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【ライムスター宇多丸のお悩み相談室195】断ってるのにお酒の席に子どもを連れてきたり……。子どもがいる友人とうまくやっていくには?


✳️今週のお悩み✳️
いつも楽しく拝見しております。小悩みです。集まりに子どもを連れてくる友人が嫌です。特にお酒の席は非常に不愉快です。(20歳未満) 私が企画したものは子どもお断りにしてますが、友人が勝手に子ども連れの人を誘ったりしていて腹立たしく思うこともあります。子ども連れてっていい?と言われたら断わりにくい状況もあります。 私自身はご家族で参加下さいという会合にはできるだけ参加しないようにしています。欧米ではノーマルらしいですが、子どもがいると楽しめず、激しく疲れます。そのような会合は趣旨も不明瞭になり何を基準に参加を判断したらよいかもあやふやになり、幹事さんとの関係性も遠くなります。 産んでいる人の方が偉いと親しい友人に言われたこともあり、子どもがいる友人(男女問わずですが特に女性)」とは距離を置くようにしています。友人(私的には知り合いレベル)は多い方なのですが、独身や子どもがいない人はほぼいなく、気持ちを分かり合えることはないと感じています。今後、子どもがいる人や子どもと接触しないようにすることは難しいです。子どもが嫌なのではなく、私の周りにいる配慮のない人が嫌なのです。仕事なら我慢しますが、親戚ですら不快です。連れて来られた子どもも気の毒です。たとえ子どもを会合に連れてこなくても、子どもの話題などで盛り上がると本当に意味がわかりません。気を使って疲れるばかりです。子どもがいる人からしたら何も感じないと思いますが、私的には人間関係が崩れるレベルです。勇気を出して、子どもがいる人は子どもがいない時期があったはずで、気持ちもわかるはずなのでそちらが私達みたいな人に合わせるべきと発言したところ、「??」みたいになったり、友人の中で一人だけ、独身子どもなし状況にもなったことがないからわからないと言われました。42歳独身です。私は外食や家族でお出かけも行くことなく、育てられました。なので大人になって1人で自由にお出かけするようになり、子ども連れで外出されてる人があまりに多くて驚きを覚えつつ、悲しいかなもう約20年程その事実を受け入れられずにいます。引きこもり子育てはよくないと思いますが、産むならそれくらいの覚悟で育てて欲しいとの気持ちもあります。配慮ある人もごくわずかですが、いらっしゃることは確認できています。 弟が2人はいますが独身で、甥や姪等身近な子どももいません。私はもうすぐ産めなくなる年齢が近づき、今のところ産む予定もありません。長々と書きましたが、疲れず穏やかな気持ちで、子どもがいる知り合いとやっていくにはどう考えれば良いのでしょうか。自分に余裕がないときの方が多く、なかなかうまくいきません、アドバイスお願いします。
(七子・42歳・京都府)



宇多丸:
僕自身、子どもいないんで、七子さんのいらだちも、なんとなくわかりますよ。

こばなみ:
私も。

宇多丸:
前に、「子連れで飲み会に参加するのは控えるべき?」っていう相談があったけど、立場的にはその逆ってことか。まぁ、そっちとはもろもろ条件も異なるんで、単純な比較はもちろんできませんが。

ひとつはっきりしてるのは、「今回は大人の集まりにしたいから子どもは遠慮してくれ」ってはっきり言ってあるのに、それでも断りもなく子連れの人を呼んじゃうっていうのは、普通にマナー違反、ってことで済む話なはずじゃん、本来は。

なのに、こと自分の子どもっていう、その存在そのものにはこっちも異論の挟みようがないような、言わば「絶対善」が関わってくると、そういうとこの優先順位が極端に低くなってしまう……だけでなく、周囲の人間もその価値観を共有してて当然、みたくなってしまう傾向が、一部の人に強固にあるというのも、またたしかですよね。
事実、七子さん側の言い分の理解者が周りにまったくいないって状態なんだもんね。さすがにこれはかわいそう。

なんか、そもそもその、付き合ってるメンツ自体が、七子さんとはあんまり合わない連中なんじゃないの?って感じもちょっとしちゃうくらいですけど。

こばなみ:
会話も、子どもの話とか、家族のこととかばっかりだと、あんまカンケーないし、のれないし、なんで一緒に飲んでんだろうって思っちゃいそうですね。

宇多丸:
まぁ、話を聞くだけならまだいいだろうけど、そこでさらに、子ども至上主義の押しつけというか、子どもを持たないこっちの生き方の否定チックな方向にまでやんわりとでも話が進んでいったりすると、やっぱ相当イヤだよね……。

こばなみ:
なんすかね? その感じ。親しい人にはいませんけど、ひょんなところで、「ママっていいわよ」圧力を感じたことはあります。「うらやましいです~」って言って、その話題がそれ以上、膨らまないようにはしましたが。

