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会話が絶望的に下手です。どうしたら相手の話や経験に興味を持ち、話をリードして膨らませることができるのでしょうか?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室265】


✳️今週のお悩み✳️
私は会話が絶望的に下手です。聞き役にも話し役にもなれず、職場でちょっとした世間話を振られても話を膨らませることができません。その為、たいてい私の一発目の返事か相づちで会話が途絶えます。なぜ簡単な会話すら成立させられないのか、自分なりに考えた結果、他人がしていることに興味がないからという結論が出ました。友達もいるし、恋人がいたこともあります。だから人そのものは好きになれるんです。しかし、彼らと楽しい経験を共有していても、いまいち盛り上がらないということが多々ありました。たとえば、彼と一緒に見ていた映画の感想が一致しても、映画は面白かったことはうれしいけど、彼もその映画を面白いと思ったことはどうでもいいと感じてしまいます。または、知り合いに飼い犬の写真を見せてかわいいと褒められたとき、頑張ってうれしそうにお礼を言ってみますが、内心はそこまで嬉しくないです。みんな楽しい話をするつもりで話しかけてくれたのに、いつも私の微妙な反応のせいで、「映画面白かったね!」「可愛いわんちゃんですね!」というテンションが上がりきったところから、一瞬で会話のトーンが盛り下がっていくという展開になり、親しくしていた人ともだんだん疎遠になってしまいます。せっかく相手が私と一緒にいて盛り上がってくれているのだから、その良い雰囲気を壊しては申し訳ないという変な気遣いをしてしまい、それが裏目に出てしまっていることもあります。今回お二人にお聞きしたいのは、どうしたら相手の話や経験に興味を持てるのか、そして話をリードして膨らませることができるのかです。特に宇多丸さんは、ラジオで、毎回やってくる異なるゲストの異なる話題に、知識ゼロの立場からその方のお話に興味を持ち、積極的に質問しつつ会話をリードされているので、本当にすごいと思います。努力や経験値の賜物なのかとも思いましたが、宇多丸さんは凄すぎて才能のなせる業なのかとも思います。長文、乱文で申し訳ありません。ぜひお二人のお力添えをお願い致します。
(犬のやわ肌・28歳・東京都)


宇多丸:
まず、僕のことから言っておくと、お褒めいただいてすごく嬉しいんだけど、あれはやっぱり番組だからさ。ぶっちゃけスタッフのサポートもちゃんとある状態だったりしますからね。
事前のブリーフィングもできる限りしっかりやってるし、リアルタイムでこっそり「次こういうこと聞けば」的なサジェッションを受けることもあるし……、ちょうどカーレースが、レーサーだけじゃなくてチーム全体で戦ってるのにも似た感じで。
だから、自分ひとりでなんの足がかりもなくやってるわけではない、というのはひとつある。

そのうえで、僕自身はどういう心持ちでいろんなゲストのお話を聞いているのか、改めて自問してみると……、やっぱりとっかかりは、もともと自分が興味あるものや経験してきたことなんじゃないかな、と思いますけどね。
自分の知見と照らし合わせて、まずはそれと相似形を描く部分があるかどうか探ってみる。
たとえば僕だったらやはりラップ~ヒップホップ、あるいは映画で言えばこういうことですよね、みたいなところ。
そんな風に、自分の得意なジャンルやよく知っていることに、いったん置きかえてみる。

それは僕がやってきたこれと似ている気がしますとか、こっちの世界でいうとこれが近いんじゃないかとか。
そうやって、あくまで自分を起点に、相手のやってることに投影できるところがあるかどうかを探してみて……、まぁ同じ人間のやることだし、そこまでまーったく理解不能なんてことも、そうそうないもんだろうし。
もし仮に、それでも全然共通点を見つけられなかったとしても、そこまで行けば逆に好奇心がわく、ってことでもあるしさ。「えっじゃあなんなの?」って。

で、そんなこんなをいくつか重ねていくうちに、最初はまるっきり知らねぇし興味ねぇと思ってたことも、話を聞いてみりゃ意外と面白かったりするもんだな、というのがわかってくるから、そうなると今度は、ほかの一見とっつきづらそうなものでも、「あそこにもきっと、こっちのツボにハマるなにかがあるに違いない!」と思えてくる、という。

そんなわけでね、フラットに「人が好き」だから人の話を聞くのも大好き!みたいなタイプとかでは、別にないんですよ、僕だって。
むしろ、興味があるものとないものの境目は、かなりはっきりしているほうだと思う。

犬のやわ肌さんは現在28歳とのことですが、その年頃なんかもう、はっきり自分にしか興味なかったよ!(笑) 
たぶん、僕はまだ、余裕がなかったんだよな、てめぇのことで精いっぱいで。
そこからさらに、もうちょっと自分に自信がついてくると、他人にも目を向ける余地が生まれてくる、ってことかもしれませんよ。

こばなみ:
なるほど~!

