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2年間、体の関係はあるけれど、付き合っているかはハッキリしていない彼。本当は付き合ってパートナーになりたい! だけど伝える勇気が出なくて……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室398】


✳️今週のお悩み✳️
私には付き合っているのか付き合っていないのかはハッキリしていない相手がいます(体の関係はあります)。もう2年くらいそんな関係で、周囲にはちゃんと関係をハッキリさせるべきだなど、いろいろと言われますが、私としてはまあこれも楽なのでいいかという感じなので、そのまま会いたいときに会って、のようなペースで過ごしています。
なのですがここへきて彼に女性の影が見えてきました。よくスマホを見ているのでどうしたんだろうと思っていたんです。ふと彼がトイレかなにかに行ったときに、スマホにLINEがきているのが見えてしまいました。女性の名前で、親しげな感じ、直感でこれは友達ではない関係だとさとりました。ですが私は付き合っているわけではないので、それを詮索したり、やめてと言ったりすることはできないと思います。そんなことを考えていたら、私は彼のことが好きで、本当は付き合ってパートナーになりたいという気持ちがあることに気づきました。ただ今からどうすればいいのか。きっかけもきっかけですし、どう説明したらいいのかわからないのと、このドライな関係を彼が気に入っているなら、パートナーになることは嫌だと言われて、会えなくなってしまう可能性もあるんじゃないだろうか、など考えると行動に踏み出せません。
ただこんな状態は精神衛生上、あまり良くないのだとは感じています。ですが勇気を出して話すのがいいとは思いながらも勇気が出ません。宇多丸さん、こんな私にアドバイスをお願いできないでしょうか。そして宇多丸さんが彼の立場だったら、どんな反応をすると思いますか?
(しかじか・38歳・東京都)


こばなみ:
「本当は付き合ってパートナーになりたいのだという気持ちがあることに気づきました」って、冷静だけど素直な方ですね。

宇多丸:
世間的な正しさとか体面とかとは関係ない、純粋な感情を自分のなかにあらためて発見した、という話だもんね。とても胸打たれました。

で、僕なりにいろいろ考えてみたけども。

とりあえず出してみた結論は、やはり……、今の関係性が崩れてしまうリスクはたしかにあったとしても、それだってこれからずっと続くという保証なんかどこにもないわけで、だとしたら結局のところ、いつかはこちらの思いをしっかり伝えるしかないんじゃないか、そのほうがなんにせよ後悔が少ない選択なんじゃないかという気が、僕はしますね。

こばなみ:
このままだと、精神衛生上にも良くないって書かれていますもんね。

宇多丸:
ねぇ。

それに彼だって、ここまで継続して会ってきたしかじかさんを、そんなどうでもいい存在だとは、絶対考えていないはずだろうと思うんですよね。

ほかの女性の影が見え隠れしているというのも、彼はそれをしかじかさんが知ってること自体を、知らないわけだから。

つまり、しかじかさんの感情などおかまいなしでこれ見よがしに遊びまくっている、というのでもないわけでしょ?

なので、これは希望的観測かもしれないけど、しかじかさんがそこまで自分のことを思ってくれてるんだということを知れば、彼の気持ちだって、まったく動かないということはありえないんじゃないか、とも思うんですけどね。

逆にさ、一番最悪の結末はなにか、というのを考えてみれば、それはやっぱり、ホントのことはなにも伝えられないまま、単にライトに別の人に乗り換えられてしまう、ってことじゃない?

こばなみ:
だんだん連絡も来なくなって、会わなくなって自然消滅とか、なんか聞いたこともあるような話ですしね。ううっ。

宇多丸:
そういうのと、ちゃんとホントの気持ちを伝えたうえでどうなるかとは、ぜんぜん違うものだと思うんですよ。

「本当に、好きでした……」って言ってくれた人とそうでない人、残るものの差はめちゃくちゃデカいと思いません?

