彼女持ちの後輩から腕枕やディープキスをされました。気になって仕方ない……!【ライムスター宇多丸のお悩み相談室140】
✳️今週のお悩み✳️
女慣れして彼女持ちの後輩にキスされて困惑しています。学生時代バイトしてた居酒屋に後輩、同期、先輩と数人で行きました。みんな帰って後輩と2人きりだったんですが、眠くなって腕枕してもらって寝てたらいいにおいするって耳をなめられ、ディープキスされてしまいました。最初からかわれてると思ったので、くすぐったいって誤魔化していたんです。彼女いるでしょって言ったら、後輩は黙っていました。あまりにもキスがうまかったので、また私からもう1回キスしてって言ってキスしました。そしたら、ヒートアップしてきて胸も触られそれ以上はしてません。部屋出てから、キスうまいねって言ったら調子のりましたって言われて、からかってたのかなって悲しくなりました。彼女とうまくいってないのかなと考えたりもしました。彼女は見たことありますが、彼女の話もしないし、するような人でもないのでよくわかりません。昔、私が飲み会で酔い潰れたときにおんぶしてくれたりました(私は覚えていませんが)。あと、私の送別会のとき花束を渡してくれました。私に好意があるのは感じられなかったです。最近私が失恋したけど、諦められないんだって話をしたので慰めようとしたのかなあと思います。昔、別な後輩の女の子が私にキスした後輩を好きだって言ってたのを聞いたことがあったので、コイツかなりモテるなと思いました。遊ぶような人に見えないんですが、たまたまキスしたくなったときに私がいたからなのか、元々好意があったのか知りたいですが、怖くて聞けません。普段LINEもしないですし、2人で飲んだこともないです。飲み会の次の日、来てくれてありがとう! また飲もうってLINEしたら、ごちそうさまです。また飲みましょうってきました。ほんとに好きだったら、キスする前に告白しますよね? 彼女と迷ってたりするんでしょうか? あれから2週間くらい経ちますが、気になって仕方ないです。なかったことにしたくないですが、彼女いるし、もしダメだったら大好きなみんながいるバイトしてた居酒屋にも行きにくくなりますし、悩みます。2人で会ってなんでキスしたの?って聞くのも尋問みたいですよね? 諦めたほういいんでしょうか? アドバイスお願いします。
(まみち・23歳・宮崎県)
宇多丸:
……あのー、まみちさんには申し訳ないけど、かなりキツめの意見言う回にはなっちゃうかも。ごめんね。
でもホント、たぶんですけど、相談文読んだ人の大半が、まずは始まって数行で、「おいおいおいおーい!」って、一斉に突っ込み入れたんじゃないかと思うんですよね……、「いきなり腕枕まで行っとんのかーい!」って。
前に、「手つなぎ」は実はかなり踏み込んだエロめな行為だから要注意!って言ったけど、「二人きりで腕枕してもらって寝る」って、明らかにそういうレベルの話じゃないでしょ! 仮にその先のことは何もしなかったとしても、常識的に考えて、それはもう完全に、性的なコミュニケーションの一端ですよ。全然グレーゾーンとかじゃないから!
もし僕の奥さんや彼女が、別の男性に腕枕してもらって寝たって報告してきて、でもそれ以上何もしてないから!とか言い訳したら、いやそれもう十分浮気だから……って、何よりもその、なりふり構わぬ欺瞞っぷりに呆れちゃうと思いますよ。 もちろん、まみちさんは現状フリーみたいだから別に浮気したとかってわけじゃないけど、やっぱりそういう、「私の責任じゃない」的な自己欺瞞の匂いというか、カマトトぶるのもいいかげんにしなよ、と言いたくもなる感じは正直出ちゃってるんだよな。
だってまみちさん、そのあと耳なめられてディープキスして、拒絶しないどころか自分からキスのおかわりまでして、おっぱい揉まれて……って、普通にこれ、「合意の上でのセックス」でしょ! 挿入だけが性行為じゃないよ。
はっきり言ってね、まず、二人っきりで腕枕して横になってるっていう段階で、その後輩が、まみちさん側にも思いっきりソノ気ありと判断するのは当然のことだと思いますよ。 それで彼が性的に興奮してしまうのだって、不思議なことでもなんでもないでしょ。 「なんでキスしたの?」じゃねーよ!
