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自分に自信がなく、そんな自分を好きになれません。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室181】


✳️今週のお悩み✳️
自分に自信がなく、そんな自分を好きになれません。卑下しても何もいいことがないとわかっているので変わりたい気持ちは強いです。少しでも自信を持つために、新しいことに挑戦したり、自分のことを全然知らないコミュニティへ入ってみたこともあります。しかし、常に自信のなさがつきまとっていて、いつも長続きしませんし(自分なんかには出来ないと思ってしまう)、根暗すぎて人とも上手く関係を築けません。嘘でも自分を好きと思い込もうと実践したこともありますが、本心では好きと思えずに嘘を吐き続けるのに辛くなってやめてしましました。何をやっても平均以下、特技なし、趣味はインドアで自己完結するものばかり……、空っぽな自分に自信を持てるところが一つもないし一向に好きになれそうにありません。こんな私のことを好きだと言ってくれる人が何人かいましたが、得体の知れなさを感じていつも拒絶してしまいます。自分から好きになった人と付き合うことになっても、やはりこんな自分のことが好きなんておかしいと次第に相手を遠ざけてしまい上手くいきません。本当はいろんな人と本音で話してみたい、好きって言ってくれる人を素直に受け入れたい、自分を少しでもいいから認めてあげたい、それができなくて苦しいです。自分で書いておきながら、陰鬱な気分にさせてしまう文章をすみません。少しでも自分に自信を持ち、嫌いじゃなくなるアドバイスをいただけますと嬉しいです。
(ぴこる・25歳・東京都)


宇多丸:
まぁ、僕も含めて、誰だって自分に自信なんかないよ!というのは大前提として、ね……。

まず、自信とはなにか?というところから改めて考えてみると……、本来は、成し遂げたこととか蓄積してきたこととか、とにかく自分が実際にしたこととか得たことから生じるもんであって、なんもしてないところで自信があるとかないとか言ってても、あんま意味ないんだよね、実は。

一見ハナから自信ありげに見えるような人たちだってさ、可愛いとかカッコいいとか賢いとか、はたから言われ続けてきたというような「実績」があればこそなんで、誰にもなんにも褒められたことがないのに自信だけがある、という話じゃないわけじゃん。
しかも、そういう風に、こっちから見てうらやましく見えるような人が、じゃあ内面も自信満々かっていうと、それはまた別問題だったりするし。前に言ったこととも通じるけど、あっちにしてみたら、必死でコンプレックスと戦ってきた結果、というだけなのかもしれないしさ……。

もちろん、特に若い頃は、視野がまだ狭いからこそ、なんの実績も実はまだまったく伴っていない段階なのに、ちょっとしたことで過剰に自分を高く見積もってしまう、ということもしばしばあるわけですけど。
いわゆる「根拠のない自信」というやつですね。周りから見ると「単なるバカ」っていう(笑)。

こばなみ:
あるあるある! そして自分もそういうところ、ちょこちょこあります。この企画はいける!みたいな根拠のない自信……、お恥ずかしながら……。

宇多丸:
でも、こばなみのそれはさ、一応これまでの編集経験から導かれた、「まぁこれくらいは行けちゃうだろ」って判断でもあるんだろうから、それはまだちゃんとした「実績から来る自信」のうちだよ。

それに、そういう根拠レスな、冷静に考えてみれば無謀としか言いようのない自信でしか踏み越えられない一線、バカにならないとできない冒険というのも、たしかにあったりするからね。

僕にとってのラップが、まさにそうだったわけですから。いまだに、なんであの時点で、先輩の反対を押しきってまで「オレ、ラップできますから」とか言い張れたのか、自分でもよくわかんない(※大学入学直後に、サークルのパーティの出し物としてラップを披露したのが僕のキャリアの始まりなのです)。まだ、なーんにもやったことない段階なのに!

