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後輩が人前で褒めまくってくるので恥ずかしい……。素直に喜べないのは私がおかしいのでしょうか?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室387】


✳️今週のお悩み✳️
仕事の後輩でよく褒めてくる人がいるのですが、それが自分ではたいしたことないことなので、言われるたびに恥ずかしくなってくるのと、なんならあなた私のことをバカにしてるんじゃないですか?という気持ちになってきてしまい、プチ怒りさえわいてきてしまうんです。たとえば、大学。頭がいいですよね、と言ってくれるのですが、その後輩よりもいい大学を出ているだけであって、私の大学よりもいいところはたくさんあります。それなのに、私よりもいい大学を出ている人の前でそういうこと言うのはどうなんだろうって思ってしまうんです。それと顔の件。自分で言うのも変ですが、普通程度ではありますが、そこまでではないのに、大袈裟に人前で褒めるので恥ずかしいです。人が褒めてくれることに素直に喜べないのは私がおかしいのでしょうか。自尊心が低いのでしょうか。それとも、後輩は褒め返して欲しいとか? なんだかよくわからないのですが、面倒くさいし、居心地は悪いです。どう付き合っていけばいいでしょうか。
(もっさん・34歳・会社員・東京都)


宇多丸:
これはちょっと、今までになかったタイプのお悩みですね!

こばなみ:
褒められすぎると照れ&困っちゃうことはありますけど、お悩みの域までいってるんですもんね。

宇多丸:
ちなみに僕自身は、自分のラジオ番組で『マイ・スウィート・HOME(ホーメ)~こんなに嬉しいことはない~』なんて投稿コーナーを前からやっているくらいで、基本的には、みんなもっと積極的に他人のことを褒めていこうよ!というのを提唱しているくらいではあるんですけど。

その後輩もヘタしたらリスナーで、僕に焚き付けられちゃったのかもしれない(笑)。

褒めるだけならタダだし、そのわりに意外と、それがその人にとっての大事な一言になっていったりもするもんで。

なんにせよ悪いことはなにもない……と、持論としては思っていたんだけども。

しかしたしかに、褒め方によっては、ただただ相手を困惑させるだけだったり、なんなら失礼になる、ってこともありうるわけですよね。

たとえばやはり、容姿に関する言及とかは、たとえ悪気がなかったとしても、最悪ハラスメントになってしまうようなケースも、当然考えられるわけで。

つまり、少なくとも褒める側には、ある種の節度というのが求められる、というのは間違いないですよね。

こばなみ:
今回は、褒められてる内容に自分が思うところとのズレがあるってことですよね。

宇多丸:
とはいえ、そうそう自分の思う通りに他人はこちらを見てくれたりはしない、というのは別に、その後輩に限ったことじゃないですからね。

僕なんかそこに関してはもう、そもそも期待しないようにしてますよ……、失望しないように。

そこへ行くともっさんは、ひょっとしたらバカにしてんの?と疑ってしまうところまで、イライラを募らせているわけだけど。

まぁ普通に考えれば、その後輩がホントに内心悪意を持って接している、という可能性は低い気がしますけどね。

おそらくは、もっさんに対する好意や敬意は本気であったうえで、単にちょっとずつ気が利かないとかピントがズレてるとか、そういう人だというだけのこと、なんじゃないですかねぇ。

万が一、本当にはやっぱり悪意があったのだとしても、そんなこと確かめてもしょうがなくない?と僕なら考えるかな。

こばなみ:
人前で褒めるので余計に恥ずかしいってこともあるんですよね。

宇多丸:
そこはだから、「ほら、みなさん変な顔してるでしょ! はいもうやめて!」的にはっきり突っ込んで、言わば「気まずい状況を客観化する」ことでやりすごす、とかかなぁ……。

前回の苦手なタイプへの対処術とも通じるかもしれませんが。

たとえば学歴の件なら、「いやいや、それを言ったら◯◯さん東大だから!」と、主張のズレっぷりを可視化/ネタ化することで、気まずさを中和したり。

しかしいずれにしてもやっぱり、「お褒め自体はありがたく受け取っておきますけど」というような一線は、キープしといたほうがいい気がするんですよね、僕個人の考えとしては。

さっき言ったように、特に褒める側には一定の配慮や慎みが必要なのだとしても、「人の美点を見つけてそれを当人に直接伝える」って、基本やっぱ、世界をちょっとだけナイスにする、善き行為だろうと思うんですよね。

