仕事で第一印象を良くする、インパクトを残すにはどうしたらいい?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室348】
✳️今週のお悩み✳️
第一印象を良くする、インパクトを残すにはどうしたらよいのでしょうか。2020年を振り返って、今年の課題だなと思い、投稿しました。私は営業職なので、人と会うことが多いのですが、影が薄いと申しましょうか、上司にも印象が薄いと言われてしまっております。ただ、好印象と派手にする、は違うと思いますし、でも今のままだとたしかに地味といいますか。宇多丸さんは初対面の人に会うときや、はじめての番組に出るときなど、工夫していることはありますか。外見のこと、内面のこと、アドバイスをいただけると、助かります。
(とっちゃん・35歳・会社員・東京都)
宇多丸:
僕自身、ラッパーとしてのキャラクターがほかのライバルたちにくらべて弱いとキャリアの途中から感じ始めて、それでスキンヘッドにサングラスというルックス含めた「宇多丸」を作り上げていった、という話を前にこの連載でもしましたよね。
ま、それは人前に立つ仕事ならではの考え方なんで、とっちゃんさんの参考にはあまりならないかもですが……。
こばなみはどうですか?
こばなみ:
私も第一印象、濃くはないって言われますね。自分でも初回のインパクトはないなと思っているので、スルメ的なところを目指していると言いますか……。1回では印象が残せないから、人に何回も会ったり、長く付き合っていけるようには、心がけております。
あとは仕事の打ち合わせなんかだと、月並みですけど、いっぱい喋るようにするとか、ですかね。大きな声で笑うとか、最後に大きな声でありがとうございましたーっ!ってお辞儀をするとか。当たり前のことではありますが。外見にインパクトはないから、コミュニケーションでカバー。
宇多丸:
そう、コミュニケーション。
そこが大事なんじゃないかと、まさに僕も思いました。
たぶんこれはさ、自分のことを覚えてもらうとかって言う前に、まずこっちこそ相手のことをちゃんと知って、興味を持つ、もっと言えば好きになる、っていうのが大事なんじゃないかな。
たとえば僕だったら、「宇多丸さん、この間○○○のお仕事されてましたよね、あれ良かったです」とかちょっと言われるだけで、この人はそんなところまで見てくれてるんだ、自分に関心を寄せてくれてるんだって、やっぱり嬉しくなるし、その人に好意を抱き返しちゃいますよね、どうしたって。
ある種、恋愛の初期段階にも近いものがあるのかもしれないよね。
この人、私のこと好きなのかも……と思わされた時点で、自動的にこっちの関心度も上がっちゃうもんでしょ。あれと同じ理屈ですよ。
わざわざこちらを好いてくれてる人を無碍にはできないな、というような心理も働くだろうし。
あと、相手側の立場に寄り添った考え方をするという意味では、完全にツーカーな関係になるまでは、自己紹介を毎回ゼロスタートのつもりで丁寧にする、というのが意外と大事な気がします。
名前と顔と立ち位置をおぼえさせるというのを、先方側の責任にさせない気づかいでもあるというか……。
こばなみ:
なるほど~! そしてチャンスは初回だけじゃないですね。
宇多丸:
ちょっとしたやりとりの積み重ねでだんだんと定着させていく、くらいのつもりでいいんじゃないですかね。
なんにせよ要は、その人との関係を、まず自分が大事に思う、ってことからじゃない?
こばなみ:
すごくいい!! 本当にそうだと思います!
宇多丸:
毎度なんかしら手土産を持ってく、みたいのでもいいしね。
たとえば元女子サッカー選手の丸山桂里奈さんは、共演者の楽屋に、駄菓子とかの詰め合わせを、一筆そえていつも置いといてくれるんですよ。それこそ僕ごときにも、毎回律儀に。
とても彼女らしいキュートな心づかいで、そりゃハートをつかまれちゃいますよね。
一番いいのは、共通の話題があるってことだろうけどね……。
今はどうだか知らないけど、昭和のおっさんサラリーマンがやたらとゴルフに打ち込んでたのとかも、つまりはそういうためでもあったわけでしょうしね。
まぁとにかくなんとか、とっかかりを見つけて……、おしゃれに気をつかってそうな人だったらそこを褒めてもいいし、最初はその会社や仕事自体の話でも、ぜんぜんいいと思いますよ。
で、とりあえずこっちからどんどん、質問とかしていければベストですよね。それすなわち、あなたに興味あります、御社に興味あります、ってことになるわけだし、向こうもきっと喜んで話してくれるよ。
ゲストを迎えるラジオパーソナリティになったつもりでさ! 実際、考え方としては同じだと思いますよ。
もちろん、誕生日を押さえておくとかも手だろうし……、「すみません! ちょっとインスタを拝見しまして」とか、情報を仕入れる方法は昔よりはるかに豊富なんだからさ。
ただ、言うまでもなくだけど、そういう情報収集は、常識とマナーの範囲でね!(笑)
キモがられたら元も子もない!
ちなみに、「はじめての番組に出るときなど、工夫していること」、これもやはり基本は「まずこちら側が対象にちゃんと興味を持つ」に尽きるんじゃないかと。
どういう内容なのかしっかり把握しておくのは当然として、仮にあまりよく知らない番組ならば、できれば過去の重要回などをおさらいして、要はそのなかでの文脈をできるだけ押さえておきたいところではありますよね。
ま、僕自身は正直毎回そこまでちゃんとできていることではないんで申し訳ないんですが……。
たとえば僕の番組に出ていただくゲストの中には、「いつも聴いてます!」とか言ってくださる方がけっこういて。
さらに「○○○の回、最高でした!」とか、曜日パートナーの愛称まで知っていていただいたりすると、やっぱいきなりググーッと、距離が縮まりますよね。これは放送を聴いてる人たちにとってもそうだろうけど。
こばなみ:
相手に興味を持つ、それに尽きるかもしれないですね。
女子部JAPANに参加してくれる部員さんに言われたことがあるんですが、やっぱり名前とか、前に参加したときに話したこととか、なにかしら覚えていてくれることが嬉しいって。
宇多丸:
だよね。
あとはさ、さらにあと一歩積極的に印象づけしてゆくなら、僕同様、わかりやすい見た目上のトレードマークをひとつ、設定してみるというのもありますけどね。お約束的なツッコミどころを作っておくというか。
堅いお勤めだと難しいかもだけど、たとえばフリーライターの方とかは、すごく印刷が凝ってたりデザインが面白かったりする、オリジナルの名刺を作られてたりしますよね。
あるいは、これも職種次第ではあるけど、いつも面白い映画のTシャツを着てる、みたいなキャラ作りというのもある。いつもいつもじゃなくても、映画好きなあの人と会うときは、的な発想でも別にいいわけだからね。
こばなみ:
それ、方言でやってる人がいました。本当はそこまでなまってないのに、めちゃくちゃ津軽弁で喋ってる人がいて、つっこまざるをえないという……。
宇多丸:
いいんじゃない? そういうのも。
なんであれ会話が弾むきっかけが作れればいいわけだから。
というわけで、とっちゃんさん、参考になりましたかね? がんばってね!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2020年1月16日に公開したものを再編集し、掲載しています。