「彼女がいるのに」って言い分なのかもしれないけど、まみちさんだってそれは重々承知の上で、シレッと彼の腕のなかに入っちゃってるんだからさ。 それを言いだしたら、まみちさんこそ「なんで腕枕なんかしてもらったの?」って問いにまず答えないといけなくなるよ。 後輩が一方的になにかを強要してきたわけじゃないんだし、そこで私は悪くないもん!みたいにすっとぼけ続けるのは、ズルいですよ。
それどころか、まみちさんだって、バリバリ積極的に求めてるじゃん! 要はあなた、最初からノリノリの「共犯者」なんですよ、どう見たって。 むしろ彼の側からすれば、「まみちさんの誘惑に負けた」って見方だってできるくらいかもよ?
なのに、せっかく盛り上がってきた矢先に、この期に及んで「悪いのはあなたのほうなんだからね」って念押しするかのように、「彼女いるでしょ」牽制とかしちゃって……、たぶん後輩も、ここでいったんは我に返ったんだと思うんだよね。「あ、やっぱまずいよね?」って。
こばなみ:
ここまで来てそれ聞くのは野暮ではないかと、僭越ながら私も思います……。
宇多丸:
「ほんとに好きだったら、キスする前に告白しますよね?」って、中学生じゃないんだから……、それを言うなら、「ほんとに好きだったら、腕枕してもらう前に告白しますよね?」ってほうがよっぽど重大だよ!
で、とは言え密着しての添い寝までは許されてるっていうこの状況に、後輩くんも一瞬どうしていいかわかんなくなっちゃって、さしあたって黙るしかなかったってことなんじゃないの? 「まみちさん、じゃあいったいどうしたいんだろ……」って。
そしたら今度はまみちさんのほうからキスのアンコールが来たんだから、こりゃもう間違いなく、「それでもいいから、とりあえずしよ!」ってことなんだなって、まぁ普通は判断するよね。 ということで、そこから行為がさらにエスカレートしてくのも当たり前だし。
ただ、理由ははっきり書いてないからわからないけど、そのときは結局、おっぱい止まりでコトが終わっちゃったと。 でも、もしお互いホントに気分が盛り上がってたんなら、そこは絶対、このままどこかで続きしようよ!って話になると思うんだけどな~。 最悪、今度会ったら最後までしようね!みたいな約束はするテンションにはなってるもんじゃない?
だけど、その場を離れてからの後輩の言動から察するに、彼、どこかのポイントで改めて熱が冷めて、今度ははっきり「やっぱやめとこ」って思い直したっぽいよね。
これはあくまで推測だけど、彼がおっぱいから先に手を伸ばそうとしたのを、まみちさんがまたまた「彼女いるでしょ」っていう建前論で制するってくだりとか、あったりしたんじゃないの~? なんであれ、そういう釘刺しがいちいち効いた結果、彼もさすがに「これは思ったよりめんどくさいことになりそうだ、今のうちに引き返そう」って決断をするに至った、っていうのは間違いないんじゃないですかね。 で、曲がりなりにもそこでホントにちゃんとすっと引き下がれるんだから、この後輩も、そこまでチャラいだけの人ってわけでもないんじゃないの、って気がするけど。
ということでね、その後の「調子のりました」にせよ、LINEのどこか他人行儀な返答にせよ、後輩くん的には、うっかりまみちさんにエロモードを発揮してしまったことを、今は軽く後悔してる状態なんじゃないかと思います。 なぜなら、「共犯」の責任を一緒に負う気が、実はまったくなかったっぽい人に手を出してしまったことに気がついたから! さぞかし、やっちまった~!って思ってるんじゃないですか。
こばなみ:
でも、まみちさんは彼のことを好きかもしれないモードになってますよね。
宇多丸:
目下のところ気になって仕方ないのはたしかだろうけど、どうかな……、これってホントに、「好き」って感情に分類していいものなのかな。
