女性活躍の先進企業にいるものの、部長や役員になりたいわけじゃない。こんなとき、どうする? 《キャリア形成編-3》
リーダーとして仕事をしていれば、必ずぶつかる
コミュニケーションや人間関係の問題。
相対する人も違えば、状況もさまざまで、
「こうすれば正解」がないのが
難しいところです。
そこで、
リーダーとして働く女性が実際に体験した
コミュニケーションの課題と
それに対するアクションを
ケーススタディとして紹介。
同じような課題を抱える人のヒントになれば、
という思いで届けていきます。
今回は、証券会社で副部長を担うもっちゃんさんのケース。早くから女性活躍推進に取り組んでいる企業ではあるものの、上へ行けば行くほど、男性優位の構造が残存しているのが実情。女性である前に一人の人間として自身と向き合った結果、たどりついた「自分を活かせる」働き方とは? 昇進昇格だけにとらわれず、組織で生き残るにはどうあるべきか。そんなことを考えさせられました。
女性活躍推進の先進企業ではあるけれど、結果的に実力がついているのは男性ばかり!?
うちの会社は20年くらい前から女性活躍推進に取り組んでいました。
当時は男性の営業の方がいいというお客さまもいたようですが、今は女性の営業の方がいいというお客さまも増えています。法人から個人まで顧客層は幅広く、お客さまによって求めることが違うと考えれば、性別に関係なく働ける職種だと思います。
それでも、女性の管理職の比率は2割。以前より男女が対等に働けるようになったとはいえ、役員となってマネジメントを任されるほどの実力がある女性が現状でどれだけいるのかは、正直微妙なところです。
採用の男女比率は半々ですが、結婚や出産によって退職をしたり、昇進ルートから離脱をしたりする女性もいます。たとえ産休後に復帰をしても、以前と同じモチベーションで戻って来られるのは、そのうち半分くらいでしょうか。
昔に比べれば、仕事と家庭を両立させ、復帰後もキャリアを積み重ねる人が増えたとはいえ、出産などにより女性の数は減り、結果的に実力がある人は男性ばかりになっているのが現状です。
実際に、部長クラスはほぼ男性。過去に女性が部長に就いたこともありましたが、“わきまえている”からその立場に居られたように、私には見えました。
私自身にジェンダーバイアスがかかっているからそう見えたのかもしれませんが、絶対数の少ない女性が男性中心のなかで生き残るためには、男性に真っ向から意見を言わないように振る舞う必要性があるのかもしれません。
そういった状況からして、本当の意味で男女が対等になったとは言い切れないのが実情。性別関係なく実力のみで戦えるようになるには、もうしばらく時間がかかりそうです。
出世コースから外れ、活躍の場を広げるべく新規事業に挑戦
副部長になって約1年。これまでは着実に昇進ルートを歩んできました。組織の仕組みとして副部長クラスまでなら成績順で上がっていくことができますが、そこから先の部長や役員クラスになるにはマネージャーとしてのスキルが問われます。
営業職で昇格して部長や役員クラスになるのは、まさに“椅子取りゲーム” 。上にいくほど数が減っていくので、たとえ成績が良くても昇進できるとは限りません。
椅子取りゲームといっても、例えば、女性管理職30%を目指しているなら、椅子の数は女性3:男性7。女性が部長クラス以上に昇進するには少ない椅子を女性同士で奪い合うことになり、そこに関しては、男性からすると「自分たちには関係がない」といった感じです。
私は、部長や役員になって、男性のなかでわきまえた行動をとることも、椅子取りゲームに参加することも性格的に向いていません。そもそもマネジメント職への出世欲がなく、責任を負う立場になりたくないタイプです。
そこで、今後は会社が新たに立ち上げた事業開発のスペシャリストのような立ち位置を目指したいと考えています。勉強中のMBAも活かせるだろうし、女性同士の椅子取りゲームに参加するより、自分の椅子に座って新しい挑戦をするほうが自分には合っていると思います。
会社にそのような前例がなく、どのような人材が求められているのかもまだ手探りですが、昇進ルートと関係のないテーブルでこれまでの経験を活かしていくことが今の私にとって理想の働き方です。
イラストレーション:高橋由季