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自分の言動について指摘されると必要以上に気にしてしまいます。いちいち動じない、自立した人間になるには?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室197】


✳️今週のお悩み✳️
都内の大学4年生です。他人に実際の自分の言動について何か指摘されると、つまらない内容でも必要以上に気にしてしまいます。例えば、私は普段無表情なことが多いので、食事の際に友達からたまに「いつもご飯不味そうに食べるよね。何で?」と言われます(文句ではないです)。食事時にどんな顔してようが勝手じゃん。てか美味しいと思ってるし!と思う反面、「私っていつも一緒に食べてる人にそう思われてるのかな、気を遣わせてるのかなぁ」と必要以上に悩んだり……。また、私は普段楽天的でお喋りな方なのですが(友達にもそう認識されています)、そのせいか黙っているだけで「なんで今日何も話さないの? 機嫌悪くない?」と言われたりもします。「怒ってないしただ黙ってただけだよ……」とめんどくさくなって余計に素っ気なくなると「やっぱり機嫌悪いじゃん!」「悪くないってば」というスパイラルにはまって結局機嫌が悪くなり、ひとりになってから「何がいけなかったんだ……」とまた自己嫌悪。ほかにも、気にしいな性格の癖に自分は語気の強い冗談や自虐ネタを言うせいか、「メンタルが強そう」と誤解されたりします。自分で言うのも何ですが、お人好しな性格なので普段から性格や服装まで好き勝手言われることが多いです。でも実際は豆腐メンタルなため人並み以上に気にするのですが、昔から「人に弱みを見せるのが嫌」という変なプライドがあるせいか、必死で気にしないふりをしてしまいます。それでまた強がって言われるたびに気になって……の繰り返しです。言われる内容は上記のように大したことじゃないので、いちいち気にする私の方が問題なのかとも思ったりします。乱文で申し訳ありません。まとめると、他人の言動にいちいち動じない、自立した人間になりたいです。この面倒な自意識をどうすればいいでしょうか? アドバイス頂ければ嬉しいです!
(絹ごし・21歳・神奈川県)


宇多丸:
絹ごしさん、この一文のなかだけでもいろんな感情や説明が混在していると思うんだけど……、僕が思うに一番のキモは、「自分の内面や感じていることを本当には他人に理解してもらえていない」と感じているからこその強いストレスを実は溜めこんでいるんだけど、それと同時に、「人に弱みを見せるのが嫌」でもあるため、現状それを解消する手立てがないっていう、そういう部分なんじゃないですかね。

いわゆる自己開示ができないタイプというか……、なんとなく男性に多いって印象ありましたけど、もちろん女性にもいるよね、そりゃ。

とにかく問題の根源は、「人に弱みを見せるのが嫌」っていう、まさにここじゃなんじゃないかなぁと。

もしそうだとしたら、「他人の言動にいちいち動じない」っていうような、表面的に強そうに見える人格を目指してしまうのって、少なくとも今の絹ごしさんにとっては、完全に逆効果かもしれない、ってことですよね。

自分のキャパを超えて「強がってしまう」ことから生じる周囲の視線と内面のギャップこそが、現状の苦しみを生じさせてるんだとしたらさ。

だいたいさー、「他人の言動にいちいち動じない」って言うけど、そういう人って単に、動じていない「ように見える」だけ、要はそう見えるように振る舞ってるだけ、ってことだったりしない?

それかさ、もし仮に、本当に周囲の言うことにまったく影響されないっていう人がいたとしてさ、そんなの、ただの無神経なヤツじゃん!

もしくは、ただのサイコパスか(笑)。いずれにしたって、そんなとこに憧れたってしょうがないよ、という気はする。

こばなみ:
気にしないのが普通じゃなく、気にするのが普通ってことですよね? たしかにまったく気にしないなんて、ないな。

宇多丸:
そうだよ。

つまり、まともな人なら言われたことにはやっぱりそれなりに反応しちゃうのが当たり前だし、それ自体が悪いってわけじゃないじゃん。

問題は、そこでどうしてたって生じてしまうネガティヴな感情とかと、どう向き合っていくかってことであってさ。

僕はなんか、そうやってやたらと「強そう」にアプローチしてくる人、それこそいわゆるマウンティングしてくるような人とかって、たぶんだけど、必死で自分のなかの「弱さ」的なとこを隠してるというか、守ろうとしてるぶん、逆によっぽど自信がないのかな~って思っちゃってますけど、内心。

