緊張するあまり無愛想な態度をとってしまい、振られてしまう。こんな自分を変えるには?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室35】
✳️今週のお悩み✳️
付き合うたびに、時が経っても相手に緊張し続けて、それが最終的に気持ち悪いと思われて振られます。好きだからどきどきしてしまって、無愛想な態度をとってしまうのも自分が一番嫌なのに、繰り返してしまっては、「いい加減にしてくれ」と思わせてしまっています。こんな私が変われるための一言をお願いします。
(湯・23歳・愛媛県)
宇多丸:
好意がある相手に限って緊張しちゃって、不自然な態度を取ってしまう……僕もそういうところちょっとあるから、気持ちはわかりますよ。
まずこれ、その「好意があるからこそ」っていう部分が、相手にちゃんと伝わってるかどうかですよね。たぶん、そうじゃないからこそ「いい加減にしてくれ」ってことになってるんじゃないかと思うんだけど。
こばなみ:
でもこれって、その状態を伝えるのって、難しくないですか?
宇多丸:
いやだから、キョドリキョドリしながらでもいいから、ってことですよ。
「無愛想に見えるかもしれないけど、それは単にあなたが好きすぎて緊張しているからです」って、できるだけお付き合いを始めてすぐに伝えておくのが一番じゃないかなぁ。
あと、日頃からまわりの友達とかにも、そういうケがあるっていうのを言っておいたほうがいいかもね。そうすると、何かにつけて「湯ちゃんって感じ悪く見えるかもしれないけど、あれ単に緊張してんのよ!」とかフォローしてくれたりするかもしれないし。
とにかくそうやって、「悪気はない」ってことをちゃんと伝えておけば済む話じゃない? 悪気がないってわかってる人を非難したりは、ふつうあんまりしないと思うんだけど。 ……うーん、まぁでも確かに、付き合いたてならともかく、結構時間も経って関係も進んでるはずなのにまだそんな調子が続いてたりすると、いい加減「おまえ、いつまで緊張してるんだよ!」って言いたくなることもありうるか……。
こばなみ:
そう。これ難しい問題ですよ。
宇多丸:
仕事とかでも、「おい! もういいかげん慣れろよ!!」って人いる?
こばなみ:
いるし、ほかにも人と話すのが苦手なのか、めちゃくちゃ無愛想な人もいますよ。本人に言わせるとそういうつもりはないらしいけど、印象はあまりよくないですよね。ぶっきらぼうっていうか、言い方がキツいっていうか。でも悪気はないそう。
宇多丸:
でもそれは、湯さんの場合とちょっと違くない? そっちは、言っちゃえば広い意味での「無神経」の部類じゃんよ。
こばなみ:
緊張とは違うか……。
宇多丸:
ぶっきらぼうはぶっきらぼうで結構いるよね。たとえばウチのMummy-Dとか。すげぇぶっきらぼうに見えるときがあるんだけど、8割方、実は単にボーッとしてるだけっていう(笑)。
その意味で言うと、湯さんは逆に、いろいろ気にしすぎる結果として無愛想に見えちゃってるわけだからさ。 ちょっと話はずれるけど、以前、のんびりやさんとせっかちさんのカップルの回があったでしょ。あのとき僕は、せっかち人間サイドから1つお願いしたいこととして、いま「何待ち」なのかだけはハッキリさせて欲しい、って言いましたよね。
これ、待ち合わせとかでもそうなんですよ。別に10分だろうが1時間だろうが、待つこと自体はそんなに嫌じゃないんです。 ただ、これこれこういう理由でどのくらい遅れそうです、というのを先に伝えてくれてさえいれば。なんならもっと余裕を持った時間に設定し直したっていいしさ。そしたら、それまでの時間を自分なりに有効に使うこともできるわけじゃん? でもそうじゃなくて、今くるか、今くるかって状態のまま待たされるのが、本当に我慢ならないんですよ!
