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職場に暗くてやりづらい人がいます。でも関わらなければいけない……、どうしたらいい?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室394】


✳️今週のお悩み✳️
人様の性格のことなので、こんな文を書いてしまい申し訳ないのですが、耐えられないので相談させていただきます。私は暗い人がとても苦手です。仕事でいつも暗い感じの人がいて、気を使います。会議の雰囲気も暗くなり、やりづらい、話しかけづらいです。暗い顔で話しかけにくいなと思いながらも、会社ではその人に話しかけるようにしています。明るく問いかけたりして、会議でも発言してもらおうと努力はしているつもりなのですが、その人(年上です)からの反応は「そうです」などの一言や、自由回答だったとしてもひと言、ふた言が多いのです。たまになんでそんなふうに雰囲気を悪くするんだろうと、怒りが込み上げてしまうときがあります。諦めずに話しかけていますが、だんだんその人と関わるのが苦痛になってきました。向こうは苦痛ではないのだと思いますが、仕事で関わらなければいけません。こういうときはどうしたらいいのでしょうか。「暗いの辛いんでなんとかしてもらえますか?」なんて、性格のことなので言えないです。でもものすごく、やりにくいのです。
(モウモウ・38歳・会社員・埼玉県)


宇多丸:
会社の人間関係問題ということで、まずはこばなみにご意見うかがいましょう。

こばなみ:
業務上で損害が発生してるのであれば、その人と話し合ったり、上司に掛け合ったりして、改善するべきだと思ったんですけど、そうでないならとくにアクションできないのでは……と。

宇多丸:
やっぱまぁ、とりあえずはそう言うしかない感じもあるよね。

まったく返事もしないとか、指示にちゃんと従わないとかサボるとか、そういう明らかに意図的な、仕事の足を引っ張っていることが明白な非協力的態度であれば、それはもちろん問題視されてしかるべきだけども、その人の場合、そこまで悪質ってわけでもないっぽいもんね。

一応最低限やるべきことはやっているのであれば、こちらの干渉が許される範囲というのも、おのずと限られてくる、というところはぶっちゃけあると思います。

モウモウさんも、そんなことは百も承知だからこそ、悩まれているわけだけども。

もちろん、お互い大人なんだからみんなが気持ちよく働けるようもうちょっと気とか使えないわけ?的ないらだちは、僕もどちらかと言えばムードメイキング大事だろ派なので、すっごくよくわかりますよ。

とはいえ、じゃあどのあたりが適切な気遣いラインなのか?というのも、突きつめればしょせん、人それぞれでしかないんでしょうしね。

その不一致にいちいちイライラなんかしてたら、それこそ本末転倒なことになっちゃう。

要は、その人についてこれ以上あれこれ考え続けても、何もプラスなことは起こらない、というのが現実なわけですよね。

僕はそういう場合、前も言いましたが、「意識的にそこで思考を止める」ようなマインドセットを心がけているわけですけど。

たとえば、言うまでもなくその人には大変失礼な話ではあるけど、一方的にイライラをつのらせるくらいなら、最初からひと言ふた言しか返す機能がない人間型ロボットなんだ、くらいに考えとくのはどうですか?(笑)

「この洗濯機というやつは、たしかに命令したぶんの仕事はきちんとするけれども、返事はそっけなくピーとだけしか返ってこない、けしからん!」とか怒ったりしないでしょ?(笑)

こばなみ:
自分と同じような感じで振る舞う、とかはハナから期待しないってことですよね。

宇多丸:
まぁそういうことですね。

他人とのコミュニケーションが苦手な人というのは間違いなくいるし、人間誰しも得手不得手があるのも当然のことなんだから、なんつーか、少なくとも、「なんでそんなふうに雰囲気を悪くするんだ」的な、言ってみれば積極的な悪意の現れとしてその人の暗さや無愛想さなどをとらえるのは、事実とも異なる可能性がそれなりに高いですし、やはり意識してでもやめてったほうがいい考え方なのはたしかかと思います。

もし仮に先方が、職場では必要最低限のエネルギーしか使いたくない!的な思想ゆえにそのように振る舞っていたのだとしても、仕事はそれでも一応しっかりやっているのであれば、外側からそれ以上の介入は、するべきじゃないわけじゃないですか。

こばなみ:
会社の理念や体質の面でも、その人を受け入れているのであれば、責められないんじゃないかな。

宇多丸:
というか、要求された業務は最低ラインであれこなしているのであれば、なんにせよ責められる筋合いではないと思います。

個人差の一線を越えてあんまりグイグイ「矯正」しようとしちゃうと、最悪パワハラにもなりかねないわけで。

ちょっと厳しい話になっちゃうけど、「諦めずに話しかけています」っていうのも、モウモウさんとしては疑う余地のない100%の善意からやっていることであっても、向こうにしてみれば、最悪、それこそ苦痛なだけだった、というようなことだってありうるわけだから。

とくに明確な悪意を向けられたとか、ハラスメントされたとか、職務怠惰で困るとかではないのなら……、てか、なんなら世の中には、はっきりそのレベルでダメな人が、にもかかわらず職場にのさばったまま、なんて事例もざらにあるんでしょうから。

それにくらべりゃだいぶマシなほうかもしれない、と考えたりはできないですかね?