それより、自分の弱みは弱みとして平気で表に出せるような人のほうが、本当の意味での、芯の強さを感じますけどね。

自分のなかの弱さとの付き合いかた、飼いならしかたを知ってる人というか……、必要なときにはちゃんと人に助けを求められたり、知らないことは知らないって普通に言えて、素直に教えを請うことができるような人。

絹ごしさんが目指すべきなのは、むしろそっちのほうなんじゃない?

こばなみ:
強くなろう強くなろうって思ってるから、変なスパイラルに陥ってるんじゃないかと。

宇多丸:
そうそう。

絹ごしさんは「面倒な自意識」って言うけど、誰にとっても自意識っていうのは面倒なもんだよ。絹ごしさんだけが特別ウジウジしてるわけじゃない。みんな実は、よっぽどのバカか病的な人でもない限り、同じようにウジウジはしてるの!

でも、普段はやっぱり、それを外にはあんまり出さないようにするから、周りは気づかなかったりするだけで……ってそれ、絹ごしさんの話と同じじゃん。

つまり、絹ごしさんの周りの人たちだって、冷静に考えてみりゃ当たり前なんだけど、絹ごしさんと同じような忸怩たる思いを、本当は抱えてるのかもしれない。

でも、絹ごしさんは目下、自己完結的にひとりでグルグル悩むサイクルにとらわれちゃっててる感じだから……、その意味で絹ごしさんがホントに気にしてるのは、周りの他者じゃなくて、結局あくまで「自分」なんだよね。

私は傷ついた!っていう一点ばっかりにこだわって、シャッターを閉めちゃってる状態というか。

絹ごしさんの言う「動じない」っていうのは、まさにそのシャッターをより強固なものにする、っていう方向性だろうけど……、本当にいまあなたに必要なのはむしろ逆で、シャッターをがっつり開けて、「そうは見えないかもしれないけど、意外とみなさんの言うことにいちいち困惑してたり傷ついたりしてるんだよ」ってことを「素直に」伝え、相手の言うこともまた「優しく」受けとめてあげるっていう、要はもっとオープンなコミュニケーションをとる訓練をする、弱みを含めた自己開示に慣れるっていう、そういうことなんじゃないですかね。

人に自分の弱さを見せる、必要なら助けを求める、適度に甘えるみたいなことって、全然恥ずかしいことじゃないですから。まずはそう思えるようになれればいいんですけどね。

こばなみ:
紐解いていくと、こういうことで悩んでる人って多いのかもしれないですね。

宇多丸:
まぁ僕だってそういうとこ、もちろんありますから。

この連載自体もそうだけど、メディアとかで強い口調で説得力ありげなことを言ってるように見えたとしても、内心はいつもビクビクだし、そういう表面的なイメージだけでなんか言われたりするのも意外と普通に傷ついてたりするし……、でも、そういうグラグラが常にあって、「これでいいのかな?」「あれでよかったのかな?」って自問自答をいつもしてるからこそ、軌道修正したり、進歩できたりもするわけだからさ。

外野の声にまったく「動じない」ようになったときのが、むしろヤバいなと思ってますよ。

要は、相談文にある「何がいけなかったんだ」を、ちゃんとした自己検証にまで高めていけるなら、それはもう全然プラスでしかないはずなんですよ。それこそがさっき言ったような、「自分のなかの弱さとの付き合いかた、飼いならしかたを知ってる」ってことになるんじゃない?