この文に書いてあるのは、ただただ、彼側が自分に好意を持ってるのかどうかを確認したいっていう、言っちゃえば「立場的な優劣への執着」だけだからね。
後輩の女の子が彼のことを好きだって言ってたっていう件も、私も好きだったから焦ったとかイラついたとかいうほうには話がまったく行かないから、要は単に「そういうモテる人=価値が高い人のほうからモーションをかけられた自分」の話がしたいってだけにしか聞こえないし。 その後輩や彼女に対して優位に立ったような気になってるっぽいというか……。
とにかく、その人のことが好き、もっと深い仲になりたい!って気持ちが自分のなかにあるのかどうかっていう、一番肝心な部分は曖昧にしたままなわけじゃん。 それより、まずはギブ&テイクの「テイク」のほう、たとえば「あくまで相手側からの正式な求愛が先!」的な、言ってみれば「確約」を押さえることにばっかりこだわってるという……、要はやっぱり、恋愛というものを、どこか勝ち負け的に捉えてるんじゃないかと思うんだよね。
こばなみ:
この連載への相談でもよくあるパターンですね。
宇多丸:
でもさ、恋愛ってホントはむしろ逆で、誰かを好きになってしまうって、その人にある種「降伏」せざるを得ない、っていう体験のはずじゃないのかね。
こばなみ:
本当はそうだと思うんですけど、こっちから先に落ちたら負け、振られたら負け、みたいな気持ちのほうが強くて、相手から先に告白させようとばかり考えている傾向はありますよね。
宇多丸:
その気持ちもわかんないじゃないけど、ひとつ間違いないのは、相手に対して優位性を確保しようとばっかりしてる人って、「可愛げがない」ですよ。
で、可愛げないって、こと恋愛に関しては致命的マイナスだから!
勝ち負けにばっかりこだわった結果、いつも何も得られないで終わってるって人、けっこう多いんじゃないかなぁ……。
百歩譲って、相手からの好意が確認できればこっちも好きになってやらんでもない、くらいのテンションで行くにしても、だったらその距離感、向こうも同じくらいキープしたがってるかも?って考えないと。 今回のケースで言えば、後輩の側こそ、まみちさんが自分のことをどう思ってるのか、いまいちよくわからない状態のままここまで来ちゃってるんだから、彼女がいるっていう守りの要素が多いぶん、よりまみちさんに対しての態度が慎重になるのは当然じゃない? まみちさん側がよっぽど積極的にならないと、そもそも距離が埋まるはずもない関係なんですよ。
それにしても、どうやったらここで「彼女と迷ってたりするんでしょうか」なんて発想が出てくるのかね。 今回の出来事のなかに、彼が今のパートナーとうまく行ってるかどうかってことが判断できるような材料、なんもないと思うんだけど。
そうやって、なんでもかんでもすぐ、「こうなったということは、こうであるはずだ」って定型的なパターンに落とし込んで考えてしまう、言わば「はずだ」思考って、今回のまみちさんに限らずだけど、ホント危険だと思うよ。 さっきの「ホントに好きならキスする前に告白する“はずだ”」っていうのも同じことだよね。そんな「はず」の根拠はどこにもないよ!
こういうのってやっぱ、雑誌とかウェブの女性向け恋愛記事とかによく書いてあったりするんですかね?
こばなみ:
「こうだったらこうであるはずだ」系の恋愛メソッド記事、ちょっと探してみたんですけど、うじゃうじゃ出てきました。
ぜぇぜぇはぁはぁ……。疲れた……。
これ、当てはまっても、振られたりしたこと全然あるし! んなことでうまく行ってりゃ、私も今頃スムーズに彼氏できとるわい(苦笑)。
宇多丸:
もちろん、こういうのが図に当たるケースっていうのもたしかになくはないんだろうけど……、一応男性の端くれとして言わせてもらうと、少なくともこのリストに関しては、「はっ? なんでそれが特別な好意の証ってことになっちゃうの?」って条項のほうが多いよ!
