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違いを認め合い、強さに変えていく。その第一歩として、低用量ピル服薬の福利厚生制度を導入した女性活躍推進の取り組み。

2030年までに“女性活躍”という
言葉がなくなる世界をめざして、
リーダーとして働く女性を応援する
F30プロジェクト。

今回は
「オンライン診療を活用した
低用量ピル服薬の福利厚生制度」
をスピード感を持って導入した、
株式会社CARTA HOLDINGSさんを訪問。
社員発のD&Iプロジェクトについて、
お話を伺ってきました。

2019年に、20年以上の歴史を持った異なる2社が統合して設立された株式会社CARTA HOLDINGS(カルタホールディングス)。バリューのひとつに「違いを強さに」を掲げ、約1,500名の社員の多様な価値観をもとにD&I を推進しています。

そのなかで、すべての社員が挑戦する文化をつくるために始動した「WAVE」は、数人の社員が経営陣に直接持ちかけて立ち上がったプロジェクト。「WAVE」が提案した女性の健康課題改善を促進する新制度は、プロジェクト始動後わずか半年で実現されました。

その革新性の裏側を探るべく、「WAVE」の立ち上げメンバーでありD&I推進室 室長でもある梶原 理加(かじわら りか)さんに会いに行きました。


<History>

■2019年
 1996年設立の株式会社サイバー・コミュニケーションズと
 1999年設立の株式会社VOYAGE GROUPが経営統合し、
 
株式会社CARTA HOLDINGSに。

■2021年 秋
 とある女性社員の声がきっかけで、
 梶原さんらが「WAVE」プロジェクト発足の声がけを始める。

■2022年 1月
 
株式会社CARTA HOLDINGS 経営理念策定。
 バリューの一つが「違いを強さに」。

■2022年 2月
 D&Iプロジェクト「WAVE」始動。

■2022年 5月
 オンライン診療を活用した婦人科受診と低用量ピル服薬支援制度を導入開始。

■2022年 12月
 オンライン診療を活用した婦人科受診と低用量ピル服薬支援制度についてのアンケートで、利用者の満足度100%に。



「ネガティブなままでは社員も会社も成長が止まってしまう。ポジティブなアクションで環境を変えていきたい」

株式会社CARTA HOLDINGS
執行役員 グループコミュニケーション本部長 兼 D&I推進室 室長 兼コーポレートブランド室 室長
梶原 理加(かじわら りか)さん

——「WAVE」はどんなきっかけで発足に至ったのでしょうか。

2021年の秋頃に、後輩の女性社員からチームの仲間に相談があったんです。「社内に意思決定層の女性が少ないので、未来のキャリア像が描けない。目指していた女性も転職してしまって、モチベーションも下がってしまった」と。彼女は30代前半で、育休復帰後のキャリア形成にも悩んでいるとのことでした。この話を聞いて、これは彼女一人の問題ではない、社全体で変わらなければ会社も成長していけないのではと感じて、いろいろな人にヒアリングするところから始めました。


——実際にヒアリングしてみたら、どのような反応でしたか。

CARTA HOLDINGSは、約20社を傘下に擁し、デジタルマーケティング関連やインターネットサービスなどデジタルを起点にさまざまな事業を手がけているんですが、それぞれの社員たちに声をかけてみると、やっぱり各々が抱えている課題があって。「将来のキャリア像が見えない」「ロールモデルがいない」などネガティブな声を多く聞くにつれ、このまま止まっていてはいけないと思い、ポジティブなアクションを起こしていこう、名前もつけて活動してみよう!という話になりました。「WAVE」は、その名の通り「新しい波を起こそう」という意味からきています


——梶原さんご自身も、産後もキャリアを築かれてきたと思うのですが、キャリア形成に悩む女性社員のお話を聞きどのように感じましたか?

私は1人目の出産後まではいわゆる営業部門で仕事をしていたんですが、2人目・3人目の産後しばらくは、ある程度時間がコントロールできる仕事に就いていたんです。でも先ほどの後輩社員は、現場で商談を進めるような営業職を続けたかった。産後だからといってキャリア形成の足を止めたくなかったそうなんです。戻ってくる場所は用意されていたけれど、そこは自分にとってチャレンジできる場所ではないと感じてしまったのでしょう。

これには、上長側の遠慮があったりもするんですよね。「産後なのに仕事を依頼してもいいのだろうか。ちゃんとこなせるのだろうか」というような遠慮をしてしまいがちだけれど、遠慮される側はそれを機になかなかモチベーションを保てなくなってしまう。先日、社内で女性活躍についての話題が上がった際にも、小さな子どもがいることに配慮は必要だけれど、仕事への期待は継続してもらいたいという話をしたところです。



