ズボン、靴下など脱いだら脱ぎっぱなし、しかも改善の気配がまったくないダンナ。いい策は?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室157】
✳️今週のお悩み✳️
片付けられない夫にイライラします。ズボン、靴下など脱いだら脱ぎっぱなしの上、一日に何度も着替えます。(家に帰ってきて部屋着→お風呂に入ってパジャマみたいな感じです) 私も決して片付けが得意な方ではないのですが、家がごちゃごちゃとしている状態が好きではなく、モノを元にあった場所に片付けてから家を出たいと思っています。(見た目だけつくろってあればOKで、引き出しの中は ぐちゃぐちゃタイプです) 洗濯機に入れてほしい、せめて一か所に集めておいてほしい……など、いままで何度となく要望を伝えてきましたが、まったくもって改善する気配がありません。以前は何も言わずに片付けていましたが、だんだんとイライラが募ってきました。何かいい策はないでしょうか?
(まめ子・35歳・神奈川県)
宇多丸:
まぁ、人によって潔癖の度合いとか、お行儀的に許せるラインは違うっていうことはあるけどね。
こばなみ:
うっかり、ついつい置きっぱなしにしちゃうのはわからなくもないですね。まぁいっかって、ごちゃごちゃっと(笑)。
ただ、改めて見るといい気分はしないので、なるべく片付けるようにはしてるけど。だいたい一人暮らしだと、自分でやらねば永遠に片付きませんしね。
宇多丸:
それにしたって、洗濯機に入れるくらい、なんでできないんだろうね、このダンナは。
こばなみ:
「せめて一か所に集めておいてほしい」というのも切実ですね。
宇多丸:
動物レベルだよ(笑)。
こばなみ:
洗濯機の上に着替えをおいとくのはダメ? 猫のトイレのしつけと同じ戦法ですけど。
宇多丸:
え~! そこまでやってあげるの~?
仮にそれで、目先の洗濯物問題は解決したとしても、結果としてこっちがより気を回してあげてるだけっていうか、まめ子さんの労力が逆に増えることにはなっちゃってるわけで、それでホントにいいのか?って感じは正直するな~。
マネージャー知井:
実はうちの父がそのタイプなんですよ。わたしが実家に住んでいた時は、父の脱いだ靴下がそのまま置いてありました。片付けてと言っても「もう~、疲れてんのっ!」ってだだをこねたりして。明らかに通り道に洗濯機があるのにやらなくて。
宇多丸:
甘えてるのかな?
マネージャー知井:
それもあると思います。みんながいるリビングでわざわざ脱いで、それを母が片付けてました。
宇多丸:
お父さん、たしか料理人なんだよね?
ってことはさ、毎日調理場に立っていて、そこは絶対にちゃんと整理整頓しなきゃなんないわけじゃん。
だから、せめて家に帰ったら、そういう意識から完全に解放されたいのだ!ってことなのかな?(笑)
だらしなくすること、それ自体が目的というかさ。明らかに意志的な行動だもんね。
その甘えを許容するかどうかは知井家の問題ですけども……、まぁたしかに、酔っぱらって帰ってきたときとか、やさぐれ気分に浸りたくて、半分わざと、脱ぎ散らかしたまんまにしときたいような気持ちはちょっとわかんないでもないけど。
ただ、なんにしたって、いつかは誰かが片付けなきゃなんないことに変わりはないからね。
ひとり暮らしなら、いっさい洗濯せず掃除せずで住まいが荒れ放題になっていったとしても、そりゃ自己責任だけど……、同居人がいる以上、一緒に暮らしていくうえで守らなきゃいけないラインというのは、当然それぞれの家にあるわけで。
ひとつ明らかなのは、まめ子さんのダンナ、家事「労働」というものと、それを担っている人に対して、あんまりリスペクトがない類の男みたいですよね、悪いけど。
だってさ、たとえ妻が専業主婦だろうが、それこそお金で雇った家政婦さんだろうが、やってくれていることに対して少しでも「ありがとう」って気持ちがあったら、いずれ必ず回収が必要なものを床にポイポイ放っていくなんてこと、しないし、できないと思うんですよね。 事実上、「拾っとけや」って言ってるわけだからさ! お前は王様かよ!っていう。 それを当然のように思ってしまうような人だってことは、残念ながら間違いない。
何度も要望を伝えているのに改善の兆しが見られないっていうのも、その場ではゴメンゴメンとか言ってみせてるかもしれないけど、実際のところ「とは言えそんなの、大した問題じゃないでしょ?」って、本気で思ってるからだと思いますよ。 なんならそんなやりとりしたこと自体もすぐ忘れちゃうくらい、本当に軽~く考えてるんだと思います、家事のことも、それを日々こなしているまめ子さんの労力のことも。
