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口は出すが自分では何もやらない上司! 仕事を教えてくれないので効率が悪いったらありません!!【ライムスター宇多丸のお悩み相談室388】


✳️今週のお悩み✳️
上司が仕事を教えてくれないのが悩みです。
私は4月に部署が変わりました。私がついている上司(50代のおじさん)は、質問をすると不機嫌になり、少しだけは教えてくれます。ですがあとは自分で調べるように、という態度で、おそらく私を育てている気分なのだと思いますが、効率が悪いったらありません。また、いろいろ口は出してきます。でも自分では何もやりません。つまり2つのことで私は日々、怒っています。
・まずは業務の一通りを教えてから、それから考えさせるのが教育ではないか?
・口で言うのは誰でもできる。仕事とは実施してこそ、ではないか?
わかってんのかクソジジイ!!!と叫びたくなってしまうのですが、社歴も長いし、一応上司ですし、そんなことは言えません。でも、少しでもやり方を変えてくれれば、もっと成果が上げられると思うし、それは部全体にもいいことだと思うのですが……。もっと上の人に言おうとも思ったのですが、上司は信頼されているので(上の人には愛想がいい)、異動してきたばかりの私の話なんて聞いてくれないと思い諦め気味です。元いた部署の人たちに文句を言って憂さ晴らしをしていますが、全然スッキリしないし、出口のないトンネルです。次の部署異動を待つしかないのでしょうか。ちなみに仕事の内容は嫌いではないのです。宇多丸さんだったら、どう気持ちを切りかえますか?
(ぐーたん・42歳・会社員・埼玉県)


宇多丸:
言うまでもなく、おじさんの言動がはっきりハラスメント!というレベルなら、迷うことなく然るべきところにガンガン訴え出ていいわけですけど……、一応ここでは、そこまでではない、という仮定のもとで話を進めさせていただきますね。

まずはこばなみ、会社員として人に教えることも人から教わることも両方あったと思いますが、ぐーたんさんみたいなことになった場合はどうします?

こばなみ:
これ、考えていたんですけども、私だったら「質問のスタイルを切り替える」とかですかね。

もしかしたらもうぐーたんさん、やっているのかもしれないですが、今よりも少しおじさん上司を詰める質問にするというか。

たとえば何か解決法を知りたい場合とかだったら、「AとBという方法を考えまして、Aのメリット・デメリットはこう、Bのはこう、なので私はAだと思うのですが、いかがでしょうか?」みたいな、答えざるをえない質問の仕方にしてみるとか。

もうちょっとこの上司とやり合えるような準備をするっていうんですかね。

職種にもよりますけど、ぐーたんさんの年齢から考えるに、部署としての経験は浅いにせよ、社会人としてのキャリアは積んでそうなので、そんな感じでいけないですかね?とは思ったのですが。

宇多丸:
なるほどね。アプローチを変える、と。

しかしそのおじさん、業務の基本的なところさえ、ちゃんと教えてくれてない感じだもんね。

そりゃ困っちゃうよな。

こばなみ:
前任者からの引き継ぎとかもあんまりなかったんですかね。

そのうえ、教え方が背中を見ておぼえろって感じなのかな……。

宇多丸:
とはいえ、少なくとも現時点ではどうやら、このおじさん上司に食らいついてゆく以外、仕事をおぼえる道はないっぽいもんね。

ゆえにやっぱり、まずはさっきこばなみが言ったように、おじさんが答えるしかないような質問の仕方なりなんなりを工夫してく、ってことになるんですかね。

おじさん側が自然に変化してくれるはずもないわけだしね。

こういうのって実は、上司に限らない話でもありますよね。

部下とか取り引き先とか、要はあんまりこっちの思うように反応してくれない人が仕事相手になってしまう可能性というのは、常にあるわけじゃないですか。

だからって、その度にただ腐っててもしょうがないわけじゃん。社会ってそういうもんなんだから。

クソなヤツ合わないヤツ使えないヤツはどこにでもいるという前提で、いかに自分のダメージを最小にできるか?を意識しながら生きてかないと、ひたすら削られてゆくばかりなのは確かですよね。

こばなみ:
ただこれ、ぐーたんさんは仕事の内容は嫌いではないっていうのは良かったですね。

何かそうやって努力しているうちに、仕事のスキルアップもできていきそうな感じもする。

宇多丸:
そうだね。

その意味では、どれだけおじさんに嫌な顔されようが、いったん仕事をおぼえちゃえばこっちのもの!という考え方をする余地もあるのかもしれないですよね。

コイツからの卒業を早めるためにこそ、今だけ覚悟決めてコイツに向き合ってやる、的なモードに自分を持ってゆく、というか。

あと、ちょっと俯瞰的に考えてみると、教えるスキルやモチベーションが低いこと自体も、いちがいにおじさんの責任ばかりとも言えないところはあるかもしれないし……。

要は、そういうのがきちんとシステム化されてないことがそもそもの問題、つまり元はと言えば会社が悪い、とも言えるわけだから。

向こうにしてみたら、通常の業務でさえいっぱいいっぱいなのに、プラスアルファで教育係とか、聞いてないよー!って感じなのかもしれないし……。

ひょっとしたら、エネルギーをこちらに割く余裕がないのにも、何か深刻な理由があるのかもしれないよ? それこそ、目下ご家族がご病気だとか。もちろん、立場的にその責任があるんだから仕方ないだろ!というのは、当然の前提としてもね。

