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【小安美和さんに聞く 地方における女性活躍】中小企業のトップにこそ、ダイバーシティの真の意味の理解を。

「女性活躍推進」という言葉がなくなるような、本当に女性が活躍する2030年を迎えるためには、どうすればよいのでしょう? 「女性×はたらく」をテーマに掲げ、企業や地方自治体と連携して全国各地で女性のエンパワメントに取り組んでいる、株式会社Will Labの代表取締役 小安 美和こやす みわさんにインタビュー。女性活躍先進国の現状や、日本の女性活躍の現在地や課題、女性活躍という言葉がなくなるくらい当たり前になるために大切なことなど、あれこれと聞いたお話を連載でお届けします。

今回は、都心と地方、大企業と中小企業での、女性の働く環境の違いについて。それを生み出している背景や理由など、地方の女性の労働環境を知る小安さんならではの視点で語っていただきました。


トップが変われば従業員の意識も変わり、会社の雰囲気も変わる。


——全国各地女性のエンパワーメントのサポートをされている小安さんですが、都心と地方では女性活躍の現状は異なると感じられますか?


残念ながら異なると思います。まず、大きな違いは、地方にはグローバル企業や大企業が少ないことです。そのため、人権問題、ダイバーシティという概念への意識がまだ浸透していないと感じています。昭和的で男性優位な中小企業も多く、そんな環境で多くの女性たちが働いていると感じています。

女性活躍推進法が適用されるのは、従業員が101人以上の企業です(2023年現在)。2022年4月までは、301人以上の従業員がいる企業に、女性活躍のための行動計画の公表を義務付けられていただけでした。

地方では、従業員100人以下の会社がほとんどです。昭和時代の感覚のまま、男性も女性もマネジメントされている企業が多くあります。例えば、女性は制服を着てお茶くみをし、補佐的な業務を担うことが当たり前の職場など。この状況は地方だけではなく、東京の中小企業でもまだまだあります。東京だからといって労働環境が進んでいるわけではないと私は思っています。

もちろん中小企業でも、ダイバーシティやジェンダー平等を目指した職場づくりに力を入れている、すばらしい企業がたくさんあります。中小企業だから遅れていると一概に言うことはできません。ただ、大企業のように女性活躍推進法などの対象となっていないため、推進が難しい。

そして、結局のところは、トップの考え方次第で差がついてしまう。トップがダイバーシティやジェンダー平等について関心や意識を持っていれば、自然とさまざまな施策を取り入れることに積極的になり、その思いはメッセージとして従業員にも伝わります。トップが会社を変えよう、働きやすい環境にしようと努力をしているのを感じれば、従業員たちの意識も変わるものです。結果として、経営者にも従業員にも知識が身について、会社全体の雰囲気も変わっていきます。

逆に、トップが表面的な知識しかなく、「社会の流れだから、売上げにつながるから、投機家に投資してもらうために、女性もがんばりましょう!」と言っても、ワクワクする女性はいないでしょう? そういうアプローチをしてしまう企業も少なからずありますが、真の意味でのダイバーシティにはつながらないと思います。



意思決定層に女性がいると、変化が起きやすい。


——女性が活躍しにくい、地方ならではの空気感みたいなものもありますか?


小さなコミュニティでは、他人と異なる価値観で行動したり、発言したりすることをよく思わない空気があるところもあり、目立つことを避ける女性が多いと感じます。

その点、東京はよそ者の集まりだから、「こうあらねばいけない」という感覚は比較的薄いですよね。地方ならではの密度の高いコミュニティは、よい側面もありますが、社会規範がアップデートされづらいという側面もあると思います。


——女性の起業家や管理職の割合が突出している都道府県はあるのでしょうか?


「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」の調査によると、経済分野では沖縄県や徳島県、鳥取県、東京都などがジェンダーギャップ指数のランキングが高いという結果が出ていますが、地域ごとの背景があるため、単純比較は難しい。全国で女性のリーダー育成をしてきましたが、政治、行政、経済、教育などの分野で意思決定層に女性が少ない状況は変わりません。

「地域からジェンダー平等研究会」による

ただ、首長が女性である地域は、それだけで雰囲気が変わると思っています。なぜなら、その人が政治的に意思決定をするので、女性が活躍することの是非を議論する必要がないのです。意思決定層に女性がいると変化が起きやすいと強く感じます。


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【小安美和さんに聞く 脱・昭和型の●●】昭和世代の役割は、若い世代が生きやすく、働きやすい環境をつくること。
に続きます。



<お話を伺った人>

株式会社Will Lab(ウィルラボ)代表取締役
小安 美和こやす みわ さん

東京外国語大学卒業後、日本経済新聞社入社。2005年株式会社リクルート入社。エイビーロードnet編集長、上海駐在などを経て、2013年株式会社リクルートジョブズ執行役員 経営統括室長 兼 経営企画部長。2015年より、リクルートホールディングスにて、「子育てしながら働きやすい世の中を共に創るiction!」プロジェクト推進事務局長。 2016年3月同社退社、6月 スイス IMD Strategies for Leadership 女性の戦略的リーダーシッププログラムを修了、2017年3月株式会社Will Labを設立。労働や雇用、女性活躍の専門家として、地方自治体にて人材育成等に関するアドバイザーを務めるほか、企業の女性リーダー育成、ひとり親の就労支援、女性起業家支援等に取り組んでいる。


取材:F30プロジェクト 文:武田 明子






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