話を遮ったら悪いし……。会話のなかで相手の間違いを指摘できません。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室333】
✳️今週のお悩み✳️
相談です! マシンガントーク型の人との会話のなかで、違うのにな、と思ったりするときに、真実を言えないでいることがあります。「実はそれ○○ですよ」など、話を遮ったら悪いし、指摘されるのも相手は嫌だと思うんです。こちらも、会話のなかでちょっと待ったー!とはできないんです。職場の先輩だけなのかと思ったのですが、後輩も同様です。そんなのスパッと言っちゃえばと、よく友達からも言われますが、それを指摘すること自体が「自分は小さい」と思ってしまうのです。なので、結局だまったままで、小さなストレスがたまっていく感じというか。宇多丸さん、こばなみさんだったら、どう改善していきますか。教えてください。
(パンチ・35歳・会社員・東京都)
宇多丸:
前回の相談を逆サイドから見たような話ですよね。
僕はまさにマシンガントーク型、ゆえに早とちり言い間違い記憶違い、三分に一回は口にしていると定評がある人間ですので、まずはその立場から言わせていただきますと……。
なにか誤ったことを言っているなというようなときは、ご面倒でしょうが、ぜひともなる早で、できればその場で、どうか忌憚なく指摘して正していただきたい!というのが、本当に心からの、僕の気持ちですね。
僕みたいに一週間これだけの量を生放送で話していれば、どうしてもうっかり間違ったことを言ってしまう瞬間というのは出てきてしまうわけですが、発見したらすぐ僕に伝えてください、とスタッフにはいつも言っています。
それでもチェックから漏れてしまう部分というのはあるもので、これだけ人数いて誰も気づかなかったのか!と、つい逆ギレしてしまいたくもなってしまうくらい。悪いのは自分なんだけどね。
こばなみ:
気づいてるなら、話を遮っても言ってよってこと?
宇多丸:
話の流れもあるだろうけど、とにかくできるだけ早いほうが、言われたほうだって結局一番傷が浅いのは間違いないと思うんで。
少なくとも僕個人は、僕のことを思うなら絶対にそうしてほしい。
もちろんね、パンチさんの躊躇も非常によくわかりますけども。
間違いの程度によっては、わざわざ話を止めるほどでもないな、というときもあるだろうしね。
キツいのは、話全体が完全に間違った前提で進んじゃってるようなときかな。
こばなみだったら、どうする?
こばなみ:
間違いの内容とメンツによりますよね。
仕事上で事実と異なった状態などで話が進んでる時は、そりゃ言いますね。すみません、そこは○○じゃなくて△△ですよね、など。わりとはっきり言っちゃうかも。
違う話でずっと進んでるのは、のちのち大変なことになるし、時間がもったいないし、それ考えたら多少そのとき気まずくてもいま言ったほうがリスクが少ないなと思うので。
宇多丸:
言ったら言ったで感謝されるでしょ?
こばなみ:
そういうときもあるし、ムカッとされることもあるんじゃないですか?
だから、言い方に気をつけねばですよね。ぜんぜん「かも」じゃないのに「それ違うかも、です」とか言っちゃうときはある。
でも、まぁ、良い方向に行くためにやってるわけだから、ムカッとされても気にしませんが、問題は友だち同士で話してるときなどに、むしろどーでもいー系のことが間違ってるときですよね。
例えば誰かの誕生日が5月だよねって話してるけど、いや7月だよ、みたいな些細な場合。
なので、話の大筋に関係ないやつとかは、言わないことはあるかも。モヤモヤが残りながら、今度その話題が出たら言おうって思って飲み込むかな。
宇多丸:
あと、一番よくあるのは、言い間違いじゃない?
漢字の読み方を間違っておぼえちゃってるとか。
お恥ずかしい話、僕はむちゃくちゃ多いんですよ。ラジオを聴いてくださっている方にはバレバレでしょうが。
これ、小さいときからひとりで本を読んで言葉をおぼえることが多かった人にありがちだと思うんですよね。何十年もそういうもんだと思い込んだままここまで来ちゃってたりする。
ちなみに、たとえば放送中に、僕側がパートナーとかの漢字読み間違いに気づいたりしたときは、間違いを正すという強いニュアンスではなく、なんなら別の言い方もあるのかな、くらいの軽さと音量で、正しいほうの言い方を、あくまで相づち的に追いかぶせたりしてますね。
「そのムードが“きうす”で……」「希薄だったんだ」「そうそう」みたいな。
カンのいい人ならそこで自分の間違いに気づいて、すぐ言い直すなり、とりあえず流すなりしてくるもんだから。
これが比較的全員損しないで済むやり方じゃないかなと、僕は考えてますけど。
そこからまた「そうそう、“きうす”だったんですよー!」とか重ねてこられたら困るけど……、こっちも負けじと「そっかー! きはく、だったんだー!」とか、ちょい音量上げて返すか(笑)。
こばなみ:
何回までいけます?