海外の方に多いけど、知り合いでもなんでもなくても、たとえばすれ違いざまTシャツやスニーカーに「お前わかってんね!」風に親指グッと立てるとか、わりとカジュアルにしてくれたりするじゃないですか。

ああいうの、とーってもいいなと思うし。

そうやって、日々ささやかな褒めやアゲを互いにさらりと伝えあうようにしてゆけば、世の中もっと楽しくなるよ!と僕は提唱してるんですけど。

こばなみ:
もっさんは、自分がおかしいのでしょうかって書いていますけども。

宇多丸:
いやいや、過剰だったり的外れだったりする褒めを、しかも人前でされるとむしろはっきりマイナス、という気持ちももちろん理解できますし、おかしいということはないですよ。

特に日本には、カジュアルな褒めの風土がないから、違和感のほうを強く感じても当然なんですけど。

でも、それはわかったうえでなお、最後には「でも、ありがとう」を付け加える精神は保っておいたほうがいいんじゃないか、と僕はやっぱり思う。

たとえば万が一、本当に嫌味で褒めちらかしてくるような人がいたとしましょうか。

でも、それに対するリアクションも結局は、「でも、ありがとう」が正解なんだと思いますよ。

こばなみ:
褒めなんだから、素直に受け取っていいよっていう、シンプルなことですかね。

宇多丸:
そうだね。

要は、他者の「真意」なんか探ってもあんまり意味ないんだから、ということかな。

どっちにしろそれは、本当にはわかりようがないんだから。

こばなみ:
疑い始めたら、なんだって疑わしくなっちゃいますもんね。

宇多丸:
その通り。

だったら、表面上ポジティブなことはポジティブなこととして、内心デリカシーねぇなコイツなどと思ったりしていたとしても、そのまんま受け取っておけばいい……というか、事実上そうするしかないわけじゃん?

たとえば、もっさんからすれば行きすぎた顔褒めの件も、「へぇ変わった好みだね、ありがとう!」くらいで受け流しとけばいいんじゃないの、と僕なら考える。

それで物足りなきゃ、「いや、そう言ってるあなたこそが素晴らしいんですよ!」とかなんとか、褒め殺し返しでもすりゃいいんじゃない?(笑)

お互い「恥ずかしいけど正直ちょっぴり嬉しい」者同士、まさにwin-winってことで、丸く収まるよ!

こばなみ:
コントみたいなおうむ返しですね。

宇多丸:
ただし、一応念のため……、当然のことながら、もっさんが本当に我慢しがたいレベルでそれが嫌なんだったら、ストレートに当人に「本気で不快なのでやめてくれますか」と訴えるのが一番だとは思いますが。

ともあれやはり、少なくとも一般論としては、褒められること褒めることのハードル、日本人ももっともっと下げてったほうがいいよ、というのが僕の考えですね。

あなたのなにげない褒めが、実は誰かの生きる糧になっていたりすること、全然あるから。

それに、褒めグセってすなわち、「相手のいいところを見つける能力」なわけじゃん?

そこを伸ばすのって、とっても豊かで素敵なことだと思いますよ。

だからもっさんも、心に余裕があるならばでいいので、逆にその後輩のいいところを抽出して言語化して本人に言う、という習慣を心がけてみてはどうですかね。

実際のところ、誰もがもっと褒められたくて仕方がないなか、横っちょにそんなプチ太鼓持ちが常に控えているなんて、本当にうらやましい限りですよ……。

その後輩、もっさんが嫌なんだったら、僕がもらうよ!(笑)

こばなみ:
ちなみに私が最近褒められたのは、「オンラインイベントのときのZoom映りがよかったよ」でした。意外な褒め言葉だったので自分ではピンとこず、あまり反応せず流してしまったのですが、今思えば、イベントを見ていいところを探してコメントくれたこと自体、ありがたいことだったのになぁと。もうちょっとポジにとらえりゃよかった~(汗)。

私ももっさんみたいに、謙遜したり、照れちゃうことが多いので、気持ちはすっごくわかります。だからときには、褒め内容はいったん置いといて、褒め行為に着目してみるのもありかもですね。少し気が楽になって、新たなポジ視点も見つかるかもな、と思いました。

もっさん、状況を冷静に分析されているので、きっと自分の気持ちの落ち着きどころや振る舞い方も見つかりますよ! 



【今週のお絵描き】

画・宇多丸




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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

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女子部JAPAN こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。



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