差別発言をする職場の社長・上司・同僚に悩む主人。受け流すか? 転職すべきか?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室331】
✳️今週のお悩み✳️
はじめまして。結婚して2年になる主人(33歳)についての悩みです。主人は今の職場で務めて2年半ほどになりますが、その職場の人間関係で悩んでいます。社長と上司、同僚は他人の悪口を言うのが日常茶飯事のようでしかも内容が差別的なものであったりと、私が聞いてもかなり幼稚で気分の悪い内容のものです。しかも色弱である主人のことも馬鹿にしているようです。いまどきこんな社会人がいるのかと呆れますが、毎日聞いている主人はかなりのストレスらしく、性格上そういった輪の中に当たり障りなく入ることができず孤立しているようです。仕事上いつもそのメンバーで現場へ向かい仕事をするので一緒に過ごす時間がほとんどで、ほかに相談できる同僚もいないようです。もともと明るく朗らかな主人ですが、仕事から帰って来るなりイライラとした様子で、早く辞めたいと気が立っている日も多く、先日も寝ながら枕を殴っていたので心配して起こしたら上司の夢を見ていたと言っていました。私は転職を勧めていますが、主人は2年半ほどしか務めていないのに転職をすることに躊躇しており悩んでいるようです。どこに行っても人間関係の悩みは付き物だとは思うので、このままうまく受け流すように主人の考え方を変えていくのが良いのか、転職すべきか悩んでいます。もし、考え方を変えるとすれば私はどのようなアドバイスをしたら良いでしょうか。 よろしくお願いいたします。
(ハチ・40歳・主婦・福岡県)
宇多丸:
差別的発言の内容が具体的にどういうものかはこの文面だけではわからないけど、口が悪いでは済まされないレベルなんでしょうね。
まともな人ならさぞかし耐えがたい状況であろうことは容易に想像がつきます。
寝ながら枕を殴っていたって……、どれだけストレスを溜めこんでらっしゃることか。
前に同僚が平然と差別発言をするという話があったけど、今回の場合は、そのノリがほぼ会社全体に及んでるわけだもんね。
こばなみ:
会社の一部じゃなくて、社長と上司とか、いつもそのメンバーで動いてるって言うから、わりかし小規模な会社で、全体がそんな感じなのでしょうね。それは辛い……。
宇多丸:
だから、前の相談のときに言ったみたいに、その場で他の社員みんなが注意して正してゆくべき、みたいな理想主義も、残念ながらたぶんまったく通用しない。
そいつらの考え方含めた職場環境をダンナさんひとりで改善してゆける可能性は、ほぼゼロに近いであろうという現実がある。
あげくどうやらこちらのことまで見下してきてるなんて……。
多勢に無勢、当然雇用関係もあるから、その場ではなんも言えないし言う気もしない、というのも痛いほどわかります。
だからと言って、「このままうまく受け流す」ことをおぼえるというのも……、「現実的」な、生きる知恵のひとつではあるのかもしれないけど、僕はどうしてもそれを推奨する気にはなれないですね。
というのも、ダンナさんは周りのそういう言動に胸を痛められる良識がちゃんとある方で、それはこの話のなかの確かな救いでもある部分だと思うんだけど、事実上それを文字通り「黙認」しちゃってもいる状態が続くだけだと、外側からは、やはりただ同類と見なされてしまうわけじゃないですか。
今の時代、トップまで日常的に差別発言を繰り返しているような会社は、なんかのきっかけでそれが外に漏れて、一気に社会的な非難を浴びることになってもおかしくないと思うし、どんどんそうなっていってほしい、そうでないといけない、というのが僕自身の強い願いでもある。
たとえば最近も、音楽レーベルのカクバリズムが、デザインを発注していた会社がいわゆるヘイト本も手がけていたことを知って、改めて問題視したというツイートが話題になったりしましたよね。
こういう動き、おそらくは今後も、心ある人たちの間でさらに活発になってゆくだろうし、そのときに、「あっちサイド」の人たちと一緒にくくられちゃっていいんですか?って思うんですよね。
加えてダンナさんのこともナメくさってるんじゃもう……、話にならないでしょ。
学校とかでのイジメもそうだけど、その環境を改善するなんて悠長なこと言ってる前に、まずはこれ以上ダメージを深めてしまわないよう、急いでそこから避難して!みたいなことは、残念だけど確実にあるから。
そういうバカどもは、少なくともすぐには治ってくれないのでね。
ということで、転職できるんならさっさとしちゃったほうが絶対いい、というのが僕のさしあたっての考えですね。
だって、時間のムダじゃん!