宇多丸:
あとさ、番組をやってる立場として、なんかしら質問をしなきゃいけないわけですよ。
そんな風に、「なにか質問する」というタスクをひとつ課しておくと、自動的に会話にはなるんじゃないですか。その前にまず、相手に対する理解をちょっとは深めなきゃならなくなるし。

こばなみ:
彼とかに、その映画のなかで「どこが面白いと思った?」とか聞きたくないのかな?

宇多丸:
そこでほかの人と感覚を共有したりすり合わせることに、意義や喜びを感じないってことだよね、今のところは。

ま、身もフタもないこと言っちゃえば、無理してまでしたくもない会話なんかしなくていいじゃん、とは普通に思いますけど……。

犬のやわ肌さんが僕とけっこう違うなと思うのは、自分の意見を人に伝えたい欲、わかってほしい欲みたいなのも、わりと希薄っぽいところですね。

僕の場合はやっぱり、まずは「自分の考えや感じたことを言語化して、人に伝えて、受け入れさせたい!」という欲求が、根本に強くありますから。
当然そこには、他者の考えとか感覚との齟齬や軋轢、ぶつかり合いが生まれるわけだけど……、だからこそ、それらといったんはしっかり向き合う必要が出てくる。
「お前の言ってることは間違ってて、こっちが正しいんだ!」と主張するためには、まずその「お前の言ってること」に耳を傾け、十分に理解しなきゃならないっていう……、最悪な動機ですね(笑)。

こばなみ:
盛り上がってまいりましたよー!(笑)

宇多丸:
とは言えね、そうやってやいのやいのやってるうちに浮かび上がってくるのは、どちらかの一方的な正しさとかよりも、「これって要するに、お互い同じことを違う側面から話してるだけだよね」とか、「こっから先はただの好みの問題だよね」とか(笑)、そんな感じのことなのがたいていで。

とにかくそうやって言わば「議題の因数分解」が進んでいくと、いままでになかった新たな視点がインストールされて、自分もまたいっこ、アップデートされてくわけですよ。
つまり、自分とは違う他の人の意見をいったん受け入れてみるってことは、決して自己を否定するとかゆずりわたすとかってことではない。むしろ、こっちのレベル上げのためにも必要不可欠なプロセスなんですよね。ちょっとキレイなことを言えば。

そこまで立派なもんじゃなかったとしても……、ぶっちゃけ、はた目には相手の話をちゃんと聞いてるように見えてても、結局のところは自分の話がしたいだけ、みたいな人って、意外と多い。というか、実はほとんどの人がそんなもんなんじゃないの?って気すらしますけど。
飲み屋で隣の会話盗み聞きしてりゃわかりますよ(笑)。どいつもこいつも、本質的には自分の話ばっかりしてるよ! もちろん僕も例外ではなくね。

こばなみ:
そう考えてみると私も結局、話の流れから自分の話に持ってっていたりしますね(笑)。女子部JAPAN(・v・)の集まりも、話したくてくる人が多いんですよ。でもそれが楽しいならいいと思う!

宇多丸:
その意味で、犬のやわ肌さんの他人の思考に対する興味の薄さは、裏を返せば、自己顕示欲の薄さというか、自分に対する執着もまた薄め、というのがベースにあるんじゃないか……的な仮説を立てることはできそうですよね。

たださ、犬のやわ肌さんは、そもそも人と話しててもあんまり楽しくないんだよね? 
人の話も聞きたくないし、自分の話も別にしたくない。
じゃあ、したくないことはしなくていいじゃん、って考え方じゃダメなんですかね? 別に会話が弾まなくたって死なないですよ。犬のやわ肌さんが、それで孤立しちゃってるってわけでも今のところないみたいだし。
少なくとも、そこを人としての欠落みたいには思わなくていいですよ。

多少の孤独感もあるんだとは思いますけど……、犬のやわ肌さんに言っときたいのは、さっきから言ってるように、人の話とかそんな興味ないって、基本みんなそんなもんだから!

