政治色や派閥争いにまみれた男性社会で現場は混乱……。こんなとき、どうする? 《板挟み状態編-4》
リーダーとして仕事をしていれば、必ずぶつかる
コミュニケーションや人間関係の問題。
相対する人も違えば、状況もさまざまで、
「こうすれば正解」がないのが
難しいところです。
そこで、
女性リーダーたちが実際に体験した
コミュニケーションの課題と
それに対するアクションを
ケーススタディとして紹介。
同じような課題を抱える人のヒントになれば、
という思いで届けていきます。
今回は、IT企業のプロデュース部でプロジェクトリーダーとして働くカズエさんのケース。派閥争いが色濃く残る、旧態依然とした男性優位の社会に辟易しつつもたどり着いた打開策、部下と信頼関係を築くためのスマートなマネジメント方法を教えてもらいました。
部長同士の仲が悪く、現場が尻拭いすることに……
うちの会社って、昔から男社会なんです。女性の管理職(課長や部長職)は1〜2%と少ないですね。プロパーの方が長年勤めているような会社なので、昭和な気質も感じます。ここ10年くらいで会社の仕組みも変わってアップデートしたかと思いますが、中にいる人たちはついてこられていないので、新陳代謝ができていないような状況です。
管理職層がほぼ男性なのですが、彼らは細かなところが軽視しがちだと感じます。特に、コミュニケーションについては、悪いところを改善することよりも、目を逸らすことにシフトしやすいため、状況が悪化の一途をたどることに……。
たとえば、部長同士が仲違いをしている他部署と一緒に仕事をする際に、お互いが改善する気持ちが1ミリもないので、意思の疎通がされないまま現場に仕事が落ちてくるんです。そうなると、現場レベルで調整しながらなんとか仕事を進めていかなくては、と、とにかく大変。仲違いの尻拭いをさせられている気分です。
私の印象ですが、うちの会社の男性を見ていると、自分の陣地取りに躍起になりすぎているような気がします。自分の陣地を広げて、より大きな仕事を取ってくることこそ、プライオリティが高いと思っている人が多いような印象です。派閥もあるし、政治色も濃い。大した仕事はしていないのに、上からの指示に部下を振り回しながら右往左往、「う〜ん……」となることが多いですね(苦笑)。私から見ると、メンバーとの信頼関係という土台ができていないと、いつか崩れ落ちるだけなのにと思ってしまいますが……。
でも結局、陣地取りに勤しんでいる人にとっては“周りが全員敵”なので、意外と孤独だったりするんです。なので、内心「コノヤロー!」と思いながらも気の毒には思うんですけどね。
論理的思考とコミュニケーションで、自分も周りも働きやすい環境に
私は昔から、なぜか正義感が強いタイプで、ずるいことや間違ったことをしている人が許せないんです。今の会社には古い考え方の男性も多く、「いつの時代のことを言っているの?」と言いたくなることもしばしば。ただ、そこで抗っても「女はうるさいな」と言われて終わるだけで、悔しい思いばかりしていました。
それを打破するためには、言い方は悪いかもしれませんが、男性側に合わせて行動した方が早いなと気づいたんです。それまでは感覚的に行動することが多かったのですが、論理的に考えることで、建設的な話し合いができるようになりましたね。
一方で、現場で働く人たちがスムーズに仕事を進めるためには、男性社会の政治的な面を壊すしかないという考えに辿り着きました。若い人たちの多くは、「自分の陣地を広げることこそ正義」という考えを持っていないので、私ができることはそういった人たちをフォローしたり悩みを聴きながら、彼ら、彼女らが活躍できるような環境を作り出していくことだと思います。
そのためにも大切にしているのが、メンバーの業務の把握とコミュニケーション。タスク管理ツールを使って、みんなの業務を全員で認識できるようにしているのですが、これのおかげで忙しい人を他の人が手伝えるようになりました。
あとは、1日15分くらい雑談をする会を実施したり、若手のチャットグループを作って、聞きにくい軽度なお悩みを書き込んでもらったりしています。雑談から相手の状況が見えることも。あまり長くなると仕事に響きますが、ちょっとした雑談は必要だし、有効だな、と思っています。
イラストレーション:高橋由季