こばなみ:
だから湯さんも理由を言ってくれればってこと?
宇多丸:
そういうこと。
だから、がんばって伝えようか!
たどたどしい言葉でもいいから!
それこそ初デートのときに、喫茶店かなんかで席に着いたときに、「あの、最初にお断りしておきたいのですが、今日もし私が無愛想に見えたとしても、それは悪気があるわけではなく、あなたに好意がありすぎて緊張しているだけなので、許してください」って言う。
そしたらたぶん彼も「かわいいな」って思うよ。
こばなみ:
でもやっぱり「いつまで緊張してんだよ!」って言われることもあるのでは? どのくらいの期間なのかわからないけど、2年間まるっとそんな感じだとしたらどうですか?
宇多丸:
でも逆に、そこまでいったら彼のほうだって、それが湯さんという人間なんだってことをいい加減わかってやれよ。って話にもならない?
どうしたってキョドってしまう人っているんですよ。俺の知り合いでもいるよ。 Full Of HarmonyのHIRO、ソロ名義MIHIRO(マイロ)ってやつがまさにそうで……(笑)。 知り合ってからずいぶん経つし、散々一緒に仕事もしてるのに、やっぱり会う度にキョドってる。 でも、それがかわいいんだよ!
こばなみ:
そういう湯さんを理解して、かわいいなって思ってくれる人と付き合った方がいいですよね?
宇多丸:
たとえばさ、病気だからこれこれこういうことはできないって何度も伝えてるのに、ずっと「何でできないんだよ!」って文句言ってくるような人とは、そもそも付き合えないよね。
要は、「緊張しぃ」って、それ自体が「悪い」ってことじゃないじゃん。
そのせいであまり芳しくない結果を招きがちだったりはするかもしれないけど、緊張しがちな性格そのものが「悪い」ってわけじゃない。それを責める人がいるとしたら、その人のほうがおかしいよ。
だから、臆せず伝えればいいんだと思うよ。 その上で、それを受け入れてくれる人と付き合えばいい、っていうか、そういう相手をこそ湯さんは探すべきなんだよね、きっと。 あと、湯さんみたいなタイプは、相手の態度とかお構いなしに、常にペラペラ喋り続けているような人と付き合うといいかもしれない。湯さんは話を聞いていればいいだけだから、キョドリも無愛想も関係なくなりますよ!
ちなみに僕も、家にいるときは、ふんふんふん、ふーん、って、ずーっと奥さんの話を聞いてますよ。
こばなみ:
奥さんはお喋りなタイプなんですか?
宇多丸:
うん。ずーっと喋ってる。ずーっと。これは本人も認めてることけど、本当にどーでもいいことをずーっと喋ってる(笑)
。僕は聞いてるだけで、ほとんど喋らない。この僕がですよ? でも、それが楽っていうか。
おしゃべりな人と付き合うの、オススメですよ!
こばなみ:
お喋りなメンズか……。あんまり周りにいないな……。
宇多丸:
つまりさ、心地いいなって思えるかどうかってことでしょ。
そういう意味では、湯さんはまだ23歳だし、本当にバイブスが合う人とはまだ出会っていない可能性もあるよね。
逆にくーーーーそ、のんびりした人とかどうですか? いい湯加減で湯さんのキョドリを受け流してくれる人だって、どこかにはきっといますよ。 だって23歳って、この間まで10代ってことだもんね。 10代同士のカップルなんて、別に湯さんみたいな性格じゃなくても、常にギクシャクしちゃってるもんですよ。お互い未熟者なんだから。 だから、湯さんは自分特有の問題と思ってるけど、案外みんなそんなもんかもしれないよ? 僕だって23歳なんていったら、全面的にギックシャックしまくりでしたよ!
こばなみ:
思い出してみればそうですよね。
宇多丸:
それとさ、「気持ち悪いと思われて」って言ってるけど、これ本当にそうなのかな?