宇多丸:
まぁ二度目が来たらもう、コイツ気づいてないなってことで、「“きはく”ね!」って、「正す」ニュアンスを強めるかもね。
とにかく、漢字の読み間違いくらいって、わざわざ正さなくとも話の大勢に影響はないわけで、なかなか判断が難しいラインかもね。
さっき僕が言ってたのは放送内でのことなので、普段よりは基準がやや厳しめなわけですが……、日常会話のなかなら、僕もあえてスルーしてることが多いかもなぁ。
厄介なのは、誤りを指摘したつもりが実はこっちが間違っておぼえてた、みたいなパターンも、ないわけじゃないから。
こばなみ:
どっちの読み方でもよかったんだ、という場合も多々もありますしね。
宇多丸:
そうそう。音訓どっちも間違いじゃないとか、今はこっちもありってことになってるとか、言葉ってそういう幅があるものでもあるからね。
でも、だったらだったで、お互い勉強になってよかったね、でいいじゃんと僕は考えたい。
漢字のおぼえ違いとかは、第三者が聞いている場じゃないと、判明しないことじゃない? ひとりで黙読しているだけだと明らかにならないことだから。
だからやっぱり、僕自身は、指摘されて正す機会を得られたというのは、感謝すべきことなんだろうと思いますよ。優等生的に聞こえるかもしれないけど、ホントにそうなんだからしょうがない。
その場では恥ずかしかったり屈辱を感じたりしても、もしそのままずっと誤った知識を抱えたままでいたら、ひょっとしたらもっと重大な局面でやらかしちゃうかもしれないじゃん?
僕なんかもう放送に乗っかっちゃってるんだから、じゅうぶん重大なんだけど……、早めに正されないといい歳こいてから恥かくよ、という典型ですね(泣)。
それに、だいぶ後になって言い出したり、間違いを知りつつ黙ってましたってほうが、ずっと嫌みっぽくない?
まぁだからもちろん、相手との距離感にもよりますよね。別にどうでもいいやつなら放っておけばいいし。
困るのは、実際尊敬してる目上の人、とかだよね。恥かかせたくないし、さっき言ったようにこっちのほうが間違ってる可能性も考えちゃうし……、その場合も僕は正直、なんも言わないかも(笑)。
そう考えると、言ってもらえるってやっぱ、恵まれてるよね。
まぁあと、会話上だったらそれはもういいじゃん!って程度のやつも、いっぱいあるからね。
たとえば文法的な崩れとかは、くだけたおしゃべりのなかでいちいち指摘されたりしたら、そりゃあさすがに、うっせえな!って思っちゃうかな。
「未だに」の後は否定形で終わるべきです!とか(笑)。
いわゆる「ら」抜き言葉とかも、しゃべり言葉なら別に目くじら立てるようなことじゃないじゃん、と僕は考えてますけど。
それと、誤用されがちで有名、みたいな表現ってあるじゃない? わかっちゃいるけど、いざ使おうとするとどっちだっけ?ってなっちゃうやつ。
たとえば、「雪辱を……」どうするんだっけ? 晴らすんだっけ果たすんだっけ、みたいな。
そういうのは、そもそもみんな間違えやすいことで知られているくらいなんだから、公共に発信しているわけでもないプライベートなやりとりのなかなら、そこまで厳密に正してゆかなくても、って気がしますよね。
こばなみ:
あと会話上で、「接続詞がおかしい」とかもよくありますが、いちいち言わなくてもいいかも。
宇多丸:
まぁ、親しい仲なら、結局前の人と同じようなことしか言わないときでも「でもさ……」から始まる話法に突っ込んだりとか、僕はすごいしますけどね。「ぜんぜん『でもさ』じゃねぇじゃん!」って(笑)。
こばなみ:
「逆に」から話して逆じゃない人もいますよね(笑)。
宇多丸:
まぁ、どっちにしろそういうのは、比較的ご愛敬というか、言い合いやすい範疇じゃないかな。
ピリッとしやすいのはやはり、知識的な勘違いだよね。
それでもやっぱり……、指摘されればそりゃ本当に恥ずかしいけど、ゲームで言えば、いきなりボーナスポイントがもらえちゃった、みたいなことなわけじゃん?
そこから先、自分が確実にレベルアップするわけだからさ。
何か間違いを正されるたびに、脳内で「ピロ~ン」って鳴らして、プレイヤーランクが上がった自分をイメージすればいいんですよ!
ちなみにさっき言ってた「雪辱」は、それ自体が「屈辱を晴らす」という意味の言葉なので、「果たす」のが正解だそうです!
だから「晴らす」のは「屈辱」。
こうやって、改めて意味を確認したりするのも、それはそれで楽しいしタメになるよね。
まとめると、相手との距離感や間違いの度合いにもよりますが、話の根本に関わるような誤りであれば基本的にはやはり、気づいた時点でできるだけ早めにさらりと訂正に持ってゆく、というのが望ましいんじゃないでしょうかね。僕はマジでそうしてほしいし。
パンチさんも、自分が逆の立場ならどうされたいかを、まずはよく考えてみるといいかもしれないですね。
漢字の読み間違いとかは、スルーしてもその場では問題ないことがほとんどだろうけど……、どちらかと言うと相手をフォローしてあげたい気持ちが強い場合は、さっき言った「相づち風かぶせ」テク、わりと有効だと思うので。
チャンスがあればみなさんも、試してみてくださいね!
こばなみ:
はーい! パンチさん、くれぐれもストレスためないよう、お過ごしくださいませ~!!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2020年8月22日に公開したものを再編集し、掲載しています。