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笑うことが極端に苦手です。まわりに同調するという、生きるために当たり前のことができません……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室250】


✳️今週のお悩み✳️
私は物心つく前から、笑うことが極端に苦手です。発達障害などで診療を受けたことはありません。専門家の治療を受けるほど大事にはしたくない、とも思っています。ごく親しい家族や友人の前ではふつうに笑ったり、冗談を言い合えるのですが、クラスではいつも、あの人の笑ったところ見たことないよね、などと言われていました。たまに笑うと、非常に珍しがられるので、余計に萎縮してしまいます。授業中など、大勢の中で話を聞いて、同調してリアクションを取るのが苦痛でした。特に幼少期は、家の中でも、親の見ているテレビで、なぜ笑っているのか理解できず怖くて号泣したり、など、どうしようもない子でした。親もこのことを今でもネタにしてくるのですが、私はそこに触れられるのがすごく嫌で、何度かキレたこともあります。だけど理解されないのだと思います。そこも含めてかわいいのか知りませんが。今は、親しい人の前や、テレビで好きなタレントが出ていれば、笑うことができます。それ以外はよくわかりません。3年働いている今の職場でも、目上の人から「あなたが笑ってるの初めて見た」と言われると「すみません」と言ってしまいます。向こうは怒っているようではないのですが、いつ嫌われるんだろう、と内心ヒヤヒヤしています。器用に色々できるわけではないし、この性格が一因で、試用期間で解雇されたこともあるので。まわりに同調するという生きるために当たり前のこと、小さい子でも当たり前にできることが、どうしてわたしには備わっていないのでしょうか。余談ですが、同調だけがいいとは思ってはいないのですが、小学生の頃、いじめに同調しなかったおかげで、正義感の強い子と言われたり、好きでもない子の面倒を見る羽目になりました。色々まとまりのないことを書いてすみません。少しでもふつうに近づくために、私は何を心がければよいでしょうか。今からでも反省したいです。すごく怖いですが。

(能面・30歳・北海道)


宇多丸:
相談文を読んで、自分も気をつけなくちゃいけないなと思ったのが、「笑ってるの初めて見た(笑)」的な軽口でも、相手を意外に深く傷つけてしまってることもあるんだなって。

たぶん、言ってる側は100%ポジティブなニュアンスのつもりだと思うんですよ。「ようやくあなたの笑顔を見ることができて、嬉しい!」っていう気持ちで言ってるんだと思うけど。

ただそれが、気にしてる側にとっては、からかいとか、逆にそれまで笑顔を見せなかったことへの非難とかみたいに響いてしまうこともある。

前回の話じゃないけど、親しみを込めた茶化し表現って、お互いにはっきりした信頼関係があってこそのものなんだから、悪気はないんだからいいでしょって話じゃないんだよね。
できるだけちゃんと意識していかなきゃなと、改めて思い知らされました。

こばなみ:
なにげなく言ってしまっていること、ありますもんね。

宇多丸:
ただ能面さん、気を許せる相手の前ではふつうに冗談言って笑ってるということなんで……、だとしたら、そこまで異常な状態ってわけでもないのでは、という気もしますが。
だって、誰でも日ごろから、TPOに合わせて笑いのハードルを上げ下げしてることには変わりないわけじゃん? 
能面さんの場合は、それがやや高めに設定されているだけ、とも言えないかなぁ。

ちなみに僕も、笑うときは笑うけど、みんな笑ってるのに僕だけ笑ってないっていうとき、昔からけっこうありますよ。
なにが面白いかわからないってことじゃなくて「それほどでもない」って感じ。
いわゆる「ゲラ」じゃないし、ゲラのふりをして大げさにリアクションをとるのも苦手。バラエティに向いてない(笑)。

でもさ~、実生活で本気で吹き出すほどおかしいなんて、そんな頻繁にあることでもないでしょ? 実際。

こばなみ:
私は笑いのハードルがそんなに高くないから、けっこう笑っちゃいますね。でも吹き出したり、お腹を抱えて苦しいくらい笑うのは、数カ月に1回とかですかね~。

宇多丸:
それにしたって、たとえば周りが知らない人ばっかりとか、気を使う目上の人がいたりするときとかじゃ、まずないわけじゃん? 
つまり、我々みんなが基本的には、笑いやすいモードとそれを抑制するモードを、状況によって使いわけてるんだから。
能面さんも本質的にそれとなんら変わらないわけで、本来はそこまで悩む必要はなかったことなのかもしれない。

