結婚を考えているパートナーがケチな件がじわじわとボディブローのようにきいてきて……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室307】
✳️今週のお悩み✳️
パートナーがケチな件で相談です。付き合って2年、気が合うし、穏やかな彼(4つ年上)ではあるのですが、ちょっとケチなのが最近じわじわとボディブローのようにきいてきています。たとえば、ランチを選ぶのも「安いからこっちにしよう」などとよく言います。彼の家で夕飯をつくろうとスーパーに一緒に行くときも、割引のお肉や魚を必ず買います。カレーのルーも「一番安いからこれ」というような選び方。お金に困っているわけではないのに(普通のサラリーマンで収入も私より多く、貯金もけっこうあるそうです)。そしてすべてが彼のおごりというわけでもないんです。私も順番に払ったり、割り勘のときもあります。もうこの年になるので、私は食べたいものはお金に関係なく食べたいです(そんな高級な食材やランチやディナーをねだっているわけではないのです)。そろそろ同棲、そして結婚したいと思うのですが、私のこの小さな、でも大きくなりそうな悩みはどうしたらいいでしょうか?
(つまよーじ・35歳・会社員・東京都)
宇多丸:
安いランチを選ぶとか、割引の肉を買うとか、それ自体は特に悪いことではない、場合によってはいい心がけと言われてもおかしくない倹約意識なんだろうけど、つまよーじさんはどっちかと言うと、ちょっとぐらいお金出してもいいからせっかくの食事はおいしいもん食べようよ、的な考え方をするほうなんだよね。
僕も明らかにそっち寄りなんで気持ちはわかりますよ。
なんにせよ、経済観念と食に対するスタンスって、パートナーとの相性という意味ではけっこう小さくない、どころかほとんど根幹にかかわる話なんじゃないの、という気もしますけど。
だってさ、たとえばいずれ家を買ったり借りたりするとか、子どもを進学させるとか、そういう局面でも、「安いからこっち」って発想で来るかもしれないわけじゃん。
いや逆に、まさにそうした将来の目標のためにいまは倹約してるんだとか、目的がはっきりしてるならいいけど……、ただただ全般にケチくさいというだけ、というのは、少なくとも僕はやっぱり、ちょっと抵抗ありますもん。
こばなみ:
服とかもそうなのかなぁ。
宇多丸:
ファッションとか車とか、ある一点に関してだけは異常に金に糸目つけなくなる、とかだったりして。それはそれで、人としては面白いと思うけどね(笑)。
まぁとにかく、お金とメシ、ずっと一緒に生きてく相手とそこの価値観が合ってるかどうかって、超重要案件じゃん!と。
つまよーじさんは「気が合う」とおっしゃってますが、意地悪なことを言えば、そもそもわりと重要な部分で、実は合ってなかったんじゃないの?という風に見えなくもない。
こばなみはどうですか?
こばなみ:
うちはわりと私が浪費派、オットは堅実派。
そして家賃や光熱費など必要最低限の生活費以外は別会計です。
でもそれでいいのかなって少し悩みつつ……。
あとは必要最低限の生活費の徴収価格が低いため、いつも追加徴収をするのですが、そこで小競り合い。何にどう使ったのかなど聞かれると、だいたいでいいじゃん!ってキレ気味になってしまいます。あと、向こうのが収入が多いはずから、細かいことまで言うなや~って、余計にそう思ってしまい……。
かといって給料を全部預かってやりくりとかも浪費派なのでできそうにないし……。あぁ、私のお悩み相談になりそう……。
宇多丸:
僕も、よっぽど高額だとか良からぬことに溶かしちゃってるとかならともかく、お金の使いみちにとやかく口出されるのは嫌だし、そういう人とはやってけないと思っちゃうな。
フィギュア買うからお小遣いくれ、とかいちいち奥さんに頭下げなきゃいけないなんて、絶対イヤ!
せっかくいまは自分でがっつり稼いでるのに、なにが悲しくて中学のときの母親とのやりとりみたいことを繰り返さなきゃならないのよ(笑)。
こばなみ:
でもそっちのが周囲は多くないですか?
宇多丸:
もちろん、子どもの養育資金を堅実に貯めなきゃとか、事情はそれぞれあるでしょうが。
なんにせよこれは、大きく言えばその人の人生のありかた、どう生きてゆきたいのか、なにを価値とするのかにかかわる、めちゃくちゃ大事な問題じゃないですか。
結婚生活、家族生活なんかまさに、常に金銭感覚と向き合わざるをえない場面の連続なわけだから。
そこまで貧しいわけでもないのに「安かろうまずかろう」イズムをよしとするかどうか。結婚式のもろもろから始まって……、新婚旅行も、「LCCにしようよ」って言われるかもよ(笑)。
こばなみ:
それは辛い!