宇多丸:
これさ、話をごっちゃにしてほしくないんだけど、言うまでもなく、子育てしながらでも普通に仕事も遊びもできるような社会環境というのは、もちろんもっともっと充実してゆくべきだし、僕らだってそこに文句言ってるわけじゃ別にないんですよね。
それこそ例のベビーカー論争じゃないけど、特に公共の空間で、子連れだと肩身が狭くなってしまう社会っていったいなんなんだ、とは僕も当然思います。

たださ、それでもやっぱり、「ここはあんまりちっちゃい子は連れてきちゃダメだろう」とか、そういう暗黙の一線っていうのは、絶対あると思うんですよ。

たとえば、最近は東京でも少なくなってきたけどミニシアターとか、なんであれ完全に大人向けの作品を上映してるような映画館に、「こういう場では私語を慎むべし」レベルの礼儀がまだ身につけられていないような年齢の子どもを連れてくるのは、明らかにマナー違反じゃないですか。
じゃあ子ども向け映画がかかってるとこならいいのかっていうと、それでもやっぱり、泣いたりわめたいたりするのを制御できないような乳児や幼児は……、いや、今はそういう子連れでもオッケーな回を特別に設定してるシネコンとかもあって、それはそれで素敵な試みだと思うけど、そうじゃない普通の上映回には、やっぱそこまで小さい子は、普通連れて行かないものでしょ? それは社会常識として。

映画館っていう、比較的公共性が高い場所でさえそういう暗黙の了解っていうのがあるんだから、言わんや飲み屋をや……って話でしょう。
だからこそ、僕も、さっきも出た「子連れで飲み会に参加するのは控えるべき?」っていう相談にも、子どもを育ててるからってもろもろの楽しみを諦めなきゃいけないなんて法はない、というのは大前提として、同時に、大人の空間というのも当然尊重しましょうねとか、その前に酒飲みとして最低限のエチケットは守りましょうねとか、いろいろ条件つきの回答をしたわけで。
もちろん、子連れの飲み会っていうのがあってもいいだろうけど、その場のコンセンサスが取れてるってことが前提なのは言うまでもなくだし。

というわけでね、最初に言ったように、子ども抜きで大人同士楽しむ会にしましょうって事前に伝えてるのに、それを当たり前のような顔で軽視されて不快、という七子さんの訴えは、まったくもって正当だと思いますよ。
まぁ、後から来ちゃった子連れの方は、ひょっとしたらそういう集まりだって説明をちゃんとされてなかっただけなのかもしれないから、悪いのはやっぱ、無神経にそういう人を誘いまくっちゃうお友達、ってことなんじゃないですかね。

じゃあどうするのかってあたりで、僕の意見を言うならば……、さっきも言ったけど、七子さんはやっぱり、その友人たちとはもう、単純に「人として合わなくなってきてる」ってことなんじゃないかと思うんですよね。
昔どれだけ仲が良かったヤツでも、お互い異なる人生を歩むうちに、共通の話題も少なくなり、価値観も離れてきちゃって、気づけば会ってても前ほど楽しくないとか、いつしか疎遠になっていったとか、誰にもよくある、「友達あるある」でしょ。今回のこれも、それのいちバリエーションとしてとらえることができるんじゃないかと。

七子さんのご友人たちも、仮にお子さんを連れてこなくたって、七子さんの立場や心情に対してそこまでぞんざいな言動を平然と投げかけてくるくらいなんだから、どっちにしたって今は、自分ちの子ども中心でしか物事を考えられない状態なのにたぶん変わりはないわけで……、要は、「子どもを連れてくる/こない」問題以前に、話だってなんだって、すでにもう七子さんとは完全に噛み合わない間柄になっちゃってるのかも、という現実を直視したほうがいい段階なんじゃないかと。

だってさ、特に「産んでいる人の方が偉いと親しい友人に言われた」って、これ相当ひどくない? 
あんた私のこと下に見てるの?って話でしょ。論外ですよ!

こばなみ:
こんなこと言われたらドン引きですね。

宇多丸:
マジで、この発言単体でじゅうぶん絶交に値すると思うよ。
そんなこと平気で言ってくるような人は、もはや親しくも友人でもない、あえて言えばただの「昔は親しかった人」だよ!

