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本当は家族で自然や歴史に触れ合ってのびのび育てたいのに、自ら進学塾に通い出した娘。受験の理想と現実って?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室158】


✳️今週のお悩み✳️
小学6年生の娘をもつママです。最近、娘が自分の意志で進学塾に通い出しました。中学受験は希望していませんが、とにかくもっと勉強がしたいようです。そして、塾ではおそろしい量の宿題が出て、それをこなすためになかなか家族で出かけることもできません。夏休みも、夏期講習でつぶれています。私も主人も、両親にのびのびと育てられ、小学校の時は遊びまわって育ちました。それでも、学校ではまじめに勉強して、二人とも進学校に進み、希望の国立大学にも合格できたので、学校の授業をしっかり受けていればいいんじゃない?などとお気楽に思っています。でも、今は塾に行くのが当たり前、お受験が主流……。「◯◯ ちゃんはお受験しないの? もったいない!」そんな言葉ばかり聞きます。「中学に入ったら、すでに目標は大学受験!」という中高一貫校が主流みたいですよね。私たちの頃の常識ではもう通用しないのかなと、徐々に痛感しています。娘には、今しかできない友達との関わりや、家族でキャンプや旅に出て、自然や歴史に触れ合うことが一番大切だと思っていますが、現実はそうもいかないものでしょうか。そんな理想を持ちながらも、最終的にはいい高校、いい大学に行ってほしい……というのが本音です。宇多丸さんやこばなみさんは、こういうお受験に関する理想と現実って、どうお考えですか?

(まりも・39歳・千葉県)


宇多丸:
娘さん、受験前提じゃなく自発的に進学塾に通い出したって、どんだけ勉強が好きなんだ!

こばなみ:
私、ちょっとこのケースと似てたかも。勉強が好きっていうほどではないですけど、小6の夏期講習から進学塾に行ったんですね。それまではほぼ毎日、学校で器械体操クラブの練習があったんですけど、引退したらヒマになっちゃって。
で、駅前に進学塾ができたということで行ってみた。

そうしたら、すごく難しくて、つるかめ算とかちんぷんかんぷん! それまで小学校の勉強でわからないことはなかったのに急に壁にぶつかって、くそーってそれをクリアするために勉強してたら、夢中になっていき、だったら受験もしてみるかって受けたらたまたま合格して、ラッキー!みたいな経緯でして。

宇多丸:
つるかめ算! あれって、いまも教えてるのかねぇ。
中学に入ってから方程式っていうものを知ったとき、最初からこれでいいじゃん!って思わなかった? 
理にかなってるうえに簡単だしさ。

だいたい「鶴と亀の足の数を勘定する」って、現実にはあり得ないシチュエーションすぎて、たとえ話なのに逆にイメージしづらいわ!

こばなみ:
たしかに。

で、宇多丸さんは何がきっかけで中学受験したんでしたっけ?

宇多丸:
前にもちらっと話したけど、僕自身は最初あまり何も考えてなくて、親からの「そろそろ塾でも行く?」ってバイブスに乗っかっただけって感じだよね。

ただ、当時は「ツッパリ」ブームで文京区でさえ地元の公立中学はそれなりに荒れていたので、そこには行きたくないって意志はわりとはっきりあったかも。

それと、これは親からの説明でなるほどなぁと納得した部分なんだけど、高校受験して、また3年後に大学受験してって、なんか非効率じゃない? 
また受験すんの? こないだしたばっかりじゃん!みたいな。

なので、僕の場合はむしろ、中高一貫校で10代をのびのび過ごすためにこそ、中学受験したって感じなんですよね。
ま、結果入った学校が学校だったんで単純に「のびのび」とも行かなかったわけだけど、それはまた別の問題なんで……。

とにかく、「中学受験=のびのび育たない」というイメージは僕のなかにまったくないんだよなぁ。

こばなみ:
私も中高一貫で楽しかったですよ。
もっとレベルの高い学校は違うのかもしれないけど、「中学に入ったら、すでに目標は大学受験!」とかは全然なかった。だからとくに中学時代はのんびりしてましたね。塾にも行ってなかったし。

宇多丸:
思うに、まりもさんも旦那さんも、学校の勉強だけで進学には困らなかったっていうのは、かなり「デキる子」の部類なんですよね。
普通の子は、公立校の授業から理解できることの範囲が狭いし、そもそも独力で勉強する能力にも欠けているからこそ、塾や予備校で教える「効率的な受験テクニック」が必要なわけで。
なので、まりもさんは実はかなり高い要求をしてるんですよ。塾に行かずのびのび遊びながら進学もきっちりクリア、って。

でも、娘さんはそもそも、純粋に勉強が好きみたいじゃないですか。
それはもちろん、ご両親の優秀さをしっかり受け継いでるってことでもあるだろうし……、受験勉強っていうと、とかく無味乾燥なものっていうイメージが強いかもしれないけど、本来「知らなかったことを学ぶ」って、それ自体価値があるし、なんなら楽しいことでもあるはずでしょ? 
数学の問題を解くのだって、古文を読むのだって、楽しめるのならそれに越したことはないわけで。実際僕も、大人になってからようやく興味を持ち始めて、「こんなことなら学校の授業もっとまじめに受けてりゃ良かったよ!」ってこともいっぱいあるしさ。

