苦手な人からの誘いを断れず、ダブルブッキング→ドタキャンをして嫌われてしまいます……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室129】
✳️今週のお悩み✳️
生まれて20年間、自分がイエスマンなのが1番の悩みです。苦手な人も結構多いのですが、断ることが苦手なので、苦手な人なのに遊びの約束をしてしまったりすることが多いです。LINEや文面上での誘いなら断れるのですが、直接誘われるとつい「いいね」とか「私もそう思ってた」など、都合のいいことを言ってしまいます。遊びの約束くらいなら、自分が我慢すればいい話なのですが……、私の場合ダブルブッキングしてしまうことが多いです。なんとかして誘われたら誘われた分だけ返そうと思ってしまいます。嫌われたくなくてどちらにもOKと言ってしまうのに、結局無理でドタキャンして嫌われてしまいます。こんな自分が嫌いなのですが、どうしてもうまく断ることができません。どーすれば改善されると思いますか?
(えり・20歳・神奈川県)
宇多丸:
うるさいこと言えば、「イエスマン」って言葉の使い方がちょっと違う気がするけどね。
本来は、立場の強い人に同調してばっかりの取り巻き、ってことでしょ。権力構造の話なんだよね。
それに対してえりさんが言ってるのは、どっちかって言うとジム・キャリー主演の映画『イエスマン “YES”は人生のパスワード』に近いニュアンスだよね。 あれはもちろん、最終的にはポジティブな結果につながっていく「なんでも“イエス”」スタンスだったわけだけど……。
今回の相談は、ひとことで言えば、「安請け合い」の話ですよね。
だったら僕も気持ちはよくわかりますよ。 すっごい安請け合い魔だもん(笑)。
こばなみ:
え!? ホントですか?
宇多丸:
僕の場合、やはり仕事だよね。
たとえば、ホントはあんまり気乗りしないような依頼も、特にやっぱり面と向かって口説かれたりすると、まずは相手にいい顔したくなっちゃうというか、嫌な思いをさせたくなくて、ついついその場で「やりますよ」って方向で話を進め出してしまう、とか。
で、 冷静に考えれば、分量が自分のキャパを超えてたり、モチベーションがしっかり持ててない状態だったりするのに、その場の勢いで安易に承諾してしまったせい で、〆切が守れなかったり、イマイチな出来に終わったり、結果として先方にも迷惑をかけることに……的なパターン、昔はちょいちょいありましたよ。 今だって、もちろん最終的にやるべきことはきっちりやるけれども、内心「この件、なんで受けちゃったんだろう……(泣)」って後悔してるケースは、ぶっちゃけゼロじゃないですよね。
それでも、ちょっとキレイなこと言えば、そうやって最初は渋々とりかかったような仕事でも、手を抜かないで全力で当たれば、必ず何か、やって良かったと思えるようなものが残るもんではありますけどね。
これ、飲みのお誘いとかもそうだよな~。 家を出る前は正直ちょっぴりめんどくせぇなぁとか思ってたとしても、行ったら行ったで、絶対それなりに楽しいんだよなぁ。 それはわかってるんだけど、実際に腰を上げるまでがね……。
こばなみ:
そうか。たしかに私も「飲み行きましょう」って言われて「行きましょう~!」とは、すぐ言っちゃいますわ。予定がパンパンになるまで入れちゃったり、なかなか実現できず口だけになってしまったり……。
まぁでも、苦手な人だったら……、なんらか理由をつくって断ったり、まぁサクッと行っちゃったり、しますかね。
ちなみに苦手な相手の誘いに対する断り方を女子部員に聞いたところ、「予定がある」「体調が悪い」「仕事が入った」などが主だったものでしたが、なかには
「ハッキリ行きたくない事を伝える。そうすればもう誘われない(笑)」
「ドタキャンして、相手に「ドタキャンする子」っていうイメージを焼きつける」
「無視」
なんて意見も!
宇多丸:
えりさんも僕も、安請け合い癖のベースには、目の前の人の表情が曇るのを見たくないっていう、一種の気遣いみたいな心情があるのはたしかだろうと思うんですよ。
さすがに「私もそう思ってた」とまで同調しちゃうのは重症って気がするけど……。
とにかく、元はと言えば人に嫌な思いをさせまいという気持ちから取った言動のはずなのに、そのせいでダブルブッキングだのドタキャンだの、結果的に余計ひど い仕打ちをすることになっちゃってるっていうのは、本末転倒もいいところだからさ。早めに改善したほうがいいのは間違いない。
基本的なことなんだけど、友達と約束したりする前に、スケジュール確認しないのかな?