とにかくモウモウさんは、その人について考える時間を、今すぐできるだけ減らすべき!

こばなみ:
気になりだしたら止まらなくなってしまったのかもしれないですね。

宇多丸:
この件に限らず、不愉快な事柄にばかりあまり意識を集中させていると、その件を、必要以上に重くとらえすぎてしまうことにもなりがちで。

逆に、自分にとって本当に大切なことや心地いいことに優先的に意識のスペースを割いてゆくようにすれば、不快なだけで実際にはどうでもいいような案件はどんどん頭のすみっこに追いやられてゆき、気がつけばすっかり忘れていたりもするもんで。

心のキャパも人生に残された時間も、確実に限られているんだから、具体的に行動してすぐ解決すべきような問題でない限り、そうやってどんどん「脳内掃除」してけばいいじゃん、というのが僕の持論ですね。

とりあえずはやっぱり、あちらも別に悪気があってそうしてるわけでもないんだろうし……というところから、思考転換の第一歩を踏みだしてみてはいかがでしょうか。

こばなみ:
現状こっちの一方向で考えちゃってるけど、相手にもう少し想像を張り巡らせてみて、いろいろ考えても仕方がない、というところにたどり着くといいですね。

宇多丸:
たとえばですけど、このコーナーに、その人サイドから見た悩みが届くというケースだって、余裕でありうるわけじゃないですか。

「私は昔から人とのコミュニケーションが不得手で、それでもできる仕事をと思ってここを選んだのですが、同僚からはより積極的な交流を絶えず求められており、とても困っています。もちろん必要な返事や発言などは自分なりにしているつもりですが、それでは満足してもらえないようで……、とはいえこれ以上積極的になるのは私には無理なのです。どうしたらいいのでしょう?」みたいな。

こばなみ:
なんか過去にもあったような感じのお悩みですね。

宇多丸:
その人は、いろんな事情から、そうとしか振る舞えないだけなのかもしれないですしね。

いっぽうでモウモウさんは、消極的なコミュニケーション姿勢が他者にどういう印象を与えるか、その人を反面教師としてこの機会によーく学んだわけですから、あとはもう、私はああならないよう気をつけよう!と今後さらに心がけるというだけで、すでにじゅうぶんプラスの経験だった、と言えませんかね。

さらにあえて付け加えるなら、僕だったら、以上言ってきたようなことすべてを踏まえたうえで、それでもなお、何事もなかったかのように、ほかの人たちと同じように接する、と思います。

普通にあいさつはこちらからするし、お土産も配る。

べつにその人からの見返りは求めていないというか……、単に、僕自身が人にはナイスに接したいからそうしているだけ、以上!みたいな。

あくまでそれは自分の行動基準に従っているだけなので、ほかの人が同じようにしないからと言って腹が立つようなことも、当然ない。

要はよく言う、自分は自分、他人は他人……、シンプルな話ではあるんですよね。

同時に、法的にも倫理的にもそこまで反しているわけじゃないけど、とにかく苦手!な他者同士が、それでもなんとか一定の枠組み内で共存を目指してゆきましょうよ、というのが社会であり、わけても会社組織というものであるとするなら、モウモウさんがその中で抱いた今回の悩みというのは、ある種万人に通じる、普遍的な問題でもあるはずですよね。

だから、自分なりにそこと折り合いをつけられるかどうかというのは、とても大事な話でもあると思いますよ。

とりあえず今回は、僕流のマインドセットの仕方をお伝えしたわけですが、参考になったかしら……、ちょっとでも心おだやかになるお手伝いができたのならいいんですが。

こばなみ:
私も今回、このお悩み、わかるし、よくあるよなぁと、モヤモヤしました。

ただ、当たり前ですけども、相手は、というか、ほとんどの人は自分と同じ考えではないですしね。

さっきちょっと言いましたけど、相手の行動だけでなく、なぜその行動なのか、あらゆる可能性を想像しまくってみるのもいいかもしれないですね。たまに自分でもやるんですけど、自分の中にはないあらゆる方向性の理由を出し切ってみると、そういう考えなら当然そういう行動になるわなとか、腹落ちできたり。

でも、これからもこういうことって、仕事だけじゃなくて、たくさんあることだと思うので、モウモウさんも自分流のマインドセットを見出せるといいですね。お互い精進してまいりましょう! おーっ!!



【今週のお絵描き】

画・宇多丸




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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

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女子部JAPAN こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。



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