よく「真面目」と言われるのですが、それは「ダサい」「いけてない」「モテない」というニュアンスで言われている気がします……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室414】
✳️今週のお悩み✳️
こんにちは。30代既婚子持ちの会社員の女性です。私はよく真面目と言われますが、それがコンプレックスです。「面白味がない」「ダサい」「いけてない」「カタブツ」「色気がない」「モテない」というようなニュアンスで言われている気がします。また、大概私に対して真面目と言ってくる人は、「私って(俺って)真面目じゃないからさ~」とセットで言ってくることが多く、私は(俺は)あなたと違って「面白い」「カッコいい」「いけてる」「柔軟性がある」「色気がある」とアピールされている気がします。とはいえ、私が考えすぎかなと思ってどういう意図・意味で言っているのか突っ込むと、真面目だなと言ってくる人は大抵「めんどくさ~」というようなことを言って、鬱陶しがってきます。だったらいちいち「自分は違うけど、あなたは〝こう〟だね」なんてネガティブな(意味と思われる)レッテルを一方的に貼り付けてこないでほしいです。しょうもない悩み(?)なのですが、前向きになれるお言葉をいただけたら幸いです。よろしくお願い致します。
(ベルツリー・30代・神奈川県)
宇多丸:
前に「アトロク」水曜パートナーのTBSアナウンサー日比麻音子さんが番組内で言ってたことと、まんま通じる話だなぁと思いました。
要は「優等生だよね」的なことをよく言われるんだけど、そこはかとない悪意も感じるしすごくモヤモヤする、という話で。
もちろん、日比さんがあらゆる面で優秀な人であるのは疑いようもないんだけど、同時に、曜日パートナーで一番くだらないことをスキあらば言いまくってるのもまた日比ちゃんなわけで(笑)、まぁ極めて表面的な、薄っぺらなレッテル貼りなのは間違いないし、その言外にはやはり、ベルツリーさんも感じている通り、言っちゃえば「ガリ勉野郎め」みたいな揶揄感がどうしたって透けて見えてきてしまう、というのも事実ですよね。
似たようなのでは、「○○さんは要領がいいからさ~」みたいなのもありますね。
小ずるいって言ってるも同然じゃん!っていう。
明らかに「うまくやりやがって」的な嫉妬から生じた悪意なんでしょうけど、とはいえ婉曲表現だから、正面から抗議もしづらい、という卑怯そのものな構造もあって。
猛烈に、ダサいしウザい!
なのでまず、もし仮に読者のなかで、こういう表現をマジで悪気なく使っちゃってる人がいたとしたら、それ、言われたほうはわりと感じ悪く受け取ってる可能性が高いので、今後はやめたほうがいいかもです!とは言っときますね。
こばなみ:
自分自身はあんまりこの経験ないのですが、あるあるな場面としては浮かんできますねぇ。なんとも面倒臭いコミュニケーションですね……。
宇多丸:
ということで、そんな物言いをわざわざ投げかけてくる輩が、ものすごく失礼で卑劣だというのは大前提だし、それはベルツリーさん側の問題じゃない。
要はこれ、身の回りにいる無神経な連中に日々どう対処してったらいいのか?という、実はかなり普遍的な悩みかもしれないですよね。
とりあえず……、あっちのことをきっちり見下げきっとく?(笑)
結局、彼らがなんでそういう論法を使ってくるかっていうと、要は誰かをサゲることでしか自分をアゲて見せられないから、ですよね。