こばなみ:
予定が入っていても、新たなお誘いがあると断れないから、ダブルブッキングしちゃうってことでしょうか。
もしそうだったら、「先約があるんでその日はダメで~」と言えばいいと思うのですが。
宇多丸:
普通はそうするけどね。
用事があるって断って、嫌われるなんてことあるの?
こばなみ:
ないと思いますけどね。
それと、苦手な人には最悪嫌われてもいいやって思ったりもしちゃいますけど。みんなに好かれてるって人、ちょっと怖くないですか?
ただ、そういう風に考えられるようになったのも、大人になってからなのかもしれないですね。
宇多丸:
僕もそうでしたけど、大半の人にとって学生時代って、当然のようにまだ何事も成し遂げてなくて、「自分はこれだ」っていう揺るぎないアイデンティティを確立していない、しようもない段階だから、必然的に、周りの人間との関係性がある意味セカイのすべて、ってことになりがちなんだよね。
しかも今は、そこを加速する装置として、SNSっていうのがあるわけだから! どうしたって過剰にビクビクしちゃうよな、嫌われてないか、ハブられやしないかって。
僕は、ひとりっ子のせいかもともと単独行動が好きだっていうのもあるし、今はすっかり連絡取りづらい&出不精キャラが完全に確立されてて、たまにど こかの集まりに顔を出すと逆に「来てくれたんだぁ!」ってありがたがられるっていう、楽で得な立場にたどり着いてますけど。ツンデレって、やっぱ効くんですよ(笑)。 仮に、不義理を重ねすぎてそういう場にお声がかかりにくくなっているのだとしても、仕事だけでもさんざん人には会うから、別に疎外感や孤独を感じることも別にないし。 要は、自分に自信がついたってことなんでしょうけど。
でも、僕だってもし、この時代に学生だったとしたら……、今みたいなノーSNS姿勢を貫くほどの覚悟は、やっぱり持てなかったと思いますよ。
本当は僕と同じように、四六時中人と関わってるのは苦手、ひとりで過ごすのが好き、ってう若い子だって、今も実はいっぱいいるはずなのにね。 いまどき、SNSの類いっさいやってませんなんて言ったら、相当な変人ってことにされちゃうんじゃない?
まぁだから、えりさんが周囲に過剰に気を遣ってしまうというのも、年頃的に致し方ないことなのかもな、とは思います。
そのへん、オトナ女子になるとどうなの? 相変わらず、「あのコ、まーた用事があるとかなんとか言って断ってきた! ムカつく!」みたいなことってあるのかな。それこそ、女子部の集まりとか。
こばなみ:
社会人、しかも30代が中心の集まりなんで、そういうのはないですよね。
来たいときにくればいいじゃん!っていうスタンス。
だけど、イベントのドタキャンはやめてほしい、準備の関係があるのでせめて連絡して~!というのは、口すっぱくして言っています。
宇多丸:
ドタキャンとかすっぽかしは論外だけど、僕が前から気になってるのは、「行けたら行く」って言い回しですね。あれ、何?(笑)
何時までに仕事が終われば行けるけど、終わらなければ行けない、みたいに具体的な理由があるならそう言えばいいのに、たぶん、そういうことでもないんだよね。 ぶっちゃけ、「その日そのときになってみて、気が向いてたら行くわ」って言ってるんでしょ?(笑) 気持ちはわからないでもないけど……、来るのか来ないのかわかんないまま待ってる側からしたら、困るし失礼だから!
こばなみ:
そういう人は一度幹事とかやったらいいんですよ! いかにその回答が人を困らせるか、わかるはず!!
宇多丸:
じゃあ、どうすれば一番失礼がないかって言うと、それはやっぱりもう、正攻法しかないんだろうと思いますよ
つまり、「できるだけ丁重にお断りする」。当たり前だけど!
