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週4は彼の家から出勤しているのですが、彼には彼女がいます。夏までには別れてくれるとは言ってるけど……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室47】


✳️今週のお悩み✳️
好きな人に彼女がいます。職場で仲良くなった方で、お酒も一緒に飲んでて楽しいこともあり惹かれていき、酔ってる時に思わず告白してしまいました。彼も私のことを好きと言ってくれて、相手の方とは別れると言ってくれました。それが去年の9月くらいで、現時点でまだ別れてません。相手の女性は現在38歳くらいだと思います。よくないとは思いつつ、彼とわたしは体の関係もあり、週4日は彼の家から出勤し、土日に遊ぶこともあります。先日どうするつもりなのかを軽く聞いてみたところ、「夏までにちゃんとする」という言葉でした。今は信じて待っています。しかし、過去にちゃんとするまで二人では会わないという約束をしたものの、意志の弱さから関係が戻ってしまったりで、またズルズルと行ってしまいそうです。どうしたいかは付き合いたい。悩みはなぜちゃんと別れてくれないんだろう。といった感じです。宜しくお願いします。

(ちゃんたま・33歳)


宇多丸:
「どうしたいかは付き合いたい」って、この人たち、事実上もう付き合ってるじゃんねぇ。

こばなみ:
これ、どういう状況なんですかね?

宇多丸:
単純に、付き合いが長かったりしてなかなか言い出せないんでしょ、その38歳のほうに。

こばなみ:
38歳の彼女にはバレてないんですかね? 週4も他の女の人が彼の部屋に入り浸っているんですよ?

宇多丸:
ほとんど同棲だよねぇ、もう。
で、もちろん38歳は気づいてないってことでしょ。それを黙認するような関係だったら、そっちのがよっぽど手強いわ!
 たぶん、38歳のほうは結構な遠距離だったりするんじゃない? 
そうでなきゃ、そもそもそこまで無防備に他の女を家に出入りさせないと思うし。
……ちゃんたまさんに限らず、もしそういう重要な情報があるなら、みなさん相談文にちゃんと書くようにね!

ちなみに、これは前に「不倫はダメ?」の回のときも言ったけどさ、フリーな者同士がタイミング良く出会ってお付き合い、というのが一番望ましいかたちなのは当然としてもさ、必ずしもそうはいかなかったりするのが現実じゃないですか。

お互いに間違いなく好意は持ってるんだけど、どっちかにはまだ付き合い中の相手がいたりするのって、わりと普通にありがちなことでしょう。
そこで「正しくないから」と言って自動的に諦めがつくほど、恋愛って合理的なもんじゃないと思うしさ。

ましてこの人たち、まだ独身同士だからね。
大声で自慢するようなことじゃないにしても、こうなってしまったこと自体は仕方のないことなんじゃないですかね。
スゲーよくあることっていうか。

こばなみ:
でもですよ、昨年の9月からそんな状態っていうのは、長いっちゃ長くないですか。

宇多丸:
半年以上か……。確かに、ちょっとどうなってんの?って問い詰めたくもなる長さではあるよな。
たぶんだけど、38歳のほうとは、かなりの遠距離ってこともあって、今やそんな頻繁に連絡をとってるわけじゃなかったりするのかもしれないよね。
だから言い出すポイントも少ないというか。
で、せっかく都合あわせて遠方から来てくれてるのに……とか、いま仕事とかですっごく大変そうだし……とか考えると、「今日は言えねぇ~!」みたいな。

ちゃんたまさんにしてみたら、この期に及んでそんな気遣いしてること自体にイライラしちゃうだろうけど、彼も別に、38歳のほうが「嫌いになったから」こうなった、ってわけじゃないっぽいからさ。

もちろん、いずれは彼女をはっきり傷つけるようなことを言わなきゃならないわけだし、それを引っ張れば引っ張るほど傷が深くなるっていうのもわかってはいるんだけど……っていう。
褒められたもんじゃないのは前提として、僕は全然、彼側の立場って理解できますよ。
逆に、そこでスパッと「切れる」人の心情のほうがよくわからない……。

こばなみ:
わたし、カブって付き合ったことがないんですよ……。

宇多丸:
自分のなかでの線引きがすごくしっかりしてるってことなのかな。
ただ、時期的にカブってるかどうかと関係なく、「嫌いになったから別れるわけじゃない」みたいなのってない? 
僕は、よっぽど根本的な部分で騙されてたとか、犯罪級に酷い目に遭ったとかいうんじゃない限り、一度好きになった人を「嫌いになる」ことってまずないですけど。

こばなみ:
別れるときはどうするんですか? 「好きな人ができた」とか言うのですか?