「『?』がついた質問が多い場合は、好きだというサインが隠されたメールだと考えられる」とか、もはや陰謀論の領域だよ(笑)。
こんなのいちいち鵜呑みにしてたら、そりゃ大怪我も絶えないでしょうよ!っていうね。
ということで、まみちさんの問題は、まさにこういう「はずだ」論に縛られていたせいで、「自分の欲望に素直になる」ことができなかった点にあると思いますよ。 平たく言えば、どうせもう、腕枕にディープキスなんていう、客観的には言い訳不能な「和姦」行為に及んじゃってるんだから、毒を食らわば皿まで、そのまま最後まで行っといちゃえば良かったのに、ってことですよ!
こばなみ:
まみちさんが後輩とうまくいく可能性はもうないの?
宇多丸:
仮に今から逆転の目があるとしたら、それはやっぱり、まずはまみちさん側が、いろんな意味で「素直になる」ことからしか始まらないですよね。
彼がどうかじゃなくて、自分が彼のことをどう思ってるのか、彼とどうなりたいのか、その気持ちに素直になる! もし、彼との関係をもっと進展させたいと本気で思ってるのなら、素直にそれを伝える!
こばなみ:
今からでも、まみちさんもむき出しになって「好きです!」みたいになったらいいんじゃないかと。
宇多丸:
それで彼がどんなリアクションを返してくるか、確証はなにもないけどね。
でも、まみちさん側がそこに賭けなければ、少なくとも今回の件からはなにも得られない、ってことだけはたしかだと思います。
ち なみに、うまく行かなかった場合バイト先の人間関係的に気まずくなってしまう、というのをまみちさんは心配してるようだけど、ぶっちゃけ、まみちさんと後 輩が二人きりで居残った時点で、みんななんとなく、「あの二人、きっとなんかあったよな……」とは薄々感づいてると思いますよ。すでに十分気まずいから大丈夫!
でも、それってまみちさん的には、チャンスでもあると思うけどな~。 つまり、前の腕枕事件のときは、まみちさんが最終的に「共犯関係」になることから逃げてしまって、結果中途半端なことになっちゃったわけだけどさ。 でも、二人して周囲にバレたらまずいことをすでにしちゃってるのには変わりないんだから、たとえばここで、まみちさん側から改めて「みんなにはナイショで、また二人で会ってくれない?」的なアプローチをかけてみる、つまり「もう一回ちゃんと共犯関係を結びませんか?」という提案を差し出してみるのは、けっこう意味があることなんじゃないかなって気がするんですよね。 だって何しろ、その関係性自体が、すでに超エロいじゃん!
だから、もしその「密会」のお誘いを彼が受けてくれたなら、最低限、腕枕の夜の段階までコマを戻せる可能性はかなり高いと言える。 幸いにもその後輩くん、どうやら酒が入るとえらく油断をする癖があるようでもあるから……、「可愛げ」満点で迫れば、彼を陥落させること自体は意外と簡単なんじゃないかって気もします。
ただ、そうやって今度は首尾よく最後までイタしたとして、そこから彼との関係をどう発展させていけるか、っていうのは、また別の問題だからね。
たとえば、仮にまみちさんと彼が「正式に」付き合うところまでこぎつけるとして、それってすなわち、現行の彼女はもちろん、それこそ例の後輩の女の子とか、周囲に穏やかじゃない軋轢を、絶対に生じさせる行動なわけじゃん? 必ず、ものすごーくモメることは目に見えてる。
しかもそこでまみちさんは、事実上「人の男を寝取った女」として見られることになりかねないわけで。 そこまでの覚悟がホントにあるのかどうか、って話ですよ。
いや、やっぱ別にそこまで本気で好きってわけじゃなくて、ちょっと火遊びしたかっただけだったのかも……っていう結論だって、もちろん全然あり得るし。 それはそれで、じゃあ人知れず楽しんどけばいいんじゃない?ってだけの話だから。
いずれにせよ、やっぱりまずはまみちさん自身が、彼とホントはどうなりたいのか、自分のなかの決して「正しくはない」欲望に向き合うこと含めて、もっとしっかり考えないと、ってことですね。
まぁ20代前半はね、この手のすったもんだが起こりやすい季節ではあるので! 頑張ってね!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2016年4月2日に公開したものを再編集し、掲載しています。