こばなみ:
私もおひとりさまなので、嫌な思いはたしかにありますよ。でも、そんなこと言ってくる人ってくだらないなぁって思うしかないですよね。

宇多丸:
ねぇ。いつの時代の価値観なんだよって。

出産や子育てがしやすい、のびのびとできる社会であるべきなのと同じように、それとは関係ない、違う選択をした人の人生や生活も尊重されるべき、っていうだけのことなのに。
「産んでいる人の方が偉い」って、そういう多様性の豊かさを目指すみたいな考え方とは、まったく逆の発想でしょ。ほとんど暴力的ですらある。

特に七子さんは、今回は子ども抜きでよろしくって言ってるのも軽々と無視され、勇気を出して自分の居心地の悪さを訴えても理解しようとすらしてもらえず……、じゃあもう、そっちはそっちでそういう考えの人同士で固まって、勝手にやっててくださいよ、としか言いようがなくない? 
だってその人たちは、そこまでしても、子どもを連れて、子どもの話がしたいんだからさ。だったら同じようなことがしたい人たちで集まって、どこかでキャッキャやっててもらうしかないじゃん。
七子さんも、少なくとも今は、これ以上そこの人間関係には固執しないほうがいいと思います。シンプルに「距離を置く」で正解だよ。

念のため言っとくけど、子育てしてる人たちがみんなそういう感じってわけでも、当然ないしね。
もっと全然普通に、大人の時間は大人の時間でしっかり線引きして楽しむっていうスタンスが身についてる人たちだって、いっぱいいるわけですから。

こばなみ:
もっと気の合う人たち、見つかりますよ。

宇多丸:
そこらのバーやスナックにでも行きゃあ、独身子持ち問わず、さびしい大人たちが夜な夜なワラワラと集まっていますよ(笑)。

まぁ飲み屋とも限らないけど、今はとにかくそういう真の大人の社交場で、交友関係を再構築でもしてったほうが有意義じゃないですかね?

こばなみ:
この機会に新しい世界がひらけるかもって思ったほうが前向きですね。

宇多丸:
それにさ、子どもがいない人生なんてさびしい、みたいに自動的に思われてしまいがちだけど、いやいや、子どもを産もうがなにしようが、どうしようもなく孤独を感じる瞬間というものから、人間、完全に逃がれることなんかできないから!

子どもや孫からとんでもなくひどい目に遭わされて終わるって可能性だって、そりゃゼロじゃないし。
そこまで行かなくたって、家族同士がむちゃくちゃ仲悪い、なんなら憎みあってるなんてとこ、ザラにあるでしょ。

だから、オートマティックに「産んでいる人の方が偉い」なんてことは、絶対にない!

こばなみ:
結婚もそうですよね。結婚したからって偉いとかないし、だからって孤独じゃないわけじゃない。パートナーがいたって孤独なときはありますもんね。

宇多丸:
そうそう。
むしろ、すぐ隣に人がいたって、お互いわかりあえないってことがよりはっきりするばかりで、絶望や孤独が余計に深まるだけ、みたいな状況も、いくらだってあるじゃないですか。

だから、七子さんの子どもはいらないという選択も、かなり意識的に、しっかり考えたうえでされているもののようだし、そこに関しては胸張って、堂々としてりゃいいんですよ。
そりゃバカどもの言うことで傷つくこともあるだろうけど、だってそいつらバカなんだもん!(笑) 
人生というものをものすごく狭い視野でしかとらえられずに終わる、あわれなヤツらだとでも内心思っときゃいいよ。

しかもさ、七子さんは、別にこの先いつか、気が変わったっていいんですよ!
 「もうすぐ産めなくなる年齢が近づき」なんて言うとちょっと悲壮感も漂っちゃうけども……、僕は、後から「やっぱ子ども持つのもいいかな」くらいに思い直したとしても、選択肢はいくらでもあるはずだと思うんですよね。
当然高齢出産の射程もこれからさらに伸びてゆくだろうし、仮にそれはやっぱし難しいかも、ということになったとしても、これは僕がいつも強く主張してることだけれども、養子や里子って手もあるじゃん!っていう。みんなすぐ自分の遺伝子がどうとかこうとかわかったようなこと言うけど、お前のアホDNAなんか後世に残すより、誰かの人生を確実に好転させる行いでもあるんだから、間違いなくこっちのが世のため人のためになるわ!と言いたいです(笑)。

なんにしても、こうでなきゃいけないなんて決めつけることはなにもない、ということですよ。

あと、最後にもうひとつフォローしておけば、そこまで子どもにかかりきりにならなきゃいけない時期っていうのも、子育てにおいて、実はそう長くないからね。
つまり、ご友人たちの子ども至上主義、子ども中心主義も、今だけのことっちゃ今だけのことなのかもしれない。
あと10年もすりゃあ、「ようやく解放された! 飲もう!」って、シレッとまた元のノリに戻ってるかもしれないし。

こばなみ:
たしかに私も、20代のときに子どもが生まれた友達とは会話が合わなくて疎遠になっていたのですけど、彼女たちの子どもが成長して、いま会うようになりましたよ。ひょっとしたら、七子さんもそうなるかもしれないですよね。

宇多丸:
そのくらい、人っていうのは良くも悪くも変わってゆくものだし、それにつれて人間関係が変化してゆくのもまた当たり前、ということで。




【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2017年6月10日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
こちら
※シングル「世界、西原商会の世界! Part 2 逆featuring CRAZY KEN BAND」が配信中! Victorサイト限定CD盤もリリース!
詳しくは
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。




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