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彼の顔がどうしても愛せない。別れるべきだろうけど、年齢的にも焦りがあって……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室206】


✳️今週のお悩み✳️
カマキリフェイスの私の彼。正直かなりブサイクです。造形が気持ち悪い、そう言い表した方が的確でしょうか。酷いこと言っている自覚はあるのですが、どうしてもこの気持ちを吐露させて頂きたいと思います。2年間友人関係を経て向こうから告白され付き合いました。私には初めての彼でした。仕事にも真面目、気が合うし、デートも計画してくれて、ご飯を作ってくれたり、喜ばせてくれることもたくさんしてくれて、優しい人です。ただ1つ、ただ1つだけどうしても会うたびがっくりしてしまうことがあります。それは彼の顔面が、気持ち悪いブサイクなこと。私のタイプとは真逆、むしろ苦手な顔で。だんだん愛が積もっていくかと思っていましたが、やはりどうしても顔が愛せなくて。付き合いはじめは愛おしさも感じたのですが、最近はテンションがさがることが多く、会わない日が続いても連絡がこなくても全然平気な自分がおります。結婚も視野に入れて付き合ってますが、彼との子ども、顔が向こうに似たらどうしよう、そんなことばかり思いゾッとしたり。これは恋愛ではないですよね。別れるべきなんだろうとは思っています。でも、その選択肢を選ばない理由はとてつもなく自分勝手で最低な気持ち。私はきっと、また恋愛市場に戻るのが面倒くさいのです。結婚して子どもを産んで、誰かのために生き、誰かに生かされ、愛し愛され。そんな生き方を夢見ていて、年齢的にも焦りがあって今の彼と別れて次また誰かと出会える予感もまったくなく。 顔がすべてとは思いません。私も普通の顔です。こんな酷いことを胸に抱えたまま付き合っていてゴールがわかりません。少し下品な話、彼がすべて初めての相手なので比べられませんが、性欲もわいてこないし、キスもしたいと思わない、その先も正直めんどくさい。 友人関係のままのがよかった、そう思うことも多々あって私は今身動きがとれず。顔が苦手な相手じゃこの先ダメになるのでしょうか。顔。たかが顔されど顔。最低ですが、なにかアドバイスが欲しいと思ってます。
(なつ・30歳・東京都)


宇多丸:
顔以外はなんの問題もない、なのに……っていう。
まぁ、抵抗不能なほど好み!な顔があるのと同じように、どうしても苦手!って感じてしまう顔っていうのは、やっぱあるんでしょうねぇ、誰しも大なり小なり。

なつさんは、それをここまではっきり自覚してるわけだから、問題点が明白なぶん、話は簡単って言えば簡単ですけど。

こばなみ:
性欲もわいてこないし、キスもしたいと思わない、ってけっこうこの先、難しくないですか。

宇多丸:
っていうか、なつさんが彼のルックスに感じている嫌悪は、そういうスキンシップを取る取らない以前のレベルでしょ。
マジで、ツラを見るだけで不快になるとか、それ級じゃん。
だからこそ、会わなくても連絡なくてもまったく気にもならない、一緒にいないで済むならそれに越したことはない、みたいな気分にさえなっちゃってるわけで。

ここまで彼に対する認識がすでに固定されちゃってると、正直、今後なにかのきっかけで思い直すって可能性も、もはや考えづらいよね。

ただ、そのこと自体は、別になつさんが悪いって話じゃないからさ。
誰にだってウマが合う合わない、相性の良し悪しっていうのはあって、こればっかりはもう、なるようにしかならないもんだから。

こばなみ:
努力してどうこうじゃないところですよね。

ちなみに、お二人はどれくらい付き合ってるんでしょうかね? 2年間友達でってことですけど。

宇多丸:
その先の年月が特に書いてないってことは、付き合ってからはそんなに時間は経ってないんじゃない? 
結局たいして情も移らなかったんだから、だったらもう完全に、いますぐ! 引き返したほうがいいよね。

