新居へ引越しの際、実家に大量の映画パンフを置いてきていい? そばにないのにとっておく意味はある……?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室290】
✳️今週のお悩み✳️
私は婚約していて今年か来年には長年住んだ実家を出て二人暮らししようということになっていますが、ひとつ悩んでいることがあり映画好きな宇多丸さんにご相談させていただきました。
私の趣味は映画鑑賞、そしてパンフレット収集です。学生時代から集めており、両親から譲ってもらうものもあったりして、なかなかおびただしいパンフレットの量になっています。引っ越し先にはそんな大量のパンフレットを置く場所もないのでそのまま甘えて実家に置かせてもらおうかとも思うのですがそばにないのに置いておく意味はあるのか?とも思ってきたのです。でも将来定年後などにパラパラと読み返して懐かしさに浸りたいなぁとも思ったり将来高値で売れるかもしれないと邪な思いも抱いたり……、でも懐かしさや邪な思いのためにここまでのスペースを今使うべきなのか……、でも純粋に映画好きなのでせっかくだし残しておきたいという思いもあるのです。お好きな方がいらっしゃるならお譲りするのも手かなとも思ったり……、ここで映画好きな宇多丸さんならどうするか、ご意見いただきたく投稿させていただきました。よろしくお願い致します。
(りんご・36歳・兵庫県)
宇多丸:
ちなみに僕も、本やら服やら、実家に大量にモノが残っている派です。もちろん映画パンフもそこそこありますよ。
で、前に一回、そんなもんどうせ何年も放置したまんまなんだし、いっそ業者とかに頼んでまとめて処分しちゃおうかな、とも思ったんですけど、母は「私はそういう劇的な変化は望んでない」って。 要は、息子が住んでいた形跡が残ってるほうが嬉しい、ってことだと思うんだけど。そういう親孝行のかたちもあるかって、ちょっと感心しちゃいましたよ(笑)。 ま、彼女自身がモノを溜め込む癖があるというのもあるけど……。
こばなみ:
当時のまんま、残っているんですか?
宇多丸:
そうそう。
自室の壁とか、ライムスターを始めたばっかりのころのチラシや、向こうのラッパーに取材したときの写真が貼ってあったりして、いかにも情熱あふれる若者!って感じで、この歳になって改めて見るとなかなかグッと来ますよ。
こばなみ:
それは見たいですねぇ~。
宇多丸:
まぁ、僕の場合はそんな感じなんですけど、りんごさんのご両親は、そういう実家の使い方を良しとしてくれるタイプなのかどうか。
ま、場所をとるだけでもったいない、というのは間違いない正論ですからね。 僕なんか家賃の大半、モノを住まわせるために使ってるようなもんですよ!(笑)
でもさ、仮に実家のそのスペースを空けたところで、誰が使うってわけでもないんだったら、ただがらんとするだけじゃん? さっきの僕の母の話じゃないけど、それはそれでさびしい感じになっちゃったりして。
なんにせよ、りんごさんが家を出たのを機に、ご両親ももっと手狭なところに移る計画がわりとすぐにあるとか、急がなきゃならない理由が特にないのなら、とりあえず置きっぱで別にいいんじゃね?とは思いますが。 んなこと言ってるからいつまでも片付かないんだろうけど……(笑)。
こばなみ:
私の実家は少し前に建て直したんですけど、それまでは自分の部屋はモノを置きっ放しで、私が出て言ったあともそのまんまでしたねぇ。
ただ建て直すってなったときは、もう自分の部屋というものが存在しない設計だったので、だいぶ捨てたり、こっち持ってきたりしました。それでも屋根裏にこそっと置いてきた三国志全巻があったんですけど、この間まんまと見つかっちゃって、「どうすんのよ!?」って電話かかってきて……(笑)。
宇多丸:
そこまで追い込まれちゃしょうがないけど。
すぐにどかさなきゃならないけど捨てたくもない、という状況なら、トランクルームを借りるって手もありますけどね。 家賃よりは経済的だろうし、そこそこいい保存環境もキープしてくれるんだろうし。
あとは、好きな人に譲るというのがありなら、神保町に行けば映画パンフ専門の古書店とかもあるしね。
こばなみ:
将来高値で売れるかもしれないっていうのはあるんですか?
宇多丸:
いやぁ、よっぽど昔のでもない限り、そんなのはたかが知れてるとは思いますけど。
こばなみ:
宇多丸さんはパンフは取ってあるんですか?
宇多丸:
最近のは大半捨ててます。マジで置き場所がない。
こばなみ:
思い入れのあるやつも?
宇多丸:
これは、というやつはそりゃ取っておきますけども。
あと、中学くらいまでのやつは実家にわりとそのままあるかな。 スターウォーズの一作目を最初に観たときのやつとか、そりゃ捨てないよね。 昔はテアトル東京とか館名が入ってたりもしたしね。そういうのはまぁ、貴重っちゃ貴重なんで。
ちなみにりんごさん、36歳まで実家に住んでいて、いきなり二人暮しするんだよね? 僕はその件がむしろ気になる。それはなかなかのジャンプですぞ~! あとさ、実家とどのくらい離れたところに住むのか、とかもあるよね。 なんとなくだけど、たいして離れてなさそうじゃない? だとしたらやっぱり、セカンドハウス的に使えばいいじゃん、とは思いますけどね。 ときどき必要なものを取りに帰るとか、みんな普通にやってることでしょ。 とにかくね、一番大事なのは、所有者である、りんごさん自身の思い入れですよ。
たとえばね、一念発起して部屋を片付けようとはしたんだけど、ついつい本の中身を読みだしたりしちゃって、結局全然作業が進まないとか、僕らにはよくある話なわけじゃない?
こばなみ:
見入っちゃって片付かないってやつですよね。
宇多丸:
だけど僕はそこで、まさしくその楽しい時間のためにこそ、それらのガラクタは取っておかれた、ってことなんじゃないの?と思うんですよ。
懐かしさを喚起するでもなんでもいいけど、ちゃんと役に立ってるじゃん、って。
そういうのも越えて根本から環境を変えたいんだ!と言うのなら、あとはもう、前にも言った、Tシャツを捨てる時の「神7(かみセブン)から捨ててく作戦」しかないですよ!
こばなみ:
でたーっ!
宇多丸:
でもまぁ、親御さんから文句が出ないうちは、それこそ資料的価値だって出ないとは限らないし、取っときゃいいんじゃないの?別に。譲り受けたぶんまであるんだし、きっとそこまでそのコレクションに理解がないわけでもないんでしょうし。
なんにせよ一回、さっき言ったような専門店に査定してもらうのも手じゃない? モノによってはやっぱり意外と価値があるかもしれないし、逆に、これだけの山でも二束三文か……ってことがわかって、未練が絶ちやすくなるかもしれない(笑)。
こばなみ:
そうですね!
そして二人暮らしもがんばってくださいね。私は二人暮らしを始めて、モノが多くて片付けられなくて、それで注意を受けてる側なので、そういう意味でも実家に置いてこれるならそれがいいかと思いました~!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2019年8月10日に公開したものを再編集し、掲載しています。