で、これはよくMummy-Dとも言ってることなんだけど、「始めた瞬間が一番自信あったよね」って。「オレいま日本一ラップ上手い!」って本気で確信してたもん。
でも、実際に活動を重ねてゆくにつれて、自分が理想として思い描いているビジョンに対して、現実の自分の「できてなさ」が次第に見えてきちゃう。
経験とか知識が蓄積してゆくほど、いろんなことがわかるようになってきちゃうというか、自分がやってることのアラとか、現状できることの限界が、よりはっきり見えるようになってきちゃうんだよね。
そういうわけで、最初にあった根拠のない自信は、ゴリゴリ削り取られていっちゃうわけですよ、当然のことながら。

しかしその一方で、具体的に行動を起こしたぶんの実績というのは、確実に残る。
そのなかで、「これはできた」「あれもできた」っていう、小さな成功体験が積み上がってゆく。こんな曲ができたとか、いくつ持ち曲ができたとか、ライブでちょっとだけウケたとか……。
そこから生じた自信は、「ホントに自分がやったこと」がベースのものだから、そうそう揺るがないわけですよ。

だからいまの僕は、ラップ・スキルに対しての自信はまるっきりと言っていいほどなくなってしまいましたが、それでもなんとか、努力とK.U.F.U.で業界の第一線を生き残ってきた、作品としても歴史的に評価されるものをいくつかは残してきた……という実績に関してだけは、比較的確固たる自信を保てている、かも、というくらい。

とにかく、具体的な経験を重ねるにしたがって、「根拠のない自信」はどんどん減っていくけども、それに反比例して「根拠のある自信」はすこーしずつ積み重なってゆく……、これって、どんな「自信」に関しても当てはまることじゃないかな。

その意味でぴこるさんは、いまは言わば、「根拠のない自信のなさ」に囚われている状態なんですよね。

こばなみ:
「根拠のない自信のなさ」か。なるほど~。

宇多丸:
「何をやっても平均以下、特技なし、趣味はインドアで自己完結するものばかり……、空っぽな自分」ていう極端にネガティヴな自己評価も、単に自分のなかで、「どうせこうだ」っていう思い込みを勝手にグルグルしてるうちに、どんどん発酵醸成してっちゃっただけで、なにか具体的にやったことに対して誰かからホントにそう言われたとか、客観的な根拠がある話ってわけじゃ、別になかったりするんじゃない? 
ま、誰かの心ない一言がきっかけになって……とかはあるのかもしれないけど。

ただ、ぴこるさんはむしろ、「こんな私のことを好きだと言ってくれる人が何人かいました」っていうんだから、ちゃんと客観評価という「実績」を得る機会も、一応はちょいちょいあるような人ではあるわけですよね。誰からも相手にされないような、本気でいいとこナシ!な人では少なくともないということが、すでに証明はされている。
この時点で素直に、「みんなそう言ってくれてるし、どうやら私もホントに、それほど捨てたものでもないのかも……」くらいに受け取れればよかったんですけど……、ぴこるさんにはどうしても、それが根拠あるものに思えない、と。

ま、その気持ちもわかるんだけどね。
自分からなにかしたわけでもないのに一方的に好意を示されたって「実績」の実感なんかわかないよ、というのは一理あると思うし、何よりぶっちゃけ「お前らに言われたって嬉しくねーよ」な連中だったんじゃない?(笑)

そこへ行くと、「自分から好きになった人と付き合うことに」なったというのは、そういう負の自己完結型思考サイクルから抜け出す、絶好のチャンスだったはずなんですけどねぇ……。
だって、好きな人から好かれ返すっていうのが、なんでそんなに嬉しいかと言えば、「自分が価値を認めた相手が、自分にも価値を認めてくれた!=自分にも価値があると確信できる」ってことじゃない? 「こんなに素敵な人がここまで言ってくれてるんだから、間違いない!」みたいな。
そうやって、劇的に「自己肯定力」が上がるからこそ、特に恋愛が成就した瞬間のカタルシスって、半端ないわけでさ。
なのにぴこるさんは、曲がりなりにもせっかく相思相愛になった相手のことも、やっぱり信用しきれず、かえって遠ざけてしまうっていうんだから……、かなりの重症ではありますよね。