つまり、その時点では自分のプラスポイントみたいなものは少なくとも目に見える実体としては存在していないんだけど、努力などはしたくない一方で承認欲求だけは手っ取り早く満たしたいため、ひとまず誰かをサゲることで、相対的に自分が浮上したかのように見せたいし見えたい、みたいな……、まさしく「浮き彫り」の手法ですね(笑)。そこまでして威張りたいか!っていう。
ま、一部SNSとかでは悲しいかなむしろ多数派的な振る舞いかもしれませんけど、本人だいたい無自覚だったりして……。
いずれにしてもこの、「他者サゲによる遠回しの自分アゲ」ロジックを持ち出してる時点で、とくに根拠もなく自分をアピールしたいだけ、いいと思ってほしいだけの情けない人、というのは確定なわけです。
だいたいさ、その人に対するプラス評価っていうのは、当たり前だけどあくまで他人が下すものであって。
そりゃ、自尊心はそれぞれに高く持っていたほうがいいというのはあるだろうけど、そのために他者を意図的に傷つけて、言っちゃえば安全圏から搾取するなんて、どう考えても人としてマナー違反ですよね。
過大な自己定義を勝手にしといて、それに同意させるべくこっちを一方的にサゲてくる……ってどんだけ迷惑で見苦しいんだよ?って話で。
その段階で即、あなたの願望と正反対の人物評価をするしかないですよ?っていうことになっちゃう。
聞いてもないのに「オレってカッコいいじゃん?」と言ってきた時点で、絶対にカッコよくはない(笑)。
しかも、ちょっと突っ込まれたら面倒がって逃げちゃうんだもんね。
卑怯すぎて、文字通り話にならないわけですよ。
そんな感じで、まずは先方を心の底から軽蔑しきる、というのを基本にしつつ……(笑)。
あとは、具体的にどう反応すべきか、ってところですよね。
逆襲のパターンというか、「詰め方」ならいくらでも思いつくんだけどなぁ(笑)。
前にもさ、「○○さんって普通じゃないよね」とか失礼千万な「いじり」をしてくる同僚にどう返したらいいか、という相談がありましたけど、あの回とかもちょっと参考になるかもしれない。
今回で言うと、一番ストレートで気持ちいいのは、「ベルツリーさん、ホント真面目ですよね~。私なんか不真面目で……」に、ちょい食い気味で「本当だよ、この給料泥棒!」とかでしょうけど(笑)、さすがにこれは、むしろよほど仲いい同士じゃないと現実的じゃないね。
ま、向こうが遠回しに仕掛けてきてるんだから、こっちも明白な迎撃じゃないほうがいいかもしれないね。
たとえば「へぇ」しか言わない、とか。
「ベルツリーさんって真面目ですよね」「へぇ」「私って不真面目じゃないですか」「へぇ」、さらにしつこく食い下がってくるようなら「へぇー、そこまで自分で言うなら、そうなんじゃない?」……ここまで来ればさすがに、こっちもちょっとイラッときてるってわかるだろ!
自分なら実際どうするか考えてみても、さっき触れた前の相談のときも言ったけど、ぶっちゃけこっちもわりとどうでもいいと思ってるような人とのコミュニケーションに、なんにせよそこまで労力を割かなくていいかな、というのもあり……、要は、精神的にも物理的にも彼らとの日々の「接地面積」、ひいては摩擦係数をできるだけ減らしていく方向、というか。
その意味でも「へぇ」はまぁ、アリなほうかな。
ただ、ベルツリーさんがサラッとそういうふうに考えられないのは、「真面目と言われがちな自分に対するコンプレックス」もたしかにあるから、なわけですよね。
だとしたらやっぱり、さっき言った「内心、徹底して先方をバカにする」作戦、有効というか、なんなら必要なプロセスなのかもしれない。
こばなみ:
絡んでくるのは興味があるから?