ま、疑いの余地なく、子供の頃からそうやって、お母さんがなんでもやってくれちゃってたんでしょう。おそらく、ひとり暮らしで苦労した経験とかもないんじゃない? そういうとこ、なんで結婚前に見抜けなかったかな、というのは言っても詮ないことなので置いておくとして……。
ダンナだってイイ歳なんでしょうから、今さらどこまで矯正できるもんかわかりませんけど、可能性があるとしたら、とにかくまずは、「いや、私にとっては、つまり私たち夫婦にとってってことだけど、これ、全然“大した問題”だから!」というのをはっきり思い知ってもらうしかない。
だから、改めて話し合いの座を設けるとかして、それこそ、何度もお願いしてるのにちゃんと直そうとしてくれないっていうのは、私のことを人として軽視しているとしか思えないんだけど?ってところから、面と向かって一度きっちり詰めてやったほうがいいですよ。 そうじゃないというなら、なぜそうなってしまうのか、私が納得できるよう説明してみせろ!ってさ。
万が一そこで、まめ子さんが「あぁ、そういうことなら仕方ないかもね……」とでも思えるようなら、それはそれでいいだろうしさ。まぁ、まずありえないだろうけど(笑)。
で、いったんそこまできっちり話し合ったにもかかわらず、それでもまーだ、同じようなことを繰り返すようなら……、言葉で言ってもわからない人には、少なくとも同じ家で暮らすのなら、犬猫同様の「しつけ」が必要と判断させていただきました!と宣言して、実力行使に出るしかないでしょうね。
具体的には、これ、相談文を読んだ時点で「そうしてやればいいじゃん!」って頭よぎった人多いだろうけど、洗濯機に入っているもの以外は、洗いません!宣言するとか。
ただ、それだけだとそこらじゅうにダンナの汚れた下着やらシャツやらが転がってることになって、結局まめ子さん自身の生活も侵されてしまうだろうから、加えて、床に落ちてるものはゴミと見なして即時廃棄します、とも通告する!
そうやって、どんどん着るものがなくなっていよいよ困ってくれば、嫌でもまめ子さんの要求に真剣に向き合うしかなくなるんじゃないですか?
そこまでハードに攻めてもなお、改心する様子がないような人だったとしたら……、あとはもう、あなたが私の話を聞く気がないのなら、私も勝手にやらせてもらいますっつって、ダンナの存在無視でやりたい放題やりまくって、あとはオラ知らね、ってなるしかないよね、もう。
こばなみ:
生活、破綻しちゃいますね。
宇多丸:
この想定ケースでは、先にパートナーとしてのコミュニケーションを拒絶したのはダンナのほうってことだからね。その時点でもう、とっくに結婚生活なんて破綻してますよ、そんなもん。
ま、そこまで酷いところまで行かないことを祈るばかりですが……。
それか、すべてを諦めて、まめ子さんが完全に「お母さん化」するか。 それならたしかに波風は立たないだろうけど、ダンナの態度は一生変わらず、むしろ悪化してゆくばかりで、まめ子さんはひたすらそれに心を殺して対処してゆくしかないってことでもある。
こばなみ:
一度そうしたら、ずっとやり続けるしかないですもんね。
宇多丸:
それが一生続くのも良しっていうような人ならそれはそれでいいけど、いったんそっちの方向で関係性が固まって、一定期間が経っちゃうと、あとからはなかなか軌道修正できなくなっちゃうもんだからね。
その意味では、今みたいに内心イライラしながらも、我慢して飲み込んじゃってるって状態が続くのが、一番良くないかもしれない。
あとから爆発されても、ダンナにしたって「なに急にキレだしてんの?」ってことにしかならないだろうからさ。
だから、まめ子さんはまめ子さんで、こうやって、ダンナにちゃんと不満を伝えて直させてゆくっていう、一個一個のアクションをめんどくさがっていたら、パートナーとのコミュニケーションを維持/向上させてゆく努力を怠っているという意味で、やっぱりダメってことなんだと思います。
機械とかだってさ、長く動かすためには、オイル差したり、部品交換したりして、こまめなメインテナンスが必要なわけじゃん。 まして人間なんて、お互い日々刻々と変化する存在同士が付き合い続けてりゃ、そりゃ絶えず噛み合わないところ、ギクシャクするところが出てくるのも当然でさ。そのたびにネジを締め直したり微調整してかないとすぐ壊れちゃう、というのが前提なんですよ。
なので、もちろん相手側にもこちらに言いたいことがあるのかもしれない、というのは常に頭に置きつつ……、互いに敬意を持ってそこをすり合わせする作業を積み重ねてゆく、っていう以外に、あらゆる人間関係を維持/向上させてゆく手立てはないとも言えるので。 まずはまめ子さんからの、「あなた、ちょっと話があるからそこ座って」がその第一歩、ということです!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2016年8月13日に公開したものを再編集し、掲載しています。