「女性の体調面や精神面を保つサポートができれば、社員の成長にもつながり、その先の事業成長にもつながるはず」

——「WAVE」を立ち上げた頃の、周囲の反応はいかがでしたか。

女性活躍をテーマの一つに掲げるプロジェクトでしたが、「D&I」というのはテーマが広く、立ち上げ当初はプロジェクトの意義を伝えることがとても難しかったです。一個人のことと捉えられがちなんですよね。みんなにわかってもらえるためには、やっぱり数字の強さが必要でした。定量的に見せていくことが大事で、その上で実際の意見を入れていかないと。感情論や大きすぎるイメージのようなものだけだと、課題が何なのかわからず掴みづらいので、それをどれだけ具体化していけるかが大事だと思います。


——立ち上げから半年ほどで「オンライン診療を活用した低用量ピル服薬の福利厚生制度」を実現されたのですよね。

実は低用量ピルについては、「WAVE」が立ち上がる前から、事業部の方で導入したいという話が上がっていたんです。でも事業部単位だとなかなか話が進まず、福利厚生なので全社から見てどう判断するかという議論があり、実現に漕ぎ着けずにいたんですね。そのときのメンバーが「WAVE」に入っていたので、「WAVE」の活動としてやるべきなのかどうかという議論をもちろんした上で、導入に向けて走り出しました。

女性特有の体調面や精神面における健康課題を改善するためのサポートができるのであれば、それぞれの社員の成長にもつながり、その先の事業成長にもつながるはず。その議論を「WAVE」のプロジェクトオーナーでもある会長の宇佐美に一緒に聞いてもらったら、ちょうど2週間後にある経営合宿で提案をすることになりました。そこからは早かったですね。メンバーが情報集めと資料作成をして、会長が経営合宿の中で取り上げ、すぐに実施が決まりました。

その提案資料では、やっぱり「課題を明確にする」っていうところがポイントでした。実際の声をきちんと拾って、課題は何なのかを提示した上で、経済に女性の労働力がどれだけ貢献するのかの調査データを差し込み、課題となっている部分ではどれだけマイナスが出ているかというところを示しました。


——「WAVE」プロジェクトがスピード感を持って進んでいるのは、どのような点が大きいのでしょうか。

「WAVE」プロジェクトは、ボトムアップでやりたかったし、そこを大事にしたいとも思っていました。でも、ボトムアップだけでやっても、課題を経営側に共有しない限り会社は変わらないだろうという思いがあったので、誰を巻き込むかをすごく考えましたね。それで、大体の課題感がわかったらすぐにD&I担当の会社役員に相談をしたんです。とにかく経営層をどうやって巻き込むか、立ち上げ当初から戦略を練っていました。



「女性の働きやすさの支援になっていると同時に、この制度が社員の提案で作られたものだということに関心や期待が集まっている」


——「低用量ピル服薬支援の福利厚生制度」を導入してから半年以上が過ぎましたが、社内の反応はいかがですか。

社内全体にとったアンケートによると、制度を利用しているのが40人くらいで、その利用満足度は100%だったんです。

【オンライン婦人科診療&低用量ピル服薬支援制度に関するアンケート調査】
対象人数:N=73人
調査対象:全社員
調査期間:2022年11月24日〜12月2日
調査方法:アンケートフォームを用いた社内調査
※CARTA HD・mederi調べ

●利用満足度 100%
(利用者全員が「大変満足している」「満足している」と回答)


●働きやすさやパフォーマンスへの好影響 81%
(「つながっていると思う」「少しずつつながっていると思う」を合わせると100%)


●継続意向 95.2%


女性社員の働きやすさの支援制度としてワークできている結果となりました。利用者の中には、この制度をきっかけにピルを始めたという人が42%いるので、本当は使ってみたかったけれどさまざまな事情で始められなかった人の後押しもできているのかなと思います。

社内全体には、そもそもこの福利厚生制度があることを知っているかどうかも聞いたのですが、男性も含めて認知度は90%近くでした。この制度が社員の提案で作られたものだということに対して、大きな関心や期待が集まっているんですよね。


——制度が生産性向上につながっているということでしょうか。

そうですね。「生産性」と一口に言ってもなかなか数値化するのは難しいところですが、実際に利用している人が仕事のパフォーマンスに好影響を与えていると実感できていることが、いちばん大切かなと思います。

