一度退職した会社に戻りたいけど戻れない……。この後悔、どうすればいい?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室259】
✳️今週のお悩み✳️
私は大学を卒業後、幼少の頃から大好きだった商品を作っているメーカーにアルバイトとして入社し、1年後に正社員として4年間勤めていました。もうすぐ4年、という頃に私が結婚をし、それまでは実家で何不自由なく生活をしていたのですが、はじめての親元を離れた生活、日々の家事などに追われ、両立が難しいと思いその会社を退職しました。退職してから今日までじわじわと、退職したことを後悔しています。あまりにも後悔しすぎて、先月に元上司に連絡を取り、どうにかまた働くことはできないでしょうか、と伝えましたが、今は人が足りている、との返答でした。一度そこで、気持ちを切り替え、今はほかの会社に契約社員として入社し働いています。しかし、今の仕事をしてる最中、なんなら起床後、就寝前、今でさえずっと早く前の会社に戻りたい、もう無理なのだろうか、と悩んでいます。もし、お二人がこういった、後悔をしたことがあったら、どうなさるかをお伺いしたいです。今の会社で、前職により良く貢献できるようスキルを磨き、チャンスを待つのか、すっぱり諦めるのか、お二人ならどうされますか?
(まつ妻・27歳・契約社員・東京都)
宇多丸:
まず、本題に行く前に、素朴な疑問……、「家事と仕事の両立が難しくて退職した」って話だけど、正直、何がそこまで大変だったんだろ?って感じはしちゃうよね。
お子さんがいるわけではないんだよね?
こばなみ:
いまわたくし、まさに共働きですけども、洗濯も掃除も家電が優秀ですよね。遅ればせながらドラム式洗濯機にしましたけど、サイコー! ルンバもサイコー! なので、家事と仕事の両立はそこまで大変なことにはなっていないですけども。
宇多丸:
よっぽどダンナが、家のことは何もしない、どころか、超手がかかる赤ん坊みたいな人だとか?
だとしたら、仕事のこともそうだけど、そっちもけっこうな問題だよね……。
ちなみにこばなみは、転職に関してこういう後悔したこと、ありますか?
こばなみ:
私はずっと同じ会社に勤めているんですよ。
学生時代はフジツボ研究だったので、そこから考えるとぜんぜん別の職種になったわけですが、フジツボやってりゃよかったなぁとかはないんですよね。
宇多丸さんは?
宇多丸:
僕は恥ずかしながら会社勤め自体したことがないから……、その手の後悔をする余地があるとしたら、もっと根本の、こういうリスキーな食ってき方を選んでしまったことそのもの、とかになるんだろうけど。
それも、今のところはまだなんとか、食えてますからねぇ、幸いにも。
さて、どうしたもんか……。
こばなみ:
たとえば出版業界で、その雑誌がすごく好きなんだけど編集部をやめちゃったとかだったら、外部ライターで関わることはできそうなのだけども……。
ある特定の商品が好きというのが根本の動機みたいだから、同じ業界の他社へ、っていう考えは、まつ妻さんの場合は難しいんですかねぇ。
宇多丸:
やめかたにもよるけども、とりあえず「空きが出たらすぐ教えてください、いつでも復帰できるよう準備万端にしておきますので!」的なアピールを続けてゆくのは、無駄ではないんじゃないですかね?
ご自身でもおっしゃってるように、その間に何か資格を取るとか、スキルアップという手土産を用意してもいいだろうし。
ただそれも、結果が出るという保証はないからねぇ……。
こばなみ:
そうですね~。恋愛と一緒で、想いがあっても、そううまくはいかないかもしれないですしね。
私だったら、別の会社でやろうと切り替えちゃうかも。
宇多丸:
近い業界で本当に活躍すれば、ヘッドハンティングだってあるかもしれないですしね。
実際、音楽業界でも、何回もやめてるのに、やっぱり優秀だから結局呼び戻されてる人っていますよ。
こばなみ:
私も、友だちで金融系ですけど、何社か経て同じ会社にまた戻ったりした人、いますー。
あとこれ、最近の話っぽいので、やめてすぐに職ありますか?と聞いても、元の会社だって人も補填してるだろうから難しいでしょうし、ちょっと急ぎ過ぎな感じもしました。 戻るのにだって時間が必要だと思います。
宇多丸:
僕だったらどうするかな~……。
たぶん、退職を選択したこと自体はいまさらどうしたって変えられないのだから、だったら「その選択をしてやっぱり正解だったんだ!」と思えるような方向で、なんとか頑張ろうとするんじゃないですかね。
たとえば、一番理想的なのは、職を変えたことで初めて、ほかにもっと自分に合ってる仕事があるということを知った、とかさ。 あるいは、仕事やめてなければこの人たちとは知り合えてなかったかも、みたいなことでもいいんだけど。
さっきこばなみが言った恋愛のメタファーで言うと、まつ妻さんは、「いったんは自分から別れたんだけど、やっぱりあの人がよかったー!」って、ずっと言ってる状態なわけですよ。 そういう人に客観的にアドバイスするとしたら、「確かにその人は素敵な人なんだろうけど……、今はほかにパートナーがいるって言ってるなら、再度空きが出るのを待ち続けるのもいいけど、その間にあなたはあなたで、ほかの人ともデートしたり付き合ってみたりして、もっと可能性を探ってみてもいいんじゃない?」って感じになるよね、やっぱり。
まつ妻さんにとっては初恋の人、みたいなもんだろうから、大切にしたいってのもわかるけど。 でも、それって逆に言えば、まだひとりとしか付き合ってないじゃん、ほかにもいい人はたくさんいるよ!って話でもある。
こばなみ:
ほかの彼と付き合ったら、初恋マジックが解けて、たいした彼じゃなかったな~、ってこともよくある話ですしね。
宇多丸:
現実には、むしろ初恋の人とそのまま添い遂げるってケースのほうがはっきりレアなわけだし、じゃあそうじゃない人たちは不幸かって言えば、そんなわけねぇだろ!としか言いようがないわけで。
逆に、もろもろ経験値を上げた状態で、文字通りご縁があれば、「ヨリが戻る」ということもありうるわけでしょ。
だからこれは別に、戻る選択肢を完全に捨てろって言ってるんじゃなくて、ほかの道も探りながら、いわゆる「両面待ち」スタンスじゃダメなの?ってことね。 まつ妻さんは全体に、早い段階で極端な二択思考をしがちな傾向がある気はします。「仕事か家事か」とか、「待つか諦めるか」とか。 それでふんぎりがつきやすくなるならいいけど、まつ妻さんの場合は、明らかに逆効果になっちゃってるじゃん? なんにせよ、人生や物事に対して、もっと柔軟に構えたほうがいいんじゃないかなぁ、という感じはちょっとしますね。
たとえば、その元の会社だって、これからどんどん変わり続けていくわけで。 実際問題、永遠に続く企業なんて存在しないわけだから。 なので、もちろん再就職に向けて初心貫徹、努力を続けるというのはぜんぜんいいんだけども、同時に、あんまりその一点のみに固執して、そこがクリアできなきゃ人生しくじった!みたいな考え方はしないほうがいいと思いますよ、やっぱ。 改めて、何事も頭から決めつけないこと、というのは、人生全般に有効な処方箋じゃないかな、と。
それにしても、ダンナはいったい何してたんだ、助けてくれなかったのか、というあたりはやはり気になっちゃいますねぇ……、余計なお世話だったらごめんなさいですが。
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2018年11月17日に公開したものを再編集し、掲載しています。