もし彼が具体的にその通りの言葉を口に出したならともかく、そうじゃないんなら、ひょっとしたら湯さんがそう思い込んでるだけで、彼は別に「気持ち悪い」とか「いい加減にしてくれ」とは思ってない、ってことも考えられると思うけどな。
さっき言ったように、単にお互い若いからギクシャクしてるだけ、それを湯さんが自分のせいだと思い込んでるだけ、かもしれないよ?
こばなみ:
「気持ち悪い」とは、なかなか思わないですよね。
宇多丸:
直接「お前、気持ち悪いぞ!」って言われたわけじゃないのに、勝手な類推にどんどん頭が引っ張られちゃって、悪い方向にしか物事が考えられなくなってゆく。気持ちとしては確かによくわかるんですよ。
でもね、それはみんな、お互いさまの話。 僕だって10代の頃はさ、女の子にバカにされてないか、キモく思われてないかを気にするあまり、たとえばようやくデートにこぎつけたとしても、帰ってからどんどん「オレ、今日、やっちまった……(泣)」って自己嫌悪モードに入っちゃって、勝手に気まずくなったあげく、その後はなんだか連絡しづらくなって自然消滅、とかさんざん繰り返してますよ! いま考えれば、相手だってそう思ってたかもしれないのにね。
こばなみ:
たしかに、気にしすぎてうまくいかないってありますね。
宇多丸:
おそらく湯さんは、全面的に自分を受け入れてもらった経験を、まだしてないんだと思う。一度でもそういう相手にめぐり会えれば、自信もついてくると思うんですけどね。
繰り返しになりますが、「緊張しぃ」自体は、気持ち悪いことでもなんでもない。僕から言わせれば、無神経な人よりよっぽどいいよ!
ただ逆に、真意をきちんと伝えておかないと、端から見れば単なる無神経な人と大差ない印象を与えかねないので要注意です。
こばなみ:
ファイトー!
宇多丸:
でも湯さんはさ、いずれそういう「自分を全面的に受け入れてくれる人」に出会えたとしたら、これまでの反動で、そのカタルシスもハンパじゃないだろうね。
だからこそ! もう一点、そこで気をつけたほうがいいことを付け加えておくと、湯さんは自己評価が低めだから、「私なんかを受け入れてくれるのは、この人しかいない!」などと思い込んでしまうかもしれない。
こばなみ:
あああ~。この展開、まさかの……。
宇多丸:
で、端からみると「なんであんな男と付き合ってるの?」みたいな関係をズルズル続けてしまったり……それこそDV男とかね。
本人的には「私のことを本当にわかってくれるのは、あの人しかいない!」と切実に思ってたりするんだろうけど……、
んなことあるかーい! あなた、そんな特別な人間かーい!
「緊張しぃ」なんて、さっきから言ってるようにキモくもなんともない、ふつうの人間の一面でしかないんだから。だとしたら、それを「受け入れてくれる」のだって、そんなに特別な話じゃないってことだよ。
ちなみに「特別」といえば、理想の相手を探すのが本当に大変だろうなっていうのは、たとえば本気のスカトロ趣味の人とか……たとえ好きな人ができたとしても、「スカトロ好きです! あなたは?」とは、なかなか言えないじゃん。だから。内心辛い思いしてる人も結構いると思うんだよね。 まぁ、今はインターネットがあるから、まだ同好の士を見つけやすくなってるかもしれないけどさ。
こばなみ:
性格よりも性癖のほうが大変そうですね。
宇多丸:
性格は意識的に変えていける部分もあるけど、性癖って、本質的に自分ではどうにもできないものだからねぇ。
それに比べれば「緊張しぃ」なんて、どんだけ普通の話なんだって!
結論:
「緊張しぃ」自体が「悪い」ことじゃない。
「好意があるから」こそ「無愛想」になってしまうことを
がんばって相手に伝えてみよう。
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2014年3月15日に公開したものを再編集し、掲載しています。