兄から性的な嫌がらせを受けています。一緒に暮らしたくないと切り出してもいいものでしょうか。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室256】
✳️今週のお悩み✳️
地方で独り暮らししていた大学4年の兄が、東京で就職するために実家に帰ってきます。私の家族は両親、会社員の長男(24)、次男(22)、私の5人家族で、次男以外は実家住まいです。次男が帰ってくると部屋の数が足りなくなるため、引っ越しを考えている状況です。私が悩んでいるのは、この機会に長男に家を出てもらいたいということです。私は中学生から浪人生の頃までの間に、長男から性的な嫌がらせのようなものを受けてきました。お金を渡されて「体触らせてください」と頼まれたのが最初です。もちろん断ったのですが、それなら勝手に触ればいいと思ったのか、深夜に部屋に忍び込んで寝ている間に体を触ってきたり、風呂を覗いてきたりするようになりました。我慢できなくて母に相談したところ、「いろいろ聞いてるからね」と本人に一言警告したようです。父にも相談したのですが、「あの子は乱暴とかはしないと思うから、あんまり心配しなくていいと思うよ」と言われました。親に言われると傷付くだろうから、という理由で話し合いなどにはなりませんでした。それからも長男の嫌がらせは終わらず、母に警告されてからは、私に発覚すると言い訳をして逃れるようになりました(深夜に忍び込んできて私が起きた時には「お金借りにきた」など。お金に困っている様子はありません……)。建前がある以上、両親も追求できないようです。私は長男の顔を見るのも嫌で、普段は家の中で避けて生活しています。会話も中学生のときからありません。毎晩、部屋に誰かが入って来ないようにドアノブを紐で縛ったり(おかげで、ここ2年は何事もありません)、長男との接触を避けて生活するのに疲れました。私が家を出ていこうかとも思ったのですが、長男が悪いのに私が負担を被るのも悔しいし、長男のために両親と過ごす時間が少なくなるのも嫌です。今、5人で引っ越そうという話題が出ている中で、長男と一緒に暮らしたくないと切り出してもいいものでしょうか。私の感覚は真っ当なのか、自分勝手なのかもよくわかりません。そして、勇気を出して話し合いに持ち込んでも「それくらい我慢しろ」と言われて終わったら……と思うとなかなか切り出せません。ご意見くださったら助かります。 長文失礼しました。
(倒木・21歳・大学生・東京都)
宇多丸:
これ、長男が問答無用でアウトなのは言うまでもないとして、倒木さんのご身内をこれ以上悪く言うのは心苦しいんですけど、ご両親の対応も、かなりひどいと言わざるをえないですよね。
娘が性暴力を受けているって訴えてるのに、相手がよりによって長男だからって、お父さんは事実上見て見ぬふりしてるだけだし……。
こばなみ:
お母さんは一応警告はしてるけど……。
宇多丸:
でも、実際にはまったく状況は改善されてないわけで。まだまだ全然、事態を甘く見すぎなことには変わりないでしょ。
お二人とも、ちょっと無責任すぎますよ。お子さん二人、どちらに対しても。
とにかく、まずはっきりしとかなきゃならないのは、倒木さんはビタイチ悪くない!ということ。
なるべく早いうちに、改めて、ご両親に詰め寄っていいと思いますよ。 お母さんの警告後も長男の犯行がやまなかったこと、仕方なくここ2年はドアノブを縛ってまで自己防衛していること、当然長男とはなにがどうあれ同居などしたくないこと、そして、自分だけが一方的に我慢を強いられるのは明らかに理不尽だと考えていること……、すべてぶちまけたうえで、あなたたちはこの状況に対してどういう答えを出すつもりなのか?と、それこそ机を叩いて、怒りを隠さずに詰問していい。
それでもらちがあかないようなら、もう外部の力を借りるしかないですよね。 これはもう、そのレベルの話ですよ。
こばなみ:
長男を野放しにしておくことで、どんどん悪くなっていきそう。
宇多丸:
現状でじゅうぶん悪いよ! お父さんの「あんまり心配しなくていいと思う」とか、なに言ってんの?って話ですよ。
先の心配してるんじゃなくて、まさにいま、このうちのなかで性的被害に遭っているんだという、ホントに地獄のような思いを相談してるのにさ。話すのだって勇気いったろうに……。
それともなんですかね、触られるくらいたいしたことないだろうとでも言うんですかね?
とにかく、倒木さんが受けてきた/いるダメージの深刻さを、ご両親にもっとしっかりわかってもらう、というのが第一歩ですよね。
万が一、それでもなお、倒木さんが納得する対応を親御さんがとってくれないようなら……、さっきも言った通り、性暴力被害の相談に乗ってくれるような機関に当たってみましょうよ。
こばなみ:
窓口も探せばいろいろ出てきますね。
◆福祉情報総合サイト「NHKハートネット」より性暴力被害 相談窓口・支援団体
このなかにあった「性暴力救援センター・東京」に「相手がよく知っている人でも、知らない人でも、どんな場所で起こったとしても、あなたが望まない性的な行為は性暴力です」とありましたけど、ほんと家族だからって安心ってことではないですね、改めて。
宇多丸:
残念ながら、倒木さんのように家族が加害者というケースも、決して珍しくはないってことでしょうね……。
とにかく、そういうところに話を持ってけば、こういう場合はどうすればいいのか、法的措置含めて、教えてサポートしてくれるはずなので。
それと同時に、この件で倒木さんだけが一方的に家族から孤立するというのも理不尽な話だし、実際お辛いでしょうから、次男さんや、ほかにも信頼できる親類とかがいるなら、せめて彼らを味方につける、くらいはしたいよね……。
もし仮に、考えたくないけども親族がまったくあてにならなかったとしても、社会にはまともな人もたくさんいて、というかそっちのが大半で、必ず倒木さんの側に立ってくれますから!
逆に言えば、家族なら無条件で自分のためを一番に考えてくれている……とは限らない!ということでもある。 親兄弟こそがこっちの人生を破壊してくる最悪の敵、なんてことはいくらでも世の中にはありうる。自衛のために彼らときっちり一線を引く、という選択肢も当然ありますから。 ご両親が長男をなかなか追い出してくれないようなら、「しょうがないからアタシが出ていきますから! もちろん金はあんたらが出せよな!」っていうのも、やはりひとつの道だと思いますよ。
なんにせよ、あなたはいっさい悪くないし、出るとこ出ていい級の権利がある、ということ! なにがどうなろうとご自分を責めるのだけは、やめてくださいね。
こばなみ:
そうですね。自分を責めるのだけは絶対やめてほしいですね。どこまでお役に立てるかわかりませんが、少しでもよい方向にいくように祈っています。
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2018年10月27日に公開したものを再編集し、掲載しています。