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誰にも心を開けず、友人関係がうまくいきません。私の何が問題?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室160】


✳️今週のお悩み✳️
友人との関係がうまくいきません。私の友人は、4割がメンヘラ(私のことを友人として好きとかではなくかまってくれる人なら誰でもいい人)、3割フレネミー、2割が上辺だけ、1割が下心持ち(男友達の一部)。まともに人間関係を構築できないのは、どうしてなんでしょうか。いつも、私は蔑ろにされます。私は人と話すことがありません。他人と何かを共有共感することに意味を感じません。ただ、困っていたら誰よりも早く気づいて助けるし、見返りは求めないので友人に尽くすタイプだと思っています。優しい、とも言われます。でも、誰にも心を開けません。近づくなオーラが出てるとかも言われました。私は何が問題なんでしょう。最近、寂しいです。
(プリン鯛・20歳・東京都)


宇多丸:
「フレネミー」ってなぁに?

こばなみ:
友を装う敵。「friend」と「enemy」を組み合わせた造語だそうですよ(Wikipediaより)。

宇多丸:
へぇ~! いろいろ考えるねぇ。
たしかに、「装う」ってほどはっきり悪意があるわけじゃなくても、ほとんどenemyと紙一重の緊張感が常に伴うfriendとかって、なるほどいますよね。
ただ、僕はそれはそれで友情のひとつのあり方だとは思うけど。

ちょっと思っちゃうのは、その付き合いが上辺のものかホンモノかどうかなんて、そんなにはっきりわけられることなんですかね? 
前の、「”コストコの会員だから”など、物理的にメリットがないと友人として付き合わない人ってどうなの!?」って相談とも通じるものがある気がするけども。

人間誰しもいろんな面を持ってるものなんだから、友達だって、場合によってものすごく好ましく見えたり、そうでもなかったりするのは自然だし、そもそもそれを判断する自分自身が常に変化し続けてもいるわけだから、両者の関係性なんてものが、ときに恐ろしく信用できない、不安定なものに思えたとしても、そんなの実は当たり前の話なわけじゃん。

その証拠にと言うべきか、プリン鯛さんだって、「困っていたら誰よりも早く気づいて助けるし、見返りは求めない」ような人で、だからこそ当然のごとく「優しい」と言われる面もあれば、「人と話すことがありません」「他人と何かを共有共感することに意味を感じません」、あげく「近づくなオーラが出てる」とか、パッと聞き同じ人の話してるの?ってくらい、相反する二面性を自分で書いてもいるわけじゃない?
 で、たぶんそのどっちも、ウソじゃないんだよね。共感力あふれる「いい人」でいられることもあれば、おそらくだけどその能力がありすぎるせいで疲れきっちゃって、すっかり人嫌いになっちゃうこともある。

その意味で僕にはこれ、単に「優しくて気の回る人あるある」に思えますけどね。
無神経というか、自己中心的なだけの人はそもそも、こういうことで悩まないもの。「アタシって結局、人間が好きなの!」とかヌケヌケ言ってますよ(笑)。

プリン鯛さんのお友達にめんどくさい人が多いのは事実なんだろうけど、それもこれもたぶん、プリン鯛さんのそういう優しさに、つけこんでる……という言い方はちょっとキツすぎるにしても、みんなついつい甘えちゃってる、ってことなんじゃないですかね。

なので、なにもご自分のせいにすることはないよ!
 むしろ、「私だって仏様じゃないんだから!」的に、自分のなかの弱さというか、人間として当然の限界みたいなとこも認めて、正当化してあげることのほうが今は大事なんじゃないですか。

「誰にも心を開けません」っていうのもなぁ……、たとえば、友達がいっぱいいて関係も良好に見える人が、そいつらみんなに「心を開いて」いるかって言ったら、絶対違うでしょー!っていう(笑)。そういう人はむしろ逆に、「他者との適切な距離を保つのが上手い人」ってことなんであって。

そもそも「心を開く」ったって、テレパシーじゃないんだからさ。さっきの上辺だけの付き合い云々と同じで、そんなにはっきり白黒つくようなことじゃないはずだよね。
こいつとはわかりあえる!と思った人と、別の局面ではまーったく通じ合えない、なんてことはザラにあるわけでさ。だって「他人は自分じゃない」んだから、っていうだけの話ですよ。

ま、プリン鯛さんのお友達の少なからぬ割合が、まさに「他人も自分と同じであるよう求める」タイプの、厄介な連中だという可能性もあるけども……。
とにかく、心なんてそうそう開かなくって当たり前! むしろまともな証拠だよ。

こばなみ:
完璧に心開けたー! 全部わかりあえたー!なんていうことはほぼないですよね。友達だってそうだし、まして家族だってないかも。

宇多丸:
まぁ、現状友人に恵まれていないというのも心からの実感ではあるんだろうけど……、そこはほら、まだ20歳ってこともあるんじゃない? 
今の友達って、地元か学校かバイト先か、とにかく言ってみれば「たまたまそこにいたメンツ」で構成されてるわけでしょ。もちろん、そのなかで上手くやれるならそれに越したことはないんだけどさ。
ただ、僕の実感からすると、本格的に社会に出て、選択肢が広がったぶん能動的に人間関係を構築できるようになってからのほうが、特に基本的な考え方とか趣味みたいな部分では、当然のようによりちゃんと「合う」人と出会える機会が増えると思うんですよね。