いずれにせよ、向こうも人間なんだから、態度を軟化させたければこちらもそういうアプローチをするしかないわけで……。

たとえばさ、なんかのついでに簡単なお土産でも買ってって、「まだしばらくお手間かけることになると思いますが、引き続きご指導のほど、よろしくお願いいたしますー」とかなんとか、あっちもそうそう冷たくはしづらくなるようなことでも言っとけば、ちょっとは違ってきたりするんじゃない?

いっそ「師匠!」とでも呼んであげればいいよ(笑)。

表面的にはどういうリアクションが返ってこようと、案外まんざらでもなかったりするんじゃないかな。

こばなみ:
たしかに、そういうのはちょっといいかもしれないですね。

今のぐーたんさんのテンションだと、このクソジジイ!!!感が出ちゃってる可能性もあるかも。

宇多丸:
仮にもし、それでさらにお互い悪印象を深めるばかり、という悪循環に陥ってるのだとしたら、やはりその流れは意識的に変えてゆこうとしないと、事態は好転しようもないですもんね。

ちなみに、さらにその上の上司にかけあってみる、というのだって、どの時点でもまったく遠慮することなどない、至極真っ当な選択肢だろうと僕は思いますけど、それをぐーたんさんに躊躇させているのもまた、おじさんに対する悪印象、不信感なわけですよね。

あいつ、上には可愛がられてるからな、と。要は、ゴマスリ野郎的なイメージですよね。

でもさ、特に目上の人に可愛がられるタイプ、っていうのも確かに世の中には一定量いて、そのことそのものが悪いことというわけでは、別にないわけじゃん?

むしろ、人としてのチャームがないわけではない、ということの証明とも考えられるわけで。

ま、それがまた腹立たしい、というのもわかるけど……。

こばなみ:
おじさん上司が嫌な気持ちはわかりますけど、いったんその感情を横に置いといて、なんとかいいところを発見しながら、接していけないですかね。それも仕事だと思って。

宇多丸:
「内心嫌々何かをやる」ってことほど、絶対にいい結果を生まない姿勢もないしね。

なのでとにかく、「おじさんにはおじさんなりの事情や考え方がある」ということは頭の片隅に置きつつ……、てか、ホントはそれを本人に直接聞いてみて、お互いビジョンのすり合わせができるなら、それに越したことはないんですけどね。

そういう正面突破は難しいとか面倒だということであれば、やっぱりここまで話してきたように、おじさんをできるだけうまく……、すなわち比較的低いコストで、外側から「ハンドリングする」方法を考えてみようよ、ということに尽きるんじゃないですかね。

それこそ、機嫌よく相手してもらうためにかたちだけでも頭を下げる、的なことだって、立派に自分のための知恵のうちだろう、と僕は思うし。

なんなら教えてもらう側としての、礼儀でさえあるかもしれないわけだから。

それに、別にそいつと、永遠に一緒にいるわけじゃないんだからさ。

今だけだ!と思えば気も楽になりませんかね。

こばなみ:
そうですよね! そう思うとホッとします~。

宇多丸:
一般論で言えば、こっちがネガティブに思っていれば、当然向こうからも嫌なものが返ってくる確率は高まるし、逆に、明らかに自分に好意を持って接してくれてる人には、できればここから先も嫌われたくない、という心理が働くのが人情というもので。

だからやはり、あまり悪い方向に決めつけて人と接さないほうがいいのは間違いないと思います。特に仕事などで、互いに相手を選べないときはなおさら。

ただまぁ、この前も言ったように、それでも嫌いなもんは嫌い!が出てきてしまうのが人間というものでもあるからねぇ。

あんまり無理してそれを抑え込んでしまうというのも、精神衛生上よくないでしょうし。

もちろん、本気でキツいようなら、早めに上に状況改善を直訴する、ということでいいとも思いますよ。

なんにせよ今回は全体に、ぐーたんさん的にはあんまり、すっきり溜飲が下がるような答えじゃなかったかもしれないから、そこは申し訳ないけど……、とりあえず第三者の我々が現時点の情報から言えることは、やはりこんな感じになりますかね。

こばなみ:
おじさん上司に限らず、働くうえでのコミュニケーションはホントに普遍的な問題ですよね。なもんで、ぐーたんさんの気持ち、わかるし、みんな多かれ少なかれ、抱えている問題だと思います。自分を消耗しすぎちゃうことだけは気をつけつつ、出口のないトンネルはないはずだから! 応援していますので、一緒にがんばって働いていきましょう!!


【今週のお絵描き】

画・宇多丸




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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

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女子部JAPAN こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。



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