ちょっと意地悪なことを言えば、ぴこるさんは、一見激しく自己卑下してるように見えますけど、それは実は、「理想とする自己評価」がかなり高いことの裏返しでもあるんじゃないの?とは少し思う。
「こんな自分のことが好きなんておかしい」って、じゃあどんなレベルの人なら好きになられてもおかしくないの?って話でしょ。
もしかして、美人でオシャレで仕事もできてコミュニケーションも上手……みたいな、ほとんどメディアのなかのイメージにしか存在しないような、ものすごーく高いところを、想定しちゃあいませんか?

逆に、「何をやっても平均以下、特技なし」とか言うけどさ……、んなこと言ったら、たぶん日本人の大半が、少なくとも自己認識としては、概ねそんなもんだよ!

こばなみ:
そういうの、ありますよね! 私の友達もダイエットで目標を高く持つのはいいんだけど、それが佐々木希級のスタイルだったりして、身長も骨格も顔も違うのになぜそこ?といつも思う。

宇多丸:
要するに、自分で自分に勝手に値段をつけてて、はたから見るとそれが決して適正とは言い難い感じ……、その意味で、「根拠のない自信」も「根拠のない自信のなさ」も、どっちも似たようなもんではあるんですよね、やっぱ。
ただ、前者はまだ、いずれ現実とのギャップに直面して、痛い目に遭うことで改めて学ぶ、っていう可能性があるけどさ。後者は、そういうリスクからもあらかじめ逃げちゃってるぶん、より身動きが取れなくなってる状態とは言えるかもしれない。ぴこるさんは、まさにここ!

断言できるのは、自分のなかだけで解決しようとするのはもう、原理的に絶対に無理! それでジタバタするのはやめましょう、ってことですね。
なんらかのかたちで外部から承認を得て、ここが肝心なんだけど、それをぴこるさんも心から信じて受け入れる、という開放型の思考サイクルを作ってゆかないことには、なんにもないところでひたすらグルグルグルグル、ウジウジウジウジするだけの繰り返しで終わっちゃいますよ、ホント。

ちなみにその、「外部から承認を与えてくれる他者」って、人格形成の過程で、親とかが果たすべき役割なんだよね、本当は……。
違っていたらホントにごめんなさいですが、ぴこるさん、そこまで自己否定が極端になってしまった根底には、成長期に、なにか強いトラウマがあったり、ってことはないですかね? 親御さんが異常に厳しかったりで、小さい頃からまったく褒めてくれなかったとか……。

しかも、そういう心のなかの「真の要因」に、自分ではあんまり気づいてなかったりすることも、よくありますからね。
なので、もし、いまのような精神状態が本気で辛いようなら、専門の医者とか、カウンセリングを受けてみるのも全然アリだと思います。
当たり前だけど、恥に思ったりする必要はまったくなくて……、前にも言ったかもだけど、僕の知人でも、パニック障害になっちゃったりとか、精神的に不安定な時期が長かったんだけど、カウンセリングを受けたら、その原因が家族との関係にあるということが解きほぐされていって、以降は一気に楽になった、という方がいますよ。有効なときは、ものすごく有効!ってことですよね。

まぁ、そこまで大事にしなくっても……という感じなら、一番身近なカウンセラーは、やっぱ恋人、パートナーなんじゃないかなぁ。さっき言ったように、本来最も自己肯定力を高めてくれる存在。
自分から好きになって付き合ったっていうその人と、まだ完全には切れてないならいいんですけどね……、もしまだ、お互いそこまで気持ちが離れきってないんだったら、今からでも、ぴこるさんのその不安な心情を、いつも言ってる通り「素直に」伝えて、わかってもらうところからやり直してみましょうよ。これ、今後仮に、別の方とお付き合いするようなときも同じことで。
そしたら、向こうだってぴこるさんのことを好きで付き合ってるんだからさ、ほぼ間違いなく、どれだけぴこるさんが魅力ある人と思ってるか、一生懸命表現しようとしてくれるって!
 もちろん、そういうのを言葉や態度で表すのが苦手な人もいるだろうけど……、そういう野暮天にはもう、「ぴこるのいいとこ100」とか、強制的に挙げさせればいいんだよ(笑)。

