどうしてもしてしまいますね……。
こばなみの例で言えば、そういう甘いムードとか、チューにまで持ってけたこと自体がまず、レアなわけじゃん。 ゲームで言えば、珍しく「ボーナスステージ」的なところまで行けたんだからさ。この機会に、なんでも取れるとことんまで取っておくべきでしょ、それはもちろん!
仮になにかがまずくてそこから先のステージにはやっぱり行けなかったとしても、確実に進歩はしてるってことなんだから、次にまたこの経験を活かしていけばいいだけのことじゃんよ。 こばなみで言えば、「袖を引っ張る」って新技が有効なことはわかったんだから! その人と結局うまく行かなかったからって、なんで全部ダメだったってことにしてリセットしちゃうのかがよくわかんない。今後もガンガン袖引っ張りまくってけばいいだけじゃん!
チャーシュー先輩も、ご自身がお酒飲まれる方なのかどうかわからないけど、相手に飲ませりゃ同じことだからさ(笑)。 とりあえずそういう、酒の場とかに連れ出して、十分空気が緩んできたところで、ユー、袖引っ張ってみなよ!
ただ、文面からなんとなく、ちょーっとだけ感じるのは、チャーシュー先輩、ホントはそんなに恋愛したくもないのかな?って。少なくとも今は。 要は、心から好きな人がいるわけじゃないっぽいし、っていう。
すごい好きな人がいたのにうまくいかなかった~!とか、そういう感じじゃないじゃん。 ゆえに、そもそも全体的に態度が淡白で、発展性も生まれにくいっていう、そういう当然の話かもしれませんよね。
極端なこと言えば「ヤりてぇ~!」とかでもいいんだけど、なんであれチャーシュー先輩から発される熱気があれば、相手もそれに応えようがあるんだけども。 そもそもこっちが温度低いのに、相手に高温を求めるのは難しいでしょ、特にナチュラル・ボーン・モテ体質だっていうんじゃない限り。
さっき言った通り、男のほうも、まともな人ほどいかに「やらかし」を周到に避けるかに神経を使っているため、チャーシュー先輩側が見るからに温度低めだったら、そりゃこっちも「勝手にテンション上げたり性的な期待抱いたりするのだけは絶対に避けなきゃ!」って決意を固くするのは、当たり前だと思いますよ。
こばなみ:
でもやっぱりチャーシュー先輩、ニックネーム面白すぎだし、私と同じタイプの「あひゃひゃひゃ~」なのかな。
宇多丸:
別にふざけながらだって、スキンシップを多めに取ってくとか、フェロモン発動モードをさりげなくまぎれ込ませていく手は、いくらでもあるはずでしょ。
男側もね、さしあたって「生理的に嫌ってるわけじゃないっぽい」ってことが確認できるだけでもだいぶ気が楽になるので、ベタ中のベタではあるけど、ボディタッチを積極的にしてくのとかって、やっぱり本当に、ムチャクチャ効果的ですよ。
あと、この「生理的に嫌ってるわけじゃないっぽい」は男にとってホントデカいので、たとえば「◯◯さんって、いい匂いがしますよね」とか、とにかく匂い絡みの好意的発言 は、その気がない相手は100%勘違いしちゃうから絶対言っちゃダメ!ってくらい、言われた側は一発で「オレのこと、むしろ生理的には完全に好きってことだよな」と確信しちゃう、必殺ワードだと思いますね。
こばなみ:
なるほどね~。匂い。ちなみに私、振られるにあたり、なにが悪かったのかなと思いながら、歯医者にいきました。
口が臭かったのかなぁと思って……。
宇多丸:
どんだけ厳しい反省の仕方してるんだよ!(笑) そんなことないから大丈夫だよ!
ねぇ、その彼って、今は友達? そこそこ親しい関係は続けられてるんだったらさぁ、いっそのこと彼に直接、「チューはしましたがお付き合いはダメだった件、よろしければ後学のために、その判断の理由、忌憚なきご意見をお聞かせくださいませんか?」って、真正面から聞いてみれば?
臭かったんじゃないか?なんて勝手に実体のない妄想にハマっていってもキリないし、次の機会に活かせるようなことがなにも学べないじゃんよ。
それより、なぜダメだったか?の具体的な理由がわかれば、そりゃそのときは耳も胸も最高に痛いだろうけど、逆に言えばそれ以上は痛くならないことが確定するわけで。 そして、原因が特定できれば次回以降改善できる可能性もがぜん上がるわけだから、ますます痛いのはその場限り、ということになる。
ホントに口臭が原因なんだったらちゃんと治療するしかないんだしさ(笑)。ま、まずそんなことはないと思いますけど。
チャーシュー先輩もさ、今からでも直接聞いてみたら、思いがけない真相が判明したりするかもしれないよ。
実は向こうも、ホントはもっとお付き合いを深めたいと望んでいたのに、うまくそういう方向に持ってゆくことができず、「自分のなにがいけなかったのか」と悩んでるとかさ。全然ありえない話じゃないと思うけどね。
とにかくチャーシュー先輩もこばなみも、彼らとの関係で今さら失うものも別にないんだから、マジで「忌憚なき」作戦、行ってみればいいじゃん!
それに、そこでしっかりこっちのことも考えて、親身になにか言ってくれるような人とは、恋愛はダメでも、なんかしら友情的なものが芽生えてゆくんじゃないかって気がするけど。
こばなみ:
無視されたら……!?
宇多丸:
それはもう、そこまでのヤツって思うしかないじゃん。
そいつとは結局、なにをどうしようとうまく行くわけなかったんだよ。それがはっきりするのも収穫のうちって思えばいいよ。
こばなみ:
忌憚なきご意見、聞いてみます!
チャーシュー先輩、一緒にがんばっていきましょう!! 乞うご期待!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2016年5月21日に公開したものを再編集し、掲載しています。