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【小安美和さんに聞く 脱・昭和型の●●】昭和世代の役割は、若い世代が生きやすく、働きやすい環境をつくること。

「女性活躍推進」という言葉がなくなるような、本当に女性が活躍する2030年を迎えるためには、どうすればよいのでしょう? 「女性×はたらく」をテーマに掲げ、企業や地方自治体と連携して全国各地で女性のエンパワメントに取り組んでいる、株式会社Will Labの代表取締役 小安 美和こやす みわさんにインタビュー。女性活躍先進国の現状や、日本の女性活躍の現在地や課題、女性活躍という言葉がなくなるくらい当たり前になるために大切なことなど、あれこれと聞いたお話を連載でお届けします。

今回は、これまでの働き方から新たな働き方への過渡期に、企業と労働者はどのように立ち向かうべきなのか、真の意味でのジェンダーダイバーシティを実現するために必要なことなどを語っていただきました。


伸びる中小企業は、トップが本気で女性を育成しようとしている。


——日本の企業の99.7%が中小企業と言われます※。たった0.3%の大企業がダイバーシティに取り組んでも、女性が活躍する日が本当に来るのだろうか、と考えてしまいます。

「2021年版 中小企業白書 小規模企業白書(中小企業庁)」より


中小企業の人手不足が逆に、チャンスになるかもしれません。私は地方のコンサルティングをするなかで、女性を採用し、育成しましょうと提案してきました。

性別役割分担意識がまだまだ残っている今の日本において、女性を採用するうえで課題となるのが、働く時間の柔軟性です。家庭との両立で、9時〜17時で就業するのが難しいような場合でも、例えば10時〜16時など、選択肢があれば就職率が上がり、能力も発揮できることが分かってきたのです。

次のステップは、女性たちを補佐的なポジションに留めるのではなく、戦力として本気で育成すること。その意志を企業のトップが持っているかどうかが、伸びる中小企業かどうかの分かれ目と言ってもよいかもしれません。時代に合わせた働き方を導入できる、未来を見据える力がある企業ということですから。



企業も家庭も、性別役割分担意識をアップデートすること。これからの世代が生きやすく、働きやすい環境づくりを。


——足元から政治を変えていこうという若い人たちの動きがある一方で、上の世代は既存の権力と結びついて自分たちを守ろうとする。そういう社会構造がある限り、「新しい働き方」や「社会制度」が実現するのに、まだまだ時間がかかりそうです。


私は1971年生まれなので、経済成長真っ只中の日本を見てきたわけですが、成長している時は誰も構造を変える必要性を感じづらい。

ところが現在は、成長しないどころか賃金が上がらないのに物価が上がるという状況です。当然のことながら、不満や不安の声があがり、構造的な変革の必要性が高まっています。

実際に若者たちが声を上げ始めています。私たち50代以上は、バブル崩壊、リーマンショックなど経験はしているものの、中長期で将来不安を感じたことのない人が多く、社会の構造そのものに声を上げてこなかった人も多いのではないでしょうか。


——当たりまえのこととして刷り込まれてきた、上の世代の意識を変えることは難しいのかもしれません。


その、当たりまえの意識のひとつが、性別役割分担ですよね。「男は仕事・女は家庭」というように、男性、女性 という性別を理由として役割を分ける考え方のことです。今の20代、30代の若い世代はもう、この考え方がアップデートされていますよね。家事の分担は当然だし、育児にも積極的に参加したいから、育休を取りたいという男性も増えています。

ところが、それを阻むのが昭和世代。上司が「男が育休なんて!」という考え方だから、若い世代も育休を取ることを遠慮してしまう。私も昭和生まれの50代ですが、我々は若い世代が生きやすく、働きやすい環境を職場に作ってあげることが役割なんです。自分たちの時代がそうではなかったからと、若い世代にも同じ環境を強いるのはナンセンスですよね。

「若い世代に寄り添って働き方を甘くすると競争力が失われる」と心配する人がいます。でもそれは、今の時代に合った働き方で競争できるビジネスモデルをつくれていないということだと、私は思っています。

旧来のビジネスモデルのままでギリギリなんとか経営しているなか、新しい働き方を取り入れることは、難しい場合が多いでしょう。いろいろな企業を見てきましたが、女性を戦力として本気で育成する取り組みをしている企業は、余力のある企業の場合が多いです。そして、余力のある企業を見てみると、時代に合ったビジネスモデルへとあり方を変革しているケースが多いんですよね。

中小企業ではないですが、私の前職のリクルートの例を紹介します。リクルートは、2016年にホールディングスで全従業員に対してリモートワークを可能としました。私自身は子どもはいないのですが、当時、管理職と不妊治療の両立に葛藤していた中で、非常に働きやすくなりました。

ちなみに、リクルートでは、現在の管理職全体における女性比率は27%(2022年4月実績)です。

これを実現できた要因としては、まず、経営が本気であったこと、そして、働き方が柔軟であったこと、あとは勤務時間の長さで評価がされないこと。そして、時代のニーズに合わせてビジネスモデルそのものをアップデートし続けてきたことも背景にあると思います。

大企業であれ、中小企業であれ、多様な人が柔軟に働ける仕組みをつくることが、男性も女性も活躍できる職場を増やすことになるのではないかと感じています。


——制度、意識、そしてビジネスモデル。どれも変えるのは大変ですが、少しずつ日本の企業も変わっていく期待感も持てました。いろいろな角度からお話しいただきありがとうございした。



<お話を伺った人>

株式会社Will Lab(ウィルラボ)代表取締役
小安 美和こやす みわ さん

東京外国語大学卒業後、日本経済新聞社入社。2005年株式会社リクルート入社。エイビーロードnet編集長、上海駐在などを経て、2013年株式会社リクルートジョブズ執行役員 経営統括室長 兼 経営企画部長。2015年より、リクルートホールディングスにて、「子育てしながら働きやすい世の中を共に創るiction!」プロジェクト推進事務局長。 2016年3月同社退社、6月 スイス IMD Strategies for Leadership 女性の戦略的リーダーシッププログラムを修了、2017年3月株式会社Will Labを設立。労働や雇用、女性活躍の専門家として、地方自治体にて人材育成等に関するアドバイザーを務めるほか、企業の女性リーダー育成、ひとり親の就労支援、女性起業家支援等に取り組んでいる。


取材:F30プロジェクト 文:武田 明子






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