そしたらぴこるさん側も、そういう相手の「頑張り」をこそ、自分を受け入れてくれたことの証明として、ちゃんと受けとめてあげましょうよ。
仮にも、心から好きで、認めてる人なんでしょ? だったら、その人の言うことをちゃんと聞いて、信じてあげないと。
そこで、どうしても「こんな私なんか」っていう思考法をしたいなら、「私なんかのために、こんなに頑張ってくれてありがとう」って方向に使おうよ!

なんにしても、ぴこるさんひとりだけでウジウジしてても、なんの解決も、なんのいいこともない、ってことだけは、はっきりしてるんだからさ。
まずはこちら側から、コミュニケーションを、もっと言うなら助けを、切実に求めてゆかないと。

そうやって「素直に」、自分の弱みさえさらして、それでもなお、受け入れて承認してもらえた……という「実績」を重ねていってようやく、対人的な「自信」もつく、ってことじゃないですかね。
もちろん、セットでの「優しく」、つまり、礼節忘れず自己中にならぬよう注意する、ということも忘れずに。
無論、そこで余計に挫折を味わうはめになるかもしれないんだけど、その失敗から学ぶ、というのも、やっぱり立派に「実績」のうちだからさ。

ちなみに、「インドアで自己完結する趣味」って、具体的にはなんだかわかんないけど、そのこと自体が悪いわけでもなんでもないのは当然として、それだって、並の人よりは秀でたレベルまで知識なりスキルを高めて、あまつさえそこを人から認められたりすれば、立派に「根拠ある自信」の源にはなり得るわけですよね。
なので、こんなんダメだとか、自分ではなから決めつけないほうがいいよ。そっちを極めるのも全然ひとつの手ですよ。僕なんか完全にその方向の人生だよ(笑)。

逆に、「空っぽな自分」とか言うけど、そんなの物の言いようでしかなくてさ。
たとえばそれこそ、ビートたけしが「オイラ、本当は空っぽなんだ」とかって言っても、「あぁ、あれだけの人でも、本人的にはひょっとしたらそういう部分もあるのかなぁ」って、それなりに説得力持っちゃう言葉じゃん。
つまり、誰だって、空っぽって言われりゃそうかもしれないなってところもあるし、反対に、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』のヒロシばりに、「オレの人生は、くだらなくなんかねぇっ!」って見方もできる、ってだけで。
空っぽかリア充か、なんてのはそのときどきで都合よく使いわけられる比喩表現にしかすぎなくて、基本は誰しも、自信がある状態、ない状態、そんなにはっきり1か0じゃない、ってことに尽きますよ。

まぁ、僕も思春期にはまさに、「最初の一歩を踏み出す自信」がなくて、ひとりでグルグルグルグルしちゃあ、落ち込みがちだったりもしたので。今回は特に、なんとかいい方向に転じてってほしいなぁと思い、あーだこーだうるさく言ってしまいましたが。
ちょっとでもお役に立てればいいなぁ……。

こばなみ:
ゆっくりでもちろんかまいませんので、事後報告もお待ちしております。

それと「自分のことを全然知らないコミュニティへ入ってみたこともあります」とあったのですが、もしよかったら女子部JAPAN(・v・)の部活(=イベント)にも遊びにきてくださいませ。気さくがモットーでやっていますので、よかったらお話しましょう!



【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2017年2月25日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
こちら
※シングル「世界、西原商会の世界! Part 2 逆featuring CRAZY KEN BAND」が配信中! Victorサイト限定CD盤もリリース!
詳しくは
こちら


女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。




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