そんなね、「人が好き、だから人と話すのも大好き!」、ついでに旅も好きで、世界のどこでも誰とでもすぐ仲よくなっちゃう!みたいな……、そんなナオト・インティライミ的な人なんてね、現実にはそうそういるわけないんだから! 
あ、ナオト・インティライミさんは完全に表面的なイメージで出しちゃったんで、ご本人およびファンの皆さんには大変申し訳ないですけど(笑)。
ただひとつ言えるのは、そういうような人がホントに実在したとして、その人は間違いなく、我もそうとう強い方なはずですよ。だからこそ、平然とフラットに他者と接することができる(ように見える)。

まぁそんなこんなで……、コミュニケーションへの欲求が比較的低いなんてのは、要は「性欲がそんなに強くない」とかそんな程度のもんで。
そのたとえで言えば、じゃあいろんな相手と「平然とフラットに」やりまくってる人のほうが偉いのかとか、そういう問題じゃないわけじゃない?

あとはさ、またさらに身もフタもないことを言えば、犬のやわ肌さんの周りに現状いる人たちの話ってのがさ、ホントにマジで心底つまんないだけ!って可能性だってあるでしょ。
てか、そもそもみんな、普段からそんな「面白い」会話なんてしてないし、しなきゃいけないもんでもないし。
「宇多丸さんは……」って言ってくれてますけど、あれは仕事だから!(笑) 
前も言いましたけど、僕、プライベートではほとんどしゃべらないし、なにか情報インプットするのも疲れちゃって、基本、心を閉ざして生きていますよ(笑)。

こばなみ:
たしかに、みんながみんな「面白い」会話をしているわけじゃないしっていうのは、そうですね。

宇多丸:
それに、これも前に言ったけど、その場にいるみんながゲラゲラ笑ってるのに、僕だけ笑ってない、みたいなこともよくありますよ。
そんなことでよくそこまで笑えんなー、とか内心思ってたりします(笑)。

なので、無理して「盛り上がった会話」のフリなんかしなくていいんじゃない?とは思う。

「人そのものは好きになれる」っていうんだし……、ただ、ちょっと思ったんだけど、誰かを好きになるって、つきつめると「その人の見ている世界を共有したい」ってことだったりしない? 
「こういうふうに世界を見てる人って本当に素敵だな」みたいな……、だから、その人が好きなものを自分も好きになろうとしたり。
これ、恋人に限らないですけどね。仕事仲間とかでも、何を考えてるか、何が好きなのか、少なくとも僕は知りたくなる。気に入った人のことは。

だから、ひょっとすると犬のやわ肌さんは、そこまでの気持ちになったことがいままであんまりない、そういう人たちにまだ会えてない、ってことなのかもしれない。

こばなみ:
その感覚、私もわかります。パートナーもそうだけど、素敵だなと思う女性とか、考えてることを知りたいから、いろいろ聞きたいし、話したい。

宇多丸:
たとえば犬のやわ肌さんも、好きなアーティストのインタビューとか、読んだり聞いたりしない? 
映画監督のインタビューとかさ。この場面はどう撮ったのかとか、聞きたくならない? 
あと、こんないい映画撮る人は、ほかにはどんな映画が好きなんだろう?とか……、てか、よく考えてみりゃ、僕の番組聴いてくれたりはしてるんだもんね!

だったらやっぱり、人の話を聞くこと自体に興味がないわけじゃないんじゃない?  単に興味がわく人とそうじゃない人がいるっていう、わりと当たり前のことでしかないのかもしれませんよ。

なんにせよ、会話が盛り上がらないっていうのに仮に責任があるとしても、だとしたらそれは両者に言えることなわけだし、繰り返しますがそもそも無理してまでやらなきゃいけないようなことでもないんで、自分が悪いんだー!とかあんまり思いつめないほうがいいですよ。

あえてテクニック的なレベルをアドバイスをするならば、やっぱり最初のほうでも言った通り、「なにかしら質問する」というタスクを自分に課してみる、というのはどうですかね。
みなさん本質的には自分の話がしたくてしょうがないわけだから、大喜びで話し出してくれるはずですよ!

それと僕、相談文を読んでて感心したのは、犬のやわ肌さんが、厳しい自己分析をちゃんとしようとしてるところ。
ここまでしっかり考えられる人なら、きっと他者の観察/分析も、鋭くできるんじゃないかなぁ。そしたらもう、相手に興味を持ったも同然ですから。

そして、そんな犬のやわ肌さんの話、僕はもっと聞いてみたくなりましたよ!




【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2019年1月12日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
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※シングル「世界、西原商会の世界! Part 2 逆featuring CRAZY KEN BAND」が配信中! Victorサイト限定CD盤もリリース!
詳しくは
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。




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