はっきりしてるのは、このまま我慢して付き合い続けて、結婚なんかしても、なつさんが幸せになることは絶対にないでしょう。
そしてそれ以上に、そんな風に内心思ってるような人と人生を無駄遣いしなきゃならない彼のほうが、ずーっと不幸せで、可哀想なのも間違いない。

ということで、彼のためにも、一刻も早く別れたほうがいい、っていうのははっきりしてると思いますよ。

そこでなつさんのダメなところは、彼の顔が嫌いっていう部分じゃなくて、ご自分でも自覚してらっしゃる通り、保身のためというか、先行きに対する不安さ、臆病さから彼との関係をキープしてる、ってことのほうですよね。

でも、いまのなつさんは、例によってだけど、「誰かのために生き、誰かに生かされ、愛し愛され」って、「状態」に憧れてるだけだからさ。

現状、そもそも目の前の相手を愛するのが困難だっていうことがはっきりしているのに、その先にそんな都合のいい「状態」が、いきなり現れたりするわけないじゃん!
 つまり、結局保身にも、先行きに対する保証にもなんにもならないのはわかりきってるのに、むざむざ自分と彼の貴重な時間を浪費してるっていう、そういう一番誰も得しない状況をズルズル引き伸ばしちゃってるわけですよ。当然、時間が経てば経つほど、傷は深くなってゆく。

だいたいさぁ……、「恋愛市場に戻るのが面倒くさい」「年齢的にも焦りがあって」って、たかだか30歳でなに言ってんの?っていうのもあるよね。

こばなみ:
30歳、ぜんぜん焦る必要ないですよ! 41歳独身女性より。

宇多丸:
30歳だろうがなんだろうが、恋愛や結婚に年齢は関係ない。まして、幸せになれるかどうかに年齢は関係ないよ!

もちろん、特に女性が、出産可能年齢というのを大きな分水嶺として捉えるのはわかりますけども。

だけども、それをあんまり、「人生における幸/不幸の絶対的な境目」みたいに考えてしまうのは……、けっこうな確率で、逆に、幸せに生きる選択肢を狭めてしまう思考法なんじゃないかと思うんですよね。

こばなみ:
あんまり区切りすぎている人の話って、聞いていて辛くなりますよね。あげく、こばなみさんものんびりしてる場合じゃないですよ!と言われたり、もしくはこの人は話題にできない年齢なんだった的な雰囲気になったりすると、私はそう思ってないのに勝手に区切られてる気がして、気分のいいものじゃないですよね。

宇多丸:
ねぇ。なんだってみんながみんな、そんなにギスギスしなきゃなんないのか。
単純に、出産可能年齢だってどんどん伸びてるし……、僕はやっぱり、養子や里子制度がもっと整って、日本社会にも浸透すればいいのにな、とも考えてますし。

でも、それよりなにより、子どもを持つってことが、人生最大にして唯一の価値ってわけじゃ、まーったくないわけですから。
それこそ、子ども産んだって不幸になる人はなりますよ、当たり前の話だけど。

こばなみ:
でもそういうリミットを区切ってる人に、いくら話しても通じないですからね。

宇多丸:
まぁこの件に限らず、自分の「正しさ」への確信が強すぎて、あまつさえそれを周囲にも押しつけまくってくるような人とは、付き合いづらいよね。

とにかく、結婚でも出産でも、あとは出世でもなんでもいいけど、人生に「合格ライン」みたいのを勝手に設定して生きるのって、ほぼ確実に辛くなってくるだけだろうよ、って思うんですけどね。意外と多いんだよなぁ……。

こばなみ:
あと「正解」も。「正解なんですか?」ってそればっかり探してると、本来の目的がなにかわからなくなってしまう。恋も仕事も人生のなにもかもが……。

宇多丸:
前に言った「ガラスの靴」のたとえがまさにそれだよね。
本当は人生って、自分が生きてきた/生きてゆく型に合わせて作ってゆく、唯一無二のオーダーメイドでしかないはずなのに、ショーウィンドウに飾ってある「理想の靴」を見て、やれ高すぎて手が出ないだの、履いたら履いたでサイズが合わないだの足が痛くなるだの言ってるっていう(笑)。そうこうしてるうちに、あっという間にホントの人生のタイムリミットが来ちゃうよ!