そしてそれは、「自然や歴史に触れ合うこと」と優劣をつけられるようなことじゃないでしょう。教室や教科書から学ぶことだって、立派な「経験」だよ。

あと、受験をめぐるもろもろだって、普通に楽しい思い出になり得るもんだし。
僕も、塾大好きだったもんなぁ……、いる連中も、自分が評価される基準も、学校とはまったく違ってさ。むしろ、地元の小学校より塾のが全然居心地良かったですね。

こばなみ:
あと、小6くらいになると、家族で出かけるのとか、もうしなくていいよって思ってたことありません? 
反抗期だったのかもしれないけど、友達と出かけたり、自分で本を読んだりするほうが楽しかったり。

宇多丸:
それもそうだよね。
小6の女の子だったらもう、かなり大人びていてもおかしくないよね。もう思春期なんだと思っといたほうがいいよ。

なんにせよ、とっくに難しい年頃になってる娘や息子に、「なんでも家族一緒が一番!」イズムをいつまでも押しつけるのは、かえってグレるもとですよ。
むしろ、いつまでたってもそこにおとなしく従いすぎる子を心配したほうがいいよ。

ちなみに僕の場合、母の証言によると、10歳頃から「僕にかまうな」オーラを出し始めてたらしいですね。ちょうど精通の時期と一致してます(笑)。

そこまですでに自意識が成長しちゃった子からすればさ、大人が思い描く「子どもらしさ」、それこそ「のびのびと育ってほしい」なんて枠に勝手に押し込められることくらい、イライラすることはないからさ。
僕も昔から超インドア派だったから、「子どもは子どもらしく表で元気良く遊びなさい」とか大人に言われるたびに、「勝手なこと言ってんじゃねぇぞボケ!」って心底ムカついてましたもん。

こばなみ:
娘さんも、ご家族と過ごす時間以上に、いまは自分で勉強している時間が楽しくなっているのかもしれませんしね。

宇多丸:
勉強ってさ、努力したら努力したぶん、目に見える成果が出やすいものでもあるじゃん。成績が何位上がった、偏差値がいくつ上がったって。
現実の社会では、努力したって報われないことのほうがはるかに多かったりするんだからさ。それに比べれば、勉強はそりゃ楽しいよ!とも思うんだよな。少なくとも、そう思う人の気持ちは全然わかる。

こばなみ:
ゲームみたいな感じですね。

宇多丸:
受験に関しては僕は完全にその感覚でしたね。
このステージ、いまの自分のレベルでは攻略不可能なように見えるけど、実は、こことこことここのポイントさえ押さえれば、意外とクリアできる可能性もあるぞ……!みたいな。

ちなみにさ、娘さん、ホントは中学受験したがってる……ってことはないですかね? 
それだけやる気にあふれてて、腕試ししたくないわけはないと思うんだけどな。

受験希望してないっていうのもさ、お利口な娘さんだから、ご両親が中学受験というものに対してあまり肯定的ではない、というのに合わせちゃってるだけなのかもしれないし。経済的な事情みたいなものを勝手に心配しちゃってる、ってパターンもあり得るよ。
子どもって、大人が思ってる以上に周囲の顔色うかがってるもんだからさ。

その意味では、一度改めて、娘さんの気持ちをちゃんと聞いてあげたほうがいいかもしれないですよね。
まりもさん的には、周囲の同調圧力に屈するようで嫌だってのもあるのかもしれないけど、それと娘さんの意志は関係ないからね。

あと、これは学校、塾、予備校、関係なくだけど、ある科目が良く理解できるかできないかって、教える先生の質によって、ホント全然違うもんだから。
だから、この科目は学校にいい先生がいるから問題なし、この科目だけどこそこ予備校のなんとか先生の授業が超いいからそこに通う、みたいな感じで、一個一個明確な目的意識もって選ぶのが一番いいと思いますけどね。
その意味では、学校がいいとか塾がいいとか、一般論で言っててもあんまり意味ないのかもって気もする。

いずれにしても、無理強いしなきゃ机に向かわないような子に「のびのびしつつ、進学も」の両方をクリアさせるのは大変だろうけど、そこへ行くと娘さんは、ほっといても勉強はするわけだからさ。
進学校のなかでも実際そういう違いってあったけど、アホの子ほど、やたらと勉強の時間を取ってるわりに、実は嫌々やってるぶん能率が悪くって、成績も大して上がんないわロクに遊べてもいないわ、ってことになりがちだったりするんですよ。いろんな同級生の顔が思い浮かぶなぁ……(笑)。
逆にデキる子は要領もいいから、意外と普通に遊んでたり、課外活動に打ち込んでたりするもんで。まりもさんご夫婦はどっちかって言うとそっちだったってことでしょうけど。
だから娘さんだってきっと、好きなだけ勉強した残りの時間で、勝手に「のびのび」するよ!

ただでさえ出来すぎな傾向がある子なんだから、それ以上親が心配してなにか鋳型に当てはめようとか、あんまりしないほうがいいと思いますよ。
いまは彼女が望むだけ、それこそ「のびのび」勉強させてやればいいだけのことじゃないかなぁ。



【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2016年8月27日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
こちら
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詳しくは
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。




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