最初にまず、「声をかけてもらって嬉しいし、お受けしたいのは山々である」という気持ちを切々と伝えた上で、それがどうしても叶わない理由をできるだけ具体的に挙げ、謝罪。 最後に、「自分自身とても残念に思っているので、可能ならまた次の機会にお声がけいただけることを願っている」というのを付け加える。 仕事先や目上相手ならこれを最上級の丁寧な表現で、友達ならフランクに言い換える、というだけで、基本はこの構造、ってことに変わりはないんじゃないですかね。
こばなみ:
友達からの飲み会のお誘いだったら、「超絶行きたいけど、その日だけが予定カブっててごめんm(_ _)m また次誘ってー!」とか!?
宇多丸:
とにかく言えるのは、「断る=失礼」ではないってことだよね。えりさんはまず、そこの認識から改めたほうがいいのかもしれない。
むしろ、大人同士だったら、ちゃんとしたお断りに対してゴチャゴチャ言うほうが無礼でしょ。
そこで相手に言う「どうしても叶わない理由」がホントかどうかなんてことは、この際どうでもいいんですよ。 大事なのは、「人には人の事情があるのだから、なんであれそれは尊重されるべき」っていう、まさしく大人な距離感のほうなんだから。
前も言ったけど、「ハナクソほじるので忙しい」っていうのだって、立派にこっちの事情だよ! ただ、そんなのをそのまま伝えるのもそれはそれで大人げないので、なんかしらそれらしい理由を挙げて、ごめんなさいね、と。 で、断られたほうもそこはそれ以上深追いしないのが礼儀!
マネージャー知井(20代前半):
ただ、学生の場合、相手が同じ学校とかだったら、バイトのシフト的なこともなんとなく知ってると思うから、嘘ってあからさまにバレますよね。
うっかり別の場所にいるツイートなんてしちゃったもんなら、お前来なかったのに何してたんだよー!とか。
宇多丸:
やだー!
相互監視社会、息苦しい!
まぁ、嘘ついたらそのぶん、バレないよう普段以上に気をつける、っていうのも礼儀のうちってことで。
マネージャー知井:
あと、ずっと断られ続けたら、遊びたくないんだなぁと察するとか。
宇多丸:
でも、えりさんは、何よりもそう思われたくないからこそ、こんなことになっちゃってるわけでしょ。
たとえ永久に果たす気がない約束であっても、相手には、いつかその日がくると信じていてほしい、みたいな。
マネージャー知井:
3回に1回くらい行くとかどうですか?
宇多丸:
たしかに、とっとと行っちゃったほうが話が早い場合はあるだろうけど、それは「断ってる」ことになってるのかなぁ……。
ちなみに僕の場合、『バラいろダンディ』で共演させていたいてる玉袋筋太郎さんと、毎週生放送終了後に飲みに行くのを「部活」って呼んでるんですけど、翌日の仕事が早かったりしてどうしてもキャンセルしたい場合は、前日にメールで「これこれこういうわけで次週にキャリーオーバーでお願いします」と伝えることになってます。 いいでしょ、キャリーオーバー。一回休みにしてもらったぶん、次はさらにドカンと行きましょう!っていう、前向き感が出てて。
こばなみ:
あと、直接誘われると断れないってことですけど、そのときはいったん保留にして、後からメールで連絡するようにすればいいんじゃないですか?
宇多丸:
なるほどね。
「いま、ちゃんとしたスケジュールがわからないから、後で確認して連絡するわ」とかね。
で、「ごめーん! 大丈夫だと思ってたんだけど、その日がっつり予定入ってました!」ってね。僕もそのパターン、よくあるかもです。
いずれにしても、すべての人の求めに応え続けるっていうのが誰にとっても不可能である以上、「断ること」自体が悪いとか非礼だとかいうわけじゃないのは明らかなので、えりさんも、そこはあんまり気にしすぎないようにしたほうがいいですよ。 それより問題は、相手に納得してもらえるような、礼を尽くした断り方ができるかどうかでしょ。
その意味ではえりさん、人の顔色をつい見てしまうタイプなわけだから、どこからも文句が出づらい丁重なお断り表現みたいなのも、すぐ上手くなるはずだと思うんですけどね。
で、ホントは苦手な人も多いってことだから、いずれは僕のように、「不義理がデフォルト」キャラに移行していければ、人生もっともっと楽になりますよ~、きっと……。
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2016年1月16日に公開したものを再編集し、掲載しています。