そのたとえで言うなら、なつさんがまず間違ってしまったのは、そもそも欲しくもなかった靴を、丁寧にすすめられたからって、つい買ってしまったってことですよ。
要は、いくら告られたからって、そして悪い人ではないからって、そこまで明白に生理的に無理!な相手とは、やはりそもそも付き合いだすべきじゃなかった。

もちろん、付き合ってゆくうちに情が移ってゆくかも、と考えたのはわかる。「美人は三日で飽きる、ブスは三日で慣れる」っていうヒドい言い伝えが男性間にはありますが(笑)、まぁ、ひとつの真理を突いてはいるからね。
ただ、それにしたって……、「三日で慣れる」ことが実際に可能なラインかどうか、っていう見極めはあるわけじゃん。「まぁ、生理的に嫌というほどでは、 ない」みたいなさ。なつさんは、そこのジャッジが正確にできてなかった、ってことでしょ。
そして、なぜそういうミスをおかしてしまったのかと言えば、それはもう完全に、「彼がすべて初めての相手」っていう経験の浅さゆえ、以外のなにものでもないわけじゃん?

いつも言ってるけど、恋愛経験が浅い人ほど、「もうこの次はないんじゃないか」って不安になって、最初の相手にしがみつきたくなってしまう気持ちもわかるんだけど……、客観的に見ると、初めてなにかにトライしてみたら案の定あんまりうまく行きませんでしたって、別に超普通のことじゃね?
 恋愛に慣れてない、どころかしたことないから、相手選びもちょっと間違っちゃった。だったら、そこから学習したことをできるだけ次回以降に活かしていこうよ!っていう、それ以外になくない?

恋愛経験が乏しい人が臆病になってしまうのもわかるけれども、同時に、人よりスタートが遅れてるぶん、最初はうまく行かなくて当たり前!くらいの謙虚さというか、ハナから高望みしない感(笑)は持ってていいんじゃないかな。
なつさんなんかさ、最初に付き合った相手と、いきなり結婚して子どもまで産もうかなって話まで行っちゃってるんだよ? 普通に考えても、「なにそんな早まってんの!」って言いたくもなる話だよ!(笑)
 しかもそのうえ、その人のこと全然好きじゃないなんて……、論外もいいとこでしょ。

なので、改めて言っておくと、これはもう間違いなく、できるだけ早く、とっとと引き返すべき。

となると次に出てくる問題は、彼にどうやって伝えるか、ですよね。

まず、原因が顔の好みだってことは、絶対に言わなくていいと思います。
そんなのあくまで相対的な趣味の問題なんだから、彼の心にわざわざ取れない傷を残すことはないよね。

要は、そういう言わんでもいい真実はなんとか持ち出さずに、それでいて彼側にはいっさい責任がないことだというのはくれぐれも念押ししつつ、別れの意思をきっちり伝える、という。なかなか難しいことですが。
ま、「ほかに好きな人ができた」でもなんでもいいですよ。ここは一方的に自分が悪者になっても構わない、くらいの気概はほしいところですよね。
とにかく、彼を必要以上に傷つけることだけは避けてほしいと思います、これは、人としてのマナーとして。

こばなみ:
別れ際の体験も今後の血となり骨となりますね。

宇多丸:
そうそう。
よくわかんないままスルスルうまくいっちゃったようなパターンよりも、なぜか思うようにいかなかったケースからのほうが、特にビギナー段階では、学ぶことが多いんじゃない? なんに限らず。
だからこそ、なまじあらかじめ資質に恵まれてる人ほど、あとで伸び悩んだりするもんなんですよ。若いうちに安易にモテすぎて、歳とったらただのツブしの利かない傲慢野郎に成り下がっちゃった、みたいな。
だから、なつさんも、こういう経験をしたこと自体は全然マイナスじゃないんですから。ウジウジしてないで先見よう先!