それに、いまプリン鯛さんの周りにいる連中だって、言っちゃえば人間としてまだまだ未熟でも全然おかしくない年頃ってことだからさ。いつも似たようなこと言ってるけど、僕がハタチ前後の頃はまだ、ゲル状の生き物でしたから(笑)。
たぶんだけど、プリン鯛さんは他の子たちよりはすでにだいぶ大人で、それでまた一方的に甘えられがちってとこはあるんじゃないかな。

そういう観点からも、今の人間関係のあり方を自分の性格の問題に還元するのは、ちょっと気が早すぎるよ。

こばなみ:
学生のときなんかは、宇多丸さんが言うとおり、世界が狭いから友達のこととかばっかり考えちゃいましたけどね。社会に出るとさっぱりしたもんになりますよ。だいたい毎日まわりも自分も忙しいし、友人関係で悩むところまで頭がついていかない……。

女子部のお姉さんたちにも聞いてみましたよ。

「大人になってできた友達とは、自分のペースで会う・会わないを選択できるのがいい」(Miko)

「大学のときの友達って、社会人になるといったん解散しません? 今の環境での友達関係のほうが大切になるから。だからこそ、本当に気の合う人だけ、関係が続いていく。楽な距離感になりますよ」(お地蔵さん)

「お酒が入るとそれだけで仲良くなれたりね。それが”気が合う”とか”趣味が合う”ということなのだろうけど。酒場での行き当たりばったりな意気投合とかも楽しいですよ!」(あーちゃん)

「仕事仲間、学生時代からの友達、彼氏や夫、家族など、大人になるにつれていろんなフィールドで人間関係ができてきますよね。たとえ、その一箇所で辛いことがあっても他で緩和されるので、あまり悩まなくなりましたね」(ユキ)

宇多丸:
逆に、幼なじみだから昔から親友だからってだけで、実はとっくに相性的にもたいして合わなくなってるのに、惰性で表面上友達っぽく会い続けてる関係とかも、世のなかにはいっぱいあるわけでしょ。
無論、それはそれで友情のひとつのかたちではあるだろうけども、それがすべてとか、最上というわけでもない。

だから、真の友人なんていうものは、こちらが人間的にもある程度しっかりできあがってからようやくできるもの、くらいに思っといたほうがいいのかもしれませんよ。

それに、だいたいさー。友達なんて概ね、基本ムカつくもんじゃない?
 思い返してみりゃ、ナメた口は聞いてくるし、勝手なことばっか言ってくるし、嫌いなクセもあったりするし……、それでもなんだか、不思議と気が合うところもあって、憎めないんだよね~とか、まぁたいていそんなもんでしょ。

こばなみ:
そういう意識でお互いにいられたら、サッパリできるかもですねぇ。

宇多丸:
多くを期待しないくらいがちょうどいいというかね。
みなさんドラマとか見すぎなのか、人間関係に過大なものを求めすぎ!なんじゃないかとはいつもちょっと思うあたりでして。

プリン鯛さんもおそらく、友人たちから一方的に「ギブ」ばかり求められる関係性に嫌気がさしたってことだと思うんですよね。人一倍優しくて気がつくから、それにまたいちいち応えてあげちゃって、それがさらに向こうの甘えを加速させてしまい……。
とりあえず、それにうんざりしちゃって人間嫌いな気分になっちゃったとしても、それはプリン鯛さんが特に人としてダメなわけでも、なんでもないから! 
世の「いい人」が、わりと陥りがちな悩みなんじゃないかなぁ。

僕は、プリン鯛さんのそういう気ぃ遣いなとこ、間違いなく人としての美点だとは思うから、そこはそのまんまでいいと思うんだよな。
ただ、「いい人」でいられるのにも限界はある、自分にも薄情な面はある、という当然の事実を、もうちょっと自ら積極的に受け入れてみようよ、ってことじゃないですか? 
むしろ、そこをちゃんと自覚しようとしてる人だけが、今度こそホントの意味で「人に優しく」できるんだと思いますよ。

プリン鯛さんはその意味で、もうほとんどわかってもいるんだとも思うけどね。
「他人と何かを共有共感することに意味を感じません」っていう、一見絶望しきってるような物言いも、それだけ他者とのコミュニケーションというものの本質的な困難さを、しっかり認識してるってことだからさ。
少なくとも、友人という名の他人たちに、なんでもなんでも理解してもらいたいなどという甘ったれた希望を抱いたりしないというだけで、「他者との適切な距離を保つ」第一歩は、すでに踏み出してるとも言えますよ。

そして、プリン鯛さんのそうした優しさ聡明さ大人さ、それゆえ誰より傷ついてきたことまで含めて、ちゃーんとわかってくれる人、どこかには必ずいるはずですから! 
あんまり腐ってばかりいると、いつか出会うかもしれないその素敵な誰かさえ、見逃してしまうかもですよ。

……以上、ひとことでまとめれば、「アンタ普通にいい子だから、きっと大丈夫だよ!」ってことです!



【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2016年9月10日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。




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