宇多丸:
もちろん、それでお互いバッチリ!なふたりなら、なんの問題もないんだけど。
だから、そもそも「気が合う」とは何か?ってことから改めて考えてみたくもなっちゃいますよね。
他のところがぴったりだとしても……。
こばなみ:
別に嫌いではないんだけど、だからといって毎回外食が、吉牛とかだったら、やっぱり悲しい……。
宇多丸:
あとは、さっき言ったように、なにか共通の目標があっての節約ならぜんぜん納得もできるよね。マイホーム購入、子どもの進学資金、老後の蓄え……。
だけど、なんのためかわからない倹約を、しかも別会計、別家計なのにいつのまにかこっちも強いられるっていうのは、つまよーじさんや僕らみたいなタイプには、毎度それだとけっこうなストレスになっちゃうんですよね。
なので、結婚だなんだってとこに行く前に、この実は「合わないところ」に関しては、やはり一度じっくり向き合わないといけないだろうと思います。
「彼とは気が合うのですが~」って言うんだけど、客観的に見るとそれってつまり合ってないんじゃないの?ってこと、この連載でもたまに出てくるパターンですよね。
こばなみ:
ひっかけ問題みたいですよね。
これまでにも、「彼はスマホ中毒。長く付き合いたいけど、あまりにも夢中なので無理かも……と思ったりも」とお悩みの方も「読んだ本の話をしているときはとても気が合うし」と言ってましたし、「結婚願望がなく収入が不安定な18歳年上の彼。別れるべき?」とお悩みの方も、結婚の問題を除けばとても気が合う人だそうで……。
宇多丸:
まぁ、ふだんはホントにうまく行ってもいるんでしょうけども。
だから、「ボディブローのように」って表現がまさにふさわしいんだよね。
最初のころはまぁそんなもんかと思って流していたようなことが、だんだん、本気で気にさわってくる。
彼は彼で、つまよーじさんのことを「なんか贅沢な女だなぁ」とか内心思っていたりするかもしれないよ?
難しいね。今回のこれはまだ氷山の一角で、誰かとずっと一緒にいると、これからさらにいろんな局面で価値観の違いっていうのは必ず出てくるし、そのたびに、ここはすり合わせ可能、そこは無理、とかやっていくしかないんだけどさ。
しかも、時が経てば、人の価値観も変化したりするしね。
その意味では今回つまよーじさんは、はっきり違和感を自覚したわけだから、彼との関係性を、言わばチューニングすべきタイミングにさしかかったわけですよ。
まずもってその、チューニングができる相手なのか、という見極めもあるし。
ちゃんと話を聞いてくれたり、ときには譲歩してくれたりもする人なのか。自分は自分で、その労力を払うモチベーションが保てるのか。
そこがクリアできないとなると、少なくとも結婚はちょっと考えたほうがいいんじゃないか、となってきますよね。
同棲はまぁ、いきなり結婚とかしちゃう前に、「同居可能な相手か」っていう恋愛とはまたまったく異なる重要な相性を判断する、言わばお試し期間として、みんなやってみるべきとさえ僕は前から考えているので、トライはしてみてもいいかもね。
お金のこととか改めて話し合ういい機会にもなるだろうし。
とは言えつまよーじさんだって、たとえば子どもが生まれたりしたら、いきなりすごい倹約家になったりするかもしれないし。
こばなみ:
その可能性だってありますよね!
宇多丸:
一番良くないのは、どっちかが実は納得してないのに、ただ我慢しちゃってる、という状態だと思う。
たとえば、なんでも夫婦一緒じゃなくてもいいよね、という合意のもとにうまく行ってるようなところだってあるだろうし。
こばなみ:
それはあると思う。
宇多丸:
僕らも最初にちょっと、お金大事ご飯大事!とか言いすぎたけども、パートナーシップのあり方に、ひとつの固定的な正解があるわけじゃないからさ。
なにか問題が起こるたびに、そのふたりなりの対処法を見つけてくしかないんだから。
だからこそ、「気は合うんですが~」って言って安心してちゃダメ、ってことなんですよね。
パートナーの言動に不満や不信やズレを感じたら、できるだけその場ですぐそれを言語化~顕在化して、話し合う、というのが結局、一番こじれずに済む知恵だろうと個人的には思いますが。
こばなみ:
私も毎月の生活費の管理について、もういっかい話し合ってみます!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2020年1月18日に公開したものを再編集し、掲載しています。