その意味では、ホントはこの彼にも、いろいろ伝えてあげたいんだよな~……。
ブサイク、造形が気持ち悪い、とことんひどい言われようですけども(笑)、それってあくまで、さっきも言ったようになつさん個人の好みの問題だからさ。

極端なこと言えば、一般的にはどれだけネガティヴに捉えられがちな要素でも、しかるべき場所や人の前では圧倒的にプラスに働く、というようなことは、いくらでもあるわけですから。
ペットとして犬や猫を可愛がる人に比べれば相当少ないのはたしかだけど、爬虫類や昆虫が大好き!って人だって、意外とそこらじゅうにいるじゃないですか。
それと同じで、一般論的なイケメンや美人、というのはたしかにいるんだけど、そういうのは逆に苦手で、デブ専フケ専ブサイク専です!みたいな層だって、多数派ではないにせよ、世の中には一定量絶対にいるんだからさ。
当然、カマキリ顔専だって、どこかには必ずいる!

大事なのは、そういう自分の個性を、どれだけ適切なかたちで、適切な層にアピールすることができるかどうか?ってことなんですよ。
映画で言えば、そのカマキリの彼や、もちろん僕みたいな「クセが強い」人間は、わからない人にはまるでピンとこないけど一部に熱狂的な支持者を持つような、「カルトムービー」を目指すべきなんですよ。
それをさ、大手シネコンとかで全国拡大ロードショーとかしちゃったら、そりゃウケも悪いでしょうよって(笑)。
やっぱちゃんと、そういう映画が好きそうな人が集まるような、ミニシアターで公開しないと……、プロモーションやブランディングさえうまくいけば、連日満員ですよ!(笑)

でさ、とにかくそういう風に、自分がどういう層にウケる感じの存在なのかっていうのを正確に把握してないと、相手が自分に好意を寄せてくれそうな可能性、みたいな読みも、正しくできないわけじゃん。そのあたりの感覚を身につけるのも、まぁ経験の賜物なんだけどさ。
その点、たぶん彼は彼で、そのへんの見切りがちゃんとできてなかった、ってことなんだよね。
「なつさんは可愛いけど、おそらくこういう、カマキリ男が出てくるようなホラーは好きじゃねぇだろうなぁ……、残念だけど」みたいな(笑)。

こばなみ:
これ、男性にも女性にも言えますね。
全国区で公開しなくていいってことですよね、メモメモ。

宇多丸:
「こんなグロいシーンがある映画、なにTOHOシネマズ系で公開しようとしてるの?」みたいな(笑)。
でも、そういう「人を選ぶ」作品ほど、愛される人にはとことん愛されるからさ。
広く浅く、そして短く好まれるだけのブロックバスター超大作より、結果そっちのほうがずっとイケてる感じだよねなんてこと、ざらにある話だから……というようなことを、彼を傷つけずになんとか伝えてあげた~い!(笑)

なんにせよ、彼にとってもなつさんにとっても、このたまたまうまくいなかった関係が、一生に致命的な傷を残すなんて考え方をする必要は、まったくないから。少なくともいまのうちは!

こばなみ:
ということでなつさん、なるはやでリセットしてくださいませ~!



【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2017年9月9日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
こちら
※シングル「世界、西原商会の世界! Part 2 逆featuring CRAZY KEN BAND」が配信中! Victorサイト限定CD盤もリリース!
詳しくは
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。




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