宇多丸:
おずおずとね。できれば一生言いたくないし、聞きたくないセリフだけど……。

こばなみ:
傷つきますね……。

宇多丸:
傷つくけど、いいことばっかりじゃないのが恋愛ってもんでしょ? 
あ、もちろん女の人から言われたこともいっぱいありますよ。

こばなみ:
じゃ、これ待つしかないんですかね?

宇多丸:
一応向こうが「夏まで」って期限を言ってるわけだからね。それ以上急かしても、あんまりいいことにはならないでしょう。
ちゃんたまさんだって、彼に彼女がいることも、まだ別れてないことも、百も承知でこういうことになってるんだからさ。
自分の「正しくなさ」を結果的に許してるんだったら、彼のそれにも、ちょっと寛容になっていいのでは。

そもそも、「付き合う」って、擬似的な結婚なわけじゃん?
 でも、その結婚っていう制度自体、「恋愛のゴール」のために作られたわけじゃないからさ。あえて言えば、安定的に家族を再生産するため、のもんでしょ。そこで、一応便宜的に一夫一婦制ってことにしてるだけなんだから。
それを厳密に恋愛関係に当てはめようとすると、どこかで無理が出てくるのは当然だと思うんですよね。

こばなみ:
夏までに彼がちゃんとしなかったら、お便りください!

宇多丸:
じゃあ、仮にそうなっちゃったらどうするか、も考えておこうか。

こばなみ:
私だったら、約束を破ったって思って幻滅しちゃうかも。そしたらいずれ別れますよ。

宇多丸:
そこで嫌いになれるんなら問題ないんだけどね。
状態として「正しくない」のは重々わかってるけど、「それでもやっぱり好き!」って場合どうするか。

僕は、だったらそれもう、そのまんまでいいじゃん!って気がする。
よく考えるとさ、ちゃんたまさんは、その38歳の彼女に対して、現状圧倒的な「勝者」なわけでしょ。
事実上、今はこっちが彼女じゃん、どう見たって!

こばなみ:
そうですよ、だいたい38歳の彼女のほうがかわいそうですよ。気づいてなくて、言われづらくて……。

宇多丸:
ねぇ。だからちゃんたまさん側は、事実上の勝者として、鷹揚に構えていればいいんじゃないの? 
オセロで言うと、もう角を全部取っちゃってるようなもんですよ!
 むしろ、そこで「文句ひとつ言わず待ってあげる」フリをすることで、彼側に一種の負い目が生じてくるっていう利点もあるかもしれない。

前に、「付き合ってる相手に実は彼女がいるっぽいんだけど……」って件があったじゃない。
あのときも、こっち側に「正しさ」がはっきりある場合ほど、怒って問い詰めたりしてもなんの得も生まないよ、ってなことを言いましたけど。
今回のケースなんて、彼女がいることは正直に言ってくれてるぶん、だいぶこっち側に有利な話とも言えるわけで。

たぶんこの彼は、前の彼女も上手く切れないくらい、よく言えば優しい人、悪く言えば小心者なわけで、間違いなくちゃんたまさんに対しても、相当心苦しさは溜まっているはずだと思いますよ。
その後ろめたさが転じて、「それでも黙って待ってくれてるなんて……、なんてイイ女なんだ!」とかなんとか、要は放っておけば勝手にどんどんちゃんたまさん側に「加点」されてくパターンなんじゃないの、という気もする。

こばなみ:
それとですよ、ちょっといじわるな見方ですけど、相談文に「38歳」なんてわざわざ書かなくてもいいんじゃないかなって。こっちのが若いぞ!っていう、そこにも勝者っぽさを感じてしまいました。

宇多丸:
なるほど。女子目線! 
でも、確かにそうだね。
とにかくこの件で誰が一番可哀想って、38歳の彼女なんだってことはちょっとだけ考えてあげてもいいかもしれない。
ちゃんたまさんは「ちゃんと別れてくれない」彼に対して被害者意識があるかもしれないけど、彼女の側からすれば完全に「この泥棒猫が!」って話だもんね。
さっきも言ったように、誰かが傷ついたりするのは恋愛というものの性質上避けられないことではあるんだけど、傷つける側なりの引け目というか、配慮のようなものはやっぱりあっていいんじゃないかと思いますよ。

逆にさ、彼がそこでわりと冷徹に前の彼女を「切れる」人だったとして、ってことはいずれは自分だってそういう扱いをされるかもしれない、みたいな危惧が出てきたりはしないのかね? 
もちろん、今みたいにズルズル結論を引き延ばしてるだけなのも、どっちにも失礼だしダメはダメなんだけど……。

まぁ、そんなこんな含めて、彼の人間性を改めてはかる、いい機会だと考えればいいんじゃないですかね!


【今週のお絵描き】
ど、泥棒猫!?


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2014年6月7日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。



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