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【ライムスター宇多丸のお悩み相談室304】要領を得ない後輩にイライラ……、どんどん心が狭く嫌な人間になっています……。心穏やかに仕事をする方法は?


✳️今週のお悩み✳️
仕事を始めて5年目ですが、どんどん人に対してイライラしやすくなっています。なんとか気持ちを落ち着かせ、心穏やかに仕事がしたい。あとせめてプライベートではイライラをもちこみたくない! 昔はあまりイライラしないタイプだったのですが……、先輩や上司にはまだ大丈夫です。仕事で社内に常駐している方とやり取りすることが多いのですが、なんとか声色と笑顔だけキープ。チーム内の後輩(のんびりや)に対しては笑顔は無理、声色は最初の3秒しか持ちません。いつかパワハラしそうです。新人だから要領を得ないのは仕方ない、自分だって他人にそう思わせていることだってあるけれど我慢してもらっているじゃないかと暗示をかけますがイライラはおさまりません。プライベートでは要領の悪い行動を見るとイライラ。今度引っ越すのですが不動産屋の担当が若すぎていろいろと気になり早く電話しろよ!みたいな感じでまたイライラ。どんどん心が狭く、特に年下に対して嫌な人間になっているなと思いながら過ごしています。ただふとスイッチが切れると要領を得ない行動をする人間に自分がなっていたりもします。こういう時は本当にリラックスしている気がして気分爽快です。これが昔の自分だ!という気がします。なんだか仕事がプライベートを侵食しているようで苦痛です。心穏やかに仕事する方法、ひいてはイラッとしてもプライベートに持ち込まない方法をアドバイスいただきたいです。
(ざきやま・27歳・会社員・千葉県 )


宇多丸:
こばなみはイライラしますか?

こばなみ:
しますよー。仕事が忙しいときとか。職場では出さないようにしているのですが、それこそ家庭でイライラをオットにぶつけてしまったり。

私、ジムに通ってはいるんですけど、ここのところ忙しくて行けてないんです。なのにジムの話ばかりしてくるオットにイライラーッとして、「暇人だね」と言ってしまいました。

「心を亡くすと書いて忙しい。いまあまりよくない状態だね」みたいなことを言われて、またイライラするんだけど、よく考えると関係ない人に当たってしまってる自分が悪いんだなぁと思って、謝りましたが……。

まさにプライベートに持ち込んじゃってるって話ですが……。

宇多丸:
「心を亡くすと書いて忙しい」……ただでさえ余裕がないときに、したり顔でそんなうまいことだけ言われると、やっぱさらにちょっとイラッとしちゃうのもわかるけど(笑)。

ちなみにざきやまさんの場合さ、バッドバイブスが、特に後輩、年下、若者に対して噴出しがち、という特徴があるわけだよね。

その意味では、ちょっとズルい感じもするけど(笑)。 

ま、年長者には一応リスペクトもあるけど……ということもあるのかな。

まぁ、自分より若い世代に思わず嫌悪感を抱いてしまうっていうようなこと自体は、誰だって大なり小なりおぼえがある話でもあるでしょうけどねぇ。

あと、僕も要領が悪いのって嫌ですから。

そこも気持ちはわかるっちゃわかりますよ。

問題は、いったん湧いてしまったその感情を、どう表出するのかしないのか、しないならしないでどう解消してゆくのか、ということですよね。

こばなみ:
宇多丸さんは……、イライラしてます……?

宇多丸:
ゴリゴリにしてるよ!(笑)

『アベンジャーズ』一作目のブルース・バナーのセリフじゃないけど、「実はすべてに対して、常に激怒してる」級ですよ!

けっこうな頻度で「イライラすんなー!」って口に出して言ってるくらいですよ。

こばなみ:
相手に向かって?

宇多丸:
いや、あくまでひとりのときね。

人前でたれ流したりはしないですよ、もちろん。

悪感情を自分のなかでちゃんと整理、コントロールしないまま表に出しちゃうのは、まぁ僕もいまだにやってしまっているときもあるとは思うけど、基本あまりよろしくないもんですよね、やっぱり、当然。

あらゆる意味で、誰にとっても、ろくなことないですよ。

ざきやまさんのイライラもさ、たしかに、何度言ってもやるべきことをちゃんとやってない、なんならやろうともしてないとか、ちゃんと理があるものだったりもするんだと思うんです。

でもそれだけに、そういう「正しさ」を背負った怒りって、歯止めがきかなくなりやすい。

そうすると、本来もっと簡単にとれるはずのコミュニケーションも、無駄に厄介になっちゃったりもするじゃない?