宇多丸:
残念ながらまったくそうではないと思います。
こっちをちゃんと理解する気なんかホントはまるでないからこそ、そんな浅はかなレッテルを平気で貼って済ませられるわけで、さっきも言ったように、あるのは幼児的な自己顕示欲だけですよ。
こばなみ:
自分で情けないなぁとか思わないんですかね。
宇多丸:
なんかしゃべる前に、ちょっとだけでもそんな客観性が持てればいいのにね。
ま、いい歳してそれができない人だから、言っちゃえばこんなことでうっすら嫌われてるわけで……、その人、十中八九ほかのまともな同僚からも、普通にウザがられてると思うよ。
とにかく、言っちゃえば人のことをナメくさってるからそんなことをペラペラ口に出せるわけで、ちょっとでもこっちがピリッとした空気を出すだけで、ぜんぜんすぐビビっちゃうんじゃないかな、とも思いますけど。
たとえば、さっき言った「へぇ」連発の果てにあちらが明らかに不満げな様子でも見せてきたら、「じゃあ、なんて言ってほしいんですか?」「あなたが言ってほしいように言いますけど……、真面目なんで」とでも返しておけば、相当な迎撃力のアピールにはなりますよね。
こばなみ:
返された瞬間に、しゃべってる自分がバカみたいに感じて恥ずかしくなってきますよね……。
宇多丸:
自然にそう感じて、そのくだらなさに自分で気づいてくれればいいんですけどね。
まぁおそらくは、ただ単にムッとするだけなんでしょうけど。
ちなみに僕はやっぱり、相手に逃げ場を与えないような詰め方ばっかり、大喜利的にいくつも思いついちゃうなぁ……。
もちろん本当にこれをやっちゃうのはよくないし、実際ベルツリーさんがちょっと突っ込み返したら逃げちゃう程度の人たちだから、あくまで想像して溜飲を下げる意味で、もうちょっと続けますと……。
「“私は不真面目だから”……、なんでしたっけ? だからカッコいい、という話なのか、だからダメなんだ、ということなのか、ちょっと聞き逃しちゃって……、私は真面目なんで、ぜひ教えてほしいなぁ~」
「後者なら、大人なんだからちゃんとしましょうよ、ってことに尽きるわけですけど……、誰かに叱ってほしい、みたいなことですかね?」
「前者だとしたら……、私は不良でカッコいい、みたいなこと? 岩城滉一みたいだろ、ってことですか?」
こばなみ:
なんで岩城滉一?
宇多丸:
いや、不良でカッコいいと言えば、と思って(笑)。
女性だったら誰なんだろうね。不真面目でカッコいい……、あ! YOUさんだ!
「YOUさんのラインを狙ってるんですか?」
こばなみ:
むちゃくちゃ恥ずかしくなってきました……!
宇多丸:
「私、真面目で堅物なんで、正直おっしゃってることまるでピンと来てなくてすみません!……へぇ~、YOUさんねぇ~……」ってね。
今回のこれに限らず、「○○じゃないですか」論法もそうだけど、なんかその、最初から自分に都合がいい前提でふんわり話を持っていこうとしてる人には、根掘り葉掘り行くのがやっぱり、いちばんてきめんに効くもので。
ちょっとすみません私よくわかんないんだけど、どういう意味ですか? 正確には? 具体的には?と、相手の言ったことの曖昧なところを突いてゆくという、はっきり言えば口ゲンカのテクニックですね。
当然、日常的に濫用すると間違いなく嫌われるので注意!だけど……。
ベルツリーさんのまわりの人も、たしかに答えに窮するようなところを突かれたからこそ、めんどくさい、としか言えなくなってしまったわけで。
反撃として、実はやはりなかなか有効だったということですよ。
さらにそこから追撃することも、可能ではあったでしょうけどね。
「いや、そっちが言い出したことなんで、面倒臭いのはこっちなんですけど? 発言に責任取れないなら口閉じててくれます?」……言いてぇー!
あとは、「真面目って……、『男はつらいよ』で言うと、さくらとか博とか? あのなかでは真面目ですもんね。で、寅さんは不真面目……、あ、つまりご自身は寅さん的だと思われている?」とか(笑)。
いくらでもできんな、これ。
こばなみ:
すみませんでした、不真面目じゃないです、もういいです、その話……、やめたいです……、勘弁して……(泣)ってなりますよ。
宇多丸:
ただまぁ、何度も言うように、これをホントにやったらちょっと過剰防衛というか(笑)、必要以上に波風が立って余計に厄介が増すことにもなりますので。
現実にはやはり、要は「自分のなかで相手の存在を可能な限り最小にする」という考え方をベースに、必要なら「へぇ」戦法など最低限の牽制は入れつつ、なにしろ心の平穏を守る、というのを第一義にしていただきたいなと。
そして、真面目と評されがちなお人柄、引け目に感じる必要はまったくないどころか、ストレートに誇っていいことだと思う、というのも最後に改めて強調しておきたいあたりですね。
「真面目/不真面目」を、「誠実/不誠実」と言い換えてみるとわかりやすいかもしれない。
不誠実は、威張るようなことじゃないでしょ!
見てる人は見てますから。その差はいずれ、はっきり出てくると思いますよ。
こばなみ:
という感じで、ベルツリーさん、少しでも前向きになっていただけたらよいのですが、いかがでしょうか?