ただ、単に人より笑いのハードルが高いだけという主観的な話と、はたから見てどういう印象を与えているかはまた別問題で。

本人の意図するところとは別に、ぶっきらぼうに見えてしまう人というのはいるよね。黙ってるだけなのに不機嫌なように見えてしまう人。
「能面」っていうやや自虐的なペンネームをつけているくらいだから、彼女もたぶん、そうなのかもしれない。

こばなみ:
みんなにこやかななかで無表情だったり仏頂面な人がいると、それはやっぱり気になるのもわかる。私なにか失礼なことしたかな!? つまんないのかなって気になっちゃう。

宇多丸:
でも、仮にそこで周囲に無駄に気を遣わせないよう心がけたとして、それを「同調」と、はっきりネガティブに表現してしまうのもどうなんだろう。

後段で「いじめに同調しなかった」と言ってるんだけど、その「同調」とは問題の次元が違うでしょう。
よく笑う人だって、いじめに同調すべきじゃないのは同じなんだからさ!

おそらく能面さんは、みんなと同じタイミングで笑わないとか、笑顔を見せる機会が少ないとかを人に指摘されて、何度も嫌な思いをしてきたせいで、「“みんな”と自分は違うんだ」という頑なな線引き思考を、必要以上にするようになってしまったんじゃないかと思うんです。
そしてそれが、下手すりゃさらに人との壁を高くしてしまう、という悪循環に陥ってる。
平たく言いかえれば、ちょっとこじらせてしまっている状態にも見えます。

とはいえたしかに、だからって無理に表情を作るとか、そういうまさに「同調」行動までとらなきゃならないのかっていうと、能面さんにとってそれはやっぱキツいよね、当然。

ただ僕はね、周囲とそこそこ円満な関係を築く、キープしていくという、まぁいわゆる最低限の社会性というやつは、なにも四六時中愛想笑いをしてなくても、いろんなかたちで発揮できるはずでしょ、とも思うんですよ。
要は、「他者」に対する気遣いの問題なんだからさ。
「お互い理解しえない部分も、利害が一致しない局面もあるかもしれないけど、それでも本質的には私はあなたの敵ではなく、仲間ですよ、仲良くしたいですよ」という意思表示ができていればいいわけで。

たとえば、顔を合わせたらはきはき挨拶するとか、天気の話題でもなんでも、ときおりこちらから話しかけるとか、どっか行ったら小さなもんでいいからお土産を渡すとか……、とにかく「空気を和ませる」手段って、「笑う」以外にもたくさんあるはずじゃん。

前に「仕事をしっかりやってるのに認められないのは、上司に媚びないから?」という相談があったけど、あのときの回答にも近いかもしれない。
「人に感じよくする」のと「同調」や「媚び」は違うし、その方法はひととおりじゃない。そして当然のことながら、人から感じよくされたいなら、自分からも感じよくするしかない。

こばなみ:
ずっと言われてきたんでしょうね。笑わない=感じが悪い、だからダメなんだみたいなことを……。

宇多丸:
相談文から察するに、そもそも親御さんからそういう刷り込みを受けてきたっぽいよね。
大人が笑ってるものを見て子どもは泣いちゃうとか、それこそ「ふつう」にあることだよ! 
能面さんも、あんまり自分は異常なんだとか思いつめるの、できればやめられるといいんですけどね。

まぁ、「みんなは笑ってて楽しそうなのに、自分はそうじゃない」というのが、強い疎外感につながりやすいのもわかりますよ。
僕もそう感じるとき、子どものころから実は多かったし、いまもゼロじゃないよ。

テレビの影響かと思うけど、特にいまは、リアクションが大げさな人が多いからね。
どいつもこいつも、常にワイプにでも抜かれてる気なのか!っていう(笑)。
そのノリにまで「同調」する必要は、もちろんないです。

ただ能面さんは、その気はなくとも堅めな印象を人に与えがち、ということはすでにわかっているわけだからさ。
そこをちょっとでも和らげるような言動を心がける、くらいの努力はしてもいいんじゃないですかね。少なくとも、今後少しでも生きやすくしていくためには。

極端なことを言えば、「無表情に見えるけど感じはいい人」を目指すことはできるわけで……。
とにかくまずは、「世界と自分」を敵対関係的に考えることからやめられるといいんですけどね。健闘を、心からお祈りしております。


【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2018年9月8日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。




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