絹ごしさんは現状、思考を「自己嫌悪」ってレベルで止めちゃってるからさ。それって結局、ある意味ラクなところにとどまってるとも言えるわけで。

本気でなんでダメだったかを突き詰めていけば、「たしかに私も、決して気持ちいい態度をとってたわけじゃないよな」とか、「そもそも“常に明るく機嫌がいい子”って一方的に思われるような感じを自分も日頃から出しすぎなのかも」とか、こっちの落ち度みたいなとこも必ず見えてくると思うんですよ。で、それこそがまさに、改善の糸口なわけじゃん。

とにかく、閉めきったシャッターの奥で膝抱えてるだけじゃ、そりゃなにも解決しないよ!っていうね。

ちなみに、もうひとつ相談文を読んでいて少し気になったのは……、「普段無表情なことが多い」「普段楽天的でお喋りな方」って、このふたつ、あんまイメージが一致しないんですけど(笑)。

いや、ひとりの人のなかにそれぞれ相反するようないろんな側面があって、しかもそれらがシレッと共存してるっていうのが人間というものだから、その両方の顔があってもちろん全然いいんだけど、この文に関して言えば、「私はこれこれこういうタイプなのですが」っていう自己定義がちょっと多すぎ&強すぎな感じは、ちょっとあるかなと思って。

タイプとか性格なんてさ、いるシチュエーションや目の前の相手によって、まるっきり変わってくるもんでしょ?

僕が「性格占い」的なものに本質として批判的なのもそういうことなんですけど。

こばなみ:
人間、1つのカラーだけで生きてるわけじゃないですもんね。

宇多丸:

僕も、ライムスターとしてのライブのときと、メディアに出てしゃべってるときと、プライベート、それもかなり親しい人といるときとでは、それぞれ完全に別人格に近いですもん。

行きつけのバーのお客さんにもよく言われますもん、「ライブ観てると同一人物とは思えない」って(笑)。ホント、マジでおとなしいんで、普段は。

その意味では、強いとか弱いっていうのも、あくまで相対的な言葉なんだよね。

何に対しては強い、何に対しては弱いとかいう話であって、絶対的に強い/弱いっていうのはまず、概念としておかしい。

絹ごしさんも、ご自分の性格とかキャラクターというのをもっと相対的なものとしてとらえられるようになれば、もうちょっとコミュニケーション全体に柔軟なスタンスでいられるようになって、結果「強い」芯を身につけることもできるんじゃないか。

具体的にはやっぱり、人の言うことにいちいち動揺してしまうというご自分のなかの「弱さ」を認めて、受け入れて、ときにはそれを他者にも開示して、理解してもらうことで、とにかくストレスを内に溜め込まないようにするっていう、そういう習慣づけじゃないですかね。

あとさ、それとも通じることだけど、人と人のコミュニケーションなんて、しょせんはある程度、雑なもんなんですよ。

基本的に他人というのは、やっぱりごくごく表面的なイメージでしかこっちのことをとらえようとはしてくれないもんなんだ、とかさ。

こばなみ:
よく知りもしない人に勝手にいろいろ言われたり?

宇多丸:
とか。

でも、それは自分だってほかの人たちに対して確実にやっちゃってることだから。

人間の認識能力の限界ですよ。そうやって、便宜的にでも単純化したレッテルを貼ってからじゃないと、物事を認識すること自体がうまくできないんですよ。

テレパシーとかない以上、そうやって貼られたレッテルと自分の内面との齟齬を埋めるためには、事実上言葉を重ねてゆくしかない、要はコミュニケーションを密にしていくしかないわけだからさ。

もちろんそれにも当然限界はあるんだけど、だからって全部を諦めちゃってシャッター閉めて膝小僧抱えてたら(笑)、もっと目も当てられないことになるだけでしょう。

だから、ある程度は人間のコミュニケーションのそういう限界、雑さを覚悟しとくというか、「ま、そんなもんだよね」っていうある種のユルさを身につけておくことも、生きてくうえでの立派な「知恵」のうちだと僕は思いますよ。

また友達に「マズそうに食べるね」とか余計なこと言われたら、「は~? 人間認識が雑なんだよ!」って言い返して(笑)、笑い話にしてきゃあいいんですよ。

自分だって、他人に対して同程度は雑なんだと思えば、ちょっとは心穏やかに、なれたりしませんかね。

こばなみ:
たしかにそのユルさ、大切ですね。そこをキチキチしていくと、自分がどんどん消耗してしまうし。そのユルさがあったうえでの付き合いのほうがお互い楽ですもんね。私も「ま、そんなもんだよね」、取り入れよう!


【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2017年6月24日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
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※シングル「世界、西原商会の世界! Part 2 逆featuring CRAZY KEN BAND」が配信中! Victorサイト限定CD盤もリリース!
詳しくは
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。




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