こばなみ:
なんかじわっとくる……。

宇多丸:
曲がりなりにも2年も浅からぬ関係だった相手なんだし、間違いなくそれなりの情もないわけない、はずだと思うんですけどねぇ……。

こばなみ:
私も言うかなぁ。

気持ちを抑えられなくなってしまいそうっていうのと、モヤモヤをそんなに長く抱えきれなくなりそうで……。

だし、やっぱりさっき宇多丸さんが言ってた、なにもしないで乗り換えられるのはもっと辛い。

宇多丸:
ひとつだけ、ほぼ確実なことがあるとしたら、しかじかさんが真剣な気持ちを伝えれば、そのぶん彼のなかでのしかじかさんの存在も、その重みに比例してどうしたって大きくなる、ということじゃないですかね。

もちろん、それゆえにこそ、じゃあここでお別れしましょう、となってしまう可能性も、ゼロではないわけだけど……。

いっぽうで、ハタから見てフワフワした関係だろうとなんだろうと、当人同士が満足なら、それでぜんぜんいいっちゃいいわけで。

なんでもかんでも白黒つけるべき、なんてことが言いたいわけじゃ、僕も当然なくて。

要は、ぼんやりしたかたちでもいいからとにかくこのままずっと会い続けたいのか、それとも、リスクを取ってでも彼のなかに深い爪痕を残したいのか……。

ただ、前者にしても、さっき言ったように「このままずっと」行けるなんて保証は、別にどこにもないわけだけど。

そんな感じで、ここから先はもう、しかじかさんが決めることだからね。

どんな選択をしようと、僕らが異を唱える権利は、ない領域ですから。

ちなみにさ、「周囲にはちゃんと関係をハッキリさせるべきだなど、いろいろと言われますが」ってあるけど、こういうときにそうやって、上から目線のわかりきった説教してくるような人も、僕は苦手ですね。

一般に、こっちがいくら真剣に相談してたって、そんな恋バナなんてね、まわりの他人にしてみりゃ、格好の酒のつまみでしかないですから!

言ってる本人が気持ち良くなるだけの無責任なアドバイスだの忠告だのを、クドクド聞かされるだけなのがオチですよ。

こばなみ:
たしかに飲み屋での恋愛アドバイスほど適当なものはないですね……。

宇多丸:
前にも言ったかもだけど、人間誰しも、「間違う権利もある」んだから。

ほかの誰のものでもないその人固有の人生というのは、それを通じてこそ、形成されてゆくものなので。

その意味で僕は、結果がどうなろうと、しかじかさんはすでに、とても重要な、素敵な経験をされたんだと思うんです。

だってこれ、彼が実際のところどう考えているかはわからないけども、少なくとも二人のこの2年間の関係から、より豊かな、より実りあるものを受けとったのは、明らかにしかじかさんのほうだった、ってことじゃないですか。

大事なのはむしろそこだと、僕は思いますけどね。

まぁその彼も、たとえ正式に付き合ってはいないにしても、バレバレのLINEを見える状態で置いとくとか、現状かなり迂闊かつ失礼ではありますよね。

こばなみ:
スマホは裏返しておこうよ……と思ったけど。

宇多丸:
こっちも最初から疑心暗鬼になってたわけじゃないのに、余計なもん見せやがって……、要は、ナメくさってやがるんですよね。

そんな彼の目がこの機会に覚めるのかどうかはわからないけども、僕としてはやはり、より長い人生のスパンを視野に入れつつ、しかじかさん自身が「あとから振り返ってより思い残しがないほう」の選択をしていただきたいな、と思いますね。

こばなみ:
いざっていうときに勇気が出ない、というのは非常によくわかります! でも気持ちを伝える場合は、後悔するよりは……という思いと比較しながら、なんとか勇気を振り絞ることができるといいですね。応援しております!



【今週のお絵描き】

画・宇多丸




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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

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女子部JAPAN こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。



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