また、この制度について「本当にありがたいです」「助かります」というようなコメントももらっています。制度そのものが心理的な支えになっているのであれば、本当にやってよかったと思いますね。翻って見れば、共に働く社員にとっても働きやすい環境づくりにつながっているのではないでしょうか。



「自分と違う部分や考え方を敵視するのではなく、互いの違いを知り、認め合うことが重要」


——御社のバリューの1つである「違いを強さに」について、設定した背景を教えてください。

異なる2社が完全統合して業務を進めるには、どうしても組織文化の違いは意識せざるを得ないものです。統合することで「自分たちが守ってきたものが壊されるんじゃないか」と不安になることもあるかと思います。でも、統合したことによって一人ひとりの強みを足し合わせられるからこそ、もっといい会社にできるんだという思いを込めて、バリューに「違いを強さに」という言葉を入れました。

人ってどうしても自分と違う部分や考え方を敵視してしまうようなところがあるけれど、まずは互いの違いを知り認め合うことが重要だと思います。その上で、それを強みに変えていければ、社内全体で挑戦できる文化を作っていけるはずだと信じています。


——2022年1月に発表されて以降、その思いは社内にも広がってきていますか。

「違いを強さに」に関しては、「WAVE」の活動を通して意識が高まってきたかなと感じています。

性別だけでなく、人それぞれの背景や個性、価値観によって言い方が違ったり、気にするポイントも違ったりして、そこで議論になることが多かったのですが、無理やり一体化しようとするのではなく、まず自分と他者が違うことを認め合う意識を広めることができたかなと思っています。意識を広めるというプロジェクトの第一歩目は進むことができたので、次は組織としての本当の強さに変えていくチャレンジをしていきたいですね。


——「WAVE」では、第一フェーズのテーマに女性のキャリア推進を掲げているのですよね?

まず社内の50%弱が女性社員なので、単純に人数が多く会社に与える影響も大きいはずということから、女性にフォーカスしています。やっぱり企業として成長していくためには男女問わず自分たち一人ひとりが成長していくべきなんですよね。「低用量ピル服薬の福利厚生制度」も改善しながら進めつつ、女性も男性もチャレンジできる環境を作ることからやっていきたいと思っています。

来年はD&Iの意識醸成期に設定しているのですが、そもそも会社がなぜD&Iに積極的に取り組んでいるのか、社員全員に腹落ち感がないと絶対に進まないと思っています。女性活躍の問題だけではなく「違いを強さに」する文化を作っていくためには、まず社内のトップ層がきちんと噛み砕いて理解していないといけません。

具体的には、経営陣も含め各事業の代表を集める機会を設けて、ジェンダーやアンコンシャスバイアスなどについての知識を揃える時間をつくり、その後は実際に直面している課題を話し合っていく。そんなふうにして下地を作っておけば、社内全体にも新たな提案が響いていくと思うんです。


——キャリア形成においてポジティブにチャレンジする女性が増えていくといいですね。

そうですね。現状、リーダーとして活躍している女性は多いのですが、もっと意思決定層の女性を増やしていければと思っています。そのためには、女性が仕事でチャレンジできる機会を増やしていきたいですし、社内でのつながりを作っていきたいですね。

仕事が辛いものではなくて楽しいものであるためには、挑戦する機会や貢献している実感が必要だと思うんです。成功すればもちろん自信につながりますし、たとえ失敗しても、1,500人もいるんだからきっとどうにかなる(笑)。みんなが失敗を恐れずにチャレンジするための、土台作りを進めていきたいと思っています。



ご自身のお子さんがテストで
間違えてしまったときにも、
「よかったじゃん、間違いに気づけて!」
と笑顔で励ますという梶原さん。

失敗を恐れるのはもったいない、
チャレンジした方がきっと楽しい、
という言葉には実感がこもっていました。

たくさんの前向きな言葉から、
女性活躍の明るい未来が
見えてきた気がします。

<お話を伺った人>

株式会社CARTA HOLDINGS
執行役員 グループコミュニケーション本部長 兼 D&I推進室 室長 兼 コーポレートブランド室 室長
梶原 理加(かじわら りか)さん

2003年入社。
広告企画・セールス、データマネジメント事業立ち上げなど幅広い業務に従事。社内外広報を担うグループコミュニケーション推進室 室長を経て、2023年1月執行役員就任。



取材・文:酒井 絢子/撮影:田中 亜玲




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