たとえばその後輩や若い不動産屋も、彼らにしてみればいきなり頭ごなしに敵意を向けられたりすると、反射的なムカつきや恐怖のほうが先に立っちゃって、本来こっちが学んでほしいことまでは、逆にたどり着きづらくなっちゃうわけですよ。

要はさらに余計なイライラの元まで自ら作っちゃってるようなもんで、結果、誰も得しない。いっとき溜飲が下がってもね。

これ、難しいのは、だからと言って怒りをただ飲みこんで、ためこむだけだと、後で結局限界が来て大爆発!という、最悪の事態を招きかねない。

だから、自分のイライラにいちいちちゃんと向き合うっていうか、なぜそう感じてしまっているのかしっかり考え、整理して、その都度適切なやり方でアウトプットしてゆくようにする、というのが大事なんですよね。なによりも自分自身の利益のために。

たとえば職場でコイツ使えねー!ってなったときにも、前も言いましたけど、いきなり「叱る」「怒る」っていう感情的なレベルに行っちゃうんじゃなくて、まず「指摘」、それでも直んなきゃ「指導」、まだダメなら「注意」、とかとか、その前にもいくつか段階があるはずなんですよね、本当は。

それでさえ、自分は「指摘」レベルだと思ってても、相手はけっこう怖く思っちゃってるとかもありうるし、言い方には気をつけたほうがいいくらいなわけで。

逆に、それくらいコントロールできてる状態なら、あえて「怒ってみせる」って手も有効に使えるようになったりもするんじゃないですかね。

こばなみ:
あ~、そうやってる人、いますね。

しかし「パワハラしそうです」ってのが気になりますね。私もどこまで言ったらパワハラなのか、わからないなって思うことがあります。

宇多丸:
その問題もあるからこそやっぱり、いったん自分の気持ちを因数分解して、その表出の仕方や量や強さをちゃんと意識的に調節するクセ、我々みんなぜったいつけといたほうがいいよ。

もちろん僕も完璧にできてるわけじゃないですが……。

あとさ、「せめてプライベートではイライラをもちこみたくない」って言うけど、ちょっと愚痴を聞いてよっていう対象がパートナーだったりするのは、そこまでダメなことだとは思わないんだけど。

別になにかを解決してほしいわけじゃなくて、そりゃひどいね、可哀想に!とかってひとこと言ってもらうだけでも、ぜんぜんスッキリしたりとか、ふつうにあるでしょ?

こばなみ:
私はそういう仕事のイライラをふつうに言えばよかったんだけど、オットだけジムに行ってるという別件に当たっちゃったんですよね。

宇多丸:
そう、こばなみは別件にしちゃった。ベッケン・バウワーはよくないよね!

ざきやまさんは、自分自身が要領を得ない感じになってるときこそがリラックス状態、ってことだから、本来はのんびり屋さんなほうだったのかもしれないよね。

そこも自覚できてるなら、プライベートは思いっきりダメ人間になる!とか、自分のなかのオン/オフをはっきり線引きしてけばいいだけじゃないかな。

さっきの僕の、人前じゃなければ乱暴なひとりごとを言っちゃう、とかもその部類かもしれない。愚痴や泣き言も言いますしね。

同じ人間だから完全な気持ちの切り替えはできなくとも、その出し方のつまみ調整はできるはずで、特に公の場と私的な時間はモードを明確に変えるっていう、そういう心持ちでなんとか対処できないですかね。

でもまぁ僕も27歳くらいのころは、イライラ撒き散らし放題でしたしね。

つくづく赤ちゃんだったなぁって思うよ。

自分のなかで生じたものをそのまま出しちゃうって、赤ちゃんでしょう。

こばなみ:
赤ちゃん、いますね~!

宇多丸:
要は甘えてるんだよね。

一方的に気持ちを発散しても、まわりの誰かがきっと回収してくれる、って前提じゃん。

その意味で、かつて僕が無神経に傷付けたみなさまがた、その節は本当に申し訳ありませんでした……!(泣)

とにかくさ、要は「内面に生じたものをどう表に出してゆくか」によって、はたから見たその人の人格っていうのが、かたちづくられてゆくわけじゃない? だからこれ、すごく普遍的で、重要な話でもあると思いますよ。

こばなみ:
そうですね。イラッときたら、いったん深呼吸をしたり、猫や犬の写真を見たりして、落ち着こう! 私も気をつけます!!  オット、すみません!!




【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2019年12月14日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
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※シングル「世界、西原商会の世界! Part 2 逆featuring CRAZY KEN BAND」が配信中! Victorサイト限定CD盤もリリース!
詳しくは
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。




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