楽しく仕事するうえで一番肝心なのは職種じゃなくメンツだ、と前も言いましたけど、ろくでもない連中と毎日ツラを付き合わせて、なんなら協力してゆかなきゃならない精神的苦痛って、どんな対価でも埋めようがないものだと思いますよ。
限られた人生をそんな風にすり減らしてゆくだけなんて、なんぼ給料もらおうがわりに合わない!
こばなみ:
このご時世だから心配、というのもあると思うんですけど、まず転職サイトに登録するだけでもやっておくのがいいと思います。
宇多丸:
そうやって準備はきっちりしておくことで、いつでも次に行くことはできる、というとりあえずの心の余裕もできるかもだしね。
一回転職できたってことはそれだけのものを持ってるってことなんだろうし、少なくとも今の職場だけが唯一の選択肢ってことはないはずでしょう。
勤務2年半っていうのも、そこまで短くないと思うし……、もし仮に短期での再転職の理由を聞かれたら、この相談にあるまんま、ホントのことを言えばいいだけじゃないかとも思いますけどね。
会社全体で差別的な悪言がまかり通っていて、なんなら自分もその対象だったということを伝えれば、それはひどい!ってことに普通はなるはずでしょう。もっと大きく問題になってもおかしくないくらいだよ。
ちなみに、連中の暴言、念のため録音でもしといたほうがいい、みたいなことはないかな。
こばなみ:
たとえば、転職するときって、前の会社にその人のやめた理由とか、どんな人だったかの確認電話をすることもあるって聞きますよね。もしそういうことがあったら、会社側がなんて言うかわからないですしね。
宇多丸:
なるほど。
雇う側がリサーチをするのはわかるけど、今回のケースみたいに、そもそも前の職場に問題があっていづらいから辞めたのに、みたいな場合、よりによってそこに問い合わせられても……ということになっちゃうよね。
こばなみ:
ハチさんのダンナさんはちがいますけど、その逆もあるので。つまり転職者に問題があるということです。いまは個人情報保護の観点から減っているみたいですが、その場合は確認することが有効なときもありますね。
宇多丸:
それはそうか。
とにかく、だとしたらなおさら、辞めた理由は先にちゃんと話しておいたほうがいいのかもしれないね。
で、万が一今の会社がこっちのせいにしてきたりしたときの対抗手段として、可能なら一応証拠を押さえておくのもいいかも、みたいな感じかな。
ということで、もちろんある程度の目星がついてからでいいとは思いますけど、なんであれ早めに動くのが吉、というのは間違いないように思います。
このままだとダンナさん、心身を致命的なレベルで病んでしまいかねないんじゃないかという気もしますし、どうか夫婦同士でしっかり向き合って、話し合ってみてください。
さっきも言ったように、彼が、周囲の醜悪な風潮に対して安易に同調するどころか、むしろきちんと痛みを感じられるような人だったということは、ご本人もハチさんも、誇っていいと思いますよ!
「その苦しみはあなたが善良な人間である証拠だし、パートナーがそういう人でよかった」って、直接言ってあげて元気づけるのもいいんじゃないですかね。
こばなみ:
無事、転職できることを祈っております!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2020年